フロスト地方への来訪者1
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しばらく平和な日々が過ぎた。ライトは、冒険者の仕事を適当にしながら、ギルドで本を読み、エマも同様に冒険者の仕事を適当にしながらギルドでサリの手伝いをしていた。
その日、朝ギルドに行くと人がいなかった。
「どうして、今朝はこんなに人が少ないのエマ。」
ライトはあくびを噛み殺しながら呟いた。
「ライト君、何も聞いてなかったんですね。今日は、ついに帝都から軍が来るらしいですよ。」
笑いながらそう言うエマをライトは見ながら
(ああ、なんかそんなこと言ってたな。)
そんな風に思いもう一度あくびをした。
それから人がいないギルドをグルリと見た後に
「いや、それとギルドに人がいないのに何が関係あるんですか?サリさんもいないですし。」
そうライトは呟いて伸びをした。
「帝国軍を見に行きたいみたいですよ。サリちゃんは、お仕事ですね。」
エマはそう説明しながら、釣られてあくびをした。
それからしばらく無言でゆっくり伸びをしながら見合っていた。ライトとエマにはゆっくりとした時間が流れていた。
「ご機嫌よ、エマ様、ライト様、何かお食べになりますか?」
そこにこのギルドには似合わない修道服を着た人物が訪ねてきた。それなりにまともな状態に戻っていた。この前までは、狂気的にライトを信仰していた彼女であったが、それなりに普通になっていた。
「大丈夫ですよ、アイちゃん。」
エマはそう笑いながら答えていた。
(なんで、エマは、しれっと仲良くなっているのだろう。エマに対してめちゃくちゃひどいことを言っていたこととかは知っているのに、『まあ、これから仲良くすれば良いよ』ってなんというか、能天気というか、まあそこがエマのいいところなのかも知れないけど。)
「そうですか?では、失礼します。」
そう言ってアイは一礼して去っていった。
「ああ、じゃあ、今日は冒険者の仕事は出来ないの?エマ」
ライトは思い出したようにそう呟いた。二人は仕事選びを全てエマに任せていた。
「まあ、出来ないこともないと思うけどね、ライト君」
エマはにっこりと笑顔を浮かべた。
「ふーん、まあじゃあ、今日はお休みにしましょう。久しぶり、剣の稽古でもしましょ。」
ライトはふとメリッサの顔を思いだしたのだ。そして、怒られるイメージを思い浮かべた。
「ああ、ずっとサボってましたもんね。ライト君魔法は無しですよ。」
そう、エマはニコリと笑った。
「それじゃあ、僕勝てないですよね。」
ゆっくりと笑うライトにエマは
「大丈夫ですよ、手加減するので、ライト君。魔法使えないとひ弱ですもんね。」
ニコニコしながらファイティングポーズを決めた。それは、煽りだった。完全に煽り行為だった。
ライトはエマとしばらく向き合い、笑顔を浮かべた。
「…………手加減なんていらないです。」
ライトはエマの挑発に乗った。
場面転換
ライトは雪の上で空を見上げていた。木刀を手に握りしめて、ライトの顔を覗き込むエマと目が合っていた。
「ふふふ、ライト君が純粋な武術で私に勝てる訳ないんですよ。」
上機嫌にエマは、笑った。その理由は、その後にライトを煽り続けて、先に10回負けた方が勝ったほうの言うことを聞くという約束をしていたのだ。そして、エマがストレートで10回勝った。
「…………まだ、もう1回。」
ライトは、悔しがっていた。
「まだ、諦めないの?もう、約束は破棄になりませんよ。ライト君。魔法を使わないければ、私のほうが強いんだよ。」
エマは、上機嫌にライトを煽った。
「いえ、約束は、まあもう守ります。でも、まだ本気を出せてないので、やっと調子が出てきそうなので」
嘘であった、ただの強がりである。ライトは、そういいながら立ち上がった。
「まあ、いいよ。何処からでもかかってきて、ライト君。」
エマは、木刀を構えた。
ライトとエマの身体能力には圧倒的な差があった。ライトの魔法の技量により二人の実力は同程度であったが、魔法を使わなければ、ライトの武術戦闘能力は、帝国軍の一般兵より少し強い程度、ライトの強さは魔法を上手く使うところにあり、魔法なしだと大したことはなかった。一方エマは、使える魔法は炎魔法のみであり、彼女は生まれながらの身体能力と格闘センスがほとんどの強さを占めていた。
「…………まあ、今日はやめておきましょう。」
(何処から攻撃を始めても勝てる気がしない。僕が木刀でエマが素手でも魔法なしでは勝てる気がしない。)
ライトはそんなことを考えていた。
「お二人とも探しました。」
そんな、ところにサリが現れた。走って来たのか息を切らせていた。
「どうしたの?サリちゃん。」
エマはそう木刀をライトに渡しながら尋ねた。ライトは貰った木刀を魔法でしまった。
「お二人も、厄災級の魔物 氷結の魔人、討伐作戦の概要聞きますよね。」
そう、サリが言うと
「…………」
「…………」
無言でライトとエマは目を合わせた。二人は正直面倒だと思っていた。後から要約された話を聞きたいと正直思っていた。
「お二人で目を合わせて少しめんどくさいな、なんてアイコンタクトを取ったのは分かりますけど、少し聞きにきてください。」
サリは、二人の様子を見て、察してそうつぶやいた。
それを聞いて再び、ライトとエマは目を合わせたのちに
「…………行きましょうか、ライト君。」
そう、エマが笑い。
「まあ、一応手伝うなら話を聞いた方が良いですもんね。」
そうライトが笑った。




