第九十六話 帝都ノ変(5) 戦恋と始動
リブル公国を目指し進軍する二年義勇軍は、亜種族奇襲部隊と偶然にも発見し、逆に奇襲をかけようとしていた。
晴斗「亜種族なのに立派な旗を掲げてるな‥。」
直人「公国や帝都見たいな旗だな?」
奏太「さて‥どう攻める?相手は亜種族ゴブリン、オーガ、オークの蹂躙部隊だ。正面から殺り合っても苦戦するな。」
全線の敵を知ると、
オーガ族の鬼山
オーク族獣種の猪木
オーク族魔人種の六道
の三名が怒りに燃えていた。
鬼山「亜種族のオーガ‥オーク‥ゴブリンか。」
猪木「同じ名の種として恥さらしな‥。」
六道「‥蹂躙しか脳がない低俗どもめ‥ここで根を絶やしてやる。」
ハルバートや棍棒を手にして怒りを露にしている。
海洋「三人とも抑えろ、今下手に手を出せば被害が‥。」
三人を宥めていると突如大爆発が亜種族奇襲部隊を襲う。
晴斗「うわっ!?な、なんだ!?」
直人「ちょっ、誰だ勝手に動いたやつは!?」
広く舞った土煙が徐々に薄れていくと、直人には見覚えがある褐色美女がいた。
薄赤い長髪で褐色肌が重なり惹かれてしまう美しさとカリスマ性。
間違いない‥リグリードこと、リグ姉である。
直人「り、リグ姉!?」
リール「ふぇ!?今のはリグリード様の攻撃ですか!?」
エルン「な、なんとリグリード様がここに居られるのか!?」
目を疑うような光景にリグリードは、一人で奇襲部隊をあっという間に壊滅させた。
あまりの強さに義勇軍は唖然として、その強さと美しさに惹かれた。
桃馬「す、すごい‥全く無駄のない動きだった。」
ジェルド「あ、あぁ‥まるで紫の薔薇が舞ってるように見えた‥。」
小頼「はぅ~かっこいい~♪」
桜華「でも‥味方の可能性はありますけど、油断はできませんね。」
リフィル「ダーク‥エルフかしら?」
憲明「あの健康的な褐色肌‥あり得るかもな。」
リグリード「よく間違われるが、私はダークエルフではないぞ?」
リフィル&憲明「うわっ!?」
一瞬で二人の背後に回ったリグリードは、優しく声をかける。
すると、物凄い勢いで直人が駆け寄った。
直人「リグ姉ー!」
リグリード「ん?な、直人?」
リール「待ってよ~直人~。」
エルン「直人、待つんだ!」
二人の嫁が直人の元に駆け寄り、リグリードの前に立つ。
リグリード「り、リール?それと君は‥。」
エルン「あっ、は、初めましてリグリード様、私はサキュバスのエルンと言います。」
エルンが名を名乗ると、リグリードは驚いたような表情を作る。
リグリード「き、君がエルンか‥。本当にサキュバスなのだな。」
エルン「えっ?」
リール「お久しぶりです♪リグリード様~♪」
リグリード「ふっ、相変わらずリールは元気のようだな?楽しそうで何よりだ。」
リール「ありがとうございます♪」
直人「り、リグ姉‥えっと‥。」
ようやく声をかけれた直人は、緊張感のあまり台詞を忘れる。
だが、そんな直人をリグリードは優しく抱き締めた。しかも、みんなが見ている前で‥。
エルン「なっ!?」
リール「ふぇ?」
男子一同「‥ろす‥。」
男子一同を敵に回すには最高の瞬間であった。
直人「り、リグ姉‥み、みんなが‥見てるから。」
まわりの殺気に堪えかねて、剥がそうとする。しかし、リグリードは耳元で囁く。
リグリード「‥いいか直人‥お前は私の者だ。遅れは取ったが‥リールやエルン‥稲荷の好きにはさせないからな。」
直人「り、リグ姉‥そ、それって‥。」
リグリード「話はまた後だ‥。各地では亜種族が暴れている、帝都に行くよりはこの辺りを平定させてからがいいぞ。」
直人「う、うん‥わかった。」
リグリード「ふっ、あと‥私のような女を好いてくれて礼を言うぞ。」
直人「そ、そんな‥リグ姉は素敵な人だし‥むしろ俺なんかじゃ釣り合わないよ‥。」
リグリード「それを決めるのは私だ‥自分の評価を過信しないのはいいが、直人は低く見積もりすぎだ。」
かなり長く抱きつきながら話す二人に、リールとエルンが引き剥がしにかかる。
リール「リグリード様!そろそろ離れてくださいよ!?」
エルン「わ、私にも分けてください!」
リグリード「私は二人より会えていないのだ。少しくらいいいだろう?」
仲良さそうにいちゃつく直人に、外野の男子の視線は更に冷たく睨む。
晴斗「‥なるほど、直人の初恋には条件が揃ってるな。」
奏太「嫁が四人できたという噂は本当のようだな。」
海洋「皮肉だな‥あんなにハーレム反対を唱えていたのに。」
男子「リールとエルンという美女を嫁にしておきながら‥あんな褐色美女まで‥これが終わったら覚えておけよ‥。」
男子「異端審問にかけて‥公開処刑だな。」
男子たち武器を構えて憤りの念を露にする。
今の状態では、手を繋ぐことですら許されないだろう。キスなどはもってのほか‥その場で火あぶりだろうな。
シャル「変わった娘なのだ‥魔族‥いや、我と同じ亜種族‥か。」
ギール「ハーフか‥シャル見たいな変わり者か。」
シャル「おい、それどういう意味なのだ?」
ギール「‥答えを返す前に‥噛むなよ?」
シャル「内容では噛むのだ。まあどうせ、余を馬鹿にする様なことであろう?もしそうなら、大人しく認めて謝るのだ。それなら許してやるのだ。」
毎度繰り返されるやり取りに、さすがのシャルでも先が読めるようだ。それはそれでなんか悔しい。
ギール「いや、シャルに謝るほどの悪い意味ではないぞ?むしろ、良い意味だ。」
シャル「む、むぅ‥か、噛もうにも噛めないのだ‥うぅん!な、ならその良い意味を聞こうじゃないか!」
ギール「あはは!心優しくて可愛い妹ってことくらいだな。」
シャル「な、なぬ!?///。」
平然と妹を誉めるかのように答えると、
シャルは赤面し動揺した。
ほのぼのしい光景に弟たちはみとれていた。
豆太「恋人みたいに仲がいいですね?」
ディノ「兄さんとシャル様は特別ですからね。特にシャル様があんなに楽しそうにするのは、兄さんといるときだけですからね。」
豆太「ふぇ?そうなのですか?」
ディノ「私の感覚ですけどね。」
男の娘のようにも見える弟たちは、二人を暖かく見守った。しかし、後ろでは女子からの不純な視線を集め、舌なめずりをし、いつでも襲う気満々であった。
女子「はぁはぁ、ディノくんと豆太くんを襲えるチャンスって‥今じゃない?」
女子「確かに‥クススッ‥涙めになる瞬間が想像するだけで昇天しそう‥はぁはぁ。」
可愛い二人に迫り来る危機‥
ただただ、無事を祈るばかりです。
桜華「えっと‥段々方向性がズレて来てる気がするのですけど。」
桃馬「‥いつもの光景だな。さっきまでの闘争心はどこへやら。」
ジェルド「そうだな~♪くぅーん♪」
桃馬「何してるジェルド‥。」
ジェルド「甘えてるんだよ。」
桃馬「‥桜華。」
桜華「はい。」
桃馬「この犬を躾るぞ。」
ジェルド「はぁはぁ♪わんわん♪」
闘争心と緊張感を削がれた義勇軍は、
一時の余韻に浸った。
その後
リグリードの意見により、一行らはルクステリアとリブル公国の国境にある宿街へと向かうことになった。