御膳試合 1回戦 前編
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あれから帝国軍は聖女を誘拐した犯人が捕まったと公表された。そのおかげで混乱なく御前試合が開催されることになった。
場所は、フロスト地方チーム控え室。3人の人物が中央の闘技場を眺めていた。
「…………ライト君。」
そう、戦闘仕様のメイド服に身を包んだエマは小さく呟いた。ライトは戻って来なかった。試合が始まる日になっても、エマの心配は天元突破していた。
「大丈夫ですよ。多分、どうにかして自分の出番までには、戻って来ますよライト様は。」
それに本物のメイドだったメリッサが、そうお茶をエマに用意しながらメリッサは呟いた。
「そうですよねメリッサさん。」
それから、急いでお茶を飲んで、軽くやけどしていた。
そんなエマの様子を見ながら
「大丈夫ですよ。でもこれからは、ライト様の好きにさせすぎたらダメですよ。エマさんはライト様に甘すぎです。」
メリッサは、そう優しく呟いた。
その様子を見ながらサリが
「それだったら、メリッサもエマちゃんとライトさんに甘いと思いますけど。はい、まあ、私たちは、1試合目のノアさんを応援しましょう。」
そう言って2人を諭した。
闘技場の中央で少し緊張した面持ちでノアは立っていた。そのノアの様子を見て
「はい、まあ勝てないと思いますけど、無理はしないで欲しいな。」
そんな風にボソッとエマが呟いた。なんだかんだ言って長い付き合いなのである。心配する気持ちはもちろんあるし、心配する気持ちも合った。
「…………本人の前で言えばいいのに。エマちゃん。」
そうサリが小さく呟いた。
「それは無理です。」
エマはそう言いながら、とりあえず今はライトが戻って来ることを信じて、ノアの応援する事にした。
闘技場の中心のノアは緊張していた。学院の授業で魔術や剣術を使って戦う機会はあった。しかし、それは言わば遊戯である。本物戦いは初めてだった。
ノアの目の前には、帝国軍の第三部隊副隊長のマリカが剣を構えていた。鎧に身を包んだ30代の端麗な女性であった。見た目だけなら宮廷の一流メイドにいそうな人物であった。
マリカは、緊張しているノアに小さく笑いかけて、丁寧に一礼した。
(何処かで...)
ノアはその光景に覚えがあった。
そこに、
「負けた方は、俺が慰めてやるよ。光栄だろ。」
そんな下品な第三部隊隊長のヤジが飛んだ。会場の8割以上の人間がひいていた。すぐさま、冷ややかな視線と第1部隊隊長の叱責が飛んでいた。
マリカは丁寧に頭を下げて
「すいません、シャーロット様。あいつは、そのうち天罰が下りますから気にしないでください。」
そうノアに呟いた。その言葉には第三部隊隊長への嫌悪感で溢れていた。
「お気遣いありがとうございます。…………あの?どこかで会ったことありませんか?」
それにノアは礼で答えた。それから、少し頭に浮かんだ疑問を投げかけた。
「…………無いと思いますよ。」
それはどっちとも取れる解答だった。
「そうですか。」
(まあ、どっちでも変わらないか。うちのメイドさんの調べでは、細かな過去は何も言ってなかったからからもしかしたら知り合いだったのかもな。まあうちのメイドさんが調べて分からないなら分からないか。)
ノアは少し考えつつ笑顔で答えた。
それからしばらくして審判の
「ただいまより、フロスト地方代表シャーロット=ノア対帝国軍代表 第3部隊副隊長マリカとの試合を始める。両者準備は?」
そんな声が聞こえた。
「「よろしくお願いします。」」
その声にノアとマリカが答えた。
それを見て審判が
「では、両者向き合って、初め。」
そう声をかけて決闘が始まった。




