ライトとエマとプレゼント1
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その日は、寒いフロスト地方の中で特に寒かった。その日、ライトは、一人悩んでいた。
時間を少し遡る。
ライトは、エマとギルドにやってきたが、寒すぎてギルドの仕事をする気力もなく、ボーっとしていた。
「それで、いつなのかな?厄災級の魔物の討伐は?」
あくびを噛み殺しながらライトは目の前でスープを飲んでいるエマに尋ねた。
「そうですよね、ライト君。調査にしては時間がかかりすぎですし、人手が足りないなら早く帝都とかに助けを呼びに行ったほうがいいですもんね。」
スープを飲むのをやめてエマは、そんな風に答えた。
「そうだよね、それに今日寒いし」
ライトは、外の極寒に思いをはせながらあくびで濡れた目をこすりながら呟いた。
「寒いのは関係ないでしょライト君。」
「まあ、でも寒いじゃん。」
世界でトップクラスに中身のない会話をエマとライトは繰り広げていたが、その時にエマは、思い出したように手を叩いた。
「あっ、そういえばライト君、この前私が剣術勝負で勝ちましたよね。」
エマは、少し前に行った約束を思い出したのだろう。笑顔でライトに向かってそう言った。
「おめでとうございます。」
ライトは、とりあえず、褒めてごかまそうとしたのか、小さく手を叩きながら呟いた。
「それで、私のお願いを聞くって話があ」
そう、エマが言いかけている途中で
「記憶にありません。」
ライトは真顔でまっすぐとエマを見ながら言葉を放った。
「ねえ、ライト君。私のお願いはなんか私にプレゼントを下さい。」
少し、膨れ顔で、強めの口調で言うエマに対して
「記憶にありません。」
NPCのように、真顔でライトは答えた。
「約束は守りなさいよね。ライト君。」
正論だった。
「…………いや、その」
(このまま、忘れてると思ったのに。まあ別にいいけどさ、なんか面倒ごとだったらな。それになんかこの前の戦いで負けを認めた感じで嫌だし。)
そんなことをライトは思っていたが、戯言で、実際負けていた。
エマは、作戦を切り替えることにした。
「私を捨てるんですか…………かいがいしく着いてきた私を…………」
そんな風なことをわざと大きな声で噓泣きをするふりをしながらつぶやいた。
「………声大きいし、言い方。別について来なくても良いって僕は言ったからね。」
ライトも素直に約束を守って、エマの頼みを聞けば良いのだが、なんとなく引くに引けなくなったのでそんな風に返した。
「でも、あの時は、着いてきてって目をしてましたよ。ライト君。それに着いて来なかったら恋しくて泣いてると思いますよ。」
エマは、ウソ泣きをやめて、ライトをガン見しながらつぶやいた。
「…………泣きはしない。」
しばらく、悩んだ後に、ライトはそう言うと
しばらく無言でエマは、ライトを見て
「ともかく、私のお願いは、ライト君、私になんかプレゼントを下さいって事です。…………私、サリさんの仕事手伝ってきます。」
そう言いながら席を立った。
そんなことがありライトは悩んでいた。
(何が良いのか、分からない。そもそもプレゼントってアバウトすぎる。なんだこの無理難題、がくや姫かよ。)
そこに、少し用事があって、ギルドの正面に出てきた、サリが通りがかり、悩んでいるライトに対して
「えっと、ライトさん。他の人に聞いて見れば良いんじゃないですか?」
そんなことを言ったので、ライトも参考までにといろいろな人に話を聞いてみることにした。
ケース1 陽気な冒険者おじさんの場合。
「一つ、質問しても良いですか?」
「どうした、ライト。そんな暗い顔して」
ライトはまず、近くにいた陽気なおじさん、ブライトさんに尋ねることにした。
「ブライトさんって結婚してますか?」
「ああ、それがどうしたライト」
不思議そうに陽気なおじさんは首を傾げた。
「奥さんへのプレゼントとかどうしてますか?」
「ガハハハッ、すまん用事を思い出した。」
そう言ってはやあしで何処かに去っていった。その顔はいつもの陽気なおじさんの幹事はなかった。参考にならなかった。
(よし次の人に聞こう。)
ケース2 性格が変わった女騎士姿とそのストーカーの未来の英雄の場合
「エマさんへの、プレゼントですか?私には分からないですけど、ライトさんが必死に考えれば何でもいいと思いますよ。」
そう、通りすがりのかつて気が弱かった女騎士が答えた。ちなみに名前は、アグネスであり、ライトはエマから間接的に聞いて知ったりした。
「はぁあ」
(参考にならないな、まあしょうがないか。)
「それより、私はライトさんとエマさんにしっかりお礼がしたいですね、だから何か困ったことがあったら言ってください。」
アグネスは、彼女を凝視してライトを睨みつけている未来の英雄を軽蔑の目で見ながらつぶやいた。
(何があったんだろうか?)
ライトはそんな風に考えつつも、触れればダルそうなので、無視することにした。
「まあ、僕らが困ってそうな時にたすけてくれれば良いです。困っているときはお互い様なので」
「それなら、私にしつこくつきまとってくる、あのボンボンをどうにかしてくれませんかね?」
アグネスさんは笑顔でそうつぶやいた。
「…………僕らが困っているときにキッチリ助けるだけで大丈夫です。」
(関わりたくない。)
「ああ、冗談です。あれは私がなんとかします。そうですね、何を貰うかも大事ですけど誰から貰うかも大事じゃないですかね。」
そう言って、こちらを見ている未来の英雄の方へ向かって歩いて行った。ちなみに名前をアーサーと呼ぶらしいことをこれもエマからライトは聞いていた。
(次の人に聞いてみるか。)
ケース3 脳筋の武道家の場合
「いや、今日はお前に挑戦しないから。流石に俺でも今日の森は寒すぎて死ぬ。」
ライトが本題を尋ねる前に武道家風の青年が何処かに行った。ライトは、ほぼ毎日、戦いを挑みにやって来る武闘家風の青年、アルベルトを毎日、魔法で森に飛ばしていた。ちなみに名前はライト本人が聞いた。
(…………日頃の行いかな?はは…………なんの成果も得られなかった。まあ結局自分で考えるしかないのか。)
「ライト様、お疲れ様です。何か食べますか?」
そんな時に、ギルドにはあまりに合わない、シスターの姿をした、まともになってきた、何かいろいろ事情がありそうな少女がライトに話かけてきた。
「…………あっ」
ライトは一つ思いついた。
「どうか、しましたか?私何かご迷惑を?」
まだ、彼女が完全に落ち着いた状態になるには時間が必要であった。
「今、ベルゼさん暇ですかね?」
ライトは、そう尋ねた。何故、ライトが覆面の料理人の状態を気にしているかはライトがエマへのプレゼントを何にするかに関係している。
「暇だと思いますよ。」
そう、アイの答えを聞いてライトは立ち上がった。




