Story4 「魔法の言葉と懺悔」
天音は元の世界へと、夢から覚めてしまう
これはその夢から覚めてしまう途中の彼の夢の旅の間の話
例えばそれだけで、人が生きる意味を見いだせるような、
例えば、それさえあれば、なんでも出来るような、
それは魔法の言葉
”覚えている”
”忘れはしないよ”
生きている意味なんて、見出だせなくても、
覚えられている、自分という存在の生き様がその先の未来まで記憶されているなら、生きる意味を後付してくれる人がいてくれたら、どんなに幸せか。
人は、心の片隅にでも、自分の心を、生き様をずっと覚えていてほしいものだ。
死んだ後でその人の生きる意味が決まるとして、でもそれは自分しか分からなかったらひどく虚しい。
だから澄鏡は言ったのだ
「覚えていて、
忘れないで」
と。
大切な人にだけ
伝えたい
理解者にだけ
覚えていてほしい
ただそれだけだった
彼は天音が未来から来た人物だとわかっていたようだ
罪悪感とは、ほとんどの人が持つもので
あまり気にせずに生きている人が大半で、その積み重なった重さに気付く人は多くはないだろう。
今までやってしまったことはもちろん、思っていることでさえ罪悪感を感じる者もいる。
例えばの話、親があれやれこれやれと言われる子供は、自分の時間を奪わないでほしい、時間を自由に使わせてほしいと思うだろう。自分の人生だ、という大義のもとで。
しかし、ある人間は悟ったりする。
時間を奪っていたのは誰でもない自分であった事を、親が時間をかけて育ててくれていたのに自分はなんて愚かなのだろうと思うだろう。
そこで、より心が繊細なものは更に罪悪感を強め、こういう思いに至る。
自分なんて、生まれてくるべきではなかったのだと。時間を奪わないでと思ったときの怒りや、強い感情の、何倍も大きな感情を親は感じながら育ててくれた。そう思い、そんな事をさせるために、生まれてきた訳ではないと理不尽にも自分を責め立てたりする。
しかし、せっかく奪った時間を自分が消えることで水の泡にすることも苦しくなるだろう。
愛されていることにさえ苦しさと罪悪感を抱く事もあるだろう。
そこで、感情が堂々巡りするように、罪悪感の大きさに気づいてしまった者はどんどん自分を過小評価するものだ、責め立てるものだ。
他にも様々ある、とにかく自分の行動を省みたとき、その行動をされたときの相手の感情を最大限な感情、誇張した感情にして考えてしまい、自分の罪を重くしていっているのだ。
それが、罪悪感の重さに気づいてしまった者の心。
天音はそうだった。理由は彼の過去にある。それが彼をそうさせたのだ。
心は弱くなる一方で、少しのことでも崩れてしまいそうだから、自分の心を誰かに打ち明けることなどできなかったのかもしれない。
心には触れさせないように、友人との関係は深くならず、なんとなくで付き合っているようなもの。
それが天音。
自分には誰かを守れない、なぜなら誰かへの罪を抱えているから、罪悪感を背負うことになるかもしれないから、そうしたら自分の心が壊れてしまいそうだったから。
それを臆病だと思い、しかし何もない自分を知ることも恐がってそれについても臆病だと思った。
だらだらと生きていた。
なんとなくで歩いてきた。
いつも同じような日々に、代わり映えのしない物事に、彼は誰からもいじめられていないのにも関わらず、どんどん自分を責め立てる。
夜が怖い、夜が苦しい。それだけを思いながら、一人で毎晩1日の、人生の懺悔をする。
そんな天音のその日が終わろうとするとき、懺悔を終えた彼は夢を見る。
いいや、あれは、夢を見るという言葉では適切ではない。
あれは、時を遍くというのがふさわしい。
それを何故天音が今になってできるようになったのかは、また今度。
とにかく一部の人間には、彼らを取り巻く環境の全てが彼らを否定するような、居心地の悪さを持っている。彼らにとって、の話ではあるが。
彼らには
この世界は
生きにくい
だが、死ぬほどの勇気はない
だから彼らはこう言うのだ
“消えたい”
生きるでも、死ぬのでもない、第三の選択肢
“消える”
それがあったら
どんなにか楽だろうか
読んでいただきありがとうございました
まとめのような、伝えたかったことの補足のような内容となっております
自分のことを後世まで覚えていてくれる人がいたら人生に意味が見いだせる気がしますね
今回も読んでいただき、ありがとうございました