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【改訂版】呪いを解いた代償は、恋人の心でした~神に反旗を翻します~【第二部】  作者: 七宮叶歌
第7章 廃墟の塔

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廃墟の塔Ⅱ

 無言のまま、ところどころ砕けてしまった石畳を歩く。左手はしっかりとクラウと繋いでいる。まだどこかからカラスの鳴き声が聞こえた。

 早く着いて、早く、早く。そう思いながら歩いていたものの、塔の中に入ってもあまり状況は変わらなかった。やはり外ではカラスが鳴き声を上げているし、明かりが差すこともない。塔の中心にある魔法陣はと言うと、存在はしているものの光を発してはいなかった。四人で魔法陣を取り囲む。クラウの目には僅かな光がともっており、アレクは苛立ったように唇を噛み、フレアは溜め息を吐きたそうな表情で魔法陣を見詰めている。


「もう使われてないから、やっぱりオニキスには会えないのかな……」


「いや、分かんねぇ。ミユ、一回魔法陣の中に入ってみろ」


「うん、分かった」


 心配そうなクラウに「大丈夫だよ」と声をかけ、深呼吸をしてから魔法陣の縁を踏む。ところが、魔法陣には何の変化も起きず、その場に立ち尽くすのみだった。


「駄目みたい……」


「オニキスは異世界の神だろ? もしかすると、オレらの動きに気づいてないだけかもしれねぇ」


「そうなのかなぁ」


「もー少し待ってみようぜ」


 重苦しい空気が流れる。この場所の雰囲気のせいか、誰も話し出そうとはしない。いつまで待てば良いのだろう。吐きたくなる溜め息を我慢し、その場にしゃがみ込む。それに合わせてか、クラウも私の隣に来ると、座り込んであぐらをかいた。


「アレク、ホントにオニキスは来ると思う?」


「んなもん、使い魔とオニキスを信じるしかないだろ」


 クラウの問いかけに、アレクはぶっきらぼうに返す。『信じるしかない』と言われては、反論なんて出来はしない。誰もが黙り込むしかなかった。

 ところが、突如として闇を割くように、魔法陣がオーロラ色に輝き出したのだ。オニキスに会えるかもしれない。失望は希望へと変わっていく。慌ててクラウと二人で立ち上がった。


“気づくのが遅くなって済まない。クラウ、魔法陣から離れて”


 聞き心地の良い男性の低い声が塔に響く。これがオニキスの声なのだろうか。


「ミユ、気をつけて」


 強ばった表情のクラウが後退りする。力強く「うん」と頷いた時には、光が私の身長を越えていたので、クラウの目に映ったかは分からない。そのまま私の身体は光に呑まれていった。

 そっと目を開けた──のは良いものの、まだ目を瞑っているのではないか。そんな錯覚を覚えた。四方八方が闇ばかりで、地に足を着いているのかも危うい。言い知れぬ恐怖に、身体が小刻みに震える。まるで心が闇に吸い込まれるかのような感覚だった。


「ミユ」


「きゃっ!」


 突然の声に驚いてしまった。辺りを見回してみても、声の主はどこにもいない。


「オニキス?」


「そうだ」


「姿は見せてくれないの?」


 オニキスは小さく息を詰める。


「俺のこの姿を見せたら……驚かせてしまいそうだからな。まあ、訳ありだ」


 訳ありなら、仕方ないのだろうか。姿を見せてくれるだけでも、まだスティアの神様は親切だと思ってしまう。


「鳥だから?」


「鳥!? 俺が、か?」


 オニキスは素っ頓狂な声を上げる。変なことは言っていない筈なのに、この反応は何なのだろう。


「違うの? スティアの神様は皆、鳥の姿してるから。オニキスもそうなのかなぁって」


「あいつら、そんなことして誤魔化してるのか」


 オニキスは「はぁ……」と大きな溜め息を吐く。誤魔化すとはどういう意味なのだろう。首を傾げて訝る。


「……いや、余計なことを言ったな。なかったことにしてくれ」


 有無を言わせぬ言い方だ。納得は出来ないけれど、相手は神だ。従うしかないのだろう。無理矢理小さく頷いてみせた。


「悪いな、ミユ。それで、おまえらは俺に何を聞きたいんだ?」


「私たちの名前の『デュ』の意味から教えて欲しいの」


「『デュ』の意味……か」


 オニキスは「うーむ」と唸り声を上げ始めてしまった。嫌な間が開く。


「済まない、それは俺から教えることは出来ないな。あいつらが頑なに秘密にしたがってるものを、今は部外者の俺が話すことじゃない」


「そんな……」


 せっかく、ここまで来たのだから、少しくらい教えてくれてもいいと思うのだ。「む〜……」と唸り声を上げる。


「あははは。ミユはやっぱり……いや、今のも忘れてくれ」


 スティアの神様もそうだけれど、オニキスも秘密だらけだ。元はつくものの、仲間だから似た者同士なのかもしれない。


「聞きたいのはそれだけか? それなら塔にいる仲間の元に──」


「ちょっと待って! まだあるの!」


「何だ?」


「使い魔って、オニキスが創り出したんだよね?」


 気になることは、一通り聞いておこう。拳を作り、どんな答えが来ても良いように備えてみる。


「そうだが………それがどうした?」


「どうして使い魔を創り出したの?」


 オニキスは言葉を探し出すように沈黙してしまった。何かを考えた後、「うん」と意を決したらしい。


「これなら話しても良いだろう。分かった、教えるとしよう。話が長くなるが、良いか?」


 コクリと頷いてみせる。きちんと他の三人にも伝えられるように、一字一句聞き逃さないようにしなくては。


「そうか、話すとしよう。遠い昔、俺とオパールがまだスティアの神をしていた頃の話だ。その頃にはもう、既に魔導師も存在していて、魔導師を守る者もいた……筈だった。まさか、裏であんな動きがあったなんてな」


 オニキスは「ふぅ……」と、細い息を吐き出す。

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