第七十五話 桜華様ご入学
春の大戦乱祭から十日後の昼休み。
ようやく先の大戦乱祭で、
卑劣な戦犯を働いた西軍幹部らの裁判が始まった。
裁判が下される基準は、
職員会議と東軍幹部会議の意見を基に、
厳選なる判決が下された。
西軍総大将 新西荒儀
二年六組代表 新西狂季
この二名はA級戦犯により、
後日行われる納涼祭の幹事を言い渡された。
B級戦犯は
一条是清、メルク
各クラス代表者
以上の者は、納涼祭の執行役員を言い渡された。
ちなみにA級戦犯者は、国民的アイドルグループである"ユキツバキ"を招待させなければ退学確定。また、A、B級戦犯者たちは、決して私情に囚われて愚行に及んではならない。これを破った者は問答無用て退学に処すものである。
主要の警告を読み上げられると、
続いてC級の戦犯者が読み上げられた。
C級に該当した者は、A、B級の者たちに賛同した者。
つまり便乗して西軍に着いた生徒たちである。
その者たちには、
学園の清掃や雑用を三ヶ月間命じられるだけであった。
また一部では、強要され渋々賛同した者、
個々の理由で西軍に着いた者には、戦犯から除外された。
そしてこの結果は、
自称ジャーナリストである亀田映果より、
号外が刷られると瞬く間に学園中に広まった。
号外の一面には、今年の納涼祭にて国民的アイドル"ユキツバキ"が来ると、堂々と誇張して書かれていた。
映果「号外~号外だよ~♪この年の納涼祭は国民的アイドル"ユキツバキ"が来る確率濃厚!」
映果の呼び掛けに多くの生徒たちが、
映果の号外を求め、学園中に大歓声が響いた。
もちろん、戦犯者への罰則内容も書いているわけだが、
大半の生徒たちは見向きもせず、一部だけに見られていた。
桃馬「ふぅ、これで暫くは安泰だな。」
桜華「うーん、この罰を見る限りだと、その人にできる範囲の罰みたいだね?」
桃馬「そうだな。まあ、出来ないことを要求するよりは、出来るギリギリの所で苦に感じるくらいが、ある意味ちょうど良いだろうな。」
憲明「あはは、確かにな。普通に退学させるのも手だけど、間接的な嫌がらせをする可能性はあるからな。」
桜華「な、なるほど。敢えて学園に残して動きを封じるのですね。」
憲明「そう言うことだ。まあ、力のない生徒を退学する分には良いけど、力のある生徒を退学にしても効果は薄いからな。」
一見優しそうな判決であるが、実際桃馬たちに取っては、
新西兄弟の行動を制限した上、庶民では実現できないイベントを招かせると言う最適な判決結果に満足していた。
しかしその隣には、春の大戦乱祭から十日も経つと言うのに、春の大戦乱祭で恋人の小頼に心と体を揉みくちゃにされ、未だに落ち込んでいるジェルドがいた。
ジェルド「はぁ‥楽しそうだな。俺の心はまだマイナス領域だよ。」
桃馬「うぐっ、そろそろ元気だせよ?縛られながら目が堕ちたジェルドも可愛かったぞ?」
ジェルド「‥う、うるせぇ!も、もうお前を抱かないと元気になれないんだよ!」
桃馬「お、おまっ、こんなところで何言ってやがる!?」
ジェルドのいつもの大胆な告白に回りの男女が騒ぎ始める。
男子「おぉ!やれやれジェルド!男を見せろ!」
女子「きゃあ~♪ジェルドったら乙女~♪」
女子「桃馬!あなたの犬なら受け止めてやりなさいよ!」
桃馬「う、うるせぇ!って、憲明!?」
憲明「悪いな桃馬‥たまには受け入れてやれよ。」
ジェルド「グルル‥と~ま~。」
憲明に羽交い締めにされ、
この好機に駄犬は目を光らせながら桃馬に迫る。
ジェルドは完全に発情していた。
桃馬「く、くそっ!憲明考え直せ!あとで後悔するぞ!」
憲明「少しだけならいいだろ!ずっと"わふわふ"してて可愛そうなんだよ!穴の一つくらい良いだろ?減るもんじゃないし。」
桃馬「正気か憲明!?普通に減るから!プライドも人権も減るわ!?てかお前ら見てないで助けろよ!?」
男子「そんな冷たい男じゃ桜華さんと釣り合わないぞ?」
男子「男を見せるチャンスだよ!頑張れ!」
女子「桜華ちゃんも目を反らさないで見なさい!桃馬の貴重な勇姿を見ないと損よ!」
桜華「ふぇ!?そ、そんな無理ですよ!そ、それより、リフィルちゃん、小頼ちゃん拘束術を解いてよ!?」
リフィル&小頼「むり~♪」
桜華「そ、そんな!?」
ジェルド「‥はぁはぁ、とうとうこの時が来た‥。」
桃馬の顎をくいっと上げ、
二人の距離約二十センチに迫った‥。
桃馬「うぐっ、よ、よせ‥や、やや、やめろ!?」
二十センチの距離が十センチ、五センチと迫る。
桃馬は恐怖より目を閉じた。
すると、ジェルドは桃馬の口ではなく首筋をなめあげた。
男子一同「おぉぉぉ!」
女子一同「きゃぁぁ♪」
教室に大歓声が響く中、瞬時にスクープの匂いを嗅ぎ付けた亀田映果が、号外配りを切り上げカメラを構えて取りまくった。
ジェルド「ぺろぺろっ‥ちゅ、ふっどうした?震えてるぞ?」
桃馬「ば、ばかかお前は‥こんなの気持ち悪いだけだ。もうやめろ‥ひっ!?」
ジェルド「ぺろぺろっ‥桃馬は俺の物だ‥。それを教えてやるよ。」
ジェルドの責めは過激になり、左手が制服の中に入り込む。桃馬はびくびくと跳ね上がり恥辱を与えられた。
桃馬「くっ、んんっ‥こ、ころ‥せ。」
ジェルド「ぺろっ、へぇ~、くっころか‥かわいいな。」
とうとう顔を桃馬に近づけ、桃馬の口を奪う。
桃馬「んんっ!!?」
女子「ぶはっ!」
女子「はわわ!と、とうとうしちゃった~!」
男子「ごくり‥俺けもみみ男子なら抱けるかも‥。」
男子「お、俺も同意見だ!」
男子「お、お前ら正気になれ!戻ってこい!」
カオスな空間に倒れる者が続出する中、
桃馬とジェルドの夢の様な接吻は、舌まで入れる所まで達した。
羽交い締めしている憲明が恐らく一番気まずいだろう。
だがそんな時、桃馬の体に力が抜け始め、憲明に寄りかかると、憲明は無意識に桃馬の体を触り始めた。
まさかの憲明参戦に、まわりは更に大歓声をあげた。
桃馬「んはっ‥お前ら‥ゆるひゃんんっ!」
ジェルド「んはっ、うるさい口だな?少し黙ってな‥。」
桃馬が抗議をすると直ぐにジェルドは口で塞いだ。
もちろん、濃厚な接吻である。
これには桃馬の脳裏も真っ白になり始め、
気絶寸前まで追い詰められた。
このまま行けば、桃馬の完落ちは確実である。
しかしそこへ、意外な救世主が動く。
映果「さてと、これ以上はやり過ぎかな?そろそろ記憶を消さないと本が売れなくなっちゃうからね~♪」
映果は満足そうに笑みを浮かべると、
お得意の禁断の魔術、記憶消去術を使った。
すると、小頼とリフィルを除く全員が一瞬で倒れた。
起きた頃には、
綺麗に桃馬とジェルドがじゃれついた記憶がないことだろう。
小頼「さすが映果ちゃん♪」
リフィル「商売上手~♪」
映果「えへへ~♪これで五回目かな?」
小頼「いや~♪いいね~♪実は何回も唇を重ねてるのに‥記憶がないからリセットされてて‥今度は入れるところまでしようよ!」
映果「いいね~♪でもさすがにそれはできないかな~?ばれたら退学されるかも知れないからね。」
今でも充分退学させられる要素は兼ね揃えているが、
それでも退かずに前に進む彼女はある意味強者だ。
すると、桃馬たちが倒れて数十秒後、
記憶を消された生徒たちが起き始める。
桃馬「んんっ、あれ‥なんでここで寝てるんだ。確か、映果の号外が出てて‥。」
ジェルド「くぅーん♪」
桃馬「げっ、ジェルド!?な、何スリスリしてるんだよ!?」
ジェルド「なんか知らないけど‥気分がいいんだ~♪」
桃馬「だからって、引っ付くな!?」
憲明「ふぁ~、なんだ?お盛んなら多目的教室でやれよ?」
桃馬「憲明‥なんか、お前を殴りたい気持ちなんだが‥。」
憲明「おっと奇遇だな。俺も殴られる様な気がしてるんだよな~。あばよ!」
桃馬「お、こら逃げるな!助けろよ!?」
そう言い残すと素早く逃げた。
桜華「んんっ、はれ?わ、わたひねてた??」
リフィル「おはよう桜華ちゃん♪」
桜華「リフィルちゃん?それと小頼ちゃんも‥私‥いつの間に寝てたの?」
リフィル「えっと、運悪く教室に入って来た"眠り蝶"の胞子にやられたみたいなんだよね~♪」
※口裏合わせ技
その1
眠り蝶のせいにする。
桜華「うーん、また眠り蝶か~。でも、眠り蝶って結構危険だよね。いつも不思議に思うけど、どうして交通事故とかの要因にならないのかな。」
リフィル「うっ、眠り蝶は野生にはいないよ♪生物部から逃げ出したんだよ♪」
桜華「‥うーん、それなら、いつもどうやって捕まえてるのかな?外に出たら取り返しが‥ふにゅっ!?」
リフィル「‥勘の良い桜華ちゃんは嫌いだよ♪でも、それが愛らしいんだけど♪」
桃馬「‥また、何してるんだよ。」
ジェルド「うぶぶっ‥。」
小頼「まぁまぁ、気にしないで♪と言いたいけど‥桃馬は何してるの?」
桃馬「あぁこれか?ジェルドが下半身に手を伸ばしてきたから、躾のため絞めてるんだよ。」
小頼「二人は本当に仲が良いね~♪」
桃馬「そりゃどうも、こんな変態じゃなければ良いやつなんだけどな。」
小頼「もう~、そんなにツンツンしないでジェルドの愛を受け止めてあげなよ♪」
桃馬「いやいや、何勧めてるんだよ!?彼氏を売るな!」
小頼「でも~、桃馬がジェルドの愛人になるのも良いかなって~。」
桃馬「す、好きに言ってろ。それより今の衝撃で桜華がまた桜華様になったりして‥ちらっ‥なっ!?。」
冗談で言ったつもりだったのだが‥。
ちらりと桜華を見ると桜色の髪がパープル色に変わっていた。
桜華様「痛いですね‥リフィル‥何するのですか?」
リフィル「へっ?」
クールな口調とカリスマに溢れた眼差し‥。
桜華と目を合わせたリフィルは硬直した。
目の前にいるのは、間違いなく桜華様だ。
桜華様「どうしたのですか?私を後方から叩くとは‥それ相応の事なのですよね?」
桜華様は下から見上げるように、
クールな顔を近づけて問う。
リフィル「ふぇ、あ、それは‥。」
小頼商会のためとはいえ、安易に手を上げた事を後悔するリフィル、そんな様子を見透かした桜華様は笑みを浮かべた。
女子「ね、ねぇねぇあれって桜華ちゃんだよね?」
女子「そ、そうだと思うけど‥パープル色の髪‥綺麗。」
男子「な、なんだろう‥服従したい。」
男子「下僕になりたい。」
男子「俺の穴を"自主規制"してほしい。」
外野は桜華様の魅力に引かれ、
変態もいれば魅了される人もいた。
桜華様「なるほど‥邪なことを考えていたようですね?まあそもそも、リフィルが理由もなく人に手を上げる子ではないですからね‥。」
リフィル「お、桜華ちゃん‥。」
桜華様は、リフィルの肩に手を置くと、
直ぐに力強く握り始めた。
リフィル「いたたっ!?桜華ちゃん痛いよ!?」
桜華様「クスッ‥手癖が悪い子にはお仕置きですよ。」
リフィル「ひっひにゃぁぁー!?」
(少し不健全にて省略。)
小頼「あ、あぁ‥う、動けない‥ど、どうひて!?」
桜華様「小頼も逃がさないわよ?さてと、あなたにはどうしようかしら?」
リフィル「はへぇ~♪」
小頼「あ、あはは~、お、桜華ちゃ、じゃなくて、桜華様どうかお慈悲を~!」
桜華様「もちろん、だめよ♪」
小頼「ひゃう!?」
桜華様は、憎悪が張り付いた様な笑顔で小頼に抱きつくと、そのまま耳元に、身の毛がよだつ妖艶な声で囁いた。
桜華「小頼ちゃんの恥ずかしい姿を‥ジェルドに晒しても良いよ?ふぅ~♪」
小頼「ふぁっ‥そ、それは‥それだけは‥。」
桜華様「クスッ‥それとは何かしら?小頼もリフィル見たいに耳が弱いのかしら?」
小頼「ち、ちがっ‥そんなことはないよ。」
桜華様「どうかしらね‥はむっ♪」
小頼「みゃう!?」
人前であろうともお構い無しの桜華様は、
強がる小頼の耳にあまがみをした。
小頼はたまらず淫靡な声を漏らし、その"ユリユリ"しい光景に、再び外野は大歓声を上げた。
男子「はぁはぁ、あれは桜華さんじゃない。もはや桜華様だ!あぁ‥下僕になりたい。罵ってほしい。」
男子「俺‥今なら桜華様の犬になれる。」
男子「時期生徒会長に相応しい!」
女子「あぁ~、お姉さま見たい‥。素敵~。」
女子「桜華様にめちゃくちゃに○○れたい~。」
桜華様のカリスマ溢れるドSっぷりに、
どこもかしこも桜華を崇め始めた。
犬になりたい下僕、もみくちゃにされたい変態、
次期生徒会長推す者など‥。
このままだと桜華様は、学園の女帝になってしまうだろう。
桃馬「‥この学園終わったかもな。」
桃馬の眼には、桜華様を崇拝する同級生たちが、
こぞって暴走する未来が見えた気がした。
その後、
桜華様の話は瞬く間に学園中に広がり、
大ニュースとなった。
当然、午後の授業は桜華ではなく‥、
桜華様が授業に参加なされたのであった。