12 出国
出国手続きの前に、タリシュネイア王都の商店街でおみやげを買おうとして、ふと気付きました。
ここの通貨って、エルサニアと共通なのかな。
「あそこにある冒険者ギルドで両替出来るそうですよ」
ありがとうございます、プリナさん。
今のプリナさんは、保護者なお母さんモード、ですね。
「意外とうっかりさんなのですね、サイリさん」
いえいえ、意外とどころか、年がら年中うっかりしてますよ、僕は。
「流石はサイリ殿の奥方、内助の功にも隙が無い」
もしもし、イリーシャさん。
奥方とかって、プリナさんに失礼ですよ。
そもそも、夫婦は偽装だって分かってるんでしょ。
「えっ、正妻で新婚でらぶらぶだと、ツァイシャ様からのお手紙に」
ちょっと、スーミャ。
元王女さまなら情報の正否には敏感になってください。
って、何でニセ情報を撒き散らかしちゃってるんですか、ツァイシャ様っ。
「せっかくですから、混乱を避けるためにも出国まではこのままで」
うわっ、駄目ですよ、プリナさん、腕なんか組んじゃっ。
「これが噂に名高い、エルサニア勇者たちのらぶらぶっぷり」
「真似してはいけませんよ、スーミャ」
「サイリの腕は片方空いてるし、せっかくだから勝負しましょ、イリーシャ」
何ですか、これ。
アレなゲームのイベントまんまじゃないですか。
こう言うのは僕には向いてませんって。
とっととおみやげ買って、さっさと撤収せねば。
……
『ゲート』を通ると、そこはゼハリアの街。
よく無事に帰ってこれたよ、僕。
本当、がんばったよね、柄にもなく。
「おかえりなさい、サイリさん」
うわっと、びっくり。
って、ただいまです、ミスキさん。
確かに日帰りでしたけど、もしかして、ずっと待っていてくれたんですか。
「さて、これからどうします?」
「ご自宅へ直帰して、おうちで四人でらぶらぶコース」
「それとも、ツァイシャ女王様に謁見して"大仙人"さま凱旋コース」
「サイリさんのお好きなコースを、どうぞ」
えーと、ツァイシャ女王様にひと言言いたいのですけど、日も暮れちゃいましたし、自宅に帰ろうかと。
ってか、さらっと"大"とか付けないでくださいよぅ。
「かしこまりました」
「それでは皆さま、愛の送迎魔導車『システマ』へようこそ!」
もしもし、ミスキさん。
キャラ変わってません?




