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フロスト地方の事情1

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ライトとエマがそれぞれやらかした次の日、二人は冒険者ギルドの奥の部屋にいた。奥の部屋というのは、ギルドのカウンターの中にある、本などの資料や申請書類などが置いてある部屋でありそして一応、応接室でもあった。


「応接室?に通されたけど、理由を知ってる?ライト君。」

そうキョロキョロ部屋を見ながら、エマは呟いた。この部屋が応接室かどうかは疑問だった。


「知らないですけど。あまり良い予感はしないですね。面倒ごとの匂いがする。」

ライトはそう言ってため息をついた。


そんな少し落ち着きのない2人がいる部屋に

「お待たせしてすいません。カール=ライトさん。」

サリはそう言いながら入って来てライトとエマの前に座った。


(なんか、フルネームバレてるし、…………面倒だ、よしどうにか嘘をついてごまかすか。)

ライトは声を上げるのを抑えて数秒でそう考えを回したがそれは無駄であった。


「ライト君、バレてるじゃん。」

となりのエマがそう言ってしまったせいで全ておじゃんになった。ライトはエマに少し何かを言おうかと思ったが、彼女のやってしまったと言う表情を見てしょうがないと諦めた。


「そうなんですね。やはり、カール家の人間だったんですね。いろいろ、納得が行きました。」

サリはそう言って笑った。


確かにライトには怪しい所があったかも。だから、貴族だったことがバレいても、おかしくはない。でもフルネームはバレないはずなのだ元々の苗字が分かるはずもないのだ。ライトが社交の場に出たのは貴族時代でも一回だけであり、顔から分かることももちろん、無かった。

「………はぁ、どうして分かったんですか?」


「これです。一応ここもギルドなので中央からいろいろ連絡は届くんですよね。まあ情報は遅れてますけどね。」


それは、様々な情報が書かれていた紙だった。

『帝国軍、冒険者の一部を起用する方針』

『魔族の国で国内紛争激化』

『ライト家がお家騒動で、三男が行方不明になる。』などである。


(ああ、僕行方不明扱いになってるんだ。いや、でも)

「それで、なぜ僕がその三男だと」

それだけで分かる訳は無いのだ。ただの当てずっぽうであれば話は別だが。


「まあ、ここは、一応カール家の所有の領地ですから。それに、カール家の三男は、攻撃的で高い戦闘能力を持っていて好戦的っていう噂を聞いていたので、性格は違いますけどまあ強さが十分にありますし、それに魔法を使えたり銃を使えるとかでしたので。最後は当てずっぽうですね。」

当てずっぽうだった。もちろん、それだけではないが、ライトの誤算があったとするならばカール=ライトは意外に有名だった。ライトは一度しか社交の場に出たことがない、そこで問題を起こして、それ以降社交の場に出ることが無くなったのだ。その時の行動が噂となり、尾びれをつけて壮大な噂が出来上がっていた。


「すごいですね。サリさん」

エマは、素直に感心していた。ライトは、エマの警戒の具合から、悪い人ではないと判断しつつも一応。

「………このことはいろんな人には言わないでください。というか、まあ僕はカール家から追い出されてるので正確に言えば違います。もう、カール=ライトではないです。」

そう口止めをした。


サリは、ライトとエマを見ると小さく微笑んだ。

「言いませんよ。ギルドは守秘義務を守りますから、それで相談が2つあります。」


それは相談という名の

「脅しでは?」

ライトはとりあえずそう言ってみたが、この程度は想定していた。


「そこまで物騒な物じゃないです。昨日、エマさんが倒した、魔物の報酬の額減らしても良いですかね?お金がなくて、うちのギルド」

サリは、少しバツが悪そうにつぶやいた。お金がないのが嘘ではないことはライトとエマどちらも一ミリも疑うことは無かった。それもそうである、お金があればこのギルドももっと綺麗な建物になっているはずなのだ。


「私は良いですよ。申し訳ないと思ってるので、ライト君も良いでしょ。」

エマは、そう言ってライトを見た。


「‥‥別に良いですけど、それで報酬は?」


そのライトの言葉を聞いて、サリは金貨が詰まった袋が机の上に置いた。袋には金貨がパンパンに詰められていた。

「「えっと、サリさん、これのうちの何枚ですか?」」

綺麗にエマとライトの言葉が重なった。


「これ全部です。って言っても通常の半分程度なんですけどね、すいません。」

サリは首を傾げながら呟いた。


「……高くないですか?」

ライトには報酬が高いように思えた。ライトは昨日エマが赤色のクマを一撃で倒していることを聞いていたのだ。だから、まあまあな強さであると考えており、まあまあな報酬だと考えていた。


「安いですよ。エマさんが倒した魔物は、駆除依頼が出てから5年誰も倒せなかった魔物ですよ。異常個体ですから。」


異常個体とは、突然変異の魔物であり、基本的には、通常の魔物より強い個体のことである。


「「もしかして、我々って我々が想定しているより強いのでは?」」

ライトとエマは、顔を見合わせて目をパチパチさせながら呟いた。エマとライトは模擬戦で彼らの指導係のメリッサにボコボコにされたせいで自分の実力を過小評価していた。彼らの教育係をしていたメリッサは、ライトの死んだ母親から頼まれて教育係をしていたが、それがなければ、確実に英雄と呼ばれていた実力であり、相手が悪かった。それに、二人は、純粋な個人の戦闘能力としては、帝国内でも10本の指に入るぐらいの実力だった。それは、純粋な武力の話であって、そこに人数と戦略が絡むと別の話だが。


「まあ、もう一つの頼みは、魔物を退治した強さを見込んで、とある魔物を討伐を手伝ってほしいんです。知り合いにも頼んだんですけど、フロスト地方は寒くて無理ですとか言われたので。」

サリは、そう言ってゆっくりと二人を見た。


すぐにエマは、

「良いですよね。ね、ライト君。」

そう言ってライトをガン見した。


「…………どんな魔物ですか?」

ライトは、とりあえず情報を集めるためにそう尋ねた。


「厄災級の魔物です。」

厄災級の魔物とは簡単に言えば倒せない魔物であり、災害である。


「………やめておきましょう。無理です。」

ライトは過信をしなかった。


「その魔物せいで、ただでさえ寒いこの地域がさらに寒くなってるんです。だからお願いします。それに、やっと帝国から討伐軍が来てくれるようなので、その時に協力してくれるだけで十分なので。」

サリは、真剣な表情で、そう言葉を発した。その表情は言葉は、真剣そのもので、ライトとエマも何かを感じ取ったのか、エマはジッとライトを見てライトは小さくため息をついた。


「ライト君。」


「…………分かりました。ほどほどに手伝います。死なない程度に手伝います。その代わりこっちにも条件があります。」

そう言って笑った。ライトはこの世界では徳を積んでいくことにしたらしい。



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