11 準備
お引越しの荷造りのお手伝いはプリナさんに任せて、
早々にスーミャのお部屋から逃げ出しました。
お友達だからって何を見せちゃっても良いってわけじゃないのですよ、スーミャ。
お部屋の前でぼんやりしていた僕に、話しかけてきたのはイリーシャさん。
「……やってくれたな、サイリ殿」
はい、僕、やっちゃいました。
どうします、今すぐぶった斬りますか。
「スーミャが悲しむ姿は見たくない」
はい、僕も同じ気持ちですよ。
ところで、手ぶらみたいですけど大丈夫なんですか。
「?」
いえ、僕の家は増築したてで部屋数は足りてますけど、さすがに女物の着替えとかまでは置いてないので。
ほら、イリーシャさんとプリナさんじゃ体型とかも全然違うし、貸し借り出来ないんじゃないかなって。
「私も行くのか?」
スーミャのお世話を僕とプリナさんに任せっぱなしなんて、それって守護騎士としていかがなものかと。
「……責任取ってもらうぞ、"仙人"殿」
決めるのはイリーシャさんですよ。
僕ってほら、無責任な世捨て人の"仙人"さまなので。
「支度してくる」
お早めに。
……
反対派の皆さんからは、特にアプローチは無し。
まあ、今回の件で一番痛い目見たのはあの人たちだろうし。
このままほっといてくれるとうれしいな。
中立派の皆さんが、何やらゴネてきました。
前例の無い事態ゆえ、国の行く末がどうとかこうとか。
でも、前例の無い事態なのだから皆さんの好きにしたって誰からも文句は出ませんよって言ったら、
諦めたように去って行きました。
姫さまの敵だろうと中立だろうと、
ここまでコジレるまで有効な手を打たなかったのは、怠慢だと思いますよ。
手を尽くしてこのザマなら、無能でしょうし。
国の舵取りは遊びじゃ無いって言うのなら、常日頃から覚悟を持って仕事に励みましょうね。
……
荷造りは完了したみたいです。
スーミャの大荷物を、僕の『収納』に格納。
イリーシャさんは、大きな荷物は家宝の鎧一式だけとのことで、それを『収納』
ただ、イリーシャさんの所属について、少々揉めました。
このままタリシュネイア王国所属のままで出張護衛騎士を務めるのか、
それとも国を離れてスーミャの友人としての護衛騎士になるのか。
少々、すったもんだがありましたが、
とりあえず、イリーシャさんの身分は、エルサニア王国に出向したタリシュネイア王国大使(仮)となったようです。
がんばれ、イリーシャさん。




