閑話 第1部隊 副隊長
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時は少し遡る。
帝都で御膳試合を行っている日、ちょうど、1回戦が始まる前の時間、フロスト地方の外れには4人の若者がいた。フロスト地方に来た頃の関係も性格も変わってしまった4人だが、いろいろあって、集まる時間が増えた。それは、パーティーとしての集まりではなくて二人のアルベルトとアーサーというダンジョンに侵入しようとした人の説教兼訓練であった。
「二人とも、弱いですね。こんなに弱かったんですね。」
女騎士姿のアグネスは、そう言って少し見下すような目で見つめていた。かつて自分より強いと思っていた相手が自信満々に強さを誇っていた人たちが自分より弱いなら、少しの失望してしまうものだ。
「「…………」」
いつも、強気な二人も何も言えずに黙っていた。圧倒的に技量がアグネスより劣っていることを改めて認識して、胸に言葉が突き刺さったのだ。
アグネスは、ため息をつきながら
「でもしょうがないですよ、今まで適当にやってきたつけです。何がダンジョンに挑むですか。無理ですよ。ほら、剣を振る。」
そう、茫然としている男二人に指示をしていた。アーサーとアルベルトは剣などの戦闘における技術では無かった。やっていることがチンピラの喧嘩のそれと同じだったのだ。
その様子を雪を積み上げて椅子のようにして、座って修道服を着たアイが眺めて
「…………アグネス厳しいです」
ボソッと呟きながら、少し小さくあくびをした。それから雪の椅子から降りて雪だるまを作り始めた。
氷結の魔人を倒して、フロスト地方の雪の量は減ってきたがそれでも雪だるまを作れるぐらいの雪はあった。
そんなところに
「やあ、やあこんにちは少年少女たち、ここはフロスト地方でいいのかな?」
そう、薄ら笑いを浮かべた20代後半程度の美青年の騎士姿の人物が現れた。
すぐさま、その人物に
「「「誰だ?」」」
アーサーとアルベルトとアグネスは、警戒の色を見せて、武器に手をかけていた。アイは、その人物をじっと見ていた。
「おお、やるか?」
そう薄ら笑いを浮かべた騎士が言ったところに後ろの方から少し息を切らせたその人物と同じぐらいの年齢の他の騎士がやってきて
「やめてください、ルイス様。」
息を少しきらしながら、そのルイスという人物を睨みながら、そう言った。その人物が現れた後に後ろから続々と騎士のような姿をした人物が続々と現れた。
その場にいた4人は、その人たちが帝国軍であることをすぐに察した。このタイミングで帝国軍が現れるのは、少し不気味さを感じていた。
「冗談だよ。理由なく一般人に手を出したらマーガレット様に怒られちゃうからね。まあ、理由があっても、それは理由になってないって死ぬほど怒られるけどね。それで、初めまして、皆さん、帝国軍 第1部隊 副隊長ルイス、フロスト地方に人を探しに来ました。」
その人物の言葉に何故か、アイが少し震えた。それを見たアーサーとアルベルトは警戒を強めて、アグネスは、必死に冷静さを保ちながら
「人ですか?」
そう尋ね返した。
「うん、私たちは、ロビンって言う人物をリーダーにしてる盗賊団を壊滅さえるために軍から命令を受けたんだけど。ロビンっていう人取り逃しちゃったんだよね。いや、後はみんなしっかりと殺害出来たんだけどね。」
笑いながら答えたルイスに4人は恐怖を感じた。肌感覚で分かったのだ、この相手がまともなタイプの人間でないと言うことが。だから、ロビンと言う人物がフロスト地方にいることを把握していた4人だったが、言うべきでないと感じていた。
「ルイス様、言い方悪いですよ。投降勧告に応じなかったから戦闘になっただけですからね。それだと、我々の軍の印象が悪くなりますからね。」
「ああ、そうそう。それで、何か知ってる?」
ルイスは、少し笑いながらそう4人に尋ねてきた。その表情や姿を見て4人の心は完全に決まった。もし、ここでロビンがいると言っても、恐らくギルド職員代行を今しているベルゼは、この人物を見たら引き渡しを拒否するだろう。そうなればベルゼを多分ルイスは殺すだろう。全員ベルゼのご飯にはお世話になっていたから、それだけは避けようと4人は考えたのだ。だから、声は揃った。
「「「「…………知らない(です)」」」」
それは、もしかしたら今まで一番息があった瞬間かも知れない。
「ああ、うん、分かった。これ絶対に知ってるやつだろ。じゃあ、フロスト地方の中を」
ルイスは、その4人の目を見てロビンがいることを確信してフロスト地方に進もうとしたが、その時に、4人の矛先が全てルイスに向いた。
ルイスは、笑いながら
「…………軍人に刃物を向けるわけ?人数差とか実力差分かってる?」
そう言って剣を抜いた。
それに
「「「「分かってますよ。」」」」
そう4人が言い返して戦いの火ぶたが切られた。
数10分後
戦いは終わった。その場で立っているのはルイスだけだった。ほとんど無傷のルイスのみが立っており、その正面にアーサー、アルベルト、アグネス、アイの4人が倒れていた。ルイスの後ろでは、ルイス以外の軍人たちも気を失って倒れていた。
「いや、洗脳?催眠、そんな魔法を使う人がいるなんてね。シスターのお嬢さんすごいね。でも俺には効かないけどな。それにしても、部下全員おねんねさせられるとは、びっくりだよ。本当に。まあ、でもこれで好き放題しても部下に怒られないか。」
ルイスは、倒れてギリギリ意識が残っているアイにそう言ってから、腹部に蹴りを入れた。その一撃でアイは意識を失った。
「「ふざけるな。」」
その様子を見た意識をギリギリ保っているアーサーとアルベルトは根性で立ち上がり、ルイス目掛けて剣を振るおうとした。振るおうとしたが、ルイスに腹部に拳を食らって、宙に舞い地面に叩きつけられた。そしてその二人も気を失って倒れた。
そんな二人に
「君たち、才能はあると思うよ。まあ、俺のほうが数倍才能があるけどね。」
そう言ってルイスは笑った。
それから、ノビをして軽く欠伸をしたルイスは、最後に意識が残っているアグネスを見て
「それに女騎士さんの方は、努力してて凄いと思うよ。それでも、俺には届いてないけど。まあ、負けたのはしょうがないよ、俺みたいに強い人に会ったことなかったんでしょ。」
そう言ってから、腹部に蹴りを入れた。
「それは違います。もっと強い人を私は知ってますよ。」
アグネスは、最後の意識を振り絞って、今は帝都にいるであろう人たちを思い出して、そう最後に吠えてから気を失った。
「それなら帝国軍の隊長クラスだぞ。…………まあどうでもいいや、どうせ気を失う前の最後の負け惜しみだろう。さてこいつらにとどめを刺してから。サクッとロビンってやつを殺すか。」
ルイスは、そう言って動こうとしたルイスのその歩みは何もにかによって妨げられた。ルイスの前に立ちはだかる人物がいたのだ。その人物は覆面を被っているフロスト地方の料理人であるベルゼであった。
「遅くなってすまない。」
ベルゼは倒れて気を失っている4人を見ながら、そう呟いて、それからルイスを見て
「止まれ。今の俺の仕事はフロスト地方は守ることも含まれてるからな。そんな血の匂いがしまくる人間を入れる訳にはいかない。」
そう宣言した。ベルゼがこの人物を止めたのは、4人がボコボコにされていることもあったが、目の前の人物は異常に血の匂いがしたのだ。普通の軍人の比ではないぐらいの血の匂いがしたのだ。
「何?今度は誰だよ。めんどくさいな、もう、死ねよ。めんどくさい。」
さっきの戦いで面倒になったのか、ルイスは、一撃で目の前の覆面の人物をベルゼを殺す事に決めたらしく、手加減なしの全身全霊の一振りをベルゼに向けた。
それをベルゼは剣で受け止めた。
「やはり、どんな理由であってもフロスト地方にいれる訳にはいかないらしい。」
落ち着いた口調でベルゼが言うとルイスは、笑った。ルイスは、喜んでいたのだ。今帝国軍の中でもトップクラスの攻撃を受け止めることが出来る人物などが一般人なわけがないの考えたのだ。何かの組織のボスか他の国の重要人物であるに違いないと考えたのだ。だから、この人物を殺せば手柄になると考えた。ルイスは、殺戮的であったが、国へのマーガレットの信仰は本物であったのだ。
「ははは、…………お前誰だ?まあ、いいや、ロビンの前にお前の覆面剝ぎ取って正体をみさせて貰うとするか。」
ルイスは、ロビンを殺す前の目的が一つ増えた。
「断る。」
そうベルゼ言い返して二人の戦いが始まった。
それは、ちょうど、サリの御膳試合が始めるころであった。




