第四百二十二話 異世界皇女戦記英雄譚その45
不可抗力とは言え、京骨に群がる二人の美女による淫行を目の当たりにしてしまったギールは、シャルと共に"しれっ"と逃走を図るも失敗。
何とも逢えなく、赤髪の短髪美女と紫髪の長髪美女に捕まってしまったギールとシャルは、呪霊三女の一人、悪霊の古都古と共に、淫らな空間と化した202号室へと連れ込まれてしまった。
赤髪の美女「ふふっ、ねぇねぇ、"シャロン"?この獣人くん…、よ〜く見てみると、"ルシア"の彼氏くんより性欲が強そうに見えない?」
シャロン(紫髪の美女)「そ、そうでしょうか?私の目には、威勢だけが取り柄の童貞に見えますが……。」
赤髪の美女「あはは、相変わらずシャロンは、男に対して辛口ね〜♪やっぱり、ルシアが惚れたくらいの男じゃないと興味は持てないか〜♪」
シャロン「べ、別に興味などはありません。私はただ、ルシアが気に入った京骨殿が、どれだけの性欲を持ち合わせているのか、少し気になっただけで……。」
赤髪の美女「へぇ〜、その割には"ノリノリ"に楽しんでいた様に見えたけどな〜。」
シャロン「っ、そ、それは……。」
赤髪の美女「ふふっ、シャロンが夢中になって男を求めるなんて、あの女誑しの"キリハ"に揉みくちゃにされて、男に対しての興味を失くした以来じゃないかしら?」
シャロン「っ、え、えぇ、そうですね。」
赤髪の美女「ふふっ、思い出すと懐かしいな〜♪確か"キリハ"は、鬼人族だったわよね♪そのせいか男っ気が強くて、暇さえあれば、気に入った女の子を捕まえては、常習的につまみ食いをしてたわね〜♪」
シャロン「そ、そうですね…。確か、メイドを始め、騎士団や街娘など…、しかも、標的にしていたのは何故か女だけ……、今振り返っても、目に余る行動が多い方でしたね……。」
赤髪の美女「うんうん、そして最後は、媚薬入りのお酒をシャロンに盛って、激しく"シフェルム"皇国の第二皇女を犯して国外追放〜♪そのせいでシャロンは、男への興味を失くしてしまい、姉御系の女の子に興味を持つようになってしまった……。」
シャロン「ゴクリ……。え、ええ……///」
過去の恥ずかしい黒歴史を振り返ってしまったシャロンは、少し頬を赤く染めながら、淫らな体を"モジモジ"と揺らし始めた。
赤髪の美女「ふふっ、我が妹ながら可愛いわね♪……さてと、ジュル……そろそろ、この獣人くんの精気でも頂こうかしら♪」
完全に眠らされているギールを見るなり、とうとう
舌舐りをし始めた赤髪の美女は、我先にギールの体に跨るなり、そのままゆっくり腰を下ろした。
これに対して、椅子に縛られているルシアが、口を塞がれた状態で激しく唸り始める。
ルシア「んん〜!んん〜!!」
赤髪の美女「ん、どうしたのルシア?もしかして、この獣人くんたちと知り合いなの?」
シャロン「っ、そ、そう言えば、この方が部屋に入って来る前に、ルシアと京骨殿の名前を呼んでいたような……。」
赤髪の美女「あら、そうだったかしら?……うーん、獣人くんを食べるのは、ルシアの話を聞いてからにしようかしらね♪」
ルシアの唸り声に何かしらの関係性を悟った赤髪の美女は、やむなくギールの体から離れるなり、ルシアの口を塞いでいる猿轡を外した。
ルシア「んはっ、はぁはぁ、"ワルプスお姉様"!ギールとシャルは、私の友人なのです!下手な真似はお止め下さい!」
ここで小話。(少し長いです)
実は、ルシア(水色短髪ボブヘアー)とワルプス(赤髪の短髪美女)、そしてシャロン(紫髪の長髪美女)の三人は、魔界に住まう全サキュバスを統治する"シフェルム皇国"の皇女殿下であり、実の姉妹である。
シフェルム皇国第一皇女。
ワルプス・シフェルム
シフェルム皇国の次期王女であり、サキュバス界の中でも現王女に次ぐ力を有している。
そんなワルプスでも、複雑な悩みを抱えていた。
姉妹の中でも一番胸が小さいワルプスは、妹たちよりも胸が大きくしたいと思ってはいる。
しかし、今ある胸がこれ以上大きくなってしまうのは、何を着ても似合う黄金比が崩れてしまうため、ファッションに拘るワルプスとしては、どちらを取っても悩み続ける複雑な悩みであった。
シフェルム皇国第二皇女。
シャロン・シフェルム。
シフェルム皇国第一皇女、ワルプスを守る親衛隊の隊長を務めている姫騎士系のサキュバスである。
本来は、姉のワルプスと同様にシフェルム皇国の皇女として過ごしていたのだが、かつての臣下である鬼人族の"キリハ"に媚薬を盛られ、高貴な体を犯された挙句、男に対しての興味を失ってしまった過去がある。
そのためシャロンは、姉御系の女性に興味を持つ様になり、気がつけば姉のワルプスを守る親衛隊の隊長になっていた。
シフェルム皇国第三皇女。
ルシア・シフェルム
シフェルム皇国の末子である。
そのため、第一皇女のワルプスには、いつもちょっかいを掛けられ、第二皇女のシャロンからは、いつも心配されながら子供扱いをされる始末。
そのため、二人の姉の前では負けん気である。
そして、久々に名前が出た"キリハ"についてだが、元シフェルム皇国の臣下であり、気に入った女性を見つけては、常習的につまみ食いを繰り返していたヤバい奴である。
真っ赤に染まった長い髪。
そして鬼人族として名に恥じない豪胆さ。
更に、春桜学園の数学教師にして異種交流会の顧問である吉田鷹幸の嫁でもある。
二人のなりそめは、吉田先生が高校時代に蛇鷹公として、名を馳せていた頃まで遡る。
シフェルム皇国を追放された"キリハ"と、ルクステリアの街で知り合い、共にギルドで活躍した仲間である……。
そして話は戻し……。
ワルプス「ふふっ、やっぱり、そうでしたか〜♪」
ルシア「お分かり頂いたのなら、もう帰ってください!もう充分に京骨を堪能したでしょ!?」
ワルプス「むぅ、今日はやけに冷たいわね?そんなに京骨くんを襲った事に腹を立ててるの?」
ルシア「あ、当たり前ですよ!せっかく個室で京骨とイチャつけるかと思ったのに……、お姉様方が何の前触れもなく現れて……うぅ。」
突如として現れた二人の姉に、意図も簡単に京骨を奪われた挙句、目の前で寝盗られてしまったルシアは、二人の姉に対して業を煮やしていた。
ルシアとしても、京骨だけは誰にも渡したくないと思っていた分、珍しく感情的になっていた。
シャロン「っ、す、すまないルシア!?突然押し掛けて来たのは本当に悪いと思っている……。で、でも、これだけは信じてくれ……、私と姉上は、別にルシアから京骨殿を奪い取りに来た訳じゃない。現に京骨殿を襲ってしまったのは、ルシアに見合う男なのか、その力量を確かめたかっただけなんだ……。」
ルシア「シャロンお姉様……ひっく。その割には、京骨に夢中だったじゃないですか……。」
シャロン「っ、あ、いや、そ、それはその〜。」
ワルプス「ふふっ、全くシャロンったら♪あなたの慰めは墓穴を掘りやすいんだから、無理に慰めようとしたらダメでしょ?」
シャロン「うぐっ、す、すまないルシア……。」
涙を浮かべるルシアに対して、申し訳ない気持ちを露わにするシャロンであったが、ルシアからの手痛い指摘を受け、ただただ謝る事しか出来なかった。
ちなみにシャロンは、シフェルム三姉妹の中でも舌戦に弱いタイプであった。
ワルプス「………ふぅ。(あの負けん気の強いルシアが、こんなにも感情的になるなんて何十年ぶりかしら……。)」
ルシア「ひっく、京骨は私だけのものなのに……、ひっく、それなのに、お姉様が……ひっく。」
ワルプス「……ふふっ、ごめんねルシア?あなたに取って京骨くんは、本当に大切な人だったのね?」
ルシア「ひっく、うん……。」
ワルプス「…ふぅ、今回はお姉ちゃんが軽率だったわ。大切な京骨くんを襲ったりして、本当にごめんなさい。」
ルシア「ひっく、お姉様……、うぅ、ふえ〜ん!お姉様のばか〜!ふぇ〜ん!」
第一皇女であるワルプスからの謝罪に思わず泣き崩れてしまったルシアは、無意識にワルプスの体に抱きついた。
ワルプス「……よしよし、ごめんねルシア〜。(ふふっ、私の可愛いルシアをここまで惚れさせるなんて、京骨くんは凄いわね……。でも、私たちサキュバスを本当に喜ばせるには、まだ力量が足りないわ……。だから、その強化のためにも……ふふっ。)」
子供の様に泣きじゃくるルシアに対して、優しく頭を撫でながら謝るワルプスであるが、心の中では密かに京骨を狙っていた。
その証拠に、綺麗な瞳を赤く光らせ、不敵に笑みを浮かべながらハート型の尻尾を左右に振っていた。
ワルプス「……。(ふふっ、小うるさい上に、ガードの硬い"蒼紫"に知られたら怒られるかもしれないけど、今日はご馳走ね〜♪)」
※蒼紫とは、桃馬の三つ程歳上の兄であり、魔界支部日本大使館の勅使兼、魔界十国の一国、ガールンド国の警護隊長を兼任している。
シャロン「……。(あ、姉上……、ま、また変な事を企んでいるな。)」
ワルプスの悪巧みを何となく察したシャロンは、サキュバスとしての本能を剥き出しにしているワルプスに対して、嫌な予感を感じていた。