ライトの策略?8
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「着いたので、説明は終わりです。」
ライトの一言で回想はここで終わりを迎えた。その理由は、ギゼンの屋敷にたどり着いたからである。
「なんか、良いところで話終わったね。ライト君、それで結局どうなったの?」
エマは、軽くノビをして羽と翼の大きさを調整してから、そうライトの顔をジッと見て尋ねた。話の終わり方は打ち切り漫画以下であった。
「あの後、聖人、選ばれし人間?をボコボコにして、亜人の子達を開放して、その後は、君が見た通りだよ。」
そう、ライトはザックリと適当に解説をした。
「てかさ、ライト君、臨時収入とか言ってたの、盗んできたお金だよね。」
エマも後で聞く機会は幾らでもあるので、話を変えながら、屋敷のドアを蹴り破ったライトの後に続いた。
「………慰謝料ですから。」
ライトは、そう言いながらギゼンの屋敷の中を進んだ。
「……そうですか。それと、ライト君、なんで帝国軍の兵士が私たちのこと尾行してたんですか?」
エマは、少し呆れつつもライトの後ろを少しキョロキョロしながらついて歩いた。
「それは、今から、この屋敷に侵入するって宣言した紙をバラまいたので。」
帝国軍の兵士がギゼンの屋敷の近くにいるのは、想定内だった。そもそもそうするように仕向けていた。
「何で?」
「そりゃあ、僕の策略ですよ。」
「……まあ、それならいいですけど。とりあえずサッサと終わらせましょう、ライト君。それで、私と帝都デートしましょう。」
ドヤ顔でライトが答えるので、エマはこれ以上追及などせずに、話を変えた。敵陣なのに呑気に会話をしていたが、話すのが久しぶりなので、仕方がない部分もあった。
「がっは、はあふう。」
それでも、想定していない事ももちろんあり、ライトは大いに動揺した。
「ライト君、もしかして忘れてました。私は欲しいものは自力で手に入れるんです。さっさと、もう一回ギゼンをぶん殴りに行きましょう。」
エマは、動揺して、顔を少し赤くしているライトを少し満足そうに見ながら、そんな風にいいつつ、少し、かなり真面目な表情になった。
「いや、殴らないからね。きっちり捕まえて貰うんだよ。帝国軍に。」
「ライト君。それは無理だと思うよ。だって、帝国軍の隊長ですよね。」
それは、そうである、普通なら揉み消される可能性もあるが、それを回避するためにライトはいろいろ考えたのだ。そして、帝国軍の第2部隊と第3部隊の隊長が負けて、恐らくメリッサにより第1部隊隊長が倒されて、強さの威厳が無くなったところで、聖女様とアスランの主張、演説をする。その状況で、あれば、帝国軍はギゼンを捕まえないといけない状況になるのだ。
「まあ聖女様とアスランの演説にかかってるんですよ。」
それに、ギゼンが逃げないために、わざわざ帝国軍をギゼンの屋敷まで連れ来たのだ。
「…回りくどいことしますね、ライト君。それで、聖女君のウソって何なんですか?」
ライトは、ギゼンを探すために部屋のドアを適当に開けながら答えた。
「それは、聖女様は聖女なんかじゃないんだよ。」
それは、聖女と呼ばれている人物の状況を事実を端的に表す最高の表現であった。でもライトのその返しだけでは、聖女の状況を把握することは出来なかった。
「具体的に何ですか?そもそも聖女になるのに資格がないとか。」
エマも同様にドアを開けながら進み尋ね返した。ギゼンの屋敷は、ライトによって縛られた人達は未だに意識を失っていた。
「資格がない、まあそうだけど。聖女は、基本的には血族が継ぐらしいですね。」
「じゃあ、今の聖女君は、先代の聖女の子供じゃないってこと?」
「それも違うって、先代の聖女様は若くで亡くなってしまったらしいですけど、間違えなく子供らしいですよ。本人が言ってましたから。」
ドアを開けていない最後の部屋、ギゼンの書斎の前でライトは立ち止まりそう返した。
「?つまり、どういう事?ライト君とんち?」
別に血族でも言い難い状況はあった。隠し子などの可能性である。しかし、そうでは無かった。
「とんちじゃない。今の聖女様は男ってことですね。」
ライトはそう言ってエマの方を振り返った。
「えっ、知ってましたけど?ライト君。」
エマは、不思議そうな顔でそう返した。
「えっ?」
「いつから?」
「初対面の時から。気が付いてなかったのライト君。」
「えっ、マジですか?」
ライトは溜めて振り返った事を後悔した。
「うん。聖女君が男の子の問題なんですかね。良い人だと思いますよ。」
「なんか問題あるらしいですよ、僕も意味不明ですけど。」
宗教に属していない二人には良く分からない感覚だった。
「まあ、とりあえず、分からないことは置いておいて。このお話を終わらせましょう。ライト君。」
そういうと、ギゼンの書斎の右側の扉をエマが蹴り飛ばし、左側の扉をライトが蹴り飛ばした。それから、二人は、部屋にいるギゼンに剣先を向けた。
それから、ライトは、
「そうですね、とりあえず、計画失敗しましたねギゼンさん。」
書斎にいるギゼンに向かってそう煽った。




