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5袋 君のパワーは10万N《ニュートン》(運はウンの近くから) 

ドスンと言う大きな音と揺れが起こり、家の外に出たマチ達3人は驚いた。

マンション工事現場のクレーンが横倒しになっているのである。

 マチは外に出て驚いた。

 話では聞いたことがあるが、もちろん初めて見る光景である。


 マンション工事現場で使用していた大型クレーンが、横倒しになっているのである。


 家の前の通りは、数件先が突き当たりになっている。

 そこに建築中のマンションのクレーンである。

 

 まるで恐竜か、はたまた大きな鋼鉄のキリンロボットが横になっているかのような、壮大な光景である。


 それを見るなり、菜茅は何をどうイメージしたのか、

「キリンって横になって寝るんですね」

 菜茅が小首を傾げて納得している。


 なっちんは何処に向かうつもりなのだろう?

 マチは菜茅の行く末が心配であったが、相手をするのが面倒なので放って置くことにした。



 キリンの頭、いや、クレーンの先端は、道路を横切り反対側のプレハブの物置を無残にも押し潰している。

 

 幸いにも物置小屋は、無人であった。クレーンを操作していた人も無事である。

 そこまでは良かったのである。


 しかし、不運にもそのプレハブの物置小屋の直ぐ横に路上駐車をしていた車があった。


 この車の後ろ半分がクレーンの首に無残にも押し潰され、半分位の高さにまで圧縮されてしまっているのである。


 その影響で前席部分もかなり押し潰されてしまっている。


 マチ達がその光景を目にした時には、既に工事現場の人や、近所の人数人が車の近くに駆け寄って騒ぎになっていた。


 車の前席からは、女性の悲鳴と男性の助けを求める声が入り混じって耳に飛び込んでくる。

 

「ア~、ア~、痛~い」

「苦しい、助けてくれ~、ウ~」

 男女の声が漏れてくる。


 周りからは、 

「警察に電話はしたのか?」

「消防署は?」

「クレーン車を退かせられないのか」

 の声が、聞こえており緊迫した様子が伺える。


 マチ達3人も、菜茅を先頭に潰された車に駆け寄った。

 近くに行くほどに、苦しそうな荒い息遣いが耳に入り、マチの心にダメージを与えてきた。

 膝の関節が緩みそうである。


 マチは、顔を両手で覆いながら、恐る恐る広~く開けた中指と薬指の隙間から、車の中を除こうとすると、既に菜茅は、潰れた窓の隙間に顔をピタッとくっ付けて中を覗き込んでいた。


 マチの右手の中指と人差し指の間は、常人よりも大きく開くのだ。それは、効き目が右目であるからである。


 マチは菜茅の肩越しから車の中を覗いて見た。


 幸いにも、潰れた後部座席に人はいない様である。

 マチはひと安心した。


 しかし、前席の二人は、互いに中央を向き重り合った状態になっている。

 下側になっている女性はかなり苦しそうな息遣いになっている。


 運転席側から車の中を凝視していた菜茅が、除くのを止めマチに耳打ちをして来た。


「出てます」

「えっ?」

「ぽろ~んと。出ていますヨ」

 マチには、菜茅の言っている意味が全く分らない。


 マチは、菜茅に手を引かれ運転席側の窓から中を除いて見た。


 潰れた車内には、苦しがっている二人とは裏腹に、わりと自由な空間を維持している男のお子さんがいらっしゃるのでる。


 二人は全く身動きが出来ないので、お子さんを元の鞘に納めることが出来ず、自由なまま放置されているのである。


 偶然、いや最初からその行為を勤しむ為に、そこに駐車していた二人は、競う様に相手のシートの少しだけ上を目掛けて、身を乗り出していたのだろう。

 マチの見た目には、恐らく目的の行為の為に身を低くしていたことが幸いして、助かった様に見えた。


 もし、リクライニングを使って背もたれを後ろに倒して営んでいたらと思うと、マチは色んなことを想像してぞっとした。


「人間何が幸いするか分からないですね」

 菜茅はそう言ってお茶目な笑顔を見せるが、マチには菜茅の図太い神経の方が良く分らなかった。が、少なくても、中の二人が助かっている解釈は、菜茅と同じであることだけは分った。


 

 車の周囲には、次第に人が集まって来る。

 工事をしていた人達数人に兄が加わり、車を押し出そうとするが、全く動く気配がない。


 変形したドアは幾ら開けようとしてもビクともしない。

 窓も潰れていて、そこから救出することも出来ない。


 誰もどうすることも出来ない。


「なんとか出来ないのか、扉を外せないか」


 二人の顔は見えないが、車の中からの声は、次第に弱々しくなっていく。

 顔は見えないが、苦しそうな息遣いだけが荒くなっていく。

 

 顔は見えないが・・・。

 

 顔は見えないのだが、マチは女性が誰であるのかが分ってしまった。


 助手席側から見える女性のスカートが、マチの女子高の制服なのである。

 しかも、悲鳴に聞き覚えがある。

 少し見える、髪も茶髪である。髪留めにも記憶がある。


 マチは思った。

 まず、間違いない。

 同じクラスの麻美鏡子あさみきょうこである。と。


 そう、今日学校をサボっていた、唯一のマチの天敵。



 マチと彼女は犬猿の仲である。いや、バーチャルとリアルの仲である。

 本来二人は、交わることがない別世界の者同士である。

 マチはそう思っている。


 そう思いだしたのは、高校に入学して一か月が経過したころからである。


 <つづく>

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