01 誤解
『リヴァイス 50 召喚異能者の穏やかな引きこもり生活』の続きで、
『若仙人』サイリのお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
こんにちは、サイリです。
最近は自分なりに良い感じの異世界引きこもり生活が出来ておりました(過去形)
自分から冒険を求めて行動するのではなく、普段は引きこもりのままで、助けを求められた時だけ出向いて問題を解決するという、
何と言いますか、出張する正義の味方?
まあ、見た目はひょろひょろでへろへろ、頼りないことこの上無しな若造なんですけどね。
けんちゃんの友人方の冒険者活動のお手伝いをしているうちに、いつの間にか僕の噂が広まってしまったようで。
"人里離れた森の中に願いを叶えてくれる"仙人"様が暮らしている"
なんですか、"仙人"って。
10代半ばのピッチピチ引きこもり小僧が呼ばれる二つ名じゃないですよ、それって。
百歩譲って"魔法使い"とかにしてほしいです。
って、ソッチの意味での"魔法使い"じゃないですよぅ。
「どうかなさいましたか、サイリ様」
うわっ、びっくりした。
なんでもないですよ、ササエさん。
お気になさらず。
それと、そろそろ、様付けはやめてほしいのですけど。
「素敵なメイドさんから様付けされて慕われるのは、アッチの世界から来た殿方には何よりのご褒美だよね」
もしもし、クロ先生。
女性が個性を否定されるのを嫌がるように、男だって十把一絡げな扱いをされるのは不本意なのですよ。
「なんだか若いのに年寄りくさい反応をするよね、サイリ君は」
「きっとそういう老成したところがヴァンパイアのお姫さまから懐かれる秘訣だよね、ササエ」
「違いますよ、クロ」
「サイリ様の魅力は、自称引きこもりなのに困っている人は見過ごせないという、普段は隠している熱い正義の魂をみんなにチラ見させる焦らし上手なところですよ」
ちょっと、おふたりとも。
いくら期間限定のお試しパートナーだからって、僕へのイジりっぷりに遠慮が無さすぎやしませんか。
「だからことわざにもあるじゃないか」
「可愛い子には旅をさせる前に心残りが無いよう全力で可愛がれって」
初耳ですよぅ、って言うか、わざわざ捏造しないでくださいよぅ。
……
えーと、事の起こりは僕の不用意なひと言でした。
同居するなら看護士さん的にお世話してくれる方がいいなあ、っていうつぶやき。
それを聞いたけんちゃんが、知り合いの方に声をかけてくれたのです。
ただ、少しだけ誤解を曲解しちゃってますよ、けんちゃん。
有能でとても人懐っこいメイドのお姉さん、ササエさん。
(闇)医者として、(裏)世界的に著名な、クロイ先生。
おふたりとも、とてもお優しい方々なのですが、
ふたり揃うと、僕へのイジりっぷりが二倍じゃなくて二乗なのですよ……




