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氷結の魔人とフロスト地方1

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「誰か、誰か来てください。」

凍えた風が入ってくるギルドの建物中、いきなり入って来て、半身が凍った青年が叫んだ直後、外に言ったサリが叫んだ。

それを聞いて厨房で小競り合いをしていた。ライトとエマと覆面のベルゼが急いでそこに走った。

さっきまで吹雪いてが、雪は収まり視界が少し良くなっていた。



「「なにこれ」」

ライトとエマの声が重なった。

そこには異常な光景が広がっていた。フロスト地方の雪山から向かってくるそれが見えた。雪の塊によって構築された馬鹿みたいに大きい雪の巨人が見えたのだ。遠くで正確な大きさは分からないが、それでもそこら辺の大型の魔物の比ではないぐらいの大きさであり、それは魔物というよりは、厄災。人が抗うには大きすぎる何かだった。


4人の反応はそれぞれ異なっていた。

「逃げるぞ、ここはもうダメだ。」

そう仮面を被ったベルゼはつぶやいた。その判断は早かった。


ライトは、少し笑いを浮かべた。これは、実力を過信していた自分への嘲笑であった。ライトとは、正直油断していたのだ。過信していたのだ。厄災級の魔物と言っても自分とエマがいればどうにか出来るだろう。そう考えていた。でも現実は違った。

(大きさは、余裕でビルぐらいあるのかな?ああ、ビルってあんなサイズあったりしたな。あんなに大きい何かを見たのは久しぶりだ。どこにあんなん隠れてたんだよ。あれが絶対に厄災級の魔物だよな。)

「ああ、本当に全部想定外の予定外だよ。マジで。」

ライトはそう叫びながら、目算でそいつとの距離を考えていた。


エマは、寒さで少し震えていたが落ち着いていた。彼女にはライトについていくという覚悟があった。それでも寒いので魔法で火を起こして暖を取っていた。


サリは、震えていた。恐怖で震えていた。彼女は普通の人間だった。普通に親切で、普通にまじめで、普通にお節介で、普通に優しくて、普通に戦いに恐怖を覚えていた。彼女は魔術の研究の才能や高い学力を持っていたが、魔法使いの才能がなかったのは、恐怖で判断が動きが鈍るからであった。ただ震えていた。


(あいつが、ここに到着するまでの時間に逃げ切れるか?この町の人は。…………まあ、あの感じの進行速度だと無理そうだな。あの大きさならもっとゆっくり動いて欲しい。なんでまあまあな速度でこっちに来てるんだよ。)

ライトは、大体の距離と移動速度を把握したのちに

「エマ、寒さ、大丈夫?」

ライトは、そう身体をほぐしながらつぶやいた。一つ、覚悟を決めた。


「正直大丈夫じゃないけど、動けるよ。」

エマは何かを察したのかそう言いながら伸びをした。彼女は寒さに弱かった。それは彼女が竜人族であったことが関係していた。でも動けない事は無かったし、それにここでライトを手伝わない選択肢など存在していなかった。


「ありがとう、エマ。それじゃあ、時間を稼ごうか。あれには多分、勝てないし。まあ本気で戦ったら命が危ない、でもこのままだと、この町の人は避難出来ないからあいつの足止めをしよう。」

ライトは、魔法1本の杖と3本の剣を出した。それから、二本の剣をエマに投げ渡した。


「分かったよ、ライト君。」

エマは受け取った剣を構えながらそう答えた。


「…………お二人でも、危ないです。」

そうサリがつぶやいた。彼女は恐怖と後悔をしていた。氷結の魔人を倒せると思って安易に力を借りようとしていた事をその考えの浅さを。


「まあ、危なくてもこれが、今の最適解ですからね。」

ライトは、そう笑いながら呟いた。ライトも怖さは合った。災害に相対して恐怖しない訳がない。でも、それでも結局いろいろあっても、いろいろ言っても根っこの部分はお節介で、自分が何が出来るのに、自分が動けば助かる人がいる状況で最後の最後には動いてしまう生き物であった。


「じゃあ、ライト君。行きましょうか。」

エマもそんなライトに影響を受けていた。


「そうだな。さっさと時間を稼いでさっさと逃げて、その後は、暖かい場所に旅行でもしましょうか、エマ。」

それから、元々使っていた普段、使用していた安い剣を魔法でしまいさっき出した剣を腰に構えた。


そのライトとエマを見て

「こちらで避難の方はしておく。」

そうベルゼが言うと


「出来る限りはやく避難してください。それと、その凍っている人から何かを引き出せたら、出来るなら何とかして情報を伝えてください。」

そう言うとライトとエマは地面を蹴って、氷結の魔物の方へ向かった。


動きながらライトとエマは軽く話した。

「ライト君、作戦はどうしますか?」


「作戦はプランGにしましょう。」


「了解です。ゴリ押しですね。では、コスパは良くないですけど火力を上げていきますよ。」

エマがそういうと彼女の眼は紅く輝き普段は邪魔にならない程度の大きさにしてある翼が大きくなった。それから彼女の周りを炎のオーラが現れた。その姿は幻想的で美しかった。


「じゃあ、僕も『模造竜人化』」

そうライトがいうと、ライトの背中にドラゴンの翼のようなものが現れて、エマと同様に周りに炎のオーラが現れた。


「頑張っていきましょうか。私は右から行くからライト君は左からね。」


「では、やばくなったら逃げるって方針で。」

そう言って凄まじい速度で二人は氷結の魔人へ向かった。


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