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第八十九話 微食を喰らう大馬鹿集団

学食に決まって現れる普通の十人の男たちがいる。

二学年士道部に続いての大組織。


皆はそれを"微食会"と呼んだ。

公式メンバーは十人であるが、

準メンバーを入れれば、かなりの量だ。


春の大戦乱祭では、その前日に東軍の必勝を願って寸胴鍋を器にしたラーメンを食らい、残ったスープにコーラ、ミルクティーなどをぶちこみスペシャルドリンクとなる融合物を作り上げ飲み回したところ、食あたりを起こして全滅したバカの集まりである。


注意、食べ物はスープであろうとも遊んでは行けません。後に命に関わります。


二年五組

渡邉蒼喜(わたなべそうき)

近藤尚弥(こんどうしょうや)

本間孝(ほんまたかし)

藤井尚真(ふじいしょうま)

茂野天(しげのそら)

星野仁(ほしのじん)

大西雷音(おおにしらいおん)

坪谷勇二郎(つぼやゆうじろう)

番場誠太(ばんばせいた)

高野槇斗(たかのまきと)


がメンバーである。



そして学食では‥。


番場「おいおい尚弥、何持ってるんだよ?早く出せよ。」

近藤「はい?なんのことだ?」

番場「いいから、唐揚げ買ったんだろ?早く出せよ。」

本間「もはや"からじゃん"は恒例だけど、唐揚げ持ってきたときのせいっちゃんの反応はやばい。」

渡邉「じゃんけんする前から取ろうとしてからな。」

近藤「しゃあないな。ほら、五個入りかったから二つ出してやるよ。」


いつもの流れで二つ"からじゃん"にかけると、近藤を除く九人の血相が本気モードへと変わり一斉にじゃんけんを始めた。


微食会条例

からじゃん(唐揚げじゃんけん)

三個入りを買ったものは、一個分じゃんけんにかけ、五個入りを買ったものは、二個分じゃんけんにかけないといけない。


準メンバーになる条件は、

唐揚げをからじゃんに献上すること。



今回の勝者は、坪谷と星野だった。


番場は卑しくも羨ましそうに見つめ、

星野が唐揚げを食べようとすると渡邉がちょっかいをかける。

星野「蒼喜食べずらいから、こっち見るな。」

渡邉「いいのか?いいのか?あー、食っちゃう~。食べられるぅ~。」

星野「えぇいやめーい。」


こんな下らないことでゲラゲラと楽しげに笑う愉快な連中だ。


一応俺も準メンバーではあるが‥。

巻き込まれる前に早く食って戻ろう。


そう思っていると、タイミング悪く番場が桃馬を発見。じっと見ていた。


そうとも知らずにかけそばを頼み、つい贅沢にもコロッケと唐揚げを乗せてしまった。


番場「なんだ、一個だけか‥しかも、かけそばに入れるとは‥。」

桃馬「うわっ!?せ、誠太!?」

さっきまで席に座っていたはずの誠太が覗いて来た。

近藤「せいっちゃん何してるんだよ。桃馬から貰おうとしちゃ駄目だろ?どんだけ飢えてるんだよ?」

番場「ふっ、あまいね、俺にとって唐揚げは人生そのものだ。」

近藤「その場しのぎの口上天晴れだ。ほら、戻るぞ。また明日も誰か買うだろうから我慢しろ。」

番場「仕方ないな。」

近藤「わりぃな桃馬。それより珍しく一人か?」

桃馬「まあな、ちょっと犬の躾をしてたら購買の品がなくなってな。」


近藤「あはは、相変わらず大変だな。それより今度柿崎さんも連れてこいよ。またラーメン大会をやろうと思うんだ。」

桃馬「あの変な融合物を作らなければいいけど‥。」

近藤「あはは、あれは禁止令が出たからやらないよ。今度は死ぬかもしれないからな‥ははっ‥。」


尚弥に取っては相当きつかったのだろう。

笑みが次第に暗く沈んでいった。


渡邉「おーい、尚弥?これから放課後の予定立てるから早くこーい。」

近藤「あ、はいよ、じゃあな桃馬。」


桃馬「お、おう。」


放課後の予定か。

そう言えば、あの十人は何してるのだろうか。

異世界で微食活動から美食活動でもしてるのだろうか。でも、ルクステリアで会ったことないし、どこで活動してるか不明で謎があるグループだ。


そんなことを考えながらそばをすすった。



そして‥微食会は。


近藤「それで今日はどうする‥。」

渡邉「二日前に退治した怨霊どもの根を叩く。己の尽きない恨みを晴らすために、罪のない人たちの魂を食らうなど‥許せるかよ。」

番場「おっしゃ、今日は怨霊狩りだな!」

本間「ちょいまちよ。怨霊はいいけど、今日って確か‥俺たちが拠点にしている"リブル公国"のエニカ姫を外に連れ出す算段じゃなかったか?」

星野「えっと‥そう言えば誰が行くのか話すらしてないな‥誰がいく?」


本来なら喉から手が出るほどの大イベントなのだが、現実的に一国の姫を連れ出す行為は大罪に値する。

十人に訪れた折角の恋愛フラグだが、死と隣り合わせである。

十人はそっぽを向き、誰も乗り気じゃない。


清楚で綺麗な赤髪の姫なのだが‥やはり人の子、少しばかりお転婆があるお方だ。


藤井「あの姫様と仲が良いのは誰だっけ?」

茂野「全員‥。」

大西「こうなったら‥姫じゃんでも‥。」

近藤「それエニカ姫に聞かれたら殺されるぞ?」

大西「だよな~。」

渡邉「唐揚げとイコールにされたら、そりゃ怒るよ。それと坪谷くんとマッキーはどうかな?」

坪谷「お、俺はサポートくらいなら‥いいけど。」

高野「俺にやらせたら、序盤で失敗すること間違いないね。」

本間「もう~、マッキーったらお茶目ね?」

近藤「仕方ない‥五個入りの唐揚げ買ってくるから、九人でじゃんけんしろ。」

藤井「いやいや、何しれっと自分を除外してるんだ?」

茂野「あはは、悪いやつだね。」

番場「近藤もやるなら構わないよ?」

近藤「おっ、言ったなせいっちゃん!よーし、覚悟決めろよ。」


近藤は再び五個入りの唐揚げを買いに行く。


そして、じゃんけんに勝った五人の勇者がエニカ姫をエスコートすることに決まった。


そして‥結果は。


近藤、星野、茂野、番場、高野


この五名が選ばれた。


言い出しっぺの近藤と挑発した番場が選ばれ見事フラグを回収していった。

まわりは大笑いする。

茂野「うわぁ最悪だ~。」

近藤「いやいや、おかしいだろ~!俺が金出したのに~!」

渡邉「これはひどすぎるな。」

番場「いや~、これは仕組まれてるな。仁くん何かしただろ?」

星野「いやいや、なんで俺!?俺も勝った側だよ!?」

渡邉「仕方ない、これはマッキーにジャッジしてもらおう。」

高野「俺も勝った側なんだけど‥まあ、いいでしょう。こほん、これは蒼喜が戦犯だと思うね。」

渡邉「マッキー!?」


大西「やべぇ、勝ち組のまわりに味方がいねぇ。」

坪谷「うーんこの際、全員で早いところ怨霊らを叩いて、全員で行くしかないだろ?」

藤井「いや、だめだ。そんなことしたらこの五人が逃げる。エニカの約束を破った暁にはリブル公国で活動できなくなる。」


大西「なら、逆に逃げた五人を晒して俺たちが迎えに行けばある意味安全じゃね?」

坪谷「なるほど、ちょうど"からじゃん"に賭けた近藤もいるしな。」

近藤「はいはい!俺にげませーん。だから、黙っててくれ。」

藤井「ちょろいぞ近藤!?」



とまあ、こんな感じで毎日下らない話をしてるわけだが‥。このお話は、また別の話である。



桃馬「ちそうさん。ん?まだやってるのか。やっぱり五組は変わり者が多いな。」


映果「そりゃどうも。」

桃馬「うわっ!映果いつのまに!?」

映果「春の大戦乱祭では食あたりで全滅‥表は美食家としてレビューを書いてますが、実際の十人の詳細は不明‥私でさえもその領域に踏み込めない謎の組織‥。」

桃馬「え、映果でも知らないのか?」

映果「不覚ですが‥わかりません。尾行しようにも上手く()かれてしまうのです。」

桃馬「‥映果のストーキングを捲って凄いな。仁やマッキーでもだめなのか?」

映果「そうなんですよ~。これではジャーナリストとして傷を負ってしまうので、悔しいけど取材は諦めてます。あと、ストーキングとはなんだ!」

桃馬「今更かよ!?」


まるで猫のように敵意を剥き出しにして桃馬に襲いかかる。

桃馬はたまらず学食から逃走した。




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