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第五十一話 妖楼温泉街編(8) 水楽祭ノ章

化堂里屋の施設にて、桃馬たちが楽しんでいる頃。


隠世(かくりよ)の広い温泉街で、"もふもふ"とした妖怪を探していたギールとシャルが、ようやく化堂里屋に到着していた。



これまでの二人のあらすじ。


わざわざ化堂里屋から"豆狸くん"が迎えに来てくれるまで、"もふもふ"の妖怪を誰一人として見つけられず、シャルとギールは途方に暮れていた。


しかしそこへ、"もふもふ"の"豆狸くん"が現れた事で、自我を失ってしまったシャルとギールは、()えた狼の様なオーラを放ちながら、か弱い"豆狸くん"に襲い掛かり、気絶するまで"もふり"倒してしまった。


その後、か弱い"豆狸くん"を襲ったシャルとギールの正気が戻ったのは……、もふり始めてから四十分後の事である。


更に、被害者である"豆狸くん"が目を覚ましたのは、それから三十分後の事であった。


豆狸くんが目を覚ました事で、警察沙汰を恐れたギールは、その場で土下座しながら"豆狸くん"に謝ったと言う。


しかし、最初から"もふもふ"の妖怪を見つけては"もふり"倒そうとしていた時点で、今更警察沙汰を恐れるのは(いささ)か疑問な点である。



そして現在に至る。


ギール「……ここに桃馬たちが‥。」


シャル「おい、小さい"もふもふ"よ?本当に桃馬たちがここに()るのであるか?」


案内されたとは言え、少々疑っているシャルは、ぬいぐるみの様に抱き抱えている豆狸くんに話し掛けた。


豆狸「ほ、本当ですよ~!?若様のご友人に嘘は言いませんから!?」


シャル「ふむ、それなら桃馬に合うまで、お主は余のケモ(じち)なのだ♪」


豆狸「そ、そんな!?ま、またあんなに触られたら壊れてしまいますよ!?」


シャル「壊れろ壊れろ~♪そして余の者となるのだ~♪ぬははっ!」


豆狸「ひぃ~!?だ、だんなひゃま助けて〜!」


シャル「こ、こら〜!?下手に暴れるでないのだ!?」


シャルからの調教を恐れた豆狸くんは、化堂里屋の店前で、店主である織奉(しきぶ)に助けを求めながら暴れ始めた。


幸い、周囲に人が居なかったため、二人のやり取りを見られはしなかったが……。


シャルの腕の中で暴れる豆狸くんの光景は、(はた)から見ても誘拐現場であり、通報されてもおかしくない光景であった。


するとそこへ、化堂里屋の店主である織奉(しきぶ)が、外の騒ぎを聞きつけ店の中から姿を現した。


織奉「おぉ、豆太(まめた)戻ったか…って、な、何だか随分と可愛がられているな?」


豆太「だ、だんなひゃま!?た、助けたくらひゃい!?」


シャル「むっ、なんだお前は?」


ギール「こ、こら、失礼だろシャル!?たぶん、この人はここの店主さんだよ。」


シャル「店主?ほほぅ〜、それは都合がいいのだ!」


ギール「お、おい、シャル!?」


腕の中で暴れる"豆太"を抱き抱えているシャルは、目の前にいる織奉の前に立った。


すると織奉は、早速二人を接待するため、少々勘違いをしながら接客を始める。


織奉「あっ、お待ちしておりました。若様……、ではなく、両津直人様のご友人であられるギール様とシャル様ですね?」


ギール「え、えぇ、そうですけど。」


シャル「うむ!如何にも余は、魔王シャル様である!して、この店の店主とやらよ!早速この可愛らしい"もふもふ"を有り難く余に献上するのだ!」


"もふもふ"の豆太を手に入れるためとは言え、織奉からの身元確認に対して、かなり上から目線で要求を始めたシャルは、一方的に豆太を手中に収めようとした。


ギール「っ、お、おい!?いきなり何を言っているんだ!?」


流石のギールも慌てながら注意を促した。


織奉「ふえっ、ま、まおう?」


シャル「うむ、余は魔王なのだ!」


シャルからの魔王宣言に続いて、豆太の要求に少し驚く織奉であったが、直ぐに冷静な対応を取り始める。


織奉「え、ええっと、"まおう"とは存じませんが、豆太は大切な従業員です。申し訳ございませんがお渡しはできません。」


豆太「〜っ、だ、だんなひゃまぁ~。」


シャル「ほう、余に逆らうか。よかろう、お兄ちゃん!やってしま‥あいたっ!?」


ギール「調子に乗るなシャル?」


シャルの横暴に見かねたギールは、シャルの頭をコツンと叩いた。するとシャルは、抱き締めていた豆太を手放すと、叩かれた頭に両手を当てた。


一方、シャルから解放された豆太は、大急ぎで織奉の背後へと逃げ込んだ。


シャル「うぅ、何するのだ〜。余の"もふもふ"が逃げてしまったではないか!」


ギール「はいはい、シャルの気持ちは分かるけど、もふもふタイムはここまでだよ。」


シャル「むぅ〜、まだ余は、もふり足りないのだ!もっと、豆太とやらをもふらせるのだ〜!」


ギール「だーめ、流石に欲張り過ぎだぞ?」


駄々を()ね始めるシャルに対して、ギールは慣れた手つきでシャルを掴むと、そのまま脇に挟んで押さえ込んだ。


シャル「ぬわっ!離せギール~!」


ギール「はいはい、身勝手な横暴もここまでだよバカシャル?」


シャル「ま、またバカって言ったな!むぅ、動けない~!」


ギール「はぁ、申し訳ありません。こいつも悪気は無いとは言えないですけど、一応無い様な物なんです、どうかお許しください。」


ギールは、保護者代表として織奉と豆太に頭を下げた。


織奉「い、いえ、若さ…んんっ、直人様が言っていた通り、お二人の仲はとてもよろしい様ですね。むしろ、安心しましたよ。」


ギール「っ、ほ、本当にすみません。ほら、シャルも謝れ。」


シャル「ふん、嫌なのだ。」


ギール「っ、おまっ‥、はぁ、こいつの言葉は真逆に捉えてください。単に素直じゃないだけなんです。」


シャル「本心じゃ‥いたっ!?」


真逆とは言うが、実際本心と分かっているギールは、強情なシャルに対して、一発強めのゲンコツを見舞った。



織奉「あはは、では、立ち話も何ですから、早速ご案内しますね。豆太もありがとう、後は私が引き継ぐからゆっくり休んでおいで。」


豆太「は、はい、旦那様。」


織奉に仕事を引き継いだ豆太は、その場から逃げる様に素早く店の中へと走って行った。


その光景を見ていたシャルは、名残惜しそうな表情で見つめていた。




その後、ギールとシャルは、織奉の案内の元、桃馬たちが楽しんでいる"天変地異ノ間"へと向かった。


織奉「こちらが、直人様方が遊ばれている"天変地異ノ間"です。」


ギール「…えっと、結構物騒な部屋名ですね?」


織奉「あはは、まあこれも売りみたいなものですからね。取り敢えず百聞(ひゃくぶん)は一見にしかず、中を見て頂ければ分かりますよ。」


ギールの素朴な疑問に笑顔で答えた織奉が、"天変地異ノ間"の襖に手を掛けススッと開くと、ギールとシャルは目の前に広がる光景に驚愕した。


ギール「な、何だこの部屋は!?」


シャル「す、凄いのだ!?」


"天変地異ノ間"の中は、広大なテーマパークの様な施設が広がっており、まるで狸にでも化かされたかの様な光景であった。


織奉「どうでしょうか?物騒な部屋名ではございますが、中はとても賑やかなお部屋になっています。」


ギール「え、えぇ、これは凄い光景ですね……。まるで、幻でも見せられている様な感じだ。」


シャル「う、うむ、確かに幻の様な光景なのだ…。じゃが、この部屋はどうなっておるのだ?ゲートの(たぐ)いなのか……。」


織奉「申し訳ありません。それは企業秘密なので、お教えはできません。」


シャル「ふむっ、そうか。じゃが、この部屋には魔力とは違う、妖気とやらを感じるのだ。」


ギール「そ、それじゃあ、そもそもこの光景は幻なのか?」


シャル「…いや、この類いは幻と言うよりも、拡張魔法に近いと思うのだ。」


ギール「か、拡張魔法って、小さい空間を広い空間に出来るってあれか?」


シャル「うむ、そうなのだ。」


ギール「な、なるほど、確かにそれなら辻褄(つじつま)が合うな。」


普通なら考えられない様な光景を目の当たりにしている二人は、"ぶつぶつ"と部屋の分析を始める中、織奉は心の中で驚いていた。


織奉「……。(さ、流石は若様のご友人だ……。この部屋の仕組みを直ぐに見破るとは……。)」


企業秘密と言いながら、あっさり答えを見破られてしまった織奉は、普通の一般客相手なら動揺してしまう所であった。


しかし、ギールとシャルは、直人の友人と言う事もあり、見破られても当たり前であると、織奉はある意味割り切れていた。


"天変地異ノ間"の不思議な光景は、他の部屋でも同様であった。広い空間を作る際は、化術(ばけじゅつ)の応用を(もち)いており、空間をねじ曲げる程の妖気を注ぎ込む事で広い空間を作り上げていた。


また、数々の施設については、空間を広げた後、エンジニア集団である"カッパカンパニー"の河童たちによって随時作られた物である。


そのため、辺りを見渡して見ると一際目立つ巨大な"ウォータースライダー"があり、これを目にしたシャルは、溢れ出す好奇心を掻き立たせた。


シャル「っ、ぎ、ギールよ!あの大きな"あれ"は何なのだ?」


ギール「ん、あぁ、あれか?あれは……、多分ウォータースライダーって言うプール版の滑り台だな。」


シャル「うぉーたーすらいだー?ぷーる?何だそれは?」


ギール「うーん、簡単に言えば水遊びだな。」


シャル「おぉ!それは面白そうなのだ!では、早速参ろう…うげっ!?」


巨大なウォータースライダーの魅力に魅了されたシャルが、足速にプールへ向かおうとするも、ギールに首根っこを掴まれ阻止されてしまう。


ギール「待て待て、それは桃馬たちと合流してからだ。」


シャル「むぅ〜、そう硬い事を言うでない。今は桃馬たちの事は後にして、このままプールとやらに行こうではないか♪」


ギール「そう言う訳には行かないよ!」


シャル「ぬわっ!?お、おいこら!?離すのだ~!」


桃馬たちよりもプールを優先にしようとするシャルであったが、ギールの手慣れた手際により抱き抱えられてしまった。


何とも微笑ましい光景に心を和ませている織奉は、二人のやり取りを見計らい、桃馬たちが利用している"灼熱湯ノ間"へと案内するのであった。


道中、シャルからして見れば、見た事がない光景に好奇心を掻き立たせる中、シャルはギールに対してしつこい質問攻めを繰り返していた。


とまあ、そんなこんなで、終始騒がしい二人であったが、気づけば桃馬たちが居る"灼熱湯ノ間"へと到着した。


織奉「えっと、あ、こちらですね。」


ギール「っ、こ、ここに桃馬たちが遊んでいるのか。」


シャル「むう、余を差し置いて遊ぶとは、ズルいのだ。」


ギール「ま、まあ、そもそも俺たちは、"もふもふ"の妖怪を勝手に探しに出た身だからな。ズルいもへったくれも無いよ。」


シャル「うぐっ、むぅぅ……。」


自ら敷いた地雷を踏んだシャルは、そのまま見事な墓穴を掘った。


そのためシャルは、返す言葉も無く(うな)るだけであった。


織奉「それでは、私はこれにて失礼します。どうぞごゆっくり。」


二人の案内を終えた織奉は、煙幕と共に去って行った。


シャル「ぬわっ!い、いない!?ど、どうなっているのだ!?」


ギール「おぉ、これがドロンってやつか!?」


織奉が見せた化術に二人が驚いている頃。"灼熱湯ノ間"の中では、かなり"カオス"な展開が繰り広げられていた。


当然、そんな事が起きているなど、今の二人が知るはずもなかった。


ギール「…おっと、驚いている場合じゃない。早速中に入るとしようか。」


シャル「う、うむ……。(うぅーん、あの店主は、一体どこへ行ったのだ。)」


意外と早く我に返ったギールは、シャルを抱き抱えたまま"灼熱湯ノ間"の扉を開けた。


するとそこには、思わず目が点にしてしまう様な光景が広がっていた。


そこには、巨大なタコに捕まった小頼、リフィル、晴斗の三人が、"ぬちょぬちょ"にされながらエロい声を響かせていた。


対して、"ぬちょぬちょ"にされている三人を前にしている桃馬たちは、何故か助けようとはせずに、ただただ傍観していた。


事の展開を最初から見ていないギールとシャルは、思わず言葉を失い、静かに扉を閉めた。




シャル「の、のうギール?今のって……。」


ギール「え、えっと、もう一度見るか。」


急な展開に追いつけなかった二人は、もう一度だけ現状把握のために、今度は小さく扉を開き隙間越しから覗き始めた。


改めてカオスな光景を見た二人は、やはり気のせいでも幻覚でもなく、普通にカオスな光景に言葉を失った。


夢でも見間違えでも何でもない結果に、ギールは再び扉を閉めるなり、黙ってシャルと共に巨大なウォータースライダーがあるプール施設へと(おもむ)くのであった。




その後。シャルとの会話も無く、黙ってプール施設まで歩いたギールは、ここに来て一つの疑問を感じた。


ギール(あっ、そう言えば、プールに入るにしても水着がないじゃないか。…あっ、いや、確かあの施設を覗いた時、リフィルと小頼は水着姿だったよな……。もしかしたら、どこかで借りれるのかな。)


プールでは、男女問わず水着を着る事がルールであると知っているギールは、少し心配しながら辺りの施設を見渡した。


すると、プール施設の入り口辺りに"水着貸出"と書かれた小屋を発見し、ギールはそのまま導かれるかの様に"水着貸出"と書かれた小屋へと向かった。


意外にも小屋の中には、沢山の水着があり、ギールはシンプルに白黒の水着を履いた。


一方のシャルは、堂々とスクール水着を選んだ。


シャル「ぬははっ!どうだギールよ?余の水着姿とやらは、実によく似合うであろう?」


ギール「‥‥っ、そ、そうだな。似合う似合う。(こんなに沢山の水着があるのに、よりにもよってそれを着るのかよ。)」


期待はずれなシャルの水着姿に、少しガッカリしたギールは、心の中でツッコミを入れつつ適当にシャルをあしらった。


その後、二人は広大なプール施設に足を踏み入れた訳だが、あまりにも広い空間に、たった二人だけと言うのは、流石のギールでも寂しさを感じていた。


そのため、ここは全て好奇心旺盛なシャルに任せようと、振り回される覚悟で付き合う事にしたのであった。


シャル「ギールよ!ギールよ!余は早速、"ウォータースライダー"とやらに乗りたいのだ!」


ギール「ん、あぁ、いいよ。よっと、それじゃあ行こうか。」


シャル「おぉ〜♪」


シャルからのお願いを素直に聞いたギールは、早速シャルを抱き抱えると、高さ五十メートル程ある"ウォータースライダー"に向かうのであった。


しかし、ギールのこの安請け合いは少し裏目に出てしまう。遠目で見た時は、然程では無いと思っていたギールであったが、いざ近くで見て見ると予想以上の高さに驚いた。


ギール「……。(お、思っていたより高いな……。ま、まあ、登れない事は無いだろうけど……、何回も繰り返すとなると流石に厳しいかもな。)」


ギールの脳裏には、何度もシャルを抱き抱えては、長い階段を登る自分の姿がよぎっていた。


しかし、自分から了承した手前。


"やっぱり無理"だと言えば、間違いなくシャルに煽られるため、ギールは仕方なく階段を登り始めるのであった。




ここで、よく考えたらあるある話。


ウォータースライダー編。


子供に取ってウォータースライダーとは、無意識に好奇心を掻き立たせてくれる不思議なアトラクションである。


そのため、どんなに高くても滑りたいと言う気持ちがあれば、何度も階段を駆け上がっては、何度も滑った事でしょう。


しかし、大人になるに連れて登る事が苦に感じる様になり、二、三回滑っるだけで満足し、最終的には流れるプールで流されているだけと言う展開もあるのではないだろうか。



また今回のシャルとギールと同様に、子供と親が一緒に行動している場合。


親は、子供が飽きるまで付き合わされるため、最初は余裕で登っていた階段も次第にキツくなり、最終的には、子供を抱き抱えながら連れて行く事もあるのではないでしょうか。



そして話を戻し、


高さ五十メートル程ある階段を登り切ったギールは、シャルを下ろして一回目を滑ろうとしていた。


シャル「おぉ!高いのだ!高いのだ!」


ギール「こらこら、そんなに"はしゃい"だら、滑って後頭部を打つぞ?」


シャル「大丈夫なのだ〜♪およ?おぉ〜!本当に水が出てるのだ。」


ギール「まあ、ウォータースライダーだからな。それに、水無しで滑ると摩擦が作用してそもそも滑れな……。」


シャル「ひょう~♪すごいのだぁぁ~♪」


ギール「お、おい!話を聞け!?」


ギールの説明を聞かずに滑ったシャルに対して、ギールは慌てて飛び込みつつ後を追った。


ウォータースライダーでの注意。


助走禁止。

頭からの滑るの禁止。

充分に間隔を空けてから滑ること。



シャル「ぬはぁ~♪早いのだ~♪およ!?へぶっ!?」


ウォータースライダーあるある。


勢い有り過ぎて、出口付近のプールに叩きつけられるパターン。


そしてこの後。十分に注意しなければならないのは、出口付近での衝突事故である。


シャル「ぷはっ!面白いのだ!」


ギール「うわっ!どけぇ〜、シャル〜!?」


シャル「ふぇ?ぬわっ!」


もはや正面衝突は避けられない瞬間であったが、ギールはぶつかる寸前の所で体を(ひね)り、ギリギリの所でシャルとの衝突を回避した。


しかし、衝突を回避したギールは、そのまま変な体制で入水してしまった。


※プールの着水後、素早く出口付近から離れる事。また、感覚を空けないで滑ると前者ぜんしゃと衝突するリスクが高まるため、十分な注意が必要である。


ギール「ぶふっ!?」


シャル「おぉ〜、ぬはは〜♪何しておるのだ♪」


ギール「ぷはぁ、はぁはぁ、ブルルッ!お、おいシャル!出口付近にずっと居座るな!」


※間隔を空けず、更には助走をつけて飛び込んだ結果である。故にギールが悪い……。


シャル「ん?例え居たとしても今の様に避ければ良いではないか?」


ギール「よ、よくない!俺だからできたけものの、普通の人間なら正面衝突だぞ!」


もう一度言おう。間隔を空けず、更に助走をつけて飛び込んだ結果である。


シャル「うぐっ、そ、そう睨むでない…。わ、悪かったのだ。」


ギール「全く、まあ、良い勉強か。」


ギールの理不尽な注意に押されたシャルは、自分の()に気づいていないギールに対して、やむなく謝るのであった。


※しつこい様ですが、ギールが悪いです。



その後、ギールから説明を受けたシャルは、再びウォータースライダーを滑ろうとギールに頼み込んだ。


それからと言うもの……。


シャルのオネダリは続き、三回目、四回目、五回目と、魔の無限ループに入っていた。


肉体的な面においては、まだ余裕があるギールであるが、何より飽きが出始めていた。


シャル「ぬはは〜♪楽しいのだ〜♪さあギールよ、もう一回滑るのだ〜♪」


ギール「うぅ、まだ滑るのか?」


シャル「うむ♪当然なのだ♪」


ギール「……な、なあシャル?他にも遊べる所はある様だし、ちょっと他のも見てみないか?」


シャル「むっ?ここだけではないのか?」


ギール「えっ?ま、まさか、これだけだと思っていたのか……。」


シャル「う、うむ。」


ギール(おいおい、マジかよ。周囲を見渡せば色々と見えていただろうに……。どんだけ、ウォータースライダーにハマってるんだよ。)


既にウォータースライダーの虜になっていたシャルは、他の遊び施設を認識していなかった様であった。


ギール「じゃ、じゃあ次は、あのボールの中に入って押し合うやつはどうだ?」


シャル「むっ?おぉ!それは面白そうなのだ!」


こうして二人は、誰もいない貸切状態のプールを思う存分に楽しむのであった。


それから一時間後。


灼熱湯ノ間において、ようやく"カオス"な展開から解放された桃馬たちが、この広大なプール施設に向けて移動して来るのであった。




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