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馬車にて3

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あれから、馬車はしばらく進んで、夜になって馬車は歩みを止めた。軍の兵士が野営の準備を始めていた。予定では、近くの街につくはずだったが、途中のトラブルもあり、野営になってしまった。フロスト地方を抜けて、少し寒さが残るが、空には美しい星が輝いていた。

「ライト君、ご飯の時間らしいですよ。」

そう、寒さが収まったことで、積極的に活動し始めたエマがうっきうきで呟いていた。『フロスト地方では寒くても活動的だろ』ってライトが言ったが、『帝都に合わせて、少し通気性の良いメイド服を着てきたから寒かったんですよ。ライト君。」そう返されて、『気が早いでしょ』とライトは言おうと思ったが、『メイド服の差に気がつかなかったんですか?ライト君』的なことを言われていろいろ言われることを察したライトはそれ以上の追及をやめていた。


「そうみたいですね。エマ先に行って良いですよ。サリさんのことよろしくお願いします。」

そう、少しテンションの高いエマを見送ったライトは、サリやエマ、帝国軍の護衛団が食事をしている場所とは逆の方向に歩き始めた。


ライトが向かった先には息を切らせて倒れている集団がいた。それは、ライトが拘束した盗賊団で、ほとんどの人は、疲れで気を失っていたが、リーダー格の右腕さんは意識を保っていた。

「はぁ、はぁあ、はぁあ。卑怯な兄さん、食事のじかんじゃないのか?」

息を切らしながらライトにそう話しかけた。


「そうですけど、少し聞きたいことがあって。ああ、食事は盗賊団の皆さんの分も、後でちゃんと用意してると思いますよ。言っておいたので。」

ライトはそうつぶやくと


「後で良かった。こっちは、走らされて、死にそうなんだ。聞きたいことってなんだ?」

そう笑ってリーダー格の右腕さんは笑った。


「皆さんはどうして盗賊してるんですか?」

ライトは、知る必要があると本能で分かっていた。


「盗賊か…………そうだな、俺らにはそれしか選択肢がなかった。」

右腕は笑った。それは、悲哀の笑みと自尊の笑みであった。


「選択肢ですか。」

ライトは静かにそう返すしか出来なかった。


「俺らは孤児なんだ。孤児は、選択肢がない。勉強をする機会もない、生きていくには、自分の身を売るか、犯罪者になって誰から奪うかしかない。そうでなければ、誰かに捕まって奴隷にでもなるか、それ以上の悲惨な末路を追うか。まあ、貴族には分からない話だろうが。」

これが、現実である。ライトは恵まれていた。幸運であった。この世界には帝国には法律がある。しかし、実態は貴族や王族、聖職者などの為のものであり……これがこの世界の現実だった。ライトは、世界の理不尽さなんて知っていた、今の状況が可笑しいということを、何処かで分かっていた。そしてそれを簡単に解決出来ないことも知っていた。


「それで、盗賊…………義賊になったんですか?」

ライトは、そう小さく呟いた。


「まあ、それとロビン様に誘われたからな。腐敗した貴族や王族を正そうって」

盗賊の右腕は、そう言って小さく笑った。


「…………まあ、君たちが信念とか、正義を持って活動してるのは分かりました。」

ライトは、小さく呟いた。ライトには、この人たちが悪い人だと思えなかった。思えなかった、でも……


「卑怯な兄さん見逃してくれるのか?」

そう、笑うリーダー格の右腕は多分ライトの答えを分かっていた。それにリーダー格の右腕の人物は覚悟ぐらい持っていた。


「まあ、それはそれ、これはこれですね。盗賊はやっぱり犯罪だからなどんな理由があっても、でも、罪を償ったら、フロスト地方に来てください。歓迎しますよ。」

ライトは、そう言って、空を見上げた、少し目に汗を浮かべて。それが、今のライトに出来る精一杯の行動であった。今ここで、この人物を見逃す事は簡単に出来た、でも、それはライトの自己満足であり、何も解決していないことをライトは知っていた。


「それは、そうだな。その時は、ロビン様を誘って行ってやるよ。フロスト地方に」

そう、リーダー格の右腕は、笑った。


しばらく無言の後

「ライト君。早く来ないとご飯なくなりますよ。」

そんなエマの声が聞こえた。


「では、」

そう言い残してライトはその場を去った。




ライトはゆっくり歩きながら隣のエマに

「エマ、もし、僕が帝国と敵対して、帝国を打倒して共和国を作りたいって言ったらなんて言いますか?」

そう呟いた。


「何をライト君が言ってるか分からないですけど。私は、手助けしますよ。」

ノータイムでそうエマが答えた。


「………どうするのが良いんだろうな。」

ライトは分からなかった。


エマはライトの顔を覗き込むと優しく微笑んだ。それから、

「そうですね。ライト君。良くわからないですけど、まずはライト君が出来る範囲から頑張ればいいんじゃないですか?」

そう呟いた。


「そうだな。とりあえず、フロスト地方を僕も発展させたくなったよ。」

ライトは、とりあえず、フロスト地方を良い場所に出来るようにしようとそんなことを考えた。


「頑張りましょうね。ライト君」

エマは優しく答えた。

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