閑話 カール家にて
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場所は変わって、カール家、ライトが去った後も跡継ぎ争いは収まることなく、3つの勢力が跡目を争っていた。カール家はライトを含めて全員母親が違う8人兄弟姉妹、仲はあまり良くなかった。そして、最終的に長男と次男と長女の三つの勢力に落ち着いた。正確に言えば、次男は劣勢であり、実質二つの勢力だが。それでも、次男はまだ諦めてなかった。
ライトと少し似ているが、目つきがきつく、そして険しい顔をしている青年が部屋で暴れていた。カール家の次男である。
「あああ、なんでだよ。なぜ、他の兄弟は俺につかない。」
次男は孤軍奮闘状態だった。正確に言えば次男の母方の実家の勢力がついているが、母親が存命な兄弟は全員、母方の親が後ろについているので、実質的には味方はいなかった。
暴れる次男に怯えながら真面目な風貌の人物が意見を述べた。
「残る兄弟は、4女のメイ様とフロスト地方に行かれた、ライト様です。」
「4女は、自由すぎて扱いきれない。ライトは俺があいつのこと嫌いってこと忘れたのか?」
高圧的に次男はそう言い放った。この争いに参加していない兄弟姉妹もいたが、援助を受けるのは不可能に近かった。
「も、申し訳ありません。メイ様は、確かに唐突に、急にライト様のフロスト地方の件に反対したり、何がしたいか分かりません。『最初はいいんじゃない』とか言ってましたのに……ライト様は、ライト様本人は協力なんてしてくれないと思いますけど。でも、フロスト地方には、可能性があります。逆転の可能性があります。」
「あの、極寒の不毛の地に何があるのだ?あのライトの野郎は、今頃、あの竜人の女と凍えながら恨み言でも吐いているだろうな、ああいい気味だ。俺に逆らう生意気な野郎どもだったからな。」
次男とライトの性格は似ていなかった。だから、割と昔からかなり仲が悪かった。明確に二人が仲が悪くなったのは、次男がエマに、暴言を吐いたことに対して、ライトが無言で次男を殴り飛ばすという事件があってからだが、ずっと仲が悪かったし、おそらくこれからもずっと仲が悪いだろう。
「それで、そのフロスト地方の可能性の話をしてもよろしいでしょうか?」
怯えながら真面目な風貌の人物が言葉を発した。
「うん?あっ、早くしろ。」
高圧的に次男は叫んだ。
「今、帝都では、魔族と亜人の国を攻める準備が進められているそうで、その拠点をフロスト地方に作ろうと言う計画が出ているらしいのです。」
「どうやって?あの場所は無理だろ。拠点?あそこから魔族や亜人の国に行く為の国境を越えるのは控えめに言って地獄だろう。フロスト地方の奥地には、厄災級の魔物がいるだろう。そこで軍が壊滅する。そんなところに基地を作ってどうする?無駄だろ。」
「そ、そうだったんですけど、その原因である。厄災級の魔物を倒す手立てが見つかって、帝都では、その準備がされているらしいので、何か倒せる人物がどうこうと、すいませんこの辺りは調査不足で」
しばらく無言で次男は考えた後に
「なるほど、つまりライトを殺して、フロスト地方を俺が手に入れて、帝都の中央の人に恩を売るって事か?」
「そ、そうです。だから、私が、殺し屋を雇って、フロスト地方に送り込んでライト様を」
怯えながら真面目な風貌の人物が言葉を発した。
「……やめておけ、そこら辺の奴らだと返り討ちにあう。俺の私兵を送り込め。帝国の討伐兵に偽装でもすればバレない。」
次男はライトの強さを理解していた。
「了解しました。」
怯えながら真面目な風貌の人物が言葉を発した。
「ハハハ、まだだ、兄も姉も愚弟愚妹どもも、目にも見せてやるよ。」
一人次男は笑った。笑うには多分まだ早すぎた。
その頃ライトはエマは、ギルドの仕事が上手く行かなくて、する事もなく暇だったので適当に町を散策していた。そしてその時に見つけた、町の店で買い物をしていた。
「田舎なのに品揃え豊富だね、私がごちそう作って上げますよ。」
そう笑うエマと
「ありがとう」
そう、少し嬉しそうに笑いながらそっぽを向くライトがいた。
彼らは、自分が狙われていることなど全く知らず楽しそうに笑っていた。




