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クロ

僕は寝る前の悪者チェックをしていた。

巡回はBOTに任せている。

怪しい政治家や詐欺師の情報をつかむと拾い上げてきてくれる。

最近はネット上でやり取りをしなくなったのか、あまりみつけられなくなった。

単純に悪いことをする奴が減ったのならいいが、悪いやつほど知恵が働く。

僕の監視をうまく掻い潜っているのか、昔ながらの方法に切り替えたのかどちらかかもしれない。


クロは休むと言ってから、2週間くらい連絡をしてきていない。

南の島で変な色のカクテルでも飲んでいるのかもしれない。


次のターゲットもクロと一緒に決めようと思っていたのだが。

僕は目的もなく、闇サイトを見ていた。

そこでは某国で巨大な裏組織のボスが脱獄した話で盛り上がっていた。

サイトにはその刑務所の設計図や看守の人数や行動時間などみんなで持っている情報を出し合って自慢をしていた。

その情報を見ると脱獄するのは天才の僕でも大変そうだった。

よほどの権力者なのだろう。

金があれば内部の者も動かせる。

きっと金に目が眩んだ内部の人間が手引したのだろう。


しかし僕ならどうやって脱獄するか、というのは暇な僕にとってなかなかの時間稼ぎになった。

僕が楽しんでいるとクロからメッセージが届いた。

僕はやっとバケーションが終わったのか、やれやれ、とメッセージを開いた。


『捕まった。助けてくれ。』


と、書いてある。

僕は一瞬意味がわからなかった。

もしかして逮捕されたということか?


僕は調べようとしたがクロのことは何も知らないということに気がついた。

クロよ、それだけではいくら天才の僕にも助けられないぜ。

僕はメッセージの発信元を調べた。

いつものクロなら世界中を経由していてどこからかなのかまったくわからなかった。

しかし今日はすぐにわかった。

某国の中にある某国の大使館にいた。


僕はすぐにその大使館のことを調べた。

僕はその国が大嫌いだった。

人の技術を盗んで真似をして作ったものを並べてドヤ顔をしているような国だ。

人の失敗は見逃さず、ほら見ろとアホみたいに吠えたてる。

そのくせ自国がヤバい状態なのを見て見ぬふりをしている。

よくそんな国に住めるな、と僕はいつも呆れていた。

その国がクロを捕らえているのならば、それは大問題だ。


クロからのメッセージはない。

僕の送ったメッセージも見れているかはわからない。

敵に見られてもいいように『餃子はやめてピザにしよう。』と送った。

特に意味はない。

返事が来ないところをみると端末を自由に操作ができる状態ではないのだろう。

もしくは奪われてしまったか。


僕はとりあえずその大使館の端末をハッキングした。

みせかけのファイアウォールがいくつかあったが、そんなもの天才の手にかかれば簡単にやぶれる。


監視カメラの映像をハッキングした。

たくさんのカメラがあるが僕はクロが何者なのか知らない。

性別や年齢、人種すら知らない。

わかりやすく手錠でもされていればわかるのだが。

僕は1つ1つ慎重に観察した。


牢屋のようなものはない。

囚われているような人もいない。

僕は少々危険だが、あることを試した。

監視カメラについているランプをチカチカさせたのだ。

何人かそれに気がついたが、気にする人は一人しかいなかった。


そこには可愛らしいワンピースを着た若い女性がいた。

その女性は指をトントンさせた。

モールス信号か!

僕はこれがクロなのだと確信した。


『スマホ とられた たすけて』


これだけ見れば、使いすぎて親にスマホを隠された子供のようだ。

僕はその部屋のカメラのランプだけを操作してメッセージを送った。

『そこから だすだけ OK?』

クロはすぐに『OK』と合図をした。


────


さて、ここから数千キロ離れた土地のそれも大使館にいる仲間をどう助けるべきか。

僕は大使館の情報を集めた。

設計図から監視カメラの配置図、非常出口に勤務中の人の勤務表までありとあらゆるものを集めた。


監視カメラの映像を見ると予定より警備が多いように見えた。

それもそのはずだ。

大広間では何かのパーティーが開かれていた。

チャイナドレスの給仕たちが忙しそうにゲストをもてなしている。

そこに見覚えのある顔があった。

さっき見た脱獄犯である。

今は正装をして嬉しそうにシャンパンを飲んでいた。


いったいどういうことだ?

僕は某国とその脱獄犯の関係を調べた。

かなり大きな組織で扱っているものも多種多様だった。

表向きに展開している会社も大きく、それもたくさんある。

その中に某国内に大きな新工場ができたというニュースをみつけた。

表向きには歯磨き粉やボディーソープなんかを作ってある会社だ。

しかし記録をたどるとそこから出たトラックは船で某国に商品を送っている。

送り先の某国にも同じ工場があるのに、だ。

わざわざコストをかけて送る意味はない。

何か別のものを製造して逆輸入しているのだろう。


この大使館と脱獄犯は金で繋がっていた。

きっと脱獄させたのもこの国だろう。

FBIだろうがCIAだろうが大使館の中にドカドカ入ってきて捜査をするのは難しいのだろう。


なぜそこにクロがいたのだ?


僕はある推測を立てた。

『おまえ だつごく させたな』

僕はクロにメッセージを送った。

するとクロは舌をペロッと出して笑った。


笑っている場合ではないはずだ。

こいつ、休暇中になんて仕事をしてたんだ。

しかも捕まるだなんて!

僕はクロを自分と同等の天才だと思っていたので腹がたった。


しかたないな、僕のほうが天才だということをわからせてやるよ。


────


僕にできることは限られている。

大使館の端末に繋がっている機器しか動かせない。

僕はまずあの脱獄犯の映像をFBIに送った。

それから火災報知器を鳴らした。

誰もいない部屋のパソコンに負荷をかけて爆発を起こさせた。

古いパソコンなんて使っているからだ。

掃除をしろ!ホコリが溜まってたんだろう!


パソコンは勢いよく燃えた。

すぐに安っぽい絨毯に燃え移り、部屋は大変なことになった。

これは少々誤算だった。

こんなに勢いよく燃えるなんて。

見栄えだけいい化学繊維のものばかり使っていたんだろう。

本当にムカつく国だ。


監視カメラに映っているクロは『なにした?』と怒っている。


『かじ にげろ』


クロは部屋にあった変な置物を窓に投げつけた。

外には消防車がやって来ていた。

クロは消防隊によって助けられたようだった。

外のカメラにはFBIの車両もたくさん映っていた。

中には入れないだろうけど火事だし、脱獄犯も隠れてはいられないだろう。


────


『殺す気か?アホ』

数時間後にクロから来たメッセージである。

もちろんどこから送ってきたのかはわからない。


『どういたしまして』

僕はそれだけ送ってパソコンの電源を落とした。

寝る時間はとっくに過ぎている。


────


しばらくクロからの連絡はなかった。

脱出できただろうからそんなに心配はしていなかった。

僕は某国で大使館が火事になったというニュースと脱獄犯を捕まえたというニュースを見た。

それは別々に報じられており、関連しているという記載はどこにもなかった。

きっと政治的に本当の事を伝えるのは得策じゃなかったのだろう。


だとしたらクロの立場はまだまずいことになっているのではないか?

僕は急に心配になった。


『ピザより寿司がいいと思う』

というメッセージを送った。

『残念だな、ガパオライスにした』

すぐにそう返事が来た。

僕は安心した。


いや、やっぱり寿司だろ。


僕はコンビニで鉄火巻を買って食べた。


────

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