第六十八話 春の大戦乱祭(8) 魔王様再臨
西軍本陣の防衛が崩れ、大乱戦になってある頃。
時奈率いる東軍総攻撃隊は、
東軍右翼部隊と合流。
西軍最後の主力とも言える、
くノ一を主軸とした三年生たちと対峙した。
西軍生「ばかめ、わざわざ総大将直々に来るとは、驕り高ぶったこと後悔させてやる!かかれぇ!」
忍「口だけかどうか‥思い知らせてやろうか!」
時奈「えぇ、大反撃開始ね!死なない程度に‥、極焔華!」
攻め来る西軍生に、時奈は容赦のない大魔法を唱え、火傷にならない程度の焔が、西軍を飲み込んだ。
これに機に忍たちは、
レイピアを取り出し、突撃を開始した。
ギール「忍先輩が動いた!全員転進!反撃だ!」
リフィル「おぉ~♪たおすぞお~♪」
エルン「うむ、早く直人と合流しなくては‥。」
反撃の狼煙が上がった事により、
東軍右翼部隊主力は、忍に続いて突撃を開始する。
そして、後方では‥。
闘志を剥き出しにして、ある意味危険な感じになっているシャルが、二人の弟たちに取り押さえられていた。
シャル「むがぁぁ!余も行くのだ!」
ディノ「お、落ち着いてくださいシャル様!?今の感じでは、怪我してしまいますよ!?」
豆太「そ、そうだよ!?お願いだから大人しくしててください!?」
シャル「ぬわぁ~!二人とも余をバカにするでな~い!」
短い妖楼郭の生活で、若干の魔力を取り戻したシャルは、少ない魔力を使いディノのスライム拘束を解いた。
ディノ「っ!」
豆太「ふぇ!?シャルお姉ちゃん!?」
シャル「ぬはは!出陣なのだ!」
拘束を解いたシャルは、
魔力を漏らしながら、足早にギールを追いかけた。
これに、二人の弟たちは急いで後を追った。
シャル「おい!そこのお前!」
東軍二年生「ん?シャルか、どうしたんだ?」
シャル「その、大鎌を渡してもらおうか?」
東軍二年生「はっ?い、いやだよ!?これ渡したら、素手で戦うことになるじゃないか!?」
シャル「いいから貸すのだ~!」
同級生の大鎌を無理やり取り上げると、
漏れ出した魔力がシャルを包み込み、
いつぞやのお姉さんの姿になった。
服は所々破け、胸の谷間は大胆に露出し、スレンダーな美脚を出した。これに、東軍二年生たちは皆足を止め注目する。
東軍二年生「あ、あわわ!?シャルさん!?」
東軍二年生「お、おい!?あの美女どこから来た!?」
東軍二年生「さっきシャルって聞こえたけど‥ま、まさかな。」
シャル「な、なんだお前たちよ。そんなに我を見つめて?‥それよりお主ら、そんなに小さかったか?」
ディノ「シャル様~!?お体が戻ってますよ!?」
シャル「ん?ディノ?体って‥‥ん?なっ!!?」
ようやく自分の体に気づいた時、
崩壊寸前の胸の生地が見事に弾け、
豊満な胸が露になった。
ディノ「なっ!?」
豆太「‥‥‥ぶふっ!?」
この時、東軍二年生の大半は鼻血を吹き出し崇めた。
東軍二年生「お、俺‥も、もう死ねる!」
東軍二年生「こ、これが‥噂の魔王シャル様の裸‥こんなに早く見れるとはありがたや!」
東軍女子二年生「あ、あれが魔王シャルちゃんの‥はぁはぁ‥揉みしだきたい!舐め回したいわ!」
興奮する同級生たちにシャルは、恥ずかしさから"しゃがみ"込むも下の下着が丸出しの状態であった。
この初々しい乙女の仕草、
そして、クールな声と風格に反した萌え力に、
男子の士気は極限を極めた。
しかし‥ここで想定外の事件が起こる。
シャル「は、はわわ‥み、見られた‥み、皆に‥う、うぅ!いやぁぁっ!」
シャルを中心に凄まじい衝撃波が起き、その場の居た東軍二年生は吹き飛ばされ衝撃音が響き渡った。
これにより、東軍右翼部隊の八割が、
幸せな思いを胸に秘めながらリタイヤした。
ギール「な、何の音だ!?」
エルン「ま、まさか、後方を取られたのでは!?」
リフィル「ふえぇっ!?もしかして挟まれちゃった!?」
ギール「わ、わからない‥。けど、俺が様子を見てくるから二人は気にせず忍先輩に続け。もし何かあれば知らせを送るから頼むよ。」
エルン「一人でいいのか?私もいくぞ。」
ギール「いや、ここは俺と数名だけで対処する。今は前線を突破して桃馬たちと合流する方が良い。」
エルン「わかった。無理はしないようにな?」
リフィル「よ、よーし、エルンちゃん行こう!」
エルン「うむ。」
ギール「よし、俺たちは後方に向かうぞ!」
東軍二年生 「おぉ!」
二人の美女は先を急ぎ、
ギールはシャルがいる後方へ再び転進した。
まずは、ギールたちの視点より。
ギールたちが騒ぎの現場に駆けつけると、あちらこちらに東軍二年生が、幸せそうな表情でのびていた。
ギール「な、なんだこのありさまは‥。」
東軍二年生「こんなに広範囲にやられてるなんて‥。まさか、欠場って言ってた臨界制が来たのか!?」
ギール「‥強引にゲートを開いたと考えるなら、あり得るな。」
※違います、シャルが原因です。
ギールが推理していると、奥の方で見覚えのあるスタイルの良いお姉さんが、半裸の状態でうずくまっているのを発見する。
ギール「‥ん?あれは‥。」
東軍二年生「どうした?誰かいたのか?」
東軍二年生「そ、そう言えば、シャルたちがいないじゃないか!?」
東軍二年生「ま、豆太くんも見てないぞ!?まさか巻き込まれたのか!?」
ギール「‥お前たちここで待っててくれ。」
東軍二年生「構わないけど、どこにいくんだ?」
ギール「‥シャルらしき魔族を見つけたから見てくるよ。」
東軍二年生「えっ?ど、どこだ‥?」
同級生たちは四方八方見渡す中、
ギールはシャルの元に向かった。
その頃。
うずくまっているシャルは、衝撃波によってスライムの姿になったディノと話していた。
シャル「うぅ‥ど、どうしていきなりこんな姿になったんだ。」
ディノ「おそらく、魔法攻撃の時に発生する。微量の魔力に反応したのかもしれません。」
シャル「微量の魔力‥?」
ディノ「はい、以前旅行に行った妖楼郭で、元の姿に戻られた時の事覚えていますか?」
シャル「う、うむ。覚えているが‥、それがどうしたと言うのだ?」
ディノ「はい、つまりは一度元の姿に戻られた事で、シャル様の"力のコア"が復活したのですよ。ですから、今のお姿になっている理由も、微量の魔力による一時的なものかと思います。」
シャル「な、なるほど‥余がこの姿になったのは、ディノの拘束を解いた時の魔力が原因か。」
ディノ「そうなりますね。」
二人が話してる中、
そこへギールが駆け寄った。
ギール「シャル!ディノ無事か!」
シャル「あう!?ぎ、ギール‥。」
大人びたシャルは、ギールを見るなり、
顔を真っ赤にしながら、泣き目になっていた。
ディノ「しゃ、シャル様!?お、落ち着いてください!?取り乱してはまた暴走してしまいますよ!?」
ギール「っ!は、早くこれを着ろ!?」
これにギールは、ほぼ全裸のシャルに、
自らの羽織物をシャルに被せた。
シャル「うぅ、ギール。」
ギール「ふーぅ、現状を察するに‥、ここに居たはずの西軍は、シャルの何かしらに巻き込まれたみたいだな。」
ディノ「せ、正解です。そ、それで豆太が巻き込まれてリタイヤしました。」
ギール「はぁ、全く‥、大切な戦力を削いじゃダメだろ?」
シャル「‥す、すまない。この埋め合わせは、必ずするから。」
違和感のあるクールなシャルの美声に、ギールは少しペースを崩されるが、ずっとこのままでいてほしいと無意識に願うのであった。
ギール「こほん、と、とりあえず服を着ないとな‥。」
東軍二年生「おーい、ギール!シャルは見つけた‥がはっ!?」
シャルのあられもない姿を見せたくないためか、
ギールは無意識に、近寄る同級生を攻撃した。
東軍二年生「お、おいギール!何してるんだよ!?」
ギール「えっ?あっ!?ご、ごめん!い、いまシャルが裸で‥つ、つい‥す、すまない!」
我に変えると罪悪感に囚われ必死で謝る。
東軍二年生「は、裸って何があったんだよ?」
東軍二年生「ん?お、おい!?あの美女は誰だ!?」
東軍二年生「なっ!か、かわいい。」
ギール「お前ら‥妹をそんな目で見るんじゃねえよ。」
同級生がシャルに気づき、
嫌らしい視線を向け始めると、"セキュリティ"のギールが、不動明王みたいな顔で睨む。
東軍二年生「そ、そんなに怒るなよ!?」
東軍二年生「そ、そうだぞ!こんな時だけ男を見せるなんて駄犬もいいところだ!?」
ギール「なんとでも言え‥シャルは俺の妹だ‥誰にもやらないからな。」
東軍二年生「お前は"おとん"かよ‥。」
東軍二年生「はぁ、とにかく早く服を着せてやれよ。俺たちは先に戻ってるから。」
東軍二年生「そうだな、後ろの心配もなくなったし行くか。」
東軍二年生「そうだギール?もし、シャルちゃんに手を出したら‥‥敵が増えることをお忘れなく。」
ギール「だ、誰が出すかよ!な、中身はいつものシャルだぞ!」
東軍二年生「はいはい、じゃあ‥。」
こうして、大損害を出した騒動は‥一応幕を閉じた。