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第五十四話 妖楼温泉街編(11) 水楽祭ノ章

プールサイド森林地帯。


"ジェルド"らしき叫び声を聞いた桃馬たち一班は、非力な戦局を有利に進めるため、少々卑怯ではあるが"漁夫の利"に乗り出していた。




桃馬「ここら辺かリフィル?」


リフィル「うーん、この辺りだと思うんだけど〜。」


憲明「それにしてもこの森林地帯……、誰かが隠れていてもおかしくないな…。取り敢えず適当に撃ってみるか。」


桜華「そ、それじゃあ、わ、私はこっちを。」


憲明と桜華が、敵が隠れてそうな所をひたすら撃ちまくる中、一方の桃馬とリフィルは、少し先行しながら周辺の捜索をしていた。


すると間もなくして、少し開けた茂みの中で、うつ伏せの状態で倒れているジェルドを発見する。


桃馬「…うわっ、本当にジェルドだ。」


リフィル「お〜い、二人とも〜、集合〜。」


お目当てのジェルドを見つけた二人は、ジェスチャーを()じえながら、あちらこちらに無駄撃ちをしている憲明と桜華を呼び出した。



合流した四人は、目の前で倒れているジェルドに近寄ろうとはせず、敢えて茂み越しから様子を伺い始めた。


うつ伏せ状態で倒れているジェルドの隣には、一丁の水鉄砲が落ちていた。


しかし、ハンデとして所持しているはずのもう一丁の水鉄砲がどこにも見当たらなかった。


明らかに罠っぽい光景を目撃した桃馬と憲明は、うつ伏せ状態のジェルドを睨み付けながら怪しんでいた。


憲明「これは〜、どう見ても罠かな〜?」


桃馬「あぁ、間違いなくそうだろうな……。差し詰め…、もう一丁の水鉄砲は体の下にでも隠していて、叫び声に釣られて来た相手を瞬時にバーン…って感じだろうよ。」


桜華「そ、そうなのですか?」


リフィル「えぇ〜?それなら水鉄砲を構えながら水鉄砲を取ろうよ〜。」


憲明「こらこら、リフィル?今の話を聞いていなかったのか?どう見てもあれは死んだフリだろ?」


リフィル「ふぇ?で、でも、あんなバカ丸出しな倒れ方は…、うぅ、た、確かに演技かも…。」


桜華「あ、あはは、よ、要するに何かしらの罠なんですよね。」


桃馬「まあ、そう言う事だ。他に予想するとすれば、"木の上"か、対面の"茂み辺り"に小頼が隠れているかだな。」


一応、戦い慣れをしてい桃馬は、あらゆる可能性を分かりやすくリフィルと桜華に説明した。


桃馬「まあ、ちょっとでも怪しいと感じたら、無理に近寄ろうとはせず、安全を第一に考えて…、一発撃って見ればいいさ。」


怪しさを漂わせているジェルドに対して、桃馬は水鉄砲の銃口をジェルドに向けるなり、"もふもふ"の白い頭を狙い撃った。


するとジェルドは、水が当たる寸前の所で華麗に起き上がると、隠し持っていた水鉄砲を乱射し始めた。


桃馬「ちっ、伏せろ!」


桜華「ふえっ!?」


憲明「っ、あぶなっ!?」


リフィル「おっと、あはは~♪スリル~♪」


危機回避とも言える俊敏(しゅんびん)性を発揮させたジェルドは、仕掛けて来た桃馬に対して激しい水の弾幕を放った。


予想外の激しい応酬(おうしゅう)に、桃馬たちは瞬時に茂みの中へ隠れた。


幸い、茂みの葉っぱが盾の代わりとなっており、若干の"水しぶき"はかかるものの、アウトになる程のレベルではなかった。


しかしジェルドは、エサにしていた水鉄砲を手に取るなり、容赦のない弾幕を張り続けていた。


ジェルド「おらおらー!隠れても無駄だー!」


桃馬「ちっ、面倒な奴だな。小頼の事も気になるってのに…、今ここで背後を取られたりしたら…、確実に全滅するぞ。」


桜華「と、とわ言っても……ひっ!」


桃馬「っ、辺りを警戒しつつ、ジェルドの水切れを待つしかないか。」


桜華「うぅ〜、で、でも、水切れを待っていてもジェルドに詰められてら終わりですよ!?」


桃馬「…くっ、仕方ない。ここは二手に分かれて、ジェルドの視野を分散させよう。憲明とリフィルは、対面に回ってくれるか?」


憲明「あ、あぁ、分かった。正直、(おとり)にはならないと思うけどな。」


リフィル「う、うん!分かったよ!」


ジェルドから一方的に水が飛んで来る中で、桃馬たちは二手に分かれた。


この作戦に憲明は、個人的な部分で油断をしていた。


どうせ桃馬ラブのジェルドの事だ。


例え二手に分かれたとしても、攻撃の矛先が全て桃馬に集中するだろうと思っていた。


しかし、現実は違った。


ジェルド「っ!そこか憲明!」


憲明「うわっ!?撃って来やがった!?」


まさかの攻撃に憲明は驚いた。


どうやらジェルドは、この勝負を本気で勝とうとしている様であった。


しかし、鼻を利かせながら乱射するジェルドの水鉄砲は、全く憲明に当たらなかった。


桃馬「ジェルドの奴‥、水鉄砲の扱い下手くそだな。これなら"ワンチャン"あるかもしれないな。」


ジェルドに銃撃センスが無い事を察した桃馬は、早く終わらせようと茂みの隙間から一発だけ撃ってみた。


ジェルド「っ、そこか!」


しかし反射神経が高いジェルドは、俊敏に避けるなり、桃馬が撃って来た方向へ撃ち返した。


ジェルドが撃った水は、桃馬の頬をかすめた。


桃馬「っ、まじかよ。ジェルドの奴、実は銃撃センスあるのかよ。くそぉ、これじゃあ、俺たちにハンデが欲しいよ。」


桜華「はわわ!?ど、どうしましょう!?」


桃馬「‥‥桜華。もしかしたら、"桜華様"に出て来て貰わないと勝てないかもしれない。」


桜華「ふぇ!?そ、それは嫌ですよ!?あ、"あれ"を出してしまったら、またみんなに迷惑をかけてしまいますよ!?」


桃馬「っ、そ、そうだよな。あっ、でも演技ならどうだ?」


桜華「え、演技ですか?で、出来ない事はないですけど……、は、恥ずかしいですよ。」


桃馬「ま、まあまあ、春の大戦乱祭の練習だと思って…。」


桜華「うぅ、そ、そうですよね。や、やってみます。」


桜華に取って苦渋の決断ではあるが、今の現状を打開するためには、やむ負えない選択であった。


ジェルド「ほらほら!出てこいよ桃馬〜!お前の体を……はぁはぁ、俺の水鉄砲で…、はぁはぁ、"びしょびしょ"に濡らしてやるからよ〜!」


やたら桃馬に執着しているジェルドは、恥ずかしげもなく卑猥な挑発を連発する。


するとそこへ、桜華が動く。


桜華「ほ、ほう〜、な、ならば"そなた"の穢らわしい水鉄砲とやらを見せてもらおうかしら?」


ジェルド「きゃふっ!?そ、その声は!?」


突如聞こえた、クールで()てつく様な桜華の声に、ジェルドは思わず怯んだ。


憲明「っ、おいおい、今の声って…、まさか桜華様か!?」


リフィル「ふぇ!?ほ、ほほ、本当に!?」


桜華による渾身の演技とは露知らず、憲明とリフィルは再び桜華様が出て来てしまったと思い込み、あまりの驚愕に背筋を凍らせた。



桜華「さ、さぁ、どうした駄犬よ?早く"そなた"の粗末な水鉄砲を見せよ。」


ジェルド「い、いいだろう〜。そ、それなら、そんな茂みに隠れていないで、すぐに出て来たらどうですか…、桜華様?」


桜華「ふふっ、良いでしょう。お望み通りにして上げましょう……。」


ジェルドの要求に応じた桜華は、茂みから"ガサガサ"と音を立てながら姿を現した。


桜華様に謁見(えっけん)できる事に対して、かなりの期待をしていたジェルドであったが、すぐに(むご)たらしい現実に直面する事になる。


目の前に現れたのは、カリスマ溢れる桜華様ではなく、普段おおらかである桜華の姿であった。


ジェルド「えっ、えぇ!?お、桜華様じゃない!?」


桜華「ふふっ、騙されましたね♪」


見た目は普段の桜華であるが、声と話し方が桜華様そのものであった。


そのため、再び桜華様の姿に戻ったと思い込んでいたジェルドは、あまりの衝撃と混乱により、二丁の水鉄砲をガクッと下げてしまった。


この隙に桃馬は、茂みから勢い良く飛び出し、ショックで呆然としているジェルドに向けて水鉄砲を放った。


心の隙を突かれたジェルドは、回避行動を取ろうとするも間に合わず、抵抗虚しく水を"ぶっかけ"られてしまった。


桃馬「よーし、まんまと気を取られたなジェルド?」


ジェルド「うぅ、ブルル、わふぅ、やられたよ。そ、それより…、今の桜華はどっちなんだ?」


目の前に居る桜華が、普段の桜華なのか、それとも桜華様なのか、依然として分からないジェルドは、恐る恐る桃馬に質問した。


桃馬「あぁ、それなら普段の桜華だよ。乱射しているジェルドを倒すために、桜華様を演じてもらったんだよ。」


ジェルド「え、演技か……。うぅ、そうか。」


演技と聞いて安堵したのか…、それとも残念なのか…。ジェルドの"ピン"っと直立した耳と尻尾が、一瞬で"へにゅっ"と垂れ下げた。


桜華「クスッ、やりましたね桃馬♪」


桃馬「あぁ、これも桜華のお陰だよ。本当にありがとう♪」


桜華「ふふっ、それは良かったわ♪」


まだ演技が抜けていないのか。桜華はクールな口調をしたまま、桃馬と喜びを分かち合った。


桃馬「さて、ジェルド?小頼はどこだ?」


ジェルド「っ、ふ、ふん、それは教えないよ。」


桃馬「ふ〜ん、そうか…。じゃあ、調子に乗った罰を与えようかな。」


ジェルド「っ、な、なんだと!?」


もはや罰と言うより、ご褒美に等しいと感じるジェルドは、"へにゅっ"とさせた耳と尻尾を直立させ、(みなぎ)る興奮を(あらわ)にした。


これに対して桃馬は、構わずジェルドを押し倒すなり、仰向けの状態で馬乗りになった。


更に桃馬は、水鉄砲の銃口をジェルドの顔に向けるなり、二、三発ほど水をぶっかけた。


無抵抗のケモ耳男子の顔を濡らした桃馬は、駄犬への調教心に火をつけていた。


駄犬であるジェルドを分からせる事で、不純な気持ちを大いに(たかぶ)らせている桃馬は、とうとう水鉄砲の銃口をジェルドの口に突っ込むなり何発も発射した。


まさにご褒美とも言える仕打ちを受けているジェルドは、(たくま)しい体を"ビクビク"と跳ねさせながら淫靡(いんび)な声を漏らし、最終的には情けない顔を晒しながら戦闘不能に陥った。



その後、ジェルドが持っていた水鉄砲を奪った桃馬たちは、次のターゲットを探しに出た。



リフィル「いや〜、それにしても〜、桜華様の声を聞いた時は驚いたよ〜。」


憲明「あぁ、本当だよ。あれだけ苦労して戻したってのに、また戻ったのかと思ったよ。」


桜華「ご、ごめんなさい二人とも、やっぱり驚かせちゃったよね。」


桃馬「桜華が謝る事はないよ。それにあの作戦は、二手に分かれた時に思いついた作戦だから仕方ないよ。」


戦況的に仕方がなかったとは言え、桜華様の声を聞いた時の憲明とリフィルの心境は、焦りの方が勝っていた。


憲明「それにしても、ジェルドの心を犯している時の桃馬は、本当に楽しそうだったな?もうこの際、素直にジェルドを受け入れてもいいんじゃないか?」


桃馬「ふっ、それは嫌なこった。確かにジェルドは、かっこ良くて可愛い駄犬だけど、下手にジェルドを受け入れて見ろ?間違いなく、毎日俺のケツを狙って来るぞ。」


憲明「それは普段と変わらないだろ?」


桃馬「んな訳ないだろ?今よりもっと大胆で過激になるに決まってる。もしそうなれば、友人関係はおろか、主従関係のバランスまで崩れて、ジェルドは俺の天敵になってしまう。だから俺は、今の関係を維持するためにも、今の距離感を大切にしてるんだよ。」


憲明「距離感か…。まあ、確かに一理あるけど…。でもそれだと、桃馬が一方的にジェルドを攻める事にならないか?」


桃馬「そりゃあ、当然だ。駄犬にマウントを取られたら終わりだからな。」


憲明「と言いながらも、ジェルドみたいな駄犬を屈服させてモフりたいだけなのでは?」


桃馬「……ふっ。」


憲明「…えっ、ま、まじ?(ま、まさかだとは思ってはいたけど……、実は桃馬のやつ、ケモ耳男子をいじめて喜ぶヤバい奴なんじゃ……。)」


憲明は、鼻で笑うが否定しない桃馬に対して、実は狼よりも危険な男かもしれないと、"疑惑(ぎわく)の念"を持ち始めた。


更に"疑惑の念"は、リフィルと桜華の間でも話題になっていた。


リフィル「ごくり、ねぇねぇ桜華ちゃん?もしかしたら桃馬って、襲われるのは嫌だけど、襲う事に関してはいける口なのかな?」


桜華「ふぇ!?あ、いや、それは…、ど、どうかな〜。」


リフィル「も、もしだよ?もし桃馬が、無抵抗のジェルドとギールを楽しそうに犯していたら…、桜華ちゃんはどう思う?」


桜華「な、ななっ、何を聞いているのですか!?」


リフィル「だ、だって〜、今の桃馬には、"桜華ちゃん"って言う可愛い彼女がいるんだよ?それなのに桃馬は、そんな桜華ちゃんよりも、ジェルドやギールみたいなイケメンを調教して喜んじゃってるし…。そんな桃馬を見て桜華ちゃんは何とも思わないの?」


桜華「え、えっと、そ、そうですね〜。」


珍しくまともな事を言うリフィルに対して、桜華は逆に戸惑ってしまった。


確かに桃馬の接し方は、凄く桜華に対して優しいが、主従関係を築いているジェルドとギールと比べると、若干距離感を感じてしまう点はあった。


桜華「うーん、で、でも、桃馬はしっかり私を見てくれていますし、そもそもジェルドとギールが桃馬に愛されているのは、それなりの付き合いがあるからであって……。」


リフィル「っ、もう〜、桜華ちゃんは優しいね〜。そんな可愛い桜華ちゃんには、こうだ〜♪」


桜華「んん〜っ!?」


誠実な桜華に心を打たれたリフィルは、堪らず桜華に抱きつくなり淫行を強行した。


更にリフィルは、先行している桃馬と憲明に気づかれない様に、右手で桜華の口を塞ぐと、左手で整った胸を揉みしだきながら、首筋を舐め回し始めていた。


しかし、そんな楽しみを妨害するかの様に、再び四人の近くで(さわ)ぎ声が響いた。


桃馬「っ、どうやら近くで、誰かが交戦しているみたいだな。」


憲明「よーし、今度こそ"漁夫の利"を成功させようじゃないか♪」


リフィル「賛成~♪それじゃあ早速、私は桜華ちゃんと組むから二手に分かれちゃお〜♪」


桜華「ふぇ!?」


どさくさに紛れて百合百合(ゆりゆり)しい淫行を継続させようとするリフィルの行動に、桜華は思わず声を漏らした。


憲明「はいはい、んじゃあ、背後は任せたよ。」


リフィル「お任せを〜♪ぐへへ…。」


振り返る事もなく歩きながら答えた憲明は、桃馬と共に前線の警戒を強めた。


するとそこへ、突如リフィルの背後から奇妙な人影が迫って来た。


?「クスッ♪それはどうかな〜?リフィルちゃ~ん♪」


リフィル「ふえっ?」


これから桜華を茂みの中へと連れ込み、百合百合しい淫行を及ぼうとしたリフィルであったが、背後より声を掛けた盟友により、その企みは呆気なく阻止されてしまう。


何の警戒も無く背後を振り向いたリフィルの目の前には、ジェルドが持っていた水鉄砲より、かなり大きめな水鉄砲を持った小頼が、笑顔で銃口を向けていた。


思わぬ展開に遭遇したリフィルは、目を点にしながら大量の水を浴びせられた。


リフィル「んぶっ!?けほけほっ!うう、やられちゃった~。」


桃馬「な、何の音だ!?」


憲明「っ、り、リフィル!?って、こ、小頼!?」


小頼「にしし、背中が"がら空き"だよ〜♪」


憲明「こ、この!これでもくらえ!」


小頼「よっ、ほっ、そんなエームじゃあ当たらないよ〜♪それじゃあね〜♪」


憲明「あ、こら逃げるな!?」


強力な水鉄砲を所持している小頼なら、あの死角を突いた奇襲で桃馬たち"一班"を全滅に出来たはずであった。


しかし小頼は、何故かリフィルだけを倒した後、その場から逃げ去ってしまった。


桃馬「くそっ、油断したな。それにしても、あの威力がある水鉄砲を至近距離から撃つとは、小頼も容赦ないな。」


桜華「ほ、本当にビックリしましたよ!?そ、それより、リフィルちゃんは大丈夫ですか!?」


リフィル「う、うん、大丈夫だよ♪で、でも、もしこれが、し、白くて…ねっとりとした液体だったら…。はぁはぁ。」


桜華「えっ?白い…?」


桃馬「うわぁー、ストップ!何を言ってるんだリフィル!」


リフィル「で、でも、顔にかけられるのは、大抵"せ……"。」


桃馬「や、やめろ、それ以上話すな!?色々とまずいから!」


憲明「ふぅ、桜華の教育上、悪影響になるから少し我慢しろリフィル。」


リフィル「むぅ、はーい…。ぺろっ。」


脱落となったリフィルは、エロいオーラを漂わせながら脱落者専用の場所へと向かった。


一時は安全かつ、男子平等に楽しめる競技だと思われた水鉄砲合戦であったが、ここへ来て色々と危険な競技と化している事に、桃馬と憲明は気づき始めていた。



桃馬「どうする憲明?このまま小頼を追うか?」


憲明「あぁ、そうだな。だけど小頼の事だ。リフィルを倒した事で、俺が単身で追い掛けて来ると思っているだろうな。」


桃馬「な、なら、追い掛けるのは罠だな。」


憲明「あぁ、明らかに罠なんだけど……。でも、ここで俺が行かないとネチネチと跡をつけては、次に桜華が狙われる可能性があるからな。」


桃馬「っ、た、確かにそうだな。それじゃあ、俺と桜華は先に森林地帯を抜けるとしようか。」


憲明「あぁ、今はそうした方が良いと思うよ。正直、小頼の盤上に若干乗り込む事になるけど、全滅するよりマシだ。」


小頼の襲撃により、仲間のリフィルを失った桃馬たちは、現状厄介な立場に君臨している小頼を何とかするため、ここで憲明が逃げた小頼を追い掛けた。


こうして、二人だけになった桃馬と桜華は、森林地帯を抜けるため、周囲を警戒しつつ移動を再開させた。


所々で誰かの声が聞こえて来る中、いつ、どこで、誰と遭遇してもおかしくない現状に、桃馬と桜華は次第に周囲の警戒を強めた。


そんな時、何者かが急速に近づいて来る音と共に、男性と思われる声が近づいて来た。


これに対して桃馬と桜華は、少し茂みから距離を取ると応戦に備えて水鉄砲を構えた。


すると間もなくして、茂みの中から四班に属している直人が、慌てた様子で飛び出して来た。


直人「なっ!?」


桃馬「な、直人!?」


桜華「ふぇ!?」


飛び出して来たの人物が、まさかの直人と言う事に思わず驚いた二人であったが、その驚きが(はず)みとなり、事前に構えていた水鉄砲をそのまま直人に向けて撃ちまくった。


一応、厄介な候補に上がっていた直人ではあったが、何とも呆気なく倒されてしまった。


桃馬「や、やった…。」


桜華「や、やりましたね!これは大きいですよ!」


直人「くそぉ〜、ついてねぇ〜。小頼には狙撃を邪魔されるし、狙ったギールにしつこく追い掛け回されるし…。しかも最後は、桃馬たちの出待ちかよ…。」


桃馬「えっ?ぎ、ギール?」


直人の話が本当であるなら、まもなくギールも茂みの中から出て来るはずであった。


そのため桃馬は、カラに近い水鉄砲を茂みに向けた。


しかし、肝心のギールはと言うと、茂みの中から一向に出て来る気配がなかった。


桃馬「……ふぅ、さ、流石に考え過ぎだよな。」


ギールに対する強い警戒心のせいか。過剰に反応してしまった桃馬は、反省からか…、気を抜いて水鉄砲を下げてしまった。


その直後、突然茂みの中からギールが飛び出して来た。


桃馬「うわっ!!?」


ギール「はぁはぁ!と~ま~♪」


桃馬「ぎ、ギール!?く、は、はなれ…んごっ!?」


突然ギールに押し倒された桃馬は、ニタ~っ笑みを浮かべるギールに、ぶっとい水鉄砲を口の中に突っ込まれた。


桜華「と、桃馬!?‥っ、み、水切れ!?あぁ……ど、どうしよう……うぅ、ごくり。」


ギールに押し倒された桃馬を助けようと、桜華は水鉄砲を構えてギールを撃とうとするが、既にカラになっている水鉄砲では、どうする事も出来なかった。


そのため桜華は、桃馬を助けたくても助けられず、ただただ、ギールに押し倒された桃馬の姿を見つめながら生唾を飲んだ。


直人「うぅ、うわぁ…、見るに耐えれない光景になりそうだな…。」


これから始まるであろう悲惨な展開に、既に脱落してしまった直人は、従兄弟のピンチを静かに見守った。


ギール「ほらほら桃馬~♪早く逃げないと俺の水鉄砲が暴発して…、はぁはぁ、桃馬の喉奥が大変な事になるよ?」


桃馬「んんっ!んぐっ…こはっ、んぐっ!」


桃馬としても必死で抵抗しているとは言え、上半身を馬乗りにされ、更には両腕を掴まれている状態では、もはや身動きなど取れるはずもなかった。


すると、完全に桃馬の身動きを封じたと実感したギールは、必死で無駄な抵抗をする桃馬に対して、更なる愚行に及んだ。


ギール「ふんふん~♪そんな抵抗じゃ…、絶対に逃げられないよ〜?ぺろっぺろっ…。」


桃馬「んんっ!?」


今までにない程の有利な展開に、興奮が抑えられないギールは、桃馬の耳元でマウントを(ささや)いた後、がら空きの首筋を舐め始めた。


小うるさい桃馬のお口を水鉄砲で塞ぎ、更に上半身裸のギールが、同じ上半身裸の桃馬を襲っている光景は、まさに"カオス"そのものであった。


このまま二人を放置すれば、間違いなく桃馬は、残り一時間足らずでギールの淫靡な舌使いによって、体の隅々まで舐め上げられる事になるであろう。※即ちマーキングである。


直人「うわぁ、えぐいな…。」


桜華「はわわ!?と、桃馬が、ど、どど、どうしよう!?」


直人と桜華に取って、イケメンのケモ耳男子であるギールに、本格的に桃馬が襲われると言う光景は、何とも刺激的な光景であった。


一方、二人の部外者に見られているギールは、お構い無しと言わんばかりに、器用な舌使いを駆使して、桃馬の首筋から徐々に下へと舐め始める。


桃馬「んんっ!うぐっ!」


桃馬(くっ、調子に乗りやがってこのバカ犬が……、桜華と直人が見ているってのに何て事をするんだ!くそぉ、くそぉ、こんな俺を見ないでくれ~!)


ギールから良い様に蹂躙されている桃馬は、反撃どころか何もさせてもらえない状況下で、ただただ心の中で悲鳴を上げる事しか出来なかった。


ギール「はぁはぁ、さてと、この続きはトドメを差してからにしようかな〜♪」


桃馬「ふぅふぅ~!?」


完全勝利と言う栄光が、目前(もくぜん)まで迫って来たギールは、ここで桃馬にトドメを差した後、更に激しい"分からせ"を実行しようとしていた。


もしもこれが、ドラマやアニメなどにある危機的な展開であるのなら、決まって"ピンチはチャンス"とか言う、何とも都合が良い救済処置が発動するはずである。


だがしかし、この現実世界において、そんな都合の良い展開は……、皆無であった。


"ピンチは所詮ピンチ"である。


ポジティブ思考の"ピンチはチャンス"と言う言葉は…、所詮、結果論に元ずく事後肯定であり、言わば現実から目を背けたいと言う、一種の自己逃避、あるいは自己催眠である。


そのため桃馬は、もはや助からないと悟り無駄な悪足掻きをやめた。


(いさぎよ)い桃馬の諦めに、勝利の実感を得たギールは、満面な笑みを見せながら愛する桃馬の喉奥を水鉄砲で犯そとしていた。


そしてギールが、水鉄砲の引き金に手を掛けたその時。


駄犬としての本懐が切って落とされた。


ギール「はぁはぁ、くらえぇぇっ!桃馬!!」


桃馬「っ、うぐぉぉっ!?」


水鉄砲の引き金を遠慮無く引いたギールは、大量の水を桃馬の喉奥に流し込んだ。


桃馬の両目は大きく開き、水平になっていた両足が"ピン"っと、二、三十度程反り返った。


その後、全身の力が抜け始めた桃馬は、飲みきれなかった水を口から垂れ流し、瞳は当然の様に光を失っていた。



直人「うわぁ、桃馬よ。安らかに眠れ。」


桜華「うぅ、桃馬……。」


何とも(むご)たらしい光景に、思わず直人は桃馬に向けて合掌し、一方の桜華は、口元に手を当てながら涙を流していた。


桃馬に完全勝利を収めたギールは、ゆっくり水鉄砲を桃馬の口から引き抜くと、余った水を使って桃馬の顔と体にぶっかけた。


直人「…あはは、えげつねぇな。」


ギールの歪んだ愛を目にした直人は、やはりBLは二次元だけで充分だと思うのであった。


ギール「はぁはぁ…、ジュルリ。」


桃馬を戦闘不能にまで陥れても足りないギールは、早速脱力した桃馬を性的に(むさぼ)ろうとする。


ギール「はぁはぁ、桃馬〜、じゅるり、いただきま~きゃふっ!?」


性的に桃馬を食べようとしたギールであったが、突如背後より現れた"カリスマ溢れる美女"により、敏感な尻尾を強めに掴まれてしまった。


桜華「へぇ〜、私の目の前で随分と面白そうな事をしているじゃない?」


ギール「わ、わふっ!?な、何だ桜華か〜。今は見ての通り忙しいんだ。今は黙って……って、ん?お、お前……、桜華だよな?」


ギールの目の前には、桜華と思われる妖艶でカリスマ溢れる美女が立っていた。


桜の様に綺麗であったピンク髪が、クールで(つや)のあるパープル色へと変わり、表情と口調も見た目通りのクールなお嬢様系になっていた。


直人「お、おいおい…、まじかよ…。せっかく元に戻ったのに…。」


みんなの苦労で、やっと元に戻せた桜華であったが、桃馬の悲劇がトリガーになってしまい、僅か一時間足らずで桜華様が再臨されてしまった。

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