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囚われのライト2

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エマサイド


雪の止んだフロスト地方で足を挫いたエマは、運ばれていた。

「ライト君、大丈夫かな?」

お姫様抱っこで抱えられた彼女はフロスト地方の街の方を見ながら呑気に呟いていた。


「あなたも怪我人ですよ。エマさん。自分の心配してください。」

エマを抱えているのは、アグネス、ライトとエマに恩がある女騎士だった。かつて未来の英雄に心酔していた彼女であったが、それはもう過去の話であり吹っ切れて明るく精神は強くなっていた。


「ライト君、心配だからさっさと運んで下さい、お願いします。」

エマは抱えられたままそんな風に呟いていた。彼女は飛ぼうと思えば飛んで移動する事も出来たが、そんな気力も体力も無かった。それに少し浮かれていた。


「お願いされましたけど。なんか不思議ですよね。誰か迎えに来そうなものなのにですね。」

アグネスの呟きはごもっともであった。もしもの為にエマの近くにアグネスをサリは配置したが、それはもしもの時のためであり、ただ何事も無く勝利で終わっていればすぐに冒険者の誰かが迎えにやって来るはずだった。


「…………なんかあったんじゃない?ライト君に。急いでアグネスちゃん」

そうエマが言ったが笑いながらであったので、そこまで緊迫感が無かった。勝利に浮かれていて、普通に偽帝国軍の存在を忘れていた。


「急ぎますね。エマ姫。」

アグネスも普通に忘れていたので、そう言ってお姫様抱っこのまま指示を出すエマにそう言って笑っていた。


「急ぐのだ、アグネス騎士」

それにエマはそう合わせて返した。二人はフロスト地方が割と危機なのを知らずに呑気に帰宅していた。

 彼女達が偽物の帝国軍の存在を思い出して急いでフロスト地方の街に戻るまでにはまだ時間が必要そうだった。




サリサイド


フロスト地方の街近くの森の中に彼らはいた。ライトが隙を作った時にギルド近くにいた人々は逃げて、そして杖を持つ作戦のため分散していた人と合流しながら逃げていた。


「相手は、あまり戦闘力がない避難しているフロスト地方の住人をライトを連れて襲撃して人質に取るか、それともギルドにライトを人質に立て篭もるか。まあどちらかを選んで来るだろうな。」

歩きながら小さな声で覆面の料理人ベルゼがつぶやいた。彼の得体の知れない感じは、あったがサリが信用していることから冒険者の誰も文句を言う事は無かった。それに料理が美味しいので誰も文句を言わなかった。


「ガハハハ、俺もそう思う。気が合うな料理人。流石に地の利がこちらにあって、疲弊しているとはいえこちらの数が多いから、直接お嬢が持ってる権利書を狙いには来ないだろうな。」

ブライトはそう少し真面目な顔で返事をした。


「ライトさんはここまで予想して,守る為に私に権利書を押し付けたのでしょうか?」

そんな会話を聞きながらサリはそんな事を呟いた。そんな事は恐らく無かったライトの行動はただの思いつきであった。


「多分、違うだろ。守るだけを目的ならアグネスさんに預けたおけば良いはずだ。」

そうベルゼが正論を言いながら当たりを見回し始めた。


「確かに…って事は私は本当に領主に…」

サリはこの後に起きるかも知れない未来に動揺していた。普通,平民が領主になる事はない。もちろんライトとエマはそんなこと知らないし、そもそも平民とか貴族とかそういう括りを全く意識していなかった。


「それは後で考えれば良いお嬢」

想像と動揺でワナワナしているサリをブライトは諌めると、その言葉を聞いてサリは深呼吸をして指示を出した。


「そうですね。…ブライトさん、二手に分かれましょう。」

人を二手に分けることにリスクはあったが、それでも動かない訳にはいかなかった。


「そうだな、お嬢。こっちで散らばってる残りの冒険者を集めて、フロスト地方住人が避難している場所に行く。」

そうブライトが言うと


「では、私は残りの冒険者と一緒にライトさんの救出の機会を伺います。」

そうサリは頷きながら、そう答えた。


その会話の間あたりを見渡していたベルゼが

「…その必要はないらしい。あっちからこっちに向かってきてる。ほぼ全員いるな。」


そう呟くと今までの会話が無駄になったからか、予想が外れたからか

「「…………」」

当たりは全てのその場にいた冒険者は無言で黙った。


「ここら辺りで散らばって、罠をかけて返り討ちにしましょう。ブライトさんは残りの冒険者を集めて来て後から援護で行きましょう。うん、ライトさんは自力でなんとかするでしょし、避難所の方には人がいます。」

サリはそう指示を言い直した。少し恥ずかしいミスだが、作戦を変える事が出来る柔軟性は、支持する人として重要な要素であった。


「あいつらにフロスト地方冒険者の力見せてやるぞ」

そんなかけ後を誰かがすると


「おお」

付近にいた冒険者は小さな声でそう答えた。


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