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第七十六話 絢爛桜華と嫌われ恋人

二年一組の授業は午前までは至って普通であった。

しかし、午後の授業が始まる頃、桜華の席には、クールでカリスマ溢れるお嬢様が座っていた。これには、数学教師兼担任の吉田先生を始め、クラスメイトたちは全員が桜華様を凝視しては"そわそわ"とし始める。ちなみに、主犯の小頼は桜華様のお仕置きによりリフィルと共に保健室で蕩けていた。




吉田「え、えっと‥桜華‥さんですよね?」


桜華様「担任であろう先生が失礼ですね?」


吉田「なっ!?せ、性格も変わっているのか。桃馬、これはどう言うことだ。」


急変過ぎる桜華の態度に、

吉田は思わず桃馬の元へ駆け寄った。


桃馬「えっと、この方はですね。えーっと、その"もう一人の桜華"的な?」


桜華様「‥ふーん。」


現状をうまく理解出来ていない桃馬が、苦し気な説明をしてしまうと、桜華様から冷めた視線が飛んで来る。


桃馬「ひっ、お、桜華様です。あれですよ‥二重人格的な‥。」


桜華様に恐怖を感じた桃馬は、

思わず小声で、吉田の耳元に憶測を伝えた。


吉田「な、なるほど‥それなら納得だな。こほん、失礼しました桜華様、それでは授業を始めさせていただきます。ほら、みんなも静かにしろ。」


さすが吉田。学園教師は伊達ではない。

保健室で蕩けている主犯の小頼はさておき、

直ぐに切り替えては授業を再開する。


しかし、クラスメイトたちは、桜華様が気になるのだろうか、チラチラと視線を向けては授業に集中できないようだ。


それは吉田先生も同じこと。


黒板に問題を書いている際は特に、

背後から感じた事がない圧を随時感じていた。


吉田先生は、思わず"ちらっ"と桜華様を見ると余裕な表情でこちらを見ていた。桜華も勉強はできる方であったが、桜華様は更にできるのだと思った。


しかし、実際は‥。


桜華様 (うーん、全くわからないわ‥。)



結局の所。

ただ葛藤しているだけであった。


勉学については、

いつもの桜華と比べて全く興味がない様だ。


これに桃馬は、微妙な異変に気づいて恐る恐る横目で覗くと、ノートも取らずに数学の教科書に落書きを始めていた。


桃馬(おーいおい、まじかよ‥まさか、桜華様って勉強嫌いなのか‥やーばい、変な知識与えたらお嬢様ギャルになりかねない。)


桜華様「‥クスッ、うふふ。」


男子「お、おい‥桜華様が笑ったぞ。」


男子「すげぇ、こんなにムズいのによく解けるな。」


女子「さすが、桜華様~。」


違う、違うんだ!

桜華様は諦めて遊んでいるんだ。

まずい、このままでは桜華に戻った時が大変だ。いやいや、その前に母さんと親父に会わせられないだろ!?何とかして戻さないと…。


吉田「桃馬?おーい、桃馬!」


桃馬「ふぇ、は、はい!」


吉田「桜華様にみとれるのはいいが、今はこっちだぞ?」


桃馬「は、はい‥すみません。」


桜華様「ふん、チラチラ見ないでくださいませんか?正直、あなたの様な人に見られると穢れますから。」


桃馬「ぐふっ‥ごめんなさい。」


まさかの塩対応にクラスメイトたちは直ぐに察した。

桜華に好かれていて、桜華様に嫌われているのだと。


正直、公開処刑も良いところだ。


こんな感じで残りの授業を受ける訳だが、

心身共に大きなダメージを受けた。


しかし、桜華様のあのゴミを見る様な目は、

少し新鮮でたまらなかった。



そして放課後を迎え、


異種交流会部室にて。


時奈「ふむぅ、君が桜華様か?なるほどなるほど‥雰囲気が全く別人だな。それで、どこまで進んだのだ?」


桃馬「進むより後退し始めてます。」


桜華様「ふっふっ、時奈よ?この男は私の敵だ‥進むわけがないだろ?」


時奈「そう言いながら一緒に来た様だが?」


桜華様「私も部活とやらに興味があります。いくら記憶を共有していると言っても、全て理解しているわけではないですからね。」


時奈「そうか、異種交流会に興味を持ってくれることは、とても喜ばしいことだ。」


からかっても全く揺るがない桜華様。

むしろ普段より堂々と振る舞っている。


クールな姿も新鮮だが、

やはり桜華は、いつもの方が良いと時奈は思った。


そんな時、桜華様は少し恥ずかしそうな素振りで尋ねた。


桜華様「そ、それより‥し、白い"もこもこ"した女の子と豆狸くんはどこにいるのですか?」


時奈「白い"もこもこ"した女の子と豆狸‥あー、エルゼちゃんと豆太くんのことか。それならまだ来てないぞ?」


桜華様「そ、そうですか‥。でも来るのですよね?」


一瞬、少し残念そうな顔をするも、

希望に賭けたような顔で時奈に言い寄った。



時奈「う、うむ、安心してくれ欠席の話は聞いてないから。きっと来るはずだ。(す、すごく近い‥それに爽やかないい香りだ。‥)」


桜華様「ふぅ。それを聞いて安心しました。それなら待ちましょう。」


どうやら桜華様は、相当エルゼと豆太に会いたいのだろう。

来ると分かれば瞬時に近くの席に座った。


しかしその席は、宿敵桃馬の席であった。


桃馬「あ、あの桜華様?」


桜華様「あら、まだいたのですか?もうあなたに様はありませんよ?」


桃馬「いえ、そこ俺の席‥。」


桜華様「えっ?ひやっ!?け、穢らわしい!」


露骨な暴言を吐きながら瞬時に席を立った。

この様子に、相当桜華様に嫌われているのだと時奈は改めて察した。普通に見たら単なるいじめである。


これには、クールな桜華様を新鮮に感じ始めていた桃馬の心でも、流石に心が泣いた。


もはや同情しかない。


誰でもいいから早く来てくれと願う時奈であった。


結局、その願いが叶うのは数分後の事であった。




一方、その願いが叶う数分前の事。


そこには、

異種交流会の部室に向かう二人のバカップルがいた。


ルシア「今日の部活は何かな~♪」


京骨「…出来るなら、昨日みたいな触手トラップのないダンジョンに行きたいな。」


ルシア「あはは昨日はすごかったもんね~♪危うくおしりを‥。」


京骨「だー、うるせぇ!仮にも皇女なら品を持てよ。」


ルシア「むぅ、仮って何よ~。私は正真正銘のシフェルム皇国第三皇女よ?この前の大戦乱祭で身を持ってわかったでしょ?」


京骨「なっ、そ、それは‥そうだけど‥。」


ルシア「あの時の京骨素敵だったな~♪」


京骨「‥ふ、ふん。からかうなよ。」


ルシア「クスッ♪そう言えば、桜華ちゃんの様子が変わったってみんなが騒いでたけど本当かしら?」


京骨「あー、そう言えば、もう部室に居たりして‥。」


相変わらずのラブラブな二人は今日も平和であった。


こんな調子で部室にたどり着くと、

いつも通り部室の扉を開いて入室した。


桜華様「あっ、来ましたか‥って、何だ淫魔と骨ですか。」


待ち焦がれた癒しとは欠けはなれたリア充の到来に、

期待を裏切られた桜華様は、(けな)しとも思える冷たい声を飛ばした。


ルシア「い、淫魔‥?」


京骨「ほ、骨‥?」


突然の冷たい貶しに、キョトンとする二人。


噂通り、いつもの桜華とは全く違い、

想像を超えた変わりっぷりに整理が追いつかなかった。


これに桃馬は慌てて二人に駆け寄る。


桃馬「ふ、二人ともすまない!今の桜華は、桜華様モードで‥、その…、いつもの桜華とは別人なんだよ。」


京骨「そ、それにしても変わりすぎないか?」


ルシア「そ、そうよ。桃馬が変なことしたんじゃないの?」


桃馬「お、俺じゃないよ!?犯人はリフィルと小頼だ!?」


京骨&ルシア「ふーん、浮気とか?」


桃馬「違うよ!直人みたいなこと言うな!」


その頃。


直人「へっくしゅん。」


エルン「クスッ、直人のくしゃみは面白いよな。」


リール「そうそう♪鼻でしてるみたいだよね♪」


晴斗「それで、よく鼻水でないよな?」


直人「風邪を引いてる訳じゃないしな。それに、わざわざ大きなくしゃみをする人いるけど、普通にやかましくて俺は好きじゃないからな。」


晴斗「あー、それ分かるな。よく年取るとやりがちになるって聞くけど…、うーん、でもどうなのかな。直人のくしゃみは、頭に力を入れてしまう様に見えるし、下手をしたら脳の血管を破裂させるかもしれないからな。」


リール「っ!?なっ、ななっ、直人!?へ、下手に我慢しなくていいんだぞ!?」


エルン「そ、そうだ!くしゃみは仕方がないものだ。無理して止めることはないぞ!?」


直人「お、おいおい、まさか。俺の脳内血管が破裂すると思ってないか…。」


リア充に落ちた男の事はさておき、

桜華様たちの視点へと戻す。


桜華様「この男が浮気しようと私はかまわない。」


時奈「お、おいおい、そんなこと言っていいのか?」


桃馬「い、いやいや、俺は桜華しか‥。」


桜華様「私はこの男の彼女ではないからな。例え表の私が好きだとしても私は認めない。私の処女はお前の様な低俗に渡すものか。」


桃馬「ごはっ!」


前触れもない渾身の一撃が桃馬のみぞおちに入った。


もはや桃馬を彼氏とも思っていない桜華様。


例え桜華と結ばれてもセキュリティーの存在がある時点で、大人への発展は困難である。


もし強引に襲えば…。


おそらく、

死‥去勢‥豚の餌になるか。


である。




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