表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

00:漂う意識、宇宙船

 ルファルト・アムテルは、金属製の棺桶に手を置き、最後の別れをしていた。

 中に入っているのは、唯一の肉親にして、最愛の妹。

 そして、大罪人である。


 ――お兄ちゃん


「うん?」


 ――お兄ちゃん


「ここにいるよ」


 ――私のこと


「うん」


 ――嫌いだった?


 中で横たわる妹は、虚ろな目で兄を見つめていた。

 ルファルトは、口を開くが、言葉が出てこなかった。


「時間です」


 傍にいた船員がそう言うと、ルファルトはゆっくりと棺桶から離れた。

 そして船員は、扉を締め、レバーを引き下げた。

 小さな窓から事の一部始終が見える。

 妹が入った棺桶は、暗い宇宙の海に放り出され、遠くに見えるブラックホールへ吸い込まれていく。

 ゆっくりと、ゆっくりと、回転しながら棺桶は小さくなっていく。

 これが、彼らの星における大罪人の処刑法である。


「それでは戻りましょう、ルファルト艦長。目的のビーコンまで4光年、これから長い旅路の始まりです」


「……ああ」


 力なく答えるルファルトを気遣い、船員は言った。


「……大丈夫ですよ、誰も貴方を犯罪者の身内なんて責めたりしません。同情的です」


 船員は先に部屋を出て行った。

 ルファルトは再び小さな窓から外を見た。


 際限なく広がる黒と、小さな点。


 しかし、ルファルトが見ていたのはそれらではない。

 薄っすらと窓に写った自分の顔を見ていた。



 俺は、妹を送り出した時――



 どんな顔をしていたのだろうか――



 そのことが、頭の中からずっと離れなかった。


 ずっと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ