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第四百二十三話 異世界皇女戦記英雄譚その46

実の姉によって、愛する京骨が目の前で寝取らてしまい、思わず感情的に泣き崩れてしまったルシアは、皮肉にも寝取りの主犯格にしてシフェルム皇国の第一皇女である"ワルプス"に慰められていた。



ワルプス「よしよし、少しは落ち着いたかしら?」


ルシア「ひっく、は、はい……。」


ようやく落ち着きを取り戻したルシアに対して、姉のワルプスは優しそうな笑みを浮かべながらルシアの頭を撫で下ろした。



するとそこへ、シフェルム皇国の第二皇女であるシャロンが、本来の目的である要件を切り出した。


シャロン「あ、姉上?わ、私の口からこの様な事を言うのはあれなのですが……、早くルシアに"あれ"を渡さないと……。」


ワルプス「あっ、そうだったわね♪忘れていたわ♪」


ルシア「ひっく……あ、"あれ"?……"あれ"とは、何ですか?」



ワルプス「ふふっ、今更説得力に欠けるかもしれないけど、今日私たちがここへ来たのは、"これ"をルシアに渡そうと思ってね〜♪」


(ほが)らかな笑みを浮かべながら亜空間に手を入れたワルプスは、"スっ"と一通の手紙を取り出すなり、そのままルシアに手渡した。


ルシア「こ、これは、"何"でしょうか?」


ワルプス「ふふっ、"何"ってそれは手紙よ♪」


ルシア「っ、あっ、いや、それは見れば分かりますけど……、一体誰からの手紙なのですか?」


普段から抜け目のない雰囲気を漂わせているワルプスではあるが、時々高レベルな天然を炸裂させ、相手のペースを乱してしまう程の特性を持ち合わせていた。


そのため、不意を突かれてしまったルシアは、上手くツッコむ事が出来ずに流してしまった。



ワルプス「あぁ〜♪そっちの話ね♪ふふっ、これは"お母様からの手紙"ですよ♪」


ルシア「っ、お、お母様からですか?」


ワルプス「ふふ、そうよ〜♪」


ルシア「……うーん。」


母からの手紙と聞いたルシアは、少し疑問に満ちた様な表情を浮かべていた。


ワルプス「あら?どうしたのルシア?何か()に落ちない点でもあったかしら?」


ルシア「っ、い、いえ、別に腑に落ちないと言う訳ではないのですが……、ただ、いつも使い魔を通して手紙を送ってくれていたお母様が、どうしてお姉様方に手紙を(たく)したのか、少し疑問に思いまして……。」


ワルプス「うーん、確かにそれは気になるわね。現に私も、お母様から"この手紙をルシアに届けて欲しい"って頼まれた時は、少し疑問に思ったからね〜。」


シャロン「そうですね。私も疑問に感じていましたが、母上からの頼みとなれば断れませんからね。」



ルシアの疑問に共感してくれるワルプスとシャロンであるが、どうやら"手紙を託された"理由までは分かっていないご様子に、ルシアは恐る恐る話を振った。


ルシア「あ、あの〜、お姉様方?そこまでの疑問を持っておきながら……、まさか、"お母様から頼まれた理由が分からない"って言わないですよね?」


シャロン「……っ、し、しまった!?」


ワルプス「ふふっ、そう言えば聞いていなかったわね〜♪」


ルシア「……はぁ、やっぱり。」



案の定、一番重要とも言える"疑問"を全く言及していなかった二人の姉に対して、ルシアはため息をつきながら惘然(ぼうぜん)とした。


ワルプス「まあまあ、この際理由なんてどうでもいいじゃない♪」


ルシア「い、いや……、割と重要な事なのですが……。」


ワルプス「ふふっ、大丈夫よルシア♪きっとお母様の事だから、私とシャロンをここへ向かわせた理由も含めて、何か重大な要件をその手紙に(しる)しているはずよ♪」


シャロン「っ、な、なるほど!それなら、私たちがここへ来た理由も分かりますね!」


ルシア「う、うーん、用意周到なお母様なら書くかもしれませんけど……。(うぅ、お母様は一体何を書いたのかしら……。ま、まさか、私の京骨をお姉様方に献上して、"姉妹仲良く共有し合いなさい"何て書いてないわよね……。)」


勘の鋭いワルプスの予想は、こう言う時に限って恐ろしいくらいに当たる。


例え、内容までは言っていなくても、二人の姉が来た時点で、"愛する京骨を寝取るか"、"カルガナの平定に協力してくれる"かのどちらかである。


そのためルシアは、今世紀最大の不安に駆られながらも、恐る恐る母からの手紙を開いた。



手紙の内容。


愛娘(まなむすめ)のルシアへ、


突然、この様な手紙に続いて、ワルプスとシャロンを向かわせてしまって申し訳ない。


恐らく、この手紙を読んでいる頃には、既に京骨くんが、ワルプスとシャロンに襲われて気まずい空気になっている事でしょう。


もし、京骨くんがそんな目に()っていたら、どうか母に免じて二人を許してあげてください。



そして今回、ワルプスとシャロンにこの手紙を託し、ルシアの元に向かわせたのは、折り入ってルシアにお願いしたい事があったからです。



今の魔界は、"カルガナ"の動乱に便乗した過激派たちによって、各地で暴動が頻繁に起きています。


幸い、シフェルム皇国を含む十ヶ国と日本大使館の連携により、最悪の事態は避けられていますが、それでも油断はできない状態です。


そのため、ある程度の安全が確認されるまでの間、ワルプスとシャロンを(かくま)って欲しいのです。


ルシアと京骨くんには、少し面倒を掛けると思いますが、どうか二人をよろしくお願いします。



母、ディナード・シフェルムより。




母からの手紙を読んだルシアは、例え母からの頼みであっても、何とも受け入れ難い複雑な内容に、少し(うつむ)きながら肩を震わせ始めた。


シャロン「っ、ど、どうしたルシア!?もしかして、悪い事でも書いてあったのか!?」


ワルプス「あらあら、一体何が書いてあったのかしらね〜♪」


見えない何かと葛藤しているルシアに対して、手紙の内容が気になるワルプスは、"スっ"とルシアが持っている手紙に手を伸ばした。


すると、ルシアの口から"ボソッ"と心の声が漏れる。


ルシア「………認めない。」


ワルプス「えっ?」


ルシア「こんな頼み事……、認めてたまるか〜!」


京骨とのイチャラブ生活が崩壊してしまう様な内容に、到底受け入れる事が出来ないルシアは、すぐに"母からの手紙"を獄炎魔法で燃やした。


ワルプス「あらあら?」


シャロン「なっ、何をしているんだルシア!?」


ルシア「はぁはぁ…、ワルプスお姉様……。悪ふざけはいいですから、早く"本物の手紙"を見せてください。」


シャロン「えっ、"本物の手紙"って、何を言っているんだ?」



ワルプス「あらあら〜♪やっぱり、バレちゃったか〜♪」


シャロン「えっ?」


ルシアの追求に呆気なく折れたワルプスは、再び亜空間を開いて手を入れると、シフェルム皇国の刻印付きの手紙を取り出した。


これに対して、何が起きてるのか分からないシャロンは、唖然(あぜん)としながらワルプスを見つめた。


ワルプス「ふふっ、それにしても、どこであの手紙が偽物だって分かったのかしら?」


ルシア「……最初の"愛娘"って所と、最後にお母様の名前が入っていた所で分かりました。」


ワルプス「あらあら、それだけで見破るなんて流石はルシアね〜♪」


ルシア「当然です。これでもお母様とは、週二のペースで手紙のやり取りをしていますからね。」


ワルプス「ふふっ、そういう事なら大人しく負けを認める他ないわね♪…はい、これが本物の手紙よ♪」


ルシア「ふぅ、初めから本物を出して下さいよ……。」


ワルプス「まあまあ、今渡した"本物の手紙"を読んで見れば、どうして私が偽物の手紙を先に出したのか、すぐに分かると思うわよ♪」


ルシア「……ふーん、なるほど〜、つまりワルプスお姉様は、私宛の手紙をこっそり読んだ挙句、似た様な手紙を書いた訳ですね?」


ワルプス「……てへっ♪」


完全に墓穴を掘ったワルプスは、何とも可愛らしくテヘペロを見せた。


これに対してルシアは、先程燃やした"偽手紙"が、"母からの手紙"を引用して作られた物だと察すると、再び嫌な予感を感じ始めるのであった。


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