再会2
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学院は比較的実力主義なので、平民でも入ることが出来るがそれでも半数以上は貴族や皇族、有力な商人の家の子供であり、それなりに上品な会話がなされていた。だから、ライトが学院を出るために数人のライトの顔を知っているかもしれない生徒と出くわしそうになり、そのたびに隠れながら進んでいた。
(最悪だ。一番会いたくない人にたまたま出くわすなんて。)
ライトは数人の女子生徒集団に出くわした。それで、ライトは少し逆走する羽目になった。今までは隠れて対応していた。それは、貴族や皇族、有力な商人の家の子供でライトの顔を見たことがある人に、見つかっても最悪ギリギリ誤魔化すことが出来るからである。しかし、その人物は違った。見つかったら、100%バレる。
「すいません、皆様。少し用事があるので、失礼します。」
数人の女子生徒集団の中心にいた金髪で髪の毛をツインテールに結んだ低身長の可愛らしい容姿をした少女がそう言って、ライトが下がっていった方向に歩き始めた。
「「「ごきげんよ、ノア様」」」
そんな声を背にノアと呼ばれる少女はライトがいる方向に向かって歩き始めた。
(うそ、バレた?そんなはずはない。完全に魔力は抑えてるし、音も立ててない、魔法で姿を隠してる。普通にバレるはずがない。でも、真っすぐこっちに向かってるし。……いや、この距離なら逃げるか?)
ライトは、そう思って、急いで後方に逃げた。
そして、しばらく逃げて安堵したときに目の前に彼女は現れた。先回りされていた。
「カール=ライト。元カール=ライト。そこにいるのは分かっています。私の方が学院の構造には詳しんですよ。逃げるな。」
そう、叫ぶ少女は、シャーロット=ノア。ライトより1歳年上で、4大商家の一角のシャーロット家の次女で、ライトの元婚約者だった。
「…………久しぶりですね。ははは」
(ああ、安直に学院に来るんじゃなかった。馬鹿だな僕。)
ライトは愛想笑いを浮かべた。
「謝れ、まず謝りなさい。私に。」
そう言って、ライトに彼女は、ライトが最後に送った婚約破棄の手紙を付きつけた。
ノアは怒っていた。目を大きく開けて、ライトを睨んでいた。ライトはビビっていた。ライトにとってシャーロット=ノアは、苦手な相手だった。会うたびにいつも怒られたのだ。
『シャーロット=ノア様、いろいろあってカール家を追放されることになりました。それに伴って、あなたと婚約破棄させていただきます。ざまあ、これで名家のカール家の格を手に入れること出来ませんでしたね。ざまあ。これで一生会うことも多分ないと思います。まあ良かったんじゃないですか?だって、僕のこと嫌いでしたもんね。さようなら。』
だから、最後の手紙は完全に煽った。嫌味を書きまくった。実際、ライトは、彼女と初めて出会った時に『別に、あんたと仲良くしたいわけじゃない。ただ、カール家の格が欲しいだけ。』と言われており、それを覚えていた。前世の記憶があるライトは幼いころから、しっかりと認識出来ていたのでその言葉を覚えていた。
「流石に煽り過ぎましたね。」
ライトはビビっていた。死ぬほどビビっていた。これから一生会う予定が無かったので煽った。それで再会してビビっていた。
「……………………と、とにかく謝りなさい。」
ノアはライトに詰め寄りながら呟いた。
(何を怒ってるか分からないけど、謝ろう、謝ってここを切り抜けよう。よく分からないからとりあえず謝ろう。)
「すいません。」
ライトは頭を下げた。
ライトは頭を下げ続けていた。
「それで、何処で、何をしてるんですか今?」
それを見ながら、少し複雑な表情でノアは呟いた。
(うん?えっ、だって、えっ。ノアさんが、えっ。だって、家の格で僕を見ていた人が僕の現状を気にしている?おかしい。)
「…………どうしたんですか?悪い物でも食べましたか?」
ライトはナチュラルに失礼なことを呟いた。
ノアはしばらく停止した。それから、顔を赤くして
「別にただ聞いただけじゃない。べ、別に心配してるわけじゃないから。」
そう叫んだ。ライトはノアを誤解していた。しかし、まだ頭を下げているライトにはノアが恥ずかしがっていることも発言に多分の強めの照れ隠しが混じっていることも気が付いていなかった。
「冒険者的なことをしてます。まあフロスト地方を開拓しようって思ってますね。」
(答えて、そして立ち去ろう。)
ライトは、必死に考えていた。ライトはノアを攻撃する事が出来なかった。魔法で眠らせる事なども出来なかった。なんとなく抵抗があったのだ。
「そう。…………頭を上げて欲しいんだけど。」
ノアはゆっくりとつぶやいた。
「では、さようなら。」
(よし、逃げよう。)
ライトは、決意して、走りだそうとした。その時、ライトは腕を掴まれた。それから腕を勢い良く振り払われた。
「…………許さない、私まだ勝手に婚約破棄したこと許してないからだから………」
そう、ノアは呟いた。ライトはそれをいつも通り文面通りに受け取った。
だから、ライトは謝罪をしようとした、今出来ることはそれぐらいしかないから。
「あれ?」
その時、ライトの視界が傾いた。それもそうである、学院に侵入するためにまあまあ労働したあとでメリッサにボコボコにされたのである。ダメージが蓄積されていないほうがおかしいのである。
「えっ?ライト?ライト?」
そんな、焦るノアの声を聞きながらライトは意識を失った。




