第九十二話 帝都ノ変(1) 違憲と大義
今作について、注意
戦争上の内容が含まれています。
あくまでも作品内のフィクションでありますのでご注意下さい。
六月二日某刻
東京都内閣府、首相官邸より。
緊急防衛対策会議が開かれた。
首相中田栄角を筆頭に各官僚たちが集められた。
ことの発端は二日前のこと、
異世界で亜種族を率いた謎の軍団が現れ、同盟国である"帝都グレイム"が戦火に見舞われたのだ。
幸い、日本防衛陸軍(特殊自衛隊)が駐屯していたため、城内に侵入してきた敵の撃退には成功したが、未だに帝都では攻防戦を繰り広げている。
日本国政府は早急に対応を急がせていた。
だが、問題があった‥。
日本国戒めの法である。
憲法9条の存在である。
簡単に、
侵略戦争に加担しない、
実行しないことを目的とされているが、
防衛については少々あやふやである。
日本国政府は防衛と言う解釈で軍を送ろうと考えている。だが当然、野党は猛反発した。
野党議員「中田総理!これは自衛隊を死地に追いやる行為ではありませんか?」
栄角「確かに死地へと向かわせることは否めません。」
堂々と返す栄角に、野党たちは騒ぎ立てる。
野党議員「おいおい、ふざけるな!」
野党議員「憲法上の違反を認めるのですね!」
野党議員「今や世界が注目しています!結果次第では避難されますよ!」
避難をするのは当然であろう。
防衛でも他国のために命を懸けることは、普通ならしたくないものだ。
だが、栄角はそんな愚かな男ではなかった。
避難やヤジが飛び交う中、怯まず話す。
中田「皆さんが避難する気持ちはよくわかります。しかし、同盟国である帝都グレイムは、我々にとっての生命線であり、大切な友であります。そんな友が生きるか死ぬかのピンチだと言うのに、やれ憲法?世界の避難?ふっ、そんな下らない事を今言っている場合ではありません!」
与党議員は拍手で称賛した。
野党議員「で、では‥総理は米国などの同盟国がピンチの時でも同じことが言えますか!」
中田「残念ながらそれは言えないでしょう。」
野党議員は言葉に詰まることを期待したのだが、あっさりと否定された。
野党議員は更に避難する。
中田「これは極秘であまり打ち明けたくなかったが、日本防衛陸軍とは名ばかり、実際は異世界に憧れた国民を始めとする、この世界と異世界の人々が結集した義勇軍であります。決して、日本政府だけの問題ではありません!世界が望む組織であるとご理解願いたい!」
自衛隊に属する日本防衛陸軍。
異世界を愛し平和を望む世界の人々が結集した義勇軍である。
帝都グレイムにいる陸軍も大半が異世界に憧れた一般人である。
現実にうちひしがれ、異世界で命を懸ける人々はどんな軍より強かった。
野党議員「総理!あなたは国民を戦地へ送ったと言うのですか!」
野党議員「間接的に徴兵を誘う行為はあってはいけないと思います!」
中田「これは国民‥いや全種族の意思であります。安全な所でヤジを飛ばし避難しかできないあなた方より、よっぽどご立派かと思います。」
野党議員「総理!総理!話を逸らさないでください!」
野党議員「今総理がしてることは、一般人を踏み台にして手を汚そうとしない行為ですよ!」
あぁ、言えばこう言う。
野党たちは政権を取るため必死に避難をし続ける。だが、避難するだけで前に進もうと言う意見は全くでない。
そんな光景に佐渡景勝が憤りを感じていた。
景勝「‥税金泥棒め。好き放題言いやがって。」
界人「待て景勝‥。下手に動けば会議が伸びる‥総理に任せよう。」
好き勝手に都合の良いことを言う野党に乗り込もうとする景勝に、両津界人が止めにはいる。
栄角「私からは全て申し上げました。願わくば、避難してる皆さんの意見を聞きたい。」
野党議員「こほん、いいでしょう。まずは日本防衛陸軍を早期撤退させ、支援物資の強化を図ります。」
栄角「ふむふむ、それで?」
野党議員「それから、敵である軍を強く避難し、経済制裁を‥。」
景勝「お前たちはバカか!さすが、椅子にふんぞり返って、ヤジを飛ばし政権を取ろうとすることしか脳がないようだな!」
下らない提案についに景勝がキレた。
野党議員「何を言いますか!これは平和的の案なのですよ?」
景勝「異界を知らない馬鹿が、異界はそんな常識は通用しないぞ!なら、聞かせてもらおうか、言葉が通じるかわからない敵に避難したら戦は終わるのか?あと経済制裁とか言ったが、どこに与えると言うのだ?最後に戦闘最中の撤退は帝都に対する裏切りだと思いませんか?物資も大切だが、使える者がいなくては、ただの敵の戦利品になるだけだ!」
景勝はジリジリと野党議員に近寄ると、両手でテーブルを叩き強く質問をした。
野党議員「そ、それは‥や、やって‥見なくては‥。」
景勝「見えてるよ‥野党の意見は、後の祭りを引き起こす火種だ。これ以上意見を聞くことはない。」
界人「感情的になった景勝は強いな。」
これにより、野党議員たちの鼻はへし折られた。
中田「それでは、早々に帝都へ日本防衛陸軍を支援することとする。各自かかってくれ。」
こうして、再び新たな黒雲が動き始めた。
五月に起きた草津事件以来の国家を巻き込む事件が再び起ころうとしていた。