17 一大事
「にゃあ」
何という撫で心地、まさにこの世の天国。
「にゃあ」
見た目だけじゃなく、鳴き声だって超絶可愛らしいのです。
「にゃあ」
あーもう、お兄さんメロメロのモエモエですよ。
「サイリさんって、こんなキャラでしたっけ、プリナさん」
「いいえ、ベルちゃんの魔性の魅力に抗うことが出来ずにキャラ崩壊してしまったのですよ、モノカさん」
欲望に目覚めた僕は、ねこ大好きな気持ちも大解放されちゃって、
ただ今、モノカさんのお宅で、絶賛癒され中。
黒猫のベルちゃんは、僕の全力なでなでを受け止めてくれる、懐の深い優しいにゃんこなのです。
……いいよね、にゃんこ。
あえて言うなら、異世界快適引きこもりライフに必要な最後のピース、だよね。
「もう少し成長したら、ベルちゃんも『ゲートルーム』の使い方を覚えると思うので、いつでもサイリさんのお宅へおじゃま出来ちゃうようになりますよ」
いえいえ、モノカさん。
冒険中のカミスさんと離ればなれでさみしいモノカさんの心を癒やしてくれるベルちゃんを、僕の邪な欲望でモノカさんから遠ざけたり出来ませんとも。
「サイリさん、本当に大丈夫なのですか、プリナさん」
「いいえ、大丈夫では無いようです」
「どうやらベルちゃんが好き過ぎて、正常な思考を維持出来ない状態になっているのではないかと」
「ねこ大好きと言うサイリさんの新しい一面を知ることができたのはうれしいのですが」
「他の人ならともかく、サイリさんが正常でいられない状態なのはマズいですよね」
「主に"若仙人"サイリさんの能力的な面で」
「けんちゃんへの緊急連絡が必要でしょうか」
「そうですね、可及的速やかに抜本的対策が必要かと」
……
どうやら、気を失っていたようです。
ここはモノカさんのお屋敷の客間みたいですが、
最初にベルちゃんをひと撫でした後の記憶がありません。
「気が付きましたか、サイリさん」
……僕、どうしちゃったのでしょう、けんちゃん。
「どうやら、人が耐えられる以上の過剰な魔素を急激に受け入れたせいで、正常な思考が維持できなくなったのではないか、と」
つまり?
「ベルちゃんは魔猫という種族で、なでなでしてくれる方との適度な魔素のやり取りによって、コミュニケーションを円滑に図ろうとするのです」
ふむ。
「ごく稀に、魔素適正の相性問題のせいで特定の魔素パターンに過剰に反応してしまう体質の方が居られるみたいで」
ふむふむ。
「つまり、サイリさんとベルちゃんは相性が良すぎて、お互いの魔素のやり取りが過剰になってしまい、その結果精神に影響を及ぼすまでに至ってしまったのではないかと」
ベルちゃんは大丈夫だったのですかっ。
「『インフィニティー キャット』という希少種のベルちゃんは、魔素耐性の高さも尋常では無いので、健康面でも精神面でも影響は無かったかと」
良かったです、ホッとしました。
「ただやはり、サイリさんはベルちゃんとの接触は控えるべきかと……」
……すごく、辛いです。
「プリナさんたちが対策を練っておられましたので、一度ご自宅に戻られた方が」
ご心配をおかけして申し訳ありません。
モノカさんに謝罪したら、すぐ自宅に戻ります。
「お大事に」
……
ねこ好きとしては当然未練たらったらなのですが、ベルちゃんやモノカさんにご迷惑をおかけするようなら、涙を飲んでにゃんこ断ちせねば。
異世界にゃんこ、全くもって侮りがたし、なのです。
それはそうと、ただいま。
ご心配をおかけしてごめんなさい、です。
「おかえりなさいませ」×3
……!?
何と言うことでしょうっ、
目の前に、ネコミミネコしっぽの三人がっ。
ちなみに、プリナさんが白猫、
スーミャが黒猫、
イリーシャさんはグレーの長毛種。
リアクション、どうしよう……
あとがき
リヴァイスは、筆が走るに任せた、行き当たりばったりが信条のお話しです。
サイリさんは、筆が走るキャラですが、少々暴走気味で、物語りの毒にも薬にもなりそうです。
平穏大好きなはずなのに、セリフも行動もなんだか危ういので、この先が心配です。
古参キャラと、上手く馴染んでくれると、嬉しいです。
つまりは、これからもこんな感じでよろしくお願いします。




