第九十四話 帝都ノ変(3) 決起と立志
闘争心を圧し殺して残りの授業を終えると、大半の生徒たちがある場所へと集まった。
手勢の二年一組、二組は
二年三組と合流した。
直人「すげぇ、人数だな‥確認するけど、覚悟はできてるんだよな?」
男子「当たり前だ!異世界は俺たちの養分だ!」
女子「イケメンを拝めなくなるのは辛すぎるわ!」
奏太「‥あはは、みんな同じ考えのようだな。」
シャル「ぬはは!余が皆を導いてやろうぞ!」
ギール「シャル?あまり出すぎるなよ?」
シャル「ふっふっ、余の凄さを見せつけてやるのだ!」
豆太「シャルお姉ちゃん、かっこいいです!」
ディノ「シャル様の勇姿期待してます!」
ギール「二人ともおだてすぎるなよ?」
シャル「もっと誉めるのだ!余は誉めて伸びるからな!」
ギール「付け上がりの間違いだろ? 」
シャル「ぬわぁぁ!うるさいのだ!」
桃馬「相変わらずだな‥。」
直人「桃馬‥お前‥雪穂叔母さんと景勝叔父さんに伝えたのか?」
桃馬「‥自分の意思を貫いて生きて帰ってこいだとよ。」
すっと、携帯のメールを見せる。
直人「‥それなら良いが、こほん、いいか皆の衆!ここから先は命懸けの戦だ!今生の別れは済んだか!」
男子「あたりまえだ!」
男子「お前こそビビって腰抜かすなよ!」
女子「何度も聞くな!鈍感男!」
女子「余計なお世話よ!にぶちん!」
良かれと思った行為が予想外にも、精神的ダメージとして帰って来た。
直人「うぐぐ‥よかれと思って言ったのに‥。」
桃馬「うわぁ、いつもこんな扱い受けてるのか?」
晴斗「危険な所に行くときは、いつも制止するからな。」
奏太「‥心配しすぎなんだよな。戦局次第だけど下手したら一人で殿するだろうな。」
海洋「そのときは俺が骨を折ってでも止めてやるぞ。」
三人の四天王は、直人の性格は完全に熟知していた。
だが、真の内なる気持ちを知る者はリールとエルンだけである。
そのため味方に戦意を挫かれた直人は、
リールとエルンに慰められることになる。
リール「あはは!いつも通りだね♪」
エルン「‥クスッ、全く気分に左右されやすい男だな。リールいくよ。」
リール「うん!いつものだね♪」
二人は慣れたように、塞ぎ混む直人の耳元に口を寄せる。
リール&エルン「旦那様♪」
リール「この戦いに勝ったら‥。」
エルン「私たちを好きにしていいですよ?」
打ち合わせでもしていたかのように息を合わせて囁いた。
直人「‥好きにか。なら、リールは角‥エルンは尻尾‥触らせてくれ。」
リール「あはは♪要求が安いね~♪」
エルン「嘘でも押し倒すくらい‥言ってほしいものだな。でも‥体目当てではないと思うと嬉しいぞ。」
リール「でも、夜はあんなにはげ‥んんっ!?」
直人「それ以上言うな‥リール。」
微笑ましい夫婦の光景を見せつけられる同士たちは微笑ましく、苛立っていた。
桜華「す、すごい!勉強になります。」
桃馬「‥純粋だな。アニメかドラマを見せつけられてるようだ。」
男子「‥は、半兵衛!そろそろ行くぞ!」
女子「三人の光景を見せられたら戦意が削いじゃうわ!」
晴斗「仕方ないな。直人先に行くよ?」
直人「あ、あはは‥わりぃ、」
イチャラブの三人は一応置いといて、晴斗を先頭にゲートを潜った。
ゲートの先では、相川葵率いる一隊が待っていた。
葵「おっ、やっと来たか?ん?直人はどうした?」
晴斗「すぐに来る。取りあえずこの辺りはどうなっているのかな?」
葵「学園内で混乱が起きているよ。交戦派の帝都出身者は本国に戻ったし、学園と公国領内は戒厳令が敷かれてほとんど自由が効かない。」
晴斗「もう敷いているのか‥。そっちではかなり警戒してるようだね。」
奏太「今頃こっちの先生たちはダミーのゲートにつられてるだろうな。」
葵「そっちはそんな工作練ってたのか。」
晴斗「まあ、先輩と後輩には悪いけどな。」
葵「えっ?」
その頃‥同じく決起した一年生たちは偽のゲート前で先生たちに補導されていた。
一年生男子「せ、先輩にはめられたぞ!?」
一年生男子「な、なんで先生方がここにいるんだよ!?」
一年生男子「くっ、離してくれ!俺たちも異世界を救いたいんだよ!」
先生「君たちの想いは立派だ。だが、教師として死地へ向かわせるわけにはいかないんだ!」
一年生男子「先生!異世界の交流がなくなったら‥俺は死ぬよりつらいですよ!」
先生「日本政府も動いている。君達が赴くのは少し待ってくれ。」
必死の説得は続き、
まだ、聞き分けのよい一年生たちは、最終手段の名目で納得を得た。
だが、問題は三年であった。
三年生男子「先生!ここで起たなければ後の祭りになりますよ!」
三年生女子「そうです!帝都は皇居と同じです!落ちれば秩序が必ず崩れます!」
先生「学徒出陣はだめだ!帝都が皇居と同じならば、我らは皇居を守るのが道理ではないか?」
いちいち最もな言葉を返すが、
学園最強とされる本多忠成がそれを覆す。
忠成「先生、今は一刻を争う時です。異世界を救うには戦争ができない日本政府より、我ら義によって立ち上がった国境無き義勇軍しかないと存じます。」
愛槍人間止主を威嚇するかのように、束で地面を叩く。
先生「うぐっ、しかし‥。」
忠成「ご安心召され、ここにいる者たちは異界で朽ちる覚悟があります。。」
先生「そ、そういう話では‥。」
御影「先生♪これならどうかしら?」
渋る先生に対して、四風御影がとある紙を胸の谷間から差し出した。
先生「こ、こら!そんなことするな!」
御影「あぁん♪それより、これを見てください♪」
先生「‥これは?」
御影「日本政府からのお達しよ♪」
先生「ま、またまた‥‥ん?なっ!こ、校長の印が押してある‥。」
御影「校長先生のお許しよ♪」
忠成「これで如何かな?」
先生「‥わかった。しかし、必ず生きて帰って来るのだぞ。」
日本政府から要請に忍の里から上杉校長へと渡り、複雑な防衛法が適応されたのだ。
こうして武道派の三年生は、先生の壁を越え異世界へと旅立ったのだ。
直人「よっと‥まだこの辺りは戦火は届いてないな。」
リール「意外と変わりないね?」
エルン「帝都から距離があるからな、取りあえず少し安心だな。」
葵「あ、直人来たか。」
直人「すまんな葵。手間をかけさせてしまった。」
葵「気にすんな。それより皮肉だけど、一緒に戦えることが楽しみでしかたがない。」
直人「奇遇だな。俺もだよ。」
桃馬「できてるのか‥へぶっ!?」
直人「がはっ!?」
今聞こえた地獄耳、直人は桃馬目掛けてドロップキックを食らわせたが、その後の受け身を失敗して悶絶した。
桃馬「いってて、何しやがる直人!」
直人「お前こそ‥今何言おうとした!」
桜華「はわわ!?な、何してるのですか!?」
リール「あはは♪今のは桃馬が悪いね♪」
エルン「全く‥忙しい夫だな。」
シャル「なんじゃ?こんな時にプロレスか??」
小頼「もう、相変わらず佐渡家一門は騒がしいわね?」
晴斗「また、何してるんだよ~。」
葵「あはは!緊張感ないな。しかも嫁の前でもお構いなしか。」
分析するかのようにツッコみ笑う莫逆の友のもとに、恋人のワルキューレ紅薔薇隊の隊長シェリルが、馬で駆け寄ってきた。
シェリル「はぁはぁ、葵~!」
葵「シェリルどうした?」
シェリル「どうしたではないぞ!先生方がここを感ずいたぞ!」
葵「そうか、急いでリブル公国に向かうか。晴斗、悪いけど急いで移動するから着いてきてくれ。」
晴斗「わかった、みんな葵に続くぞ~。」
このまま先生方に補導されれば、戦に出るどころか停学処分は間違いない。
義勇軍は、隣国のリブル公国に急いだ。