第六十四話 春の大戦乱祭(4) 親方黒雲からアメリカ人が!
尊重派と共存派の分裂が激化する二年六組。
尊重派、二条実光と三条実時の離間により、
二年六組の尊重派は風前の灯に晒されていた。
この様子に、数少ない共存派の陣営では、
今か今かと可憐な姫君たちが、戦場へと赴こうとしていた。
その中でも、かなり好戦的で、
じゃじゃ馬属性が強く、共存派の姫君たちを統括する三人の姫。
金髪長髪のエルフ姫
ジャンヌ・フィルシー
銀髪長髪のダークエルフ姫
アンジェリカ・シルフィード
赤髪長髪、人間の姫
アリシア・ダグリネス
そして、異世界出身ならではの完璧スタイル。
三人に付いて来る姫たちも、中々の高レベルである。
そんな姫君たちを、
更に数少ない男子生徒たちが、
必死で押さえ込んでいた。
ジャンヌ「そこを退きなさいリト、ニブル!」
アンジェリカ「そうだぞ、退かないのなら‥強引でも通るぞ?」
アリシア「そうです、このまま新西様の好きにはできません!」
姫騎士「もし私たちが、女だからって言う理由で、庇っているのなら侵害ですよ!」
か弱い女性ながらも、抑えられぬ闘争心が表に出始める中、二人の皇太子に詰め寄る。
リト「お、落ち着いてください!志道の指示なんでどうかお控えを!」
ニブル「そうです!タイミングを誤れば、名誉に傷がつきますよ!」
ジャンヌ「それがなんだと言うのですか?この戦いは秋の大戦から何も学んでいません!己のプライドを回復させようとして、逆効果を招いてるだけです。」
アンジェリカ「ジャンヌの言う通り、やるなら今しかチャンスはないぞ!今ここで、代表を共存派にしなければ‥このクラスは終わりだ!」
アリシア「でも、次の代表は誰に?」
ジャンヌ&アンジェリカ「それはもちろん、志道よ(だ)!」
一瞬名乗りを上げると思い気や、
二人は藤原志道を推した。
リト「自分を推薦しないのですね。」
ニブル「いや‥どう見ても押し付けだろ?」
アリシア&リト「あぁ~なるほど。」
ジャンヌ「人聞きの悪い事を言うな!」
アンジェリカ「そ、そうだ!志道は‥、えっと、統率力に関して認めるところがある。それに、我が国に欲しい人物だからな。」
ジャンヌ「なっ!アンジェリカ!志道は私の国に来るのですよ。横取りはいけないわよ!」
アンジェリカ「なっ!?ジャンヌは婿にもらう気なのだろ?私はただ、国のためにだな。」
徐々に話が、私事や国家の話まで発展すると、
和やかな喧嘩の匂いを漂わせた。
するとそこへ、
良いタイミングで志道とジレンが戻る。
志道「よっ、お待たせ。」
ジレン「二人ともよく押さえてくれた。今ここに、狂季と一条たちが攻め来る。姫様たちには、ここで思う存分戦ってもらいます。」
ジャンヌ「おぉ!待っていたぞ志道!これが終わったら婚姻の儀をするぞ!」
アンジェリカ「なっ!?抜け駆けは許さんぞ!志道は我が国に!」
アリシア「で、できれば私の国にも‥。」
姫様たちを統括する三人の姫たちは、
私用の思いを表に出しながら志道に詰め寄る。
志道「お、お前らな。その話は後だ!早く因縁に決着つけるぞ!」
ジャンヌ「ふぇ~、そんな~。」
アンジェリカ「う、うん。志道の言う事も最もだな。」
アリシア「では~、さっさと、新西様と一条様を返り討ちにして潰しましょうか♪」
志道「え、えっと‥、アリシアは殺すなよ?」
ちょっと、変なスイッチが入るアリシアに、
志道は恐れながらも忠告を呼び掛ける。
すると、次に、
皇太子のイケメンが詰め寄る。
リト「志道~、遅いよ~。」
ニブル「そうだよ!いくら念のためとは言え、同士たちを二条たちの軍に紛れ込ませ過ぎだよ!俺たちが、どれだけ説得が大変だったか。」
志道「悪い悪い‥これが無事に終わったら猫耳カフェおごってやるからよ。」
リト&ニブル「なら許す。」
ジレン「呑気なこと言ってる場合じゃないぞ?新西たちが、直ぐそこまで来ているぞ?」
志道「あぁ、そうだな。さてと、今までの鬱憤晴らしだ。そして今日は、実権交代の時だ!」
共存派生徒「おおー!」
志道の号令により、
共存派は、攻め来る賊物に向け攻撃を開始した。
当然、無策で突っ込んで来た新西、一条、四条は、
完膚なきまで、叩き潰された。
一方、タイマン中の奏太と"鬼族"の楓は‥、
油断した楓の懐に上手く入り込んだ奏太は、
後は重い一撃を与えるだけに持ち込むも、
どこを攻撃すれば良いのかで悩み、
未だ動かず睨み合いをしていた。
楓「‥おい、お前は何がしたいのだ。」
奏太「‥そ、それは俺自身に聞きたいですよ‥。あ、あなたの何処に‥、攻撃をすれば良いのか、わからないんですよ。」
冷や汗をかきながら沈黙を解くと、
動けないと悟った楓は、微笑みながら抱きしめた。
楓「ふっ、なんだよ~♪可愛い奴だな!」
奏太「なっ!んんっ!?」
豊満な胸に顔を押し込まれた奏太は、夢にまで見た展開に凄く興奮した。しかも、憧れの朱季楓にされてる事に、無意識に力が抜け、そのままされるがままであった‥。
楓「お前気に入ったぞ!このまま私の弟分にしてやろう!さっ、鬼の里へ行くぞ!」
奏太「ふぇ?おにのひゃと?うわぁぁ!?」
その後、
奏太は楓に拐われ一ヶ月も姿を見せない事になるとは、夢にも思わないのであった。
この光景に、楓の重い一撃をもらい、
リールの手当てを受けている直人が、
必然的にも一部始終を見ていた。
直人「‥けほけほ、夢がかなってなよかったな‥。」
リール「ほ、ほら直人!?無理しちゃダメだよ?」
直人「‥はぁはぁ、もう少し暴れたいがどうかな?」
リール「だーめ!絶対安静です!」
直人「そ、そうか‥。ちくしょ‥あたたっ」
リール「肋骨が何本か折れてるから、大人しくしなさい。」
直人「う、うん‥。」
既に戦場に戻れる体ではないと言うのに、
無理に戻ろうとする直人を止めると、
そこへ、忠成が声をかける。
忠成「直人は俺が運ぼう。リールくんは戦場に戻ると良い。」
リール「あ、よかった~。忠成先輩なら安心です。どうか直人をよろしくです!」
リールは、
忠成に直人を預けると颯爽に戦地へと戻った。
忠成「直人には勿体ないくらいの良い嫁じゃないか?」
直人「そりゃどうも‥。いててっ。本当に自慢の嫁です。」
東軍二年三組
両津直人 ドクターストップのため脱落。
燕奏太 朱季楓の誘拐により脱落。
三年二組
本田忠成 朱季楓とのタイマンに敗北により脱落。
予想外の"客"に東軍は大きな戦力を削がれた。
だが、劣勢の戦況から好転させたとなれば、良い働きであったと言えよう。
そして、西軍三年四、五組と交戦している東軍二年二、四組は互角の戦いをし、朱季楓の戦闘放棄にどよめく西軍本陣。もはや、戦の主導権はすべて東軍に回った。
忍「楓先輩の出現には正直びびった‥、奏太君には悪いが英雄に値する武功だ。」
時奈「‥ふぅ、楓先輩は、一人で"軍"並みの強さですからね。それに、東軍からの本陣奇襲もそろそろ来る気がするわ。」
忍「‥次は誰を寄越してくるか。」
映果「それなら、もう済んだみたいですよ。」
二人が戦況を語る中で、
亀田映果は、パソコンをカタカタと打ちながら話す。
時奈「えっ?どういうこと?」
映果「これをご覧下さい。」
パソコンを反転させ、衝撃的な映像を見せた。
そこには、半裸でガチムチの男たちが、相手の奇襲部隊をレスリングで、襲ってるところであった。
女性たちは悲鳴を上げ逃げ帰り、
男たちは地獄に落とされたかの様に悲鳴を上げた。
ベリー「あぁん?全員だらしねぇな!筋肉増やして出直しな!」
ベリー率いるガチムチ集団が筋肉を踊らせ滾っている。終いには物足りないのか、勝手に同胞同士でレスリングを始め、阿鼻叫喚の現場となっていた。
この映像には思わず、忍と時奈は驚いた。
忍「これは素晴らしい、特殊部隊だな。」
時奈「なるほど、後ろから攻めようと思ったが、逆に第三者の男に"自主規制"されたわけだ。」
映果「おお!それは中々卑猥な話ですね!もっと語りましょう!」
ツッコミ不在の東軍本陣、
時奈と映果は、卑猥な話で盛り上がる中、
ガチムチたちの素晴らしいレスリングの光景に見とれた忍は、桃馬との卑猥な妄想をするのであった。
そのため、三人が映像から目を逸らすと、
同士討ちに勝ち残ったベリーが、
単身一人で西軍本陣に向かうのであった。
一方、二年六組の陣営を占拠した東軍は、
次なる作戦のため、準備を進めていた。
その中で、東軍左翼の部隊である桃馬たちは、
要の有力者たちを失い落胆していた。
桃馬「‥そうか、直人と忠成先輩に続いて、奏太も脱落か。」
憲明「要がこうも簡単に脱落するとはな‥、今回は荒れるな。」
桜華「一瞬で倒されたと聞いた時は、凄く不安でしたけど‥、奏太さんのお陰で何とか乗り切れましたね。」
桃馬「まあな。それでも、直人と奏太、そして忠成先輩を失うのは‥、かなり高い代償だけどな。」
戦局好転のためとは言え、
散ってしまった多くの同士たちを憂いていると、
そこへ、
晴斗から指示を得たジェルドが、
次の作戦を伝えに来る。
ジェルド「おぉーい、晴斗から指示が出たぞ!俺達はこのままギールとエルンたちと合流して西軍と交戦だとよ。」
桃馬「そうか‥また変なのがでなきゃ良いけど。」
憲明「今度はエルガ先輩とかな~♪」
桃馬「ないない、あんな卑劣な奴等に手を貸す人じゃないよ。」
憲明「まあ、それもそうか‥。」
桃馬と憲明が、
次なる西軍の卑怯な手口を警戒している中、
その後ろでは、模造の武器が入っている箱の上で、
早速疲れたのか小頼が寝ていた。
これを目にしたジェルドは、
次の作戦のために、起こしにかかる。
ジェルド「ほら小頼!寝てないで行くぞ!」
小頼「ふぇー!つかれたよ~!」
ジェルド「そんなこと言ってたら、せっかくの勝機を逃すだろ?」
小頼「ここまで来れば大丈夫だよ~。」
ジェルド「だめだ!ほら、来るんだ!」
小頼「むぅ~、わかったわよ~。」
渋る小頼を無理やり起こすと、
直ぐに次なる戦地へと向かう。
桃馬「なぁ、憲明?この戦‥、二年生だけでも勝てるんじゃねか?」
憲明「うーん、どうかな?時奈先輩たちの本陣が、西軍の抑止力になってるみたいだし‥、慢心は控えた方が良いだろうな。」
桃馬「それもそうか。戦況は変わっても、油断はできないからな。」
桜華「そ、そうですよ。慢心した上、足をすくわれるケースは良くありますからね。」
桃馬「桜華が言うから間違いないな。よし、慢心せずに、引き続き進軍しようか。」
桃馬たちは、
晴斗の作戦案に載っとり、進軍を開始した。
その頃、軍師である晴斗は
二年六組の共存派と離間した二条、三条を加えて、
捕らえた尊重派を含めて話をしていた。
晴斗「予想外の痛手はもらったけど、三人のお陰で本当に助かったよ。これで、二年六組のいざこざも解決すると思うし、後はこの戦に勝つだけだね。」
藤原「あぁ、こっちこそ礼を言うよ。後で桃馬たちにも礼を言わないといけないな。」
二条「勘違いするなよ?俺は借りを返しただけだからな。」
三条「まあ、そう言うなよ?実光も不満だった癖に。」
二条「う、うるさい。お前は少し黙っていろ。」
三条「相変わらず素直じゃないな~。」
二条のツンデレ属性を拝む中、
縄で縛られ座らされている新西狂季は、
何故負けたのか、未だに信じられずにいた。
狂季「くっ‥おのれぇ‥なぜこうなった。」
藤原「下手な野心がなければ‥、お互い手を取り合えたかもな。」
狂季「‥っ、白々しい。敵の勝利の声など不快だ!」
藤原「ふっ、お前が笑えなくて残念だな。」
狂季「ぐぐっ‥。」
二条「志道、俺がこんな事を言うのはあれだが、敗戦者の"条家"と王貴族たちがうるさくて叶わん。黙らせて来てもよいか?」
藤原「手を出してはだめだ。ここは、惨めな遠吠えでも吐かせておけ。わざわざ自らの手で名声を汚してくれているんだ、そのまま放置だよ。」
二条「おぉ、さすがだな。そこまで考え付かなかったよ。」
三条「あはは!いいな~♪自爆戦法とは傑作だ!」
藤原「その通り、自分の汚いケツは自分で拭かなければな。まあ、拭けずに汚れるのが目に見えてるが。」
晴斗「ふっ、さすが志道らしい考えだな。」
藤原「誉めんなよ。さてと、余韻はここまでだ。こっちの血の気が多い姫騎士たちが滾ってるからな。早速だが晴斗?前線の交戦は避けて一気に本陣を攻めるってのはどうだろうか?」
晴斗「最良の策だね。でも、その策は既に動いていますよ。」
西軍本陣手前。
海洋「おらおら!先輩であっても雑兵では相手にならんぞ!」
高田海洋を中心とする相撲部が、
西軍本陣に圧をかけていた。
オーガ族の鬼山、オーク族獣種の猪木
オーク族魔人種の六道、人間の春日大喜
計五人の巨漢の男たちを筆頭に、
西軍本陣付近で大暴れしていた。
鬼山「うおーっ!弱い!弱すぎる!先輩や海洋程の相手はいないのか!!」
猪木「ふぅーん!どっすこい!」
六道「ふぅ~。手加減するのも一苦労だな!」
大喜「はぁはぁ‥もう疲れた。っ!うりゃぁ!」
西軍生「うっ、くそぉ‥相撲部は卑怯だろ!?」
西軍生「よりによって、なんで、ここに相撲部がいないんだよ!?」
西軍生「‥相撲部がいる五組が出払ってる。魔法が使える人を前に出さないと!」
西軍生「それより、相手の弓隊と魔法部隊を何とかしろよ!」
大混乱の西軍本陣は総崩れであった。
そのため本陣に籠る誰もが、味方を前に押し出し、戦場に出そうとする。
すると、西軍本陣から甲高い悶絶の声が響く。
"アァァーーッ!"