表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改訂版】呪いを解いた代償は、恋人の心でした~神に反旗を翻します~【第二部】  作者: 七宮叶歌
第7章 廃墟の塔

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/89

廃墟の塔Ⅲ

「その頃の魔導師の守護者──各国の王たちは、マメに連絡を取るようになっていた。王たちの行動を、魔導師たちを守るためだと信じて疑う者はいなかった。実際には、魔導師全員の暗殺を企んでやがったんだ。それにやっと気づいた俺は、暗殺計画が実行される……確か五日前だ。魔導師の元に、ペットと称して動物の姿をした使い魔を──」


「待って!」


 頭の中がすっかり混乱してしまった。魔導師の守護者が各国の王とはどういうことだろう。王は国を守るために存在している筈だ。少なくとも、私は王に守護してもらった覚えなんてない。

 何度か首を横に振った。


「どうした?」


「王様が魔導師の守護者だなんて……私、信じられない」


 オニキスは吐息をつき、私の様子を見ているようだった。


「そうか。今の王を見れば、そう感じてしまうのかもしれないな。でも、王の存在意義は魔導師を守るためにあったんだ。信じても、信じられなくてもどちらでも良い。ここまでは飲み込めたか?」


 飲み込めたかと聞かれれば、恐らく違うのだろう。しかし、疑問が先に浮かんでしまう。頷くと同時に、口を開く。


「なんで王様に魔導師を守らせたの?」


「それは、俺らにとって魔導師がそれだけ大事な存在だからだ」


 答えになっているようで、なっていない。眉をひそめながら小首を傾げてみる。


「……まあ、そういうことだ。使い魔は王たちによる暗殺計画から魔導師を守るために作った。その魔導師暗殺計画は実行されて、結局、魔導師を守りきることは出来なかったんだけどな」


 記憶がないせいか、現実感がほとんどない。神が私たち魔導師を守ろうとするなんて。今まで試練しか与えてくれていないではないか。自らの死を受け入れるように諭す程だ。優しくされたことなんてないに等しい。


「神様はなんで私たちが大事なの? やっぱり、私、信じられないよ」


「その辺はミユが言ってた『デュ』の意味に関わってくるから、俺からは何とも言えないな。信じてもらえないのも無理はないか」


 俯き、眼下に渦巻く闇を見詰める。


「他に聞きたい事はないか?」


 聞きたい、というか、聞かなければいけないことはない。無言のまま首を横に振る。


「そうか。また、ミユたち魔導師に会う日が来るかもしれない。その時はよろしく頼む」


 少なくとも、私はもうここへは来たくない。オニキスと現世で会うことはないだろう。それでも、小さく頷いてみせた。


「もうだいぶ時間が過ぎてしまったな。仲間たちも待ちくたびれているだろう」


「そんなに時間が?」


「ああ、この空間はスティアと時間の流れが違うらしいからな。急いで帰った方が良い」


「分かった」


 そっと瞼を閉じる。塔の中に帰してと願う前に、足元から風が巻き起こる──。

 浮遊感が消え去ったので、そっと瞼を開けてみる。前方で仲間たち三人が固まって何かを話しているのが見えた。


「ただいま」


「ミユ!」


 三人が険しい表情で一斉にこちらへと走り寄ってくる。


「皆、待たせてごめんね。魔法陣の中とここだと、時間の流れが違うみたいなの」


 説明すると、三人の表情から緊張がほぐれていったようだ。


「そっか、良かった……。俺たち、ミユに何かあったんじゃないかって気が気じゃなくてさ」


「ま、とりあえず、ダイヤに帰ろーぜ! こんなトコにずっといたくもないだろ?」


「それもそうだね」


 四人で小さく笑い合う。何だかクラウたちの顔を見て安心してしまった。

 こちらに背を向けて歩き出す三人の後を追おうと、右足を出そうとする。それなのに、足が動かない。


「あ……れ……?」


「ミユ?」


「足が……動か……」


 足だけではない。全身から力が抜けていく。クラウ、助けて。声に出す前に、意識は暗闇に沈んでいった。

 この先の出来事が、夢か現実かどうかも区別がつかないなんて。精神的にも追い込まれていたのだと思う。


 * * *



「ミユの力は枯れてしまった。また俺が『影』になる前に、アレク」


 少しの躊躇いの後、クラウはすうっと息を吸い込む。


「俺を殺して欲しい」


 四人が集う会議室の時間が止まった。頭を殴られたかのような衝撃が走る。


「クラウ! 何言って──」


「あぁ、分かった」


「アレク!」


 フレアの悲鳴にも似た声が響く。本当にクラウを殺すつもりなのだろうか。冗談でもそんなことを言わないで欲しい。


「私がそんなことさせないから!」


 絶対に嫌だ。アレクを睨みつけ、クラウの腕に飛びついた。

 アレクの瞳が揺れるようにフレアを見たけれど、その決意は変わらないらしい。


「逆らう奴も殺す」


「そんな!」


「世界が壊れるのと、コイツだけがいなくなるの、どっちがマシだと思ってる?」


 そんな質問に答えられる筈がないのに。私の中ではクラウがいなくなった世界なんて、必要に値しないのだから。首を横にブンブンと振ってみせた。


「残念だ、ミユ」


 アレクは立ち上がり、背中を見せる。その隙に、クラウは私を椅子から立たせた。


「二人とも正気!? 仲間を殺すなんて……どうかしてるよ!」


「そうか、フレアもか」


 アレクは迷いもなく、こちらに片手をかざす。


「まずはオマエら二人からだ。後からオレらも逝く」


 それに答えるかのように、クラウは私を後ろから羽交い締めにした。強くはあるのに、体温を感じない。


「クラウ! こんなの間違ってるよ! もう止めよう!?」


「ミユ、大好きだ」


「こんなのやだよぉ!」


「ずっと二人でいよう。これからも。もう、一人にはなりたくないんだ」


 アレクは瞼を閉じ、深呼吸をする。次に目が合った時には、その瞳には鬼気迫るものがあった。そして──空気が揺らいだ。現実が押し寄せるかのように、辺りが淡く光り出す。


「ミユ……!」


 クラウの涙声が聞こえたかと思うと、柔らかくて温かなものが頭に触れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ