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フロスト地方の事情3

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ライトが本を読むのを妨害されていた時と同じころ、ギルトの応接室兼控え室兼作業スペースでエマとサリが世間話をしながら作業をしていた。

「そう言えば、サリさん。雪下ろししましたよ。」


「それは良かったです。大変だったでしょ。」

そうサリは言葉を返した。


「大変でした。まあ、屋根が落ちてくるよりマシですからね。本当は魔法で燃やしちゃいたいけど、それも出来ないから、大変ですね。」

ライトとエマが屋根の雪を魔法で燃やさなかったのは、サリに忠告されていたからである。言われなければ燃やしかねない。


「まあ、慣れますよ。それに厄災級の魔物を倒せれば雪もマシになると思います。」

二人は手を動かしながら話続けていた。


「倒さないとですね、私も頑張りますよ。それで、少し聞いても良いですか?サリさん。」


「何か分からないことありましたか?あくまでお手伝いなので、分からない部分は放置で大丈夫ですよ。」


「ああ、仕事の方じゃなくて、聞きたいのはどうしてそんなに厄災級の魔物を倒した

いんですか?」

言葉を発した。エマは興味があったのだ、なぜ、サリが災厄級の魔物を倒したいのかを。どうせ戦うなら理由を知っておきたいし、知っていた方がやる気が出るものだ。


「ああ、そっちですか?少し長くなるかも知れないけどいいですか?」

サリは笑顔でそう言うと


「もちろん大丈夫です。私はライト君ほどせっかちじゃないので。」

そう笑いながらエマは答えた。


サリはそれを聞くと作業していた手を止めて、ゆっくりと深呼吸をしてから話し始めた。


『とあるギルド職員のお話


 昔はフロスト地方が嫌いだった。田舎だし、寒いし、むさ苦しいおじさんはおおいし、うるさいし、さびれているし、だから勉強をして帝都に行きたいと思った、思っていた。


 母は私が小さいころに亡くなって、父は、ギルド職員として働いていたちょうど、今の私みたいに。外には出たかったけど、父に迷惑をかけたくはなかったから必死に勉強した。そのおかげで、特待生として入学することが出来た。まあ出来たのは勉強だけで、他はダメだったし。まあ、そこで、天才に負けて挫折することになったり、その天才に背中を押されたり、そんなことがあったけど、それは、本筋と関係ないから今は省略して。私が学院に入学して、卒業して、帝国魔術研究所に就職して、1年したころ、父から、正確に言えば父の友人のブライトさんから『父が亡くなった』という連絡が届いた。


 だから私は、急いでフロスト地方に戻った。気が付けば、仕事と場に何も連絡をせずフロスト地方に向かっていた。帰ってきた相変わらず、フロスト地方は田舎だし、寒いし、むさ苦しいおじさんはおおいし、うるさいし、さびれていた。ブライトさんから詳しく聞いた話では、父は魔物に殺されたらしい。もっと、正確に言えばある魔物の生態を調査しに行って、そのまま帰ってきてないらしいということを知った。まあその魔物が、災厄級の魔物なんですね。


父がどうして、調べていたのか気になって、私は父の遺品の中をいろいろ探した。うん、まあそこからいろいろあって、父が調べていたものがフロスト地方の天候で、父の目的が夢がこの街の活気を取り戻すことだと知った。そこで、私は、2つの事に気が付いた。いや、いろいろ勉強して気が付くのが遅かったのかも知れないけど、フロスト地方は、確かに地理的に寒いはずだけど、それにしても寒すぎるということと厄災級の魔物は、周囲に大きな影響を与えるってことを知識として知っていた。


そして、いろいろ悩んで決意したんです。私は父に代わってこのギルドで働いて、厄災級の魔物を倒してこのフロスト地方を発展させることを。それに、昔はフロスト地方が嫌だったけど、でも別に悪いところじゃないって気が付いたのでね。』


話し終えると再びサリは深呼吸をした。それからエマの方を見て

「ちょっと、つまらなかったかな?」

そうハニカミながら、再び作業を再開した。


「そんなことないです。頑張って、その厄災級の魔物を倒して、フロスト地方を発展させましょうね。ライト君も何だかんだ言って頑張ってくれますよ。やる気にムラがありますけど。」

エマは、ファイティングポーズをとりながらそう意気込みを語った。エマは、正直、父親の事とか、そう言うことは、よく分からない事も多かったが、ただ、熱意とかそう言うものはしっかりと感じていた。


「ありがとうね、エマさん。それじゃあ、私も聞いていいかな?」


「何ですか?」

エマは首を傾げて呟いた。


「エマさんとライトさんはどういう関係なの?」

そうサリさんが言うと、エマはしばらく黙り込んだ。


それから、顔を髪の毛の色と同じように赤くしながら、少し照れ笑いしながら話し始めた。

「…………そうですね、うーん。私は、ライト君の未来のお嫁さんです。その予定です。ライト君の婚約者もいなくなって、私が第一夫人になれますね。まあ、ライト君14歳なのでまだまだ先の話ですし、これは、理想ですけど。まあ、一番大切な人です。」


「青春だね。ふふ」

少し大人の優しい笑顔でサリは呟いた。


「ライト君には、言わないで下さいよ。」

エマは手で顔を仰ぎながらそう呟いた。




その時に、

「エマ、助けて」

そんなライトの声が聞こえた。


「すいません、サリさん、ライト君が呼んでるので」

そう言いながらエマは立ち上がった。


「うん、良いですよ。エマさんは、お手伝いだし結構作業終わったから。でも大丈夫、顔、まだ真っ赤ですよ。エマさん」

それに優しくサリは答えた。


「えっ……」

少し動揺してエマは自分の顔を触った。顔は熱くなかった。実際、エマの顔は赤くなかった。


「嘘ですよ。」

嘘であった、少しサリは揶揄いたくなったのである。


「い、意地悪言わないで下さい。」

そう言いながらエマはライトの元へ向かった。

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