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フロスト地方の始まり1

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氷結の魔人の騒動やロイの騎士の騒動などから大体1週間が経過した。フロスト地方は新たな始まりの予兆が見えた。そんな中でもライトとエマは相変わらずだった。


とりあえず、ライトとエマが突き破った屋根を板で塞ぎ、応急措置を済ませたギルドの中でライトとエマは、のんびりとお茶を啜っていた。

「エマ、農業でもしませんか?」

唐突に突然ライトはそうつぶやいた。


「ライト君が何かにやる気なんて珍しい。それで、前に作ろうとしてた魔法道具はどうなったの?」

隣で座っていたエマは、ニッコリと笑いながらライトに答えた。


ライトは固まった。魔法道具は、いろいろ試行錯誤を重ねて見たりした。そしてそれは全て失敗していた。だから心が折れた。だから、一回止める事にした。別に農業を始めることが現実逃避のつもりはライトには無かったが、深層心理で現実逃避をライトは行っていたことは否定出来なかった。

「…………まあ、それは、そのうち頑張るかな。」

少し遠くを見ながらライトは答えた。


「…………うん、別にさ、農業するのはいいけど?土地はあるの?それに農業とか分からないでしょ。私は知らないよ、ライト君。」

見切り発信で話したライトにエマは、冷静にそう返答した。


「…………だよね。」

その通り過ぎてライトは、何も言い返せなかった。


「それでなんで農業なのライト君。」

エマの質問は至極真っ当なものだった。ライトと農業など結びつかないのだ。


「いや、こういう時に農業は鉄板かなって」

ライトはそう答えた。ライトのイメージは、前世の時に得たイメージは異世界スローライフ=農業だった。そのイメージで農業が鉄板だと思っていた。


「そう?ライト君。」

しかし、エマには、そんなイメージはないので話があまり嚙み合っていなかった。


「そうだよ、エマ。まあ、農業はボチボチするとして、どうして今日はこんなにギルド静かなの?」

だから、ライトはいろいろ無理のあるこの話題を諦めて話を変えた。


「ライト君、話聞いてなかったんだね。まず、サリちゃんとベルゼさんは、氷結の魔人がいた神殿の調査に向かったらしいですよ。」

エマがそう答えた。ライトは話を聞いていなかった。というか、エマが話を聞いているときは大抵ライトは話を聞いていない。その逆にライトが話を聞いているときは大抵エマが話を聞いていなかった。


「ああ、なんか神殿がフロスト地方の山中にあったらしいね。ロイの騎士団の人々が見つけたとか?言ってたやつでしょ。」

ライトはそう答えた。


「それは聞いてたんですね。ライト君。」

ライトは聞いてなかった。


「いや、あれダンジョンじゃね。って思ったから覚えてた。フロスト地方にダンジョンがあるならそこでしょ。それで、僕らはギルドで留守番を任せられたんですね。」

そうライトは答えて伸びをした。ライトはダンジョンを攻略するという目標をしっかりと覚えていた。


「そう、それで他の人は、ライト君がぶん投げたお金でフロスト地方の建物とかを新しくするために周辺の調査とかしているって、それ以外の人はフロスト地方の物資が無くなってきたから街まで物資を調達しに行ってるって。アイちゃんはそこの護衛としてついて行ってるって。」

しっかりと話を聞いていたエマがそう説明をしていた。


「それで今日は、人がほとんどいないと」

そう呟いて、ボーっとするライトに


「そうだよ、ライト君。暇だね。」

そうエマが答えて


「暇だね。エマ。」

そんな風にライトがさらに同調した。


そんな時にギルドのドアが勢いよく開いた。

「ライト、約束を守れ。」

「ライト、貴様に決闘を申し込む。」

そんな風に、脳筋の武道家と未来の英雄がそう叫んだ。今日2回目の出来事だった。


「そこ転送魔方陣あるよ。」

ニッコリとライトが笑った。


「「おいふざけるな。」」

そんな二人の叫び声を横目に


「暇だね、ライト君」

そう呟くエマに


「そうだね。」

ライトは同調した。


「「暇なら…………」」

そう言いかけて、二人はその場から消えた。ライトは暇だった、暇だったが、暇でも面倒なことは面倒だった。そんなことをしながら二人はぐうたら、喋っていた。



それからしばらくして、

「今日は冒険者の仕事は出来そうにないですね。」

そんな風に騎士の姿をしたアグネスがギルドに入ってきた。


「騎士アグネスちゃん。」

そうエマが言うと


「ご機嫌よ、エマ姫。それとライトさん。」

そうアグネスが答えたので。


「「ご機嫌よ。」」

ライトとエマは声をそろえて返答した。


そんな挨拶を交わした後にアグネスは文章をライトに手渡した。

「ああ、そうだ。これをそこで受け取りました。国かららしいです。それと街の近くで届けた人が待機してます。」

それを聞いてライトとエマは顔を合わせた。帝国軍を名乗る偽物が少し前までいたので、疑い深くなっていた。


「帝国…………これは本物かなライト君?」

エマは疑っていた。


「これが偽物だったら、大笑い出来ますね。」

それに対してライトは笑っていた。


「「出来ないよ」」

そんなアグネスとエマの声が重なった。


「とりあえず、サリさんが帰ってきてから読みましょうか。」

そうライトはつぶやくと、背伸びをしてから、本を取り出して読み始めた。

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