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第八十一話 天からの贈り物

アニメや漫画とかでお馴染みの空からの贈り物。

それが女の子だろうが、武器であろうが、物は様々だ。


ここで想像してほしい。


何気もなく空を見上げてたら得体の知らない"何か"が落ちてくるビジョンを。


普通なら恐怖であろう。


人なら男女の区別をつける前に地面へ直行し、トマトソースが出来上がるだろう。

もし、キャッチしたとしても両腕両足が粉砕骨折、あるいは下敷きからのダブルトマトソースの完成である。


また、物ならどうだろうか。

たとえば剣ならどうか。


恐らく気づいた時には死んでいるだろう。

例え剣とわかったとしても、キャッチする者は少ないだろう。

また、石ならどうだ?絶対に誰も取ろうとしないだろう。

そんなのほぼ隕石と変わらない。



そしてここで本題に入る。


ジェルドに殴り倒され上を向いたとき、十メートルくらいの位置で人影が目に入った。


そして五メートル付近で人影の正体が吉田先生と判明、一秒後には下敷きである。


女の子ならまだしも‥男教師に下敷きにされるのは屈辱感は極みであった。


俺の記憶はここまでだ。後はその場にいた仲間の話‥。



シャル「ぬはは!ひどい連鎖なのだ♪」

ギール「‥本当に厄日だな。」

ディノ「呑気なこと言ってる場合ですか!?早く回復させないと‥。」


シャル「とは言っても、余の魔力はすっからかんなのだ。ディノが何とかしてくれないか?」


ディノ「わ、わかりました。」


吉田「いってて、なんか、助かった‥ん?なっ!?桃馬!?」


桃馬がクッションになり皮肉にも助かった吉田は、慌てて桃馬から降りた。


ジェルド「桃馬!桃馬!しっかりしろ!?」


血相を変えて桃馬にかけより、肩を掴み揺さぶった。


吉田「よせジェルド!?揺らしちゃダメだ!とにかく、回復魔法だ‥。」

ディノ「吉田先生、私も手伝います。」

吉田「すまない、助かるよ。」


憲明「せ、先生!?早く逃げないとヤマタノオロチが来ますよ!?」


ギール「わふっ!?ヤマタノオロチだと!?なんで、そんなのがこんなところに居るんだ!?」

豆太「ヤマタノオロチ?日本書紀の伝説のですか?」

吉田「ま、まあ似たような物だな。」

豆太「おぉ~。」



豆太の奥底に眠る好奇心が掻き立たされた。

その瞳はキラキラと輝かせ、一目見ようとしている。


ギール「ま、豆太?まさか、見たいとか言うんじゃないよな?」

豆太「はいすごく見たいです!こちらの世界に住まう"生きる伝説"を一目見てみたいです!」

ギール「だ、だめだ。ヤマタノオロチは獰猛(どうもう)であらゆる生物を食らい尽くす危険な生物なんだよ。」

豆太「伝説通りですね♪」

恐怖よりも好奇心が勝った豆太はぐいぐいと一目見ようとする。

もはや、この小さな豆狸を止められるのは、直人の一族か、桃馬くらいであろう。


そんなことをしていると待望のヤマタノオロチが姿を現した。

八首の大蛇は品定めをしているのか。

部員たちを見渡した。


豆太「す、すごい。」

シャル「久々に見たけど相変わらず大きいのだ。」

ギール「ま、豆太!シャル!俺の後ろに隠れていろ!?」

ディノ「あわわ!?シャル様、危ないですよ!?」

吉田「くっ‥これはまずい。」


もはや万事休す。

誰が食われてもおかしくない状況に、顧問の吉田は焦る。更にシャルが前に出ると八首のうち三首がシャルに近寄った。


ディノ「シャル様!?」

ギール「ばっ、シャル!」

気づけば刀を抜き足は前に出ていた。

だが、シャルとヤマタノオロチの様子がおかしい。会話でもしているかのように見つめ合っていた。


シャル「ふむふむ、みんな安心するのだ。こやつは安全なのだ。」

ギール「なっ!な、何でそう言いきれる!?」

ディノ「もしかして、言葉がわかるのですか?」

シャル「当たり前なのだ。余は力はなくても魔王、相手がどんな種族であろうが、この世界の出身者であれば言葉など造作もないのだ。」

ギール「そういいながら近所の犬とは話せないようだが?」


シャル「あ、あやつらは馬鹿だからな、余の声も録に聞こうとしないのだ。そ、それより、あやつらはこの世界の出身じゃないのだ!そもそも余の声がわかるはずがない。」


憲明「二人ともそんな話をしてる場合じゃ‥。」


シャル「まぁまぁ、落ち着くのだ。こやつは吉田に様があるみたいだぞ?」

吉田「お、おれ!?な、なんで‥。」

シャル「さっきから、遊べ遊べとうるさいのだ。昔飼ってたのではないか?」

吉田「‥飼ってたか‥、うーん、」


吉田の脳裏に浮かんだのはヤマタノオロチの尻尾にある白い斑点模様であった。

吉田は更によく見るため近寄ると、ヤマタノオロチは嬉しそうに尻尾をドンドンと地面に叩く。


吉田「こ、こら、尻尾を動かしちゃ確認できないだろ?」

シャル「それにしても、ここまでヤマタノオロチが懐くのは珍しいのだ。」

ディノ「えっ、えぇ‥私たち魔族ですら恐れているのに‥どうやって手懐けたのでしょうか。」


ギール「こ、こんなに大人しいヤマタノオロチは初めて見た。」

ジェルド「‥あ、あぁ、俺が知っているのと天と地の差がある‥。普通なら獲物が目の前にいるなら襲ってくるはず‥。」


豆太「ふあ~♪すごくひんやりしてて鋼みたいな固さ‥す、すごい!んあっ♪くすぐったいですよ♪」


気づけばヤマタノオロチの体を触り出す豆太。

愛くるしい豆狸ショタに二首が近寄りなめ回した。


ギール「なっ!?豆太いつの魔に!?」

ディノ「ま、豆太!?戻ってきてください!?」

シャル「ぬわぁ!ずるいのだー!」


楽しそうにふれ合っている豆太が羨ましくなり、シャルも抱きつき始めた。


ギール「あ、シャル!?」

ディノ「あ、あわわ!?どうしましょう!?」


予知できたはずの展開に兄と弟は困惑した。

恐ろしいイメージが邪魔をして助けようにも足が前に出ないのだ。


だが実際は、小さい子と戯れているヤマタノオロチの光景ではあるが‥何とも言えない。


豆太「へぇ~♪"サタン"さんって言うのですね♪僕は、豆太っていいます♪」

シャル「ふむふむ、吉田にそんなエピソードが‥。」


吉田「‥サタンって‥‥い、いや‥まさか‥。」


"サタン"の名前に心当たりがあった。

だがそれは、異世界との交流文化が始まって間もない頃のこと。当時吉田先生は高校生で異世界に入り浸っていた頃の話。


吉田が単身で採取クエストをしていると、小さな蛇がゴブリンにいじめられている現場に遭遇。吉田はゴブリンと話をつかせて小さな蛇を助けた。


その蛇は現金な奴だった。


背中に乗って竜宮城(りゅうぎゅうじょう)へ‥みたいなことはなく。


以来片時も離れようとせず、

決まって肩に居座った。


中二病全盛期の吉田少年は、その蛇に"サタン"と名付けた。漢字で書くと紗曇(さたん)だ。



学校の時でも、飯を食う時でも、寝る時でも、一緒だった。


だがある時、ルクステリア付近でいつものように討伐クエストをしていると、突如"サタン"は吉田少年のもとから姿を消した。

原因はわからないが、その時吉田は深く悲しだ思い出があった。


そして今、偶然にも名前が同じヤマタノオロチが目の前にいる。もし、サタンならこの付近にいるはずもないヤマタノオロチがいることも合点がいく。



吉田「‥紗曇(さたん)‥お前なのか?」


数年越し奇跡の再開を信じて吉田は問う。

すると、三首が近寄って頬擦りをした。


シャル「なんじゃお主ら♪人懐っこい奴なのだ~♪」

豆太「んんっ♪ご主人ご主人って、連呼してますよ♪」


吉田「そうか‥そうか‥うぐっ‥バカやろ‥一体どこほっつき歩いていたんだよ。」

甘えるサタンに吉田は三首の頭を撫でた。


サタンの五首は言葉が通じる二人に語りかけた。


豆太「ふえ!?数年も離ればなれだったのですか!?」

シャル「なんと‥それは悲運なのだ。」


サタンは数年前に起きた別れの悲劇を語った。


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