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第七十二話 春の大戦乱祭(12) 逃げ場のない狩り場

激戦を繰り広げた春の大戦乱祭は、

東軍の勝利に終わった。


これにより三年六組、新西(あらにし)荒儀(あらのり)を筆頭に続々と西軍の幹部たちが、白日(はくじつ)の元で制裁を受けることであろう。



いつぞやか、新西が御前会議にて豪語した、

"新龍楼(しんりゅうおう)党"も何も残せずに解体。


幕末時代の"土佐勤王党(とさきんのうとう)"をヒントに付けられた名前の様だが、結局はただの名前負けであった。



それから、

生還した東軍の生徒たちは高らかに凱旋し、

校長先生から賛辞が送られている頃。


気になるリタイヤ者たちはと言うと‥。

牢屋とも言える所へ、

東軍と西軍に分けられて収容されていた。


ここで注目する東軍エリアでは、

なんと可愛い豆狸が女子たちに狙われていた。


話を少し時を戻すこと一時間前のこと。


二年女子「豆太くーん?どこ行ったの~?」


三年女子「お姉さんたちと遊ぼう~?」


男女問わず、色々とそそらせてしまう豆太は、リタイヤしてから早々に女子生徒からの洗礼に合っていた。


無作為に尻尾をもふられ、耳ももふられ、体を触られ、危うく幼い貞操すら奪われそうになった程である。


そのため豆太は、

学園内で唯一信頼できる直人の元へと急いでいた。


豆太「はぁはぁ‥こ、ここも‥お姉さんたちが‥。うぅ、どうしてこんなことに‥。僕そんなに可愛くないよ‥。」


自分の可愛さに自覚がないのショタっ子は、

なぜ自分が標的にされるのか理解ができなかった。


豆太「うぅ、若様‥どこにいるのかな‥。」


曲がり(かど)で女子たちの動きを監視に夢中になっていると、背後から接近してくる同級生の男子たちの気配に気づかなかった。


二年男子「おっ?こんなところに、かわいい狸を発見~♪」


豆太「はうっ!?」


二年男子「確かギールの‥ここで何してるんだ?」


豆太「えっ、あ、あぅ‥えっと‥その、わ、若様を‥。」


突然後ろから声をかけられて怯える豆狸くんは、

パニック状態のせいで思う様に話せなかった。


二年男子「お、おいおい、そうパニックになるなよ?確かギールの弟‥だっけ?」


同級生の質問に、うまく話せない豆太は、

何回も頷きながら弱々しい声で返す。


豆太「で、でも‥わ、若‥いえ、両津直人さんの所に行きたいのですけど、どこにいるのかわからなくて‥。」


二年男子「あー、それなら案内してやろうか?」


豆太「い、いいのですか!」


二年男子「まあな、しっかりついてくるんだよ?」


豆太「は、はい!」


とても優しい"知らない同級生"にホイホイとついていく豆狸くんは、これで助かったと思い安堵していた。


だがしかし、


多くの人たちは小さい頃に、"知らない人について行かない"と教えられたことでしょう。


知らない人に誘導される時は、

その半分以上が、誘拐などの良くない展開の類いである。


しかし、そんな外の事情に(うと)い豆太は、

親切にされた喜ばしさから、つい付いて行ってしまったのだ。


そのため知らない同級生たちは、

当然、直人のいるところではなく。

ある意味、餓えた男たちの所へ案内された。


豆太「わ、若様‥ど、どこにいますか?」


二年男子「直人はここにはいないよ‥。」


豆太「ふぇ?」


恐らく十人はいるだろうか、

けもみみ同好会の男たちがお菓子を抱えて近寄る。


二年男子「やあ、豆太くんいらっしゃい。」


豆太「あ、あの‥ぼ、僕、若様の所に‥。」


信じて付いて着たと言うのに、

案内されたのが見知らぬ同級生が居る部屋であったことに、豆太は動揺し震え始める。


二年男子「そ、そう怯えないでくれよ?もし、騙したのなら謝るし、豆太きゅんに危害を加えたりしないから安心してくれ。」


二年男子「そうそう、下手に手を出したら後が怖いからな。」


二年男子「けもみみ同好会の名に懸けて豆太くんを尊重するから、ちょっとだけ、ね、ちょっとだけ、狸である君のことを調べたいんだよ。」


豆太「や、やっぱり、体目当てですか!?」


二年男子「ご、誤解するな!?少しもふらせてほしいだけだ。頼むこの通り!」


一人が土下座で頼むと、他の全員も後に続く。

動揺する豆太はすぐに断ろうと思ったが、誠意を見せた光景に断る勇気が持てなかった。


豆太「そ、それじゃあ‥す、少しだけなら‥。」


二年男子「本当か!ありがとう豆太くん!」


豆太の寛大な許しに、

けもみみ同好会の生徒は歓喜した。


豆太「で、でも‥本当に少しですよ?終わったら‥わ、うぅん、両津直人さんの所に案内してくださいよ?」


二年男子「もちろんだ!」


こうして、あてにならない口約が結ばれ、

部屋の内鍵を知らぬまにかけられた。


豆太はこれから十数分間、

けもみみ同好会の玩具にされるのだった。



豆太が監禁されてからまもなくして、ギール、シャル、ディノもリタイヤエリアに入った。


シャル「うぅ、あれが聖母と言うものか‥。」


ギール「何回も言うな‥御影さん‥はぁはぁ。うぅん!俺には桃馬が‥。」


ディノ「不可侵と感じるけど‥お嫁さんにしたいこの気持ちは何なのでしょうか。きっと、毎日楽しい日々が送れそうな気がします。」


色んな意味でふわふわとしている三人。


シャルは御影に魅了され、ギールは御影の犬になりたいと思い、ディノは恋心と言うものを植え付けられた。


シャル「ぬはっ!こうしてはおられぬぞ!豆太はどこだ?」


ギール「そ、そうだな。女子たちにもふられ過ぎてトラウマになってなければいいけど‥。」


ディノ「っ、そ、それなら早く、大切な豆太を見つけましょう!」


既に豆太が男に襲われているなど、

知るよしもない三人は、早速捜索に乗り出す。


ギール「クンクン‥うーん、人が多すぎて豆太を追えない‥どうしよう。」


シャル「こ、こうなれば手分けして探すのだ!」


言い出しっぺのシャルは、

早々にギールの背中によじ登った。


どうやら自らの足で動く気はないようだ。



ギール「おい、シャル?"手分けして"っての意味わかってるのか?」


シャル「余はもう疲れたのだ~!余が上から探すからギールは余の足となれ!」


ギール「‥はぁ、それじゃあ人だかりを探せ。そこでもふられてるかもしれないからな。」


シャル「わかったのだ!」


元気一杯に返事をすると耳をもふりはじめる。


ギール「‥はぁ、ディノはそっちを頼むよ。」


ディノ「わかりました!」


二手に分かれて豆太の捜索を開始した。

当然捜索は難航、近くの女子に話しかければ女子たちも捜索をしていると言うではないか。


ギールの頭の中に危険なストーリーが思い付く。


その1

男子に襲われた件


その2

グループ絡みの拉致監禁


その3

最近不振な動きをしていた。

けもみみ同好会の連中による何か。


ギール「まずいな‥。変化でもして置物とかになっていれば良いが。」


シャル「うーん‥あ、そうなのだ!もしかしたら直人の所へ向かったのかもしれないぞ!」


ギール「あっ、確かにそうだ。頼れるとすれば直人しかいないもんな。てか‥あの鬼仏(おにぼとけ)の二つ名を持ってるのに、骨数本折ってリタイヤとか、何してるんだよ。」


シャル「確か乱入して来た鬼にやられたとか言っておったな?しかも、誰かを連れて逃げたとか。」


ギール「うーん‥でも、その相手が楓さんだからな~仕方ないか。」


シャル「楓?おお、そう言えばそんな名前だったな。ちなみに、その鬼はそんなに強いのか?」


ギール「強い‥かーなーり、強い。」


シャル「ほぉー!会ってみたいのだ!」


ギール「だーめ、骨が何本あっても足りないよ。」


話を()らすように再び歩きだす。


シャル「ぬわっ!いきなり動くのは危ないのだ!はぐっ!」


ギール「ふっ、効かんな。」


シャル「うぐっ、耐性つけよったか。なら‥フー。」


ギール「わふぅ~♪って、なにしひゃふっ!?」


シャル「ぺろっちゅる、れろれろ。」


シャルは噛むのを止め、

いやらしく舐め回しにかかった。


ギール「ひゃめ‥耳舐めるな‥はぁはぁ。」


シャル「いや~♪お兄ちゃんの耳おいひいのだ~♪」


ギール「ひうっ!」


(ひざ)から崩れ落ち、

人前にも関わらずシャルの調教が始まる。


まわりは二人を凝視し、男女問わず歓声が起きた。リタイヤした東軍生たちは二人を囲むようにかたまり始めた。


その様子に急いでディノも駆け寄るが入る隙間がない。仕方ないので、スライムの姿になり下からぬるりと入った。


人混みを抜けた先には豆太ではなく、

シャルに襲われているギールであった。


に、兄さん!?シャル様!?


とうとう、一線を越え始めた瞬間‥。


まだ、シャル様が今のお姿だからいいとして、

もし、元のお姿でしてると考えると‥し、躾‥い、いや、もっとすごい気がする。

描きたい‥絵にしたい‥。


いやいや、今は豆太を探さねばいけない。

人も多く引き付けている今がチャンス、隅々まで探さないと‥兄さん、シャル様ありがとうございます!


ディノは急いで捜索を開始した。





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