第五十六話 妖楼温泉街編(13) 水楽祭ノ章
安心安全かと思われた水鉄砲合戦は、予想に反してカオスな展開を誘発させ、最終的には不本意な不意打ちを繰り返した憲明が残った事により、桃馬、桜華(様)、憲明、リフィルからなる"一班"が勝利した。
最後に残った憲明は、もはや"実力"と言うよりも"運"だけで勝ち取った様な勝利に、不満を通り越して気まずそうにしていた。
憲明としては、もっと正面から激しく撃ち合うイメージであったが、現実は"行き当たりばったり"な展開が多く、そのため憲明は、緊張と警戒のせいで全く楽しめていなかった。
一方、水鉄砲合戦時に"桜華様"の姿に戻ってしまった桜華に対して、込み上げる調教心に火をつけた小頼は、怯える"桜華様"を押し倒した後、サキュバスである"エルン"でも、つい見蕩れてしまう程の淫行に及んでいた。
ちなみに小頼の淫行とは、憲明に水を掛けられても気づかない程の集中力を有しており、とにかく桜華様の体を"まさぐり"そして"わからせ"ていた。
そんなカオスな状況の中で、どこからか構内放送が流れ始めた。
一部を除く者たちが、聞き覚えのある声に耳を傾ける中、放送主に心当たりがある直人は、脱落者陣営から逃げる様に走り去った。
妖楼郭を出る前に、"とある人物"とコンタクトを取っていた直人は、桃馬たちに悟られる事なく、愛するリールとエルンにだけは決して気づかれてはならない、"超極秘の依頼"をお願いしていたのであった。
しかし、そんな"超極秘の依頼"だと言うのに、依頼を受けた者(協力者)は何を血迷ったのか。
先の放送で墓穴を掘る様な行動に出たのであった。
もしこれで、"超極秘の依頼"が明るみに出てしまう様な事になれば、直人に取って楽しみにしていた秘蔵の"コレクション"が手に入らないどころか……。
最悪、依頼主として道ずれにされる可能性があった。
そのため直人は、地雷級の協力者を逃がすため、急いでプール構内にある放送室へと駆け込んだ。
直人「こら映果!一体お前は何をしているんだ!?」
映果「っ、おやおや、直人でしたか〜。いきなり入って来るなり脅かさないでくださいよ〜。」
直人「お、脅かされたのはこっちの方だよ!?急に頼んでもいない放送を流すもんだから…、どれだけ肝を冷やした事か。」
映果「ま、まあまあ、そう怒らないで下さいよ?そもそも、変声機を通して話していましたし、そう目くじらを立てなくても……。」
直人「変声機を通して話していただ〜?普通に映果の地声だったぞ?」
映果「ま、またまた〜、そんな事を言って〜♪実は過剰に反応していただけじゃないの〜?」
直人「っ、ほ、本当だっての!?何ならスイッチが入っているか見てみろよ?」
映果「スイッチ?あはは、まさか〜、そんな初歩的なミスを私がする訳……、って、あれ?」
直人「……。」
直人からの指摘に、余裕の笑みを見せながら変声機に触れる映果であったが、スイッチ部分に手を触れた瞬間、恥ずかしいミスに気づく。
映果「あ、あはは〜、ど、どうやら私とした事が、変声機のスイッチを間違えてオフにしていた様ですね。」
直人「お、おいおい、笑いながら状況整理をしている場合か!?」
映果「ま、まあまあ、過ぎた事を一々引きずっては何も始まりませんよ?そもそも、放送主の声が私だってバレた訳ではないですよね?」
直人「その件だけど、一瞬リフィルが勘づいたけど、何とか誤魔化したよ。」
映果「おやおや、流石はリフィルちゃんですね……。と言う事は、今の状況はイエローカードですね。」
直人「呑気に状況把握をしている場合かよ。そもそも俺の依頼は、イエローでもレッドだぞ。」
傍から見ても、"超極秘の依頼"を受けているとは思えない映果の姿勢に、思わず直人は額に手を当てた。
映果「ま、まあまあ♪良い写真は撮れてるから許してよ~♪ほ、ほら、エルンちゃんとリールちゃんの見えそうで見えない素晴らしい写真だよ♪」
直人「っ、か、可愛い……っ、んじゃなくて!?そもそも、こんな依頼をしていたって二人に知られたら……、写真の没収はおろか、幻滅されるどころの騒ぎじゃないよ。」
映果「うーん、それはどうかな〜?そもそも、あの二人の事だから赤面しながら喜びそうだけど?」
直人「…盗撮写真を撮られた挙句、今まで小頼商会から買った盗撮写真を"コレクション"していたってバレたら……、普通に終わるだろ。」
映果「まあ確かに、彼氏と付き合う前から自分の盗撮写真を集めて"コレクション"していたなんて知ったら、それはそれで気持ち悪いですね。」
直人「そう思うだろ?…あとそれに、小頼商会を通して盗撮写真を得ているとは言え……、間接的に二人を盗撮しているのに変わりはないからな。」
映果「そう思いつつ、これまでエルンちゃんの写真を百二十八枚、そしてリールちゃんの写真を百五枚も買ってるもんね〜。」
直人「っ!?」
正確性はともかく、自分でも把握していない枚数を細かい単位まで聞かされた直人は、二人の写真が共に百枚を超えている事に驚いた。
映果「しかもその内のエロ系は、エルンちゃんの二十八枚のみ……。とまあ、この二十八枚は、"日常的な写真"しか買わない直人への、嫌がらせを込めたサービス品なんだけどね〜。」
直人「はぁ……、そう言う写真もあるから余計に知られたくないんだよ。」
映果「ある?っ、あるってまさか!?二十八枚全部ですか!?」
直人「っ、な、何だよ急に?ま、まあ、そう言う系の写真は、全部押し入れ奥に封印してるからな。」
映果「し、信じられない……。ほ、本当に一枚も"使って"ないのですか!?」
直人「使う……?使うって何だよ?」
映果「そ、それはもちろん、性欲処理にだよ。」
直人「は、はぁ!?なっ、なな、何を言っているんだお前は///」
映果「だ、だだっ、だって〜、い、今まで贈呈して来たエルンちゃんのエッチな写真は、大切な所は見えていないとは言え、そ、それなりに"使える"至極の写真なんだよ!?」
直人「お、おお、お前はやっぱりバカか!?そ、そそ、そんな、間接的にエルンを穢す様な事……、で、できる訳ないだろ!?」
映果「っ、ば、バカな……。」
今まで直人に渡して来たエルンのエロい写真は、全て直人の性癖に刺さる様な至極の写真であった。
それなのに直人は、二十八枚もあるエルンのエロい写真を私的に"使わず"、そのまま大切に保管していると知った映果は、ショックのあまりその場に崩れ落ちた。
映果「ま、まさか、あ、あのエロい写真を保管だと……。」
直人「はぁ、そもそも俺は、リールも含めて、エルンを性的に見てないからな。」
映果「あ、あんなにエロい"くっ殺系"サキュバスに"ムラムラ"しないとは……。な、直人の神経は、一体どうなっているのですか!?」
直人「ど、どうって言われてもな…。うーん、い、今思えば……、当時の俺も、何だかんだ言いながら、二人の事を愛していたとしか言えないな。」
映果「あ、愛していたのなら、どうして性欲の一つや二つ暴走させないのですか!?」
直人「い、言いたい事は何となく分かるけど……、そ、そもそも、"愛と性欲"って、根本的に意味合いが違う気がするんだが……。」
映果「っ、ち、違う?」
直人の興味深い話に、映果は少し耳を傾けた。
直人「あ、あぁ、何て言うかこう…、ずっとその人と一緒に添い遂げたいと思う"愛"とは違って、優先的にエロい事しか求めていない"性欲"は、ただ単に相手を性的にしか見てなくて、肝心な"愛"が抜けている気がするんだよな。 」
映果「ま、まあ、確かにそうだね。現にエロ同人誌でも絵のキャラクターに惹かれて買う人もいるからね。」
直人「そ、そう思うだろ?例えば、これはちょっと昔に親父が言っていた事なんだけど、平気な顔で幼い我が子に手を掛けたり、若い夫婦の間で起きる殺人は、理由は多くあれど、十中八九、"性欲"と"愛"の意味を履き違えた愚か者だって言ってたな。」
映果「な、何だか説得力がある凄い言葉ですね。」
直人「あぁ……、"性欲"から生まれる"愛"は実に薄い。対して"愛"から生まれる"性欲"は実に濃いが、管理を厳かにすれば同じく廃る……。」
映果「えっと、今の言葉もお父さんのですか?」
直人「いや、今思いついた俺の言葉だよ。」
映果「ふぅ〜ん、直人の癖に言いますね。」
直人「ふっ、言うさ。正直、"愛"の形は人それぞれで多種多様だと思うよ。だけど俺は、"性欲"で占めた不純な"愛"をリールとエルンに与えたくはないからな。」
映果「相変わらず直人らしい答えだね〜。全く、リールちゃんとエルンちゃんは、とんだ愛の重い鈍感男に嫁入りしちゃったね〜。」
鈍感な分際で一丁前な事を抜かす直人に対して、映果は今まで告白の"こ"の字も出来なかった事も含めて皮肉った。
直人「っ、それは褒めてるのか、それとも馬鹿にしてるのか…、一体どっちだよ。」
映果「え〜、それはもちろん。お姉さんの一押しがなければ、"愛する二人"に告白する事すら出来なかった"鈍感男"への皮肉だよ♪」
直人「うぐっ……。」
至極もっともな映果の指摘に何も言い返せない直人は、思わず顔を引きつらせながら映果の言葉を受け入れた。
映果「あはは、何も言い返せない様だね〜?」
直人「ふ、ふん、好きに言ってろ………ん?」
余裕に満ちた映果の煽りを軽く受け流した直人であったが、直ぐに誰かの視線に気づいた。
映果「ん?どうしたの?」
直人「い、いや、何でもない……。(扉の外に一人か……。うーん、誰が来たかは知らないが、ここで逃がす訳には行かないな。)」
扉の外から視線を感じた直人は、下手な動揺をする事なく扉の方へと注意を向けた。
一方、その扉の外では、一人のエルフが扉の隙間から覗き込んでいた。
リフィル(ふ~ん、なるほどね〜♪全く直人ったら、あれ程まで"ハーレムは嫌いだ"とか、"俺は一生一筋に生きてやる"とか、結構一丁前な事を言っていた癖に、結局二人の事が好きだったんじゃない♪)
直人の不自然な行動を察し、ここまで尾行して来たリフィルは、二人の極秘話を一から聞いてしまっていた。
リフィル「クスス♪(まさか、あの焦れったい"鈍感"属性が、直人なりの愛だったなんて驚いたな〜♪それより、写真越しでも決して二人を穢そうとしないあたり、本当に直人は生真面目だね……。)」
少し意外な直人の一面を知ったリフィルが、"クスクス"と声を漏らしながら心の中で呟いていると、突如目の前の扉が勢いよく開かれた。
リフィル「ふぇ?な、なお……ふにゃ!?」
扉の先には、少々軽蔑した表情を浮かべた直人が立っており、リフィルは急な展開に"ポカン"とさせたまま、直人に腕を捕まれるなり放送室へと連れ込まれた。
その後、リフィルは抵抗する間もなく、直人と映果によって椅子に縛り付けられてしまった。
直人「まさか、後をつけられてたとはな……。相変わらず、リフィルの勘は鋭いな……?」
映果「それにしても、リフィルちゃんが盗み聞きなんてらしくないね~♪いつもなら堂々と入って来るのにね〜?」
リフィル「そ、それは〜、二人の話を聞いていたら入るタイミングを見失っちゃってね〜。そ、それより映果ちゃんも水くさいよ~、私にも話してくれたら協力して上げたのに~♪」
直人「……話したら言い振らすだろ?」
リフィル「そ、そんな事はしないよ〜♪」
少し痛い所を突かれたリフィルは、相変わらず揺るぎのない笑顔で返事を返した。
映果「ごめんね、リフィルちゃん。今回は直人の希望で、リールちゃんとエルンちゃんの自然体を撮るために極秘で動いていたんだよ。」
リフィル「そ、そうだったんだ〜。ふ〜ん、それにしても直人は罪な男だよね〜♪」
直人「…言いたい事は何となく分かるけど。何が言いたい?」
リフィル「クスッ、だって〜、既に可愛いリールちゃんとエルンちゃんを嫁にしているのに、それでも尚、二人の写真欲しさに盗撮を依頼するんだから、相当二人の事が好きなんだね♪」
直人「…………。」
極秘の依頼をリフィルに知られ、心まで読まれてしまった直人は、このままリフィルを解放すれば確実にチクられると感じた。
特に、小頼にチクられた暁には、たった一日で学園全体に広められてしまうため、ここは何としてでも黙らせる必要があった。
そのため直人は、椅子に縛られ身動きが取れないリフィルに対して、エルフの弱点である立派な長い耳を優しく触れ始めた。
リフィル「ふぁん♪んん〜っ♪耳はらめぇ~♪」
映果「〜っ、シャッターチャーンス!!おぉ〜、これは実にいいですね~!"彼氏の友人に責められ、更に感じさせられてしまうエルフの姿"は〜!!」
リフィル「んん〜っ♪憲明にも触られた事ないのに~♪いぃ~ん♪」
直人「……ごくり。(か、可愛い……、ま、まるで犬みたいだ。)」
エルフ特有の長く尖った耳に触れている直人は、犬の様に喜んでいるリフィルの姿に、とある初恋の女性と重ね始めた。
直人(そう言えば少し前に、"リグ姉"の弱点が耳だってリールから聞いた事があったな……、うーん、"リグ姉"にもこんな風に触ったら…、リフィルみたいに可愛い声を出すのかな?)
直人の脳内妄想。
クールで凛々しい魔界剣士である、"リグリード・イザベラル"を背後から抱き締める直人は、リグリードの豊満な胸ではなく、弱点と思われる耳を優しくこねくり回していた。
リグリード「こ、こら、やめないか直人……くひぃん♪」
直人「はぁはぁ、リグ姉って本当に耳が弱いんだね〜?はぁはぁ、大人びたリグ姉の甘い声……とっても可愛いですよ〜♪はぁはぁ、もっと、もっと、リグ姉の甘い声を聞かせてよ〜♪」
リグリード「はぁはぁ、ば、バカを言うな…んんっ♪…はぁはぁ、いいから、今すぐにやめ…ふぁん♪」
直人「はぁはぁ、えぇ〜?本当にやめて欲しいのですか?」
リグリード「っ!?…くっ、はぁはぁ、くぅ…、わ、分かった……、分かったから…んんっ♪せ、せめて耳を触るのはもうよせ〜!」
直人「えぇ〜、耳以外どこを触れって言うんだよ〜♪」
リグリード「っ、そ、それは……。」
直人「あはは、リグ姉はクールに見えてムッツリなんだな〜♪」
リグリード「っ、こ、この……調子に乗るな…ひゃうん♪」
小生意気な直人に弄ばれ、思わず抵抗しようとするリグリードに対して、敢えて動きに合わせた直人が、耳から首筋にかけて"スーッ"となぞるかの様に優しく触れた。
妄想とは言え、命の恩人にして剣の師匠であり、更には実の姉の様に慕いながら、初恋でもあるリグリードに対して、思い通り弄ぶ直人の妄想は、まさに戦犯系エロゲー主人公にも引けを取らないクズっぷりであった。
そして現実へ。
直人「はぁはぁ、耳を責められて感じてしまう"リグ姉"の姿……、綺麗な薄赤い髪が乱れて、更には健康的な褐色肌に汗が流れて…。」
リフィル「ふにゅ~♪」
妄想に浸り続ける直人に、弱点である耳を触れられているリフィルは、気持ち良さそうに蕩けていた。
映果「ありゃりゃ、二人とも自分の世界に入っちゃってるね〜。」
何とも言えない"寝取られ展開"の様な光景を見せられている映果は、取り敢えずカメラのシャッターを押しまくった。
直人「っ、まぶっ!?こ、こら映果!?カメラのフラッシュを連続して出すなよな!?」
映果「おっ、自分の世界から戻って来たね。」
直人「自分の世界?」
映果「そうそう、さっきからゲスい顔で"ぶつぶつ"と呟きながら、リフィルちゃんの耳を触っていたからさ。」
直人「えっ……、なっ!?」
映果の指摘にリフィルの方を向いた直人は、蕩けきったリフィルを見るなり慌てて手を離した。
直人「ご、ごめんリフィル!?」
リフィル「ふぁ〜ん♪」
映果「おやおや〜、リールちゃんとエルンちゃんと言う可愛いお嫁さんがいながら、リフィルちゃんまで手懐けるとは……。」
直人「ご、ごご、誤解だよ!?」
映果「憲明が見たらどう思うかな〜。」
直人「っ、お、おお、お前まさか……。」
映果「にしし〜、バッチリ取れましたよ〜♪ほら〜。」
弱みを握ったと言わんばかりの笑みを浮かべる映果は、先ほど撮った写真を直人に見せつけた。
その写真には、ゲスい顔をした直人と、耳を触られ感じているリフィルの二人が写っていた。
直人「っ、くっ、揺する気か……。」
映果「それは直人の心次第だよ〜♪」
直人「うぐっ、わ、分かった。な、何が望みだ……。」
映果「にしし〜、その言葉を待っていましたよ〜。」
完全に屈した様子の直人を見た映果は、満面な笑みを浮かべた。
映果「それじゃあ、手始めに……、蕩けきったリフィルちゃんの調教を〜。」
直人「性的、寝取られ系はなしで……。」
映果「おや〜?」
少し反抗的な直人の態度に映果は、リフィルとイチャついている写真をチラつかせる。
直人「っ、お、お願いします……。せ、せめて軽めな要件でお願いします。」
映果「ぷっ、あはは、冗談だよ〜♪直人には妖楼郭で泊まらせてもらっている恩があるからね〜。この禁断の写真は、直人にあげるから好きにしていいよ〜♪」
直人「…え、えっと、一応言っておくけど、黙ってくれる件についてだけ、ありがとう。」
映果「むぅ、流石に引っ掛からなかったか〜。」
直人「……どさくさに紛れて罠張るなよな。」
相変わらず言葉巧みに誘導して来る映果の尋問に、直人はリフィルとの写真を受け取りつつ、映果を冷ややかな目で見つめた。
※ちなみに、映果の張った罠とは、あのまま直人がリフィルの耳を触っている写真を受け取った後、直ぐに"ありがとう"と言ってしまった場合、写真を受け取った事への感謝になってしまうのである。
映果「うーん、それより調教はしないとは言え、今のリフィルちゃんをどうするの?」
直人「うーん、そうだな……。今の状態でみんなの所に戻ったら、まず小頼が黙っていないだろうな……。」
映果「うーん、どうせバレるのなら、この際リフィルちゃんを気絶させるくらいの快楽を与えて……。」
直人「だ〜か〜ら〜、俺は性的な行為はしないって言ってるだろ!?」
未だに"寝取られ展開"を諦め切れない映果は、ここでも言葉巧みに直人を誘導しようとするが、当然の様に拒まれてしまった。
もはや、寝取られ展開の野望が薄くなる中、そこへ蕩けきったリフィルが、直人の海パンに手を掛けるなり"クイクイ"とおねだりを始めた。
リフィル「直人〜♪もっと耳を触って~♪」
直人「っ、こ、こらリフィル!?どこ掴んでるんだよ!?」
映果「〜〜っ!!!」
剥ぎ取りにも見える光景に、映果は迷わずシャッターを押しまくった。
直人「こ、こら映果てめぇ!?何呑気に撮ってやがるだ!?」
映果「いいですね〜、蕩けきったエルフが男子の海パンに手を掛け、まるで男性の性器でも欲しがっているかの様……っ!」
とうに一線を越えている映果の言動に、ついにキレた直人は、魔力と妖力を合わせた小石程の魔弾を数発投げ込んだ。
映果「お、おやおや、いきなり何するのですか?」
直人「ちっ、相変わらず逃げ足は早いな……。ふぅ、何って、自覚が無いとは、本当におめでたいな?」
映果「ま、まあ、何となく分かる気はしますけど、それでも魔弾は少しやり過ぎではないですか?」
直人「おいおい、肖像権の侵害をしてる映果には、妥当な処置だと思うけど…ってリフィル!?そ、それ以上海パンを引っ張るなって!?」
リフィル「むう、もっと気持ちよくしてくれないと……、エルンちゃんとリールちゃんに……盗撮の県と、コレクションの件をバラしちゃおうかな……。」
先程まで蕩けていたリフィルから一変。
怪しげな笑みを見せ始めるリフィルの仕草に、直人は無意識に顔を引きつらせた。
直人「うわぁ……、そんな脅しをかけるのね……。」
リフィル「お願い♪ほんの一回だけだから〜♪」
直人「…ちなみに聞くけど、この件は後々に脅しの材料として使わないんだよな?」
リフィル「もちろんだよ〜♪」
直人「み、耳だけでいいんだよな……。」
リフィル「うん♪そうだよ〜♪」
直人「わ、分かった……。(すまん、憲明……。)」
脅しに屈した直人は、罪悪感と向き合いながらリフィルの耳に触れ、マッサージをするかの様な手つきで"こねくり"回した。
リフィル「ふへぇ~♪最高ぅ~♪」
映果「うーん♪これで胸とか揉み始めたら……、完全に浮気だね。」
直人「…ふぅ、期待してる所悪いが、そんな事をする訳ないだろバカ!」
こうして若干墓穴を掘ってしまった直人は、映果とリフィルに弄ばれるのであった。
一方その頃、桃馬たちはと言うと、直人とリフィルが戻って来るまで、ひたすらボール遊びを楽しんでいた。
ちなみにその中で、シャルは浮き輪の上で"プカプカ"と浮きながら寝ている中、桜華様の体をまさぐり舐め回している小頼はと言うと、引き続きイチャラブな"自主規制"中であった。
※ギールの調教を楽しんでいた桃馬とジェルドは、見兼ねた憲明の仲裁により幕を閉じていた。
桃馬「それにしてもリフィルと直人、よっと、戻って来るの遅くないか?」
ジェルド「よっと、確かにそうだな。」
エルン「ほっと、もしかして、何かあったのだろうか。」
ギール「よっと、もしかして浮気とか?」
憲明「っ、ま、まさか……、よっと、リフィルに限ってそれはないよ。」
リール「っ、もらった〜!」
ディノ「ふぇ?!へぶっ!」
桃馬たちが、居なくなった直人とリフィルを心配している中、そこへ集中力が切れてしまったリールが誤って渾身のスパイクを打ち込んでしまい、何の罪もないディノの顔面を捉えた。
エルン「こ、こらリール!?さっきからスパイクをするなと言っているだろ!?」
リール「あっ、ごめんディノくん!?」
ディノ「だ、大丈夫ですよ。私はスライムですから、打撃はあまり効きませんから。」
リール「そ、それなら良かった〜。」
不本意とは言え、リールから強烈な顔面セーブを強要されたディノは、何とか大丈夫とは言ってはいるものの、少し顔が赤く腫れていた。
桃馬「うーん、リフィルの浮気か。確か直人とリフィルは、一年の頃は同じクラスだったけど、浮気する程の仲だったかな?」
憲明「だから、浮気はないって、そもそもリフィルは、見た目はお転婆で見境が無い所はあるけど、根は真面目だから大丈夫だよ。」
桃馬「リフィルが、"真面目"か……、それはガチで言ってるのか?」
憲明「…い、いや、ちょっと誇張した。」
憲明も若干不安な所があるのだろう。
少し誇張した辺りが、憲明の気持ちを物語っていた。
桃馬「ふう、まあ、例えリフィルが直人に言い寄ったとしても、今の直人なら断ると思うけど……、それよりリールとエルンは、やけに落ち着いているな?」
エルン「えっ?」
リール「ん??」
普通なら一番慌てふためくであろうリールとエルンであるが、何故か至って冷静な表情をしていた。
ギール「お、おいおい二人とも?直人がリフィルと浮気しているかもしれないって時に、やけに冷静だな?」
リール「あはは、直人が隠れて浮気なんてしないよ〜♪」
エルン「うむ、リールの言う通りだ。そもそも直人は、影でコソコソと浮気をする様な男じゃないさ。」
ギール「ど、どうして分かるんだ?」
リール「ふふ〜ん、それは女の勘だね♪」
ギール「はっ?」
ドヤ顔しながら素直に答えたリールの姿に、質問したギールは思わず疑問の声を漏らした。
このやり取りに桃馬たちは、真面目な理由を持っていそうなエルンに注目した。
エルン「っ、あ、いや、わ、私は違う理由だぞ!?」
桃馬「だ、大丈夫大丈夫。そのくらい分かってるよ。それで、エルンの理由はどういう物なのかな?」
エルン「あ、あぁ、そうだな。えっと、理由は"色々"あるが、そもそも、家族を大切にしている直人が、姉上(※稲荷)を含めた私たちに内緒で、リフィルと浮気みたいな事をするだろうか?」
桃馬「…た、確かにエルンの言う通りだな。直人が抱いている家族へ愛の強さは、ここへ来て初めて知ったからな。」
リールの簡単過ぎる理由より納得できる理由に、思わず桃馬たちは頷いた。
エルン「あとは、そうだな。真面目で優しい性格だけど…、たまに過度な遠慮をしてしまって奥手になる辺りが、直人を信じる理由であり……、私の好きな所だな。」
桃馬「……ん?」
憲明「………えっ?(今のが信じる理由か?……なんだか、直人への惚気話にも聞こえた気がするが、気のせいだったかな。)」
リール「あっ、うんうん!私も直人のそう言う所が好きだよ〜♪」
直人が居ない事もあり、その後も勢いに任せて直人への想いを語るエルンであったが、徐々に周囲への注意が薄れてしまい、不覚にもすぐ近くで立ち聞きしていた直人とリフィルに気づかなかった。
直人「…え、エルン?」
エルン「ん?あっ、おかえり直人♪やっと戻って来たか♪」
日頃から伝えたい事を我慢していたためか、振り返ったエルンの表情は、今まで以上に爽やかでスッキリとした表情をしていた。
しかし、その表情も次第に恥ずかしそうな表情へ変わって行った。
一方のリールは、普段と変わりない笑顔を見せながら直人に駆け寄った。
リール「あっ、おかえり直人〜♪」
エルン「な、ななっ///」
リフィル「いや〜♪エルンちゃんの熱い想いはガチものだね〜♪まるで、直人の事を隅々まで調べ上げている見たいだったよ〜♪」
エルン「〜っ///そ、そんな事はないぞ!?こ、これは、そ、そう、士道部の時に感じた思いであってだな……。」
リフィル「へえ〜、なるほどね〜♪」
直人「あ、お、おいリフィル!?」
恥ずかしがるエルンに対して、リフィルが笑みを浮かべながら接近すると、この様子に焦った直人は、早速リフィルが、盗撮等の件をバラそうとしてるのではないかと思い込み、思わずリフィルを呼び止めようとした。
リフィル「ふふっ、大丈夫だよ直人〜♪エルンちゃんに変な事はしないからさ〜♪」
直人「……くっ。(下手に動けば、即座にチクられる可能性があるし……、ここは従うしかないか。)」
現状リフィルに逆らえない直人は、黙って事の行く末を見守った。
その後リフィルは、エルンの前に立つとゆっくり耳元に口を近づけた。
エルン「っ、な、何だリフィル……。」
リフィル「ねぇ、エルンちゃん?もしかしてだけど、いつも直人の写真を見ながらエッチな事をしてたりしてる?」
エルン「っ!」
リフィル「クスッ、分かりやすい反応だね〜。」
エルン「い、いきなり何を言っているのですか……。」
リフィル「ふふっ、別に大した話じゃないよ♪ただ、大好きな直人とイチャつきたいとは思わないのかなって、ちょっと思っただけだよ♪」
エルン「くっ、つ、つまり。直人と体を重ねないと……、直人に写真の件をバラすと言う訳か……。」
リフィル「せいか〜い、せっかく夫婦になったんだから、リールちゃんも混ぜて直人の妖気、魔力、精気を搾り取っちゃいなよ〜♪」
エルン「っ、そ、そんな事できる訳……、」
リフィル「なら、直人に報告するまでだよ〜♪」
エルン「くっ、何が望みだ……。」
リフィル「ふふっ、私の望みは一つよ♪とにかく直人とイチャつきなさい♪(ひゃわぁ〜♪直人と同じ反応してる〜♪これはいい同人ネタになるわ!)」
小頼商会に通じているリフィルには、エルンが直人の盗撮写真を買っている事は分かっていた。
ちなみに、その写真の使い道についても知っていた。
時折学園に持ち込んでは、ダメだと分かっていながらも性欲を慰めたり、その卑猥な使い方は様々であった。
エルン「……くっ、わ、分かった。イチャつくだけなら……。(ま、まずい……、今直人とイチャついてしまったら……、理性が飛ぶやもしれない。)」
リフィル「ふふっ、聞き分けが良くて助かるわ♪あとは、リールちゃん♪」
リール「はーい♪何かな〜?」
直人「なっ、こ、こら、リフィ…っ!?(く、口と全身が開かない!?くそっ、リフィルのやつ拘束魔法を掛けやがったな!?)」
とうとう、リールにも何かを吹き込もうとするリフィルに、堪らず直人が止めに入ろとするが、リフィルの拘束魔法によって身動きを封じられてしまった。
リフィル「実はリールちゃんには、直人とエルンちゃんを連れて、別行動をして欲しいんだけど〜♪」
リール「ふぇ?どうして?」
リフィル「ふふっ、せっかく直人のお嫁さんになったんだから、少しは絆を深めるための行為をしないと〜♪」
リール「な、なるほど!確かに一理あるね。」
リフィル「ちなみに、リールちゃんはドレインタッチ系は使えるかな?」
リール「うーん、使えない事はないけど、それで何をするの?」
リフィル「直人の妖気や精気をバンバン吸いなさい♪」
リール「ふえ!?そ、そんなので絆が深まるの!?」
リフィル「えぇ、凄く深まるわ♪直人の強力な力を糧にすれば、リールちゃんはもっと強くなれるし、逆に強化されたリールちゃんの力を直人に分け与えれば、一心同体みたいな深い関係を築けるんだよ?」
リール「一心同体……、おぉ、何か凄そうだな!」
リフィル「クスッ、直人なら絶対にやりたがらないと思うから、ここはエルンちゃんと協力して直人を蹂り……絆を深めなさい♪」
リール「うん!分かったよ♪」
こうしてリールすらも丸め込んだリフィルは、早速直人の拘束を解くなり、無言の圧を掛けつつ愛する二人の嫁を連れてプール施設を後にした。
憲明「…お、おい、リフィル?直人たちに何を吹き込んだんだ?」
リフィル「クスッ、今まで"モヤモヤ"させてくれた代償を払ってもらうだけよ〜♪」
憲明「だ、代償って……、うぅ、嫌な予感がして来たけど……、まさか二人同時じゃないよな?」
リフィル「まあまあ、一応ドレインタッチを勧めてるから本番はしないと思うけど〜。まあ、エルンちゃんが暴走したら〜、少し危ないかもね。」
桃馬「っ!おいおい、それなら今すぐに呼び戻さないとまずいだろ!?」
ジェルド「そ、そうだ!も、もしここで直人が死ぬ様な事になれば、俺たち殺されるんじゃないか!?」
ギール「わふぅ!?そ、それはまずいって!?」
ディノ「そ、そそ、それなら早く連れ戻さないと〜!?」
リフィル「あっ、ちょっと待なさいよ!?」
命の危険を悟った男たちが慌てふためきながら、直人たちの後を追い掛け様とすると、少し大きめな要石が、男たちの目の前に落ちて来た。
突如、どこからともなく落ちて来た要石に驚く桃馬たちであったが、目の前に落ちて来た要石をよーく見てみると、一枚の紙が添えられていた。
桃馬たちは、恐る恐る紙を取り開いて見ると……。
三人の邪魔はしない様に……。
例え直人の友人であっても……。
佐渡家縁の者であっても……。
両津稲荷より。
と言う、何とも警告とも思える稲荷からの文を見た桃馬たちは、大人しく後を追うのを断念した。