初恋の幼馴染に告白されても、拗らせた今の僕にはもうどうでもいい
「あのね……私先輩と別れて気付いたの。私が本当に好きなのは優太だって」
どこか言い訳がましく聞こえるその告白に、僕――小泉優太の心は冷えきっていた。彼女――岩上怜は、僕の初恋の女の子だというのに。
僕は怜のことが幼い頃からずっと好きだった。幼稚園で彼女と出会い、友達となった時から。
でも今の怜に対しては、何の感情も湧いてこない。きっと僕の中の彼女への想いは死んでしまったのだろう。
幼馴染に幻想を抱いていたんだと思う。僕のことが好きなら、例え気の迷いでも絶対に他の人と付き合ったりしないと。
「ごめん。気持ちは嬉しいんだけと、怜とは付き合えない」
「え……? なんで!? 優太私のこと好きだって言ってたじゃん!?」
「僕以外の人と付き合ったからだよ。怜は僕のこと本当は好きじゃないんでしょ?」
「好きだよ! それに先輩とは本気じゃなかったし!」
「そうかな? 先輩と付き合うことを決めたのは怜でしょ?」
「断れる雰囲気じゃなかったの……。皆先輩と付き合ったほうがいいって言うし……」
「だとしてもだよ。じゃあ何で先輩とすぐに別れなかったの? 先輩とキスしたんだよね? そこから先のこともしたんだよね?」
「したけど……! 今は優太のこと好きなんだし、そんなことどうでもよくない?」
「どうでもよくなんかないよ。怜からしたらそうじゃないのかもしれないけど、他の人とそういうことをした時点で疑いたくなるんだ。本当に僕のことが好きなのかって」
「だから私は……! 先輩とは本気じゃなくて……!」
本気じゃない――それを証明できるものは何もない。男と女、価値観の違いがあるにせよ、やることをやった上で後から好きだったと言われて、信用できるだろうか。
僕は疑心暗鬼に苛まれながら、彼女を愛し続けなければならないのだ。そんなの、僕には耐えられそうにない。
だからもうどうでもいい。他の男に体を許した幼馴染なんて。
多分普通のことなんだとは思う。いろんな人と付き合ったり、別れたりするなんてことは。
拗らせた僕が分かっていなかっただけだ。恋愛というものは、如何に理不尽で馬鹿馬鹿しくて、長い間胸に秘めていた想いを、簡単に踏みにじるということを。
最後まで読んでいただきありがとうございました。