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第九十五話 帝都ノ変(4) 立志と戦恋

じめっとした季節のこの頃。

春桜学園では帝都救出のため学徒出陣運動が活発になっていた。


そのため放課後の教務室では、各教師たちが総出で取り締まりをしていた。


吉田「校長、やはり予想通り生徒たちがあちらこちらで決起しています。止めようにも限界があります。」

上杉校長「ふむぅ、やはり避けられぬか‥。」

三条「生徒たちの気持ちもわかりますけどね‥(晴斗の勢いに圧された私は‥強く言えないわね。)」

上杉校長「‥生徒会と風紀委員会はどうなっている?」

吉田「はい、それについてですが‥ここに呼んでいますので少し話を聞いてみましょう。二人とも入ってくれ。」


吉田先生の許可が下りると、

校長室の扉が開く。


生徒会長

新潟(あらがた)時奈


風紀委員長

聖籠忍


二人は堂々と構え慌てている様子がない。

まるで、学徒出陣を認めてもらおうとしている風貌だ。


時奈「校長先生、この度の全学年決起の件についてお願いがあります。」


上杉校長「皆まで言わなくてもよい。大義のために立ち上がった者たちの気持ちは痛いほどわかる。」


時奈「‥私は生徒会長として本来止める側ではあります。ですが、此度の決起は素晴らしくも名誉あるものと思います。」

忍「私も意見同じく、今の日本は亜種族が簡単に蔓延(はびこ)る世の中です。この国を守るためにも自主性で立ち上がった同志たちの気持ちを()むのも大いなる教えかと思います!」


上杉校長「二人の意見も一理ある。‥わしも、彼らの勇姿を立たせてやりたい‥だが、これは遊びでも授業でもない。命を懸けた本当の戦争だ。例え異世界と共存とはいえ‥生徒たちを死地へ送るなど教師として恥ずべきことだ。」


忍「その様なこと皆覚悟の上です!今この世界から異世界を失えば残酷な暗黒時代の到来です。」

時奈「そう通りです。今頃全国の学生たちが決起の火を灯していることでしょう。」


二人の熱い説得はその場にいる先生の心を揺るがした。


吉田「‥二人の意見は最もだな。俺も学生なら同じ事をしただろう。それに、俺もこれから日本防衛陸軍に入る予定だからな。」

三条「よ、吉田先生もですか!?」

吉田「ま、まあな。もしかして、三条先生も?」


上杉校長「あはは!わしらも同じと言うことか‥。これではわしらが止めても説得力ないな。」


時奈「校長先生それでは‥。」

忍「ご決断してもらえるのですか?」


上杉校長「‥ふむぅ、負けたよ。だが、死んでも文句は言えぬぞ?引き返すことも、後悔することも‥結末を受け入れる覚悟がある者だけ認めよう。」


時奈「ありがとうございます!」

忍「それでは改めて志願者を集めます。」


二人の強い意思と立ち上がった勇姿たちが動かした未来の歯車。


時奈が言った通り春桜学園だけではなく、各学園、学校でも学徒出陣の風が吹いていた。


過ちの大戦以来の、大義ある異世界共同防衛戦の始まりである。



その頃リブル公国郊外


微食会率いる部隊が到着していた。



が‥‥


早速問題が起きていた。



微食会のメンバー

近藤、番場が、赤髪美女の前で正座させられていた。


別に痴漢のようなゲスな行為をしたわけではない。ただ‥とある一件が露見したことによる‥尋問である。


?「さて~♪二人には聞きたいことがたくさんあるんだけど~♪」


可愛げな笑みを浮かべながら、

指の関節を鳴らす。


近藤「えっ、えっと‥な、なんでしょうか~。」

番場「い、いや~、何か悪い事したかな?」


身に覚えがないことに二人は困惑する。

だが、傍観する八人は薄々感ずいていた。


?「唐揚げ‥と言えばわかるかしら?」


やっぱりと、八人は二人へ合掌した。


近藤「は、はへ~、唐揚げね?」

番場「すみません!全ては近藤が(そそのか)しました!」

近藤「あ、ずっるっ!?せいっちゃんも乗ってただろ!?あ、そうだ、そもそも"姫じゃん"を提案したのはおおに‥ぐふっ!?」

?「っ!?しょ、尚弥!?」


突然の発砲音と共に、近藤はその場に倒れた。


大西「見苦しいぞ近藤?大人しく罰を受けろ。」


なに食わぬ顔で倒れた近藤に語りかける。

すると、近藤は直ぐに起き上がる。


近藤「いってて‥ゴム弾とはやるじゃねえか‥。」

大西「ちっ、頑丈なやつだな。」


番場「エニカ裁判長、ご覧の通り口止めをしようとしたこの行為は裏があると思います!」


大西「なっ、せいっちゃん!?」


恐らく感ずいた人もいるだろう。赤髪美女の正体はリブル公国の姫エニカ・リブルである。


エニカ「雷音もそこに座りなさい。」


大西「は、はい‥。」


大西が番場の隣に座ると、近藤はなに食わぬ顔で外野に回ろうとする。

だが、

エニカ「尚弥~♪どこいくの?座ってないとダメでしょ?」


肩を強く掴まれ、近藤は震えながら諦めて元の位置に戻る。


エニカ「さてと、他に共犯は要るかしら?」


エニカの質問に三人は取りあえず七人の方を向いた。


茂野「いやいや、こっちみんなって!?」

本間「全てはあの三人がしたことです。」

渡邉「ご、誤解するなエニカ!?俺たちは唐揚げ何かより、エニカの方が大切だよ?」

七人は頷き

近藤はツッコむ。


近藤「おい、親友!?」


すまん!とか言うように、瞬時に合掌した。


藤井「いや~、三人は悪いやつだ。はっはっ!」

坪谷「それより、二人の情報がどこで漏れたんだ?」

高野「うーん、これは間違いなく‥えー、この中で漏らしたやつがいますね。」


何畑忠三郎(なにはたちゅうざぶろう)のような話し方で、高野は六人を疑い始める。


渡邉「マッキーだろ?」

高野「いやいや、違うよ~!?仁だよ~。」

星野「なんで俺!?どう考えてもない振りだったよね?」


エニカ「もう!この際、"からじゃん"に参加した人は正座!嘘ついたら処刑よ!」


七人は大人しく正座した。

あくまでも"からじゃん"の参加した名目である。


エニカ「結局全員ですか!?」


仲の良い光景に、まわりの準メンバーも笑いこけた。


ここで久々の小話

エニカは微食会十人を盟友と称して、友達以上恋人以下という訳のわからない関係を築き上げ、無条件で臣下にしようとしてるそうです。

しかし、微食会は誰か一人をお転婆姫に婿入りさせないと大変なことになると勘違いしており、隙あれば誰かを推してるそうです。


高貴で美しい姫の婿など夢のようなものであるが、王国の仕来たりなど、作法などと縛られる毎日を送りたくないため、嫌がっているのだ。



エニカ「ふぅ、全く仕方がないですね。お説教は後にします。それと義勇軍の皆さんも来てくださりありがとうございます。今日は学園帰りでお疲れでしょう。是非、我が公国で(くつろ)いでください。」


男子「おぉ!いいのですか!」

女子「さすが、お姫様!お優しいですね。」


エニカ「客人を無下にはできませんからね♪」


近藤「じゃあ、俺は馬小屋で干し草マシマシで。」

本間「おおいいね!俺も馬小屋。」

渡邉「俺は、その辺の宿で‥。」

藤井「俺も宿、」

高野「シンプルだね~?俺は牢屋でいいぞ。」

大西&茂野「豚小屋か‥。」

高野「ふっふっ、本当の豚小屋行きは二人だよ。」

星野「いっそのこと三人とも牢屋(ぶたごや)に入れてしまえ。」

坪谷「絵を描けるところならどこでもいいや。」

番場「俺は‥宿にしよ。」


かなりぶっ飛んだ意見で割れた。


エニカ「あなたたちは本当にもう‥微食会は宮殿に来なさい!」


男子「おぉ!さすが主メンバー!待遇いいね!」

女子「羨ましいわね~♪」


微食会「い、いや結構です。」


意外にも即答で断った。

エニカ「処刑するわよ?」

微食会「喜んでお言葉に甘えます!」


エニカ「‥からかってない?」

十人は無言で首を横に振った。


男子「あはは!すげぇ、面白いな。」

女子「展開がある意味逆ね‥。」


相変わらず緊張感のない部隊であった。



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