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第四百二十一話 異世界皇女戦記英雄譚その44

とある宿にて、ようやく京骨とルシアの手掛かりを見つけたギールとシャルは、宿の店主から茶化されながらも、一時間前から警備目的で利用していると言う202号室へと(おもむ)いた。


しかし、扉の前に立ったギールとシャルは、全く物音すら聞こえない現状に少し警戒していた。


いくら警備目的で利用しているとは言え、学園随一のバカップルにして、隙を見れば淫行に及んでしまう京骨とルシアが、個室に入って何もしない訳がない…。


十中八九、攻め側のルシアが、受け側の京骨を押し倒し、容赦なく精気と妖気を搾り取ろうとするだろう…。


また、京骨とルシアが202号室を利用してから、既に一時間も経過しているため、展開的にも"事後"の可能性は十分に有り得た。



しかし、事は一刻を争う事態……。


早速ギールは、シャルから"ノック"と言う安全策を教わり、意を決して緊張感を漂わす扉を叩いた。



ギール「お、おーい、京骨〜?ここに居るのか?」


…………。


不安げに"ノック"をしながら呼び掛けたギールであったが、部屋からの返事は無かった。


ギール「ん?おーい、京骨〜?俺だ、ギールだよ?実は、少し相談したい事があって来たんだけど〜、今から中に入っても良いか?」


シーーン。


ギール「お、おーい。京骨〜、ルシアも居ないのか〜?」


二度目の呼び掛けにも応じてくれない京骨に対して、少し焦りを感じたギールは、少し強めに扉を叩きながら呼び掛けた。



シャル「ふむぅ、ここまで声を掛けても反応が無いという事は……、やはり"事後"か……、いや、ドル公国の残党を見つけて窓から飛び出した可能性もあるか……。」


ギール「う、うーん、だとしても…、このまま黙って出直すのは嫌だな……。せめて、部屋の中だけでも確認しないと……。」


シャル「う、うむ、た、確かにそうだな…。現に"そやつ"は、一時間以上も気絶しておるからな…。そろそろ目覚めてもおかしくはないだろう……。」


ギールの脇に挟まれながら一時間以上、今も現在進行形で(よだれ)を垂らしながら気絶している古都古であるが、今に目覚めてもおかしくない状態であった。


ギール「あぁ…、だからこの際……、い、一か八か……、部屋に入って見ようかと思う。」


シャル「っ、そ、それもまた致し方ないか……。じゃが、ギールよ?開ける時は慎重にな?」


ギール「あぁ、分かってるよ……。もし、事後だったら気まずいからな………ごくり。」


淫らなオーラを感じるドアノブに手を掛けたギールは、緊張のあまり固唾(かたず)を飲みながら扉を引いた。


しかし、立て付けが悪いのか、それとも鍵が掛けられているのか、扉はビクともしなかった。


ギール「あ、あれ?あ、開かない?」


シャル「むっ?鍵でも掛けられてるんじゃないか?」


ギール「いや、これは鍵と言うよりは……、ガッチリ固まっている様な感じだな……。」


シャル「うーん、となると……、ルシアが魔法でも使って、内側から塞いでいるかもしれないな……。」


ギール「っ、もしそうなら、どんだけ用意周到なんだよ……。」


シャル「ふふっ、あのルシアならやり兼ねない話ではないか?」


ギール「そ、それは、そうかもしれないが……、っ、ま、まさかルシアのやつ……、京骨を吸い殺したりしてないよな……。」


シャル「う、うーん、流石に考え過ぎだと思うけど……、それはそれで厄介だね……。よ、よし、一応、内側から魔力が施されていないか、確かめて見るとするか……。」


ギールの懸念に、少し嫌な予感を感じたシャルは、恐る恐る、ビクともしない扉に手を掛けた。


ギール「ど、どうだシャル?」


シャル「っ、これはこれは……、まさか本当に、内側から魔力を施しているとは……、しかも外側では分からない程の繊細な魔力……、こんな上級魔法をルシアが使えたとはな……。」


ギール「っ、それなら、シャルの魔力で何とかならないのか?」


シャル「安心しろ、幸いこの魔法は、"魔法陣"によるものだ。だからこうして…、外側からちょっと魔力を注いで、魔法陣の式を(みだ)せば………、よし、これで開くと思うぞ?」


ギール「っ、そ、そうか!よ、よし、早速開けるぞ!」


扉に施された魔法陣が解かれた瞬間、ギールは"事後"への注意を忘れ、勢い良く扉を開けようとした。


シャル「なっ、ま、待てギールよ!?開ける時は慎重に…って、お、おい!?」


突然の事に不意をつかれたシャルは、慌ててギールを制止しようとするも間に合わず、ギールは勢い良く扉を開けてしまった。


これにより、ギールとシャルは、予想打にもしない展開に巻き込まれてしまう事になる。




ギール「っ、な、ななっ!?」


勢い良く扉を開けたギールは、目の前に広がる衝撃的な光景に思わず驚愕した。


そこには、椅子に縛られたルシアを始め、ベッドの上で両手両足を縛られ京骨が、見知らぬ二人の美女に抱きつかれていた。


赤髪の美女「んっ……っ、あ、あら?」


紫髪の美女「…っ、な、なっ!?」


現状を察するに、目の前にいる二人の美女たちが、入口の魔法陣を含めて、部屋中に防音結界でも施していたのであろう。


その証拠に、突然扉を開けて来たギールを見るなり、少し取り乱した様な表情を見せていた。


ルシア「んんっ〜!(ぎ、ギール!?ど、どうしてここに!?そ、それより早く逃げて!?)」


ギール「あっ……えっと……、すみません。」


想像を越えた淫らな光景を目の当たりにしてしまったギールは、思わず言葉を失うなり、申し訳なさそうに扉を閉めた。



シャル「お、おい、どうしたのだギール?や、やはり、"事後"であったか?」


ギール「ふぅ……、"事後"よりも悲惨な事になっていたよ……。」


シャル「なっ!?そ、そんなに激しい事をしていたのか!?」


ギール「あ、あぁ……、と、とにかく、詳しい話は後だ。今は面倒事に巻き込まれる前に、早くこの場から離れよう。」


シャル「う、うむ、そ、そうだな……。」


何とも無駄足続きのギールとシャルは、迫り来る嫌な予感を察しながら、早々にこの宿から離れようとした。


しかし、あの様な光景を()の当たりにしておきながら、何もされずに見逃してもらえる程、この世界の摂理(せつり)は、そう甘くはなかった。


赤髪の美女「ふふっ、私たちの楽しみを邪魔しておいて、無事に逃げられるとは思わない事ね。」


紫髪の美女「全くです姉上……。あの魔法陣をどうやって破ったかは知りませんが、他人にあの様な光景を見られるのは……、不覚にも(きょう)ざめです。」


転移魔法を使って現れた"二人の美女"は、前方と後方に分かれて、ギールとシャルを挟み撃ちにするかの様な形で立ちはだかった。


ギール「っ!?い、いつの間に……。」


シャル「っ、ぎ、ギール?こやつらは何者なのだ!?」


ギール「え、えっと、こ、この人たちは、その〜、きょ、京骨を襲っていた美女……って言えばいいかな。」


シャル「な、何っ!?と、と言う事は……、こやつらは敵か!?」


見知らぬ"二人の美女"によって、退路を断たれてしまったギールとシャルは、お互いの背中を合わせながら警戒態勢を取った。




ここで、ギールたちの前に現れた"二人の美女"についての紹介。(容姿のみ)


前方と後方にいる立ちはだかっている"二人の美女"は、共に魔族特有の立派な角を二本生やしており、更にはサキュバス特有のハート型の尻尾まで生やしていた。


また、気のせいだろうか。


そこはかとなく、ルシアと似ている様な気がするが、二人の身長とスタイルを見る限り、赤の他人の様にも見える……。



"赤髪の短髪美女"の方は、少し露出度が多めの黒いドレスを(よそお)い、クールなオーラと共に、高いカリスマ性と高濃度なフェロモンを漂わせていた。


また、身長に至っては、ルシアと同じくらい……いや、少し高い160cm程である。


※ちなみに、ルシアの身長は158cm程である……。


しかし、サキュバスに取って最大のステータスでもある胸が、ルシアと比べて小さく、ちょうど男性の(てのひら)に収まるか、収まらないくらいの大きさであった。


そのため、黒いドレス姿が引き立ち、何を着ても似合う様な素晴らしい黄金比を持ち合わせていた。


そう例えるなら、ファッションモデル級の美女である。



一方、"紫髪の長髪美女"の方は、男装の趣味でもあるのだろうか。タキシードスーツを(よそお)い、少し武骨なオーラと共に、少し男っ気を漂わせていた。


また、身長は170cmを超え…、胸もルシアと比べると少し大きいという、超弩級のグラビア体型であった。


そのため、引き締まったタキシードスーツが、超弩級のグラビア体型を浮き上がらせており、何とも目を引いてしまうものであった。


また更に、ただでさえ目が引いてしまう体型にも関わらず、胸のボタンを一つ外して、正面の谷間を露出させているという大罪。


しかも、上の下着は一切身に着けていないという、腐り果てた男女が見てしまったら、萌死させてしまう恐れがある美女である。



話は戻し……。


赤髪の美女「敵?ふふっ、そうね〜。確かに、そこの獣人くんからして見れば、"私たち"は敵かもね。」


ギール「くっ、ま、まさか……、口止めに俺を吸い殺すつもりですか……。」


赤髪の美女「ふふっ、生きるか死ぬかは、貴方の性欲次第よ?」


ギール「っ、せ、性欲…次第ですか。(ま、まずいな……、相手は高貴なサキュバスに見えるし…、このまま話に乗せられたら、確実に吸い殺される。)」


赤髪の美女「えぇ♪今から大人しく、私と妹を満足させられたら…、特別に見逃してあげてもいいわよ♪」


ギール「っ!?(じょ、冗談じゃない!?そんな事したら確実に死ぬって!?)」


赤髪の美女「ふふっ♪嬉しくて声も出ないかしら?」


ギール「あ、あの〜、知らなかったとは言え、勝手に部屋を開けてしまったのは、大変申し訳ないと思っています…。で、ですが……。」


赤髪の美女「ふふっ、しっかり謝れたわね〜♪えらいえらい♪」


ギール「わふっ!?(い、いつの間に!?)」


命の危機に立たされながらも、何とか穏便に済ませようとするギールであったが、努力虚しく"赤髪美女"の目にも止まらぬ転移魔法によって距離を詰められてしまい、自慢の"モフサラ"な頭を撫でられてしまった。


赤髪の美女「ふふっ、素直に謝れるのは子は好きだけど……、この程度の事で、この私を出し抜けるとでも思いましたか?」


ギール「っ、こ、この!?は、離れろっ、かはっ!?」


とうとう、"赤髪の美女"に抱きつかれてしまったギールは、なんとか振り解こうとするも抵抗虚しく……。


"赤髪美女"の尻尾から、"ニョキっ"と飛び出た"紫色に輝く針"によって、背中を"ドスドス"と刺されてしまった。



シャル「っ、ぎ、ギール!?」


紫髪の美女「ふふっ、よそ見をしてはダメですよ?」


シャル「なっ!?こ、この、離れろ!?(こ、こやつ、な、なんて力だ……。)」


一瞬とは言え、ギールに気を取られてしまったシャルは、隙を突いて距離を詰めて来た"紫髪の美女"に抱きつかれてしまった。


紫髪の美女「……ふっ、悪いが貴方にも眠ってもらうぞ……。」


シャル「っ、かはっ!?」


高身長の美女に強い力でホールドされたシャルは、ギールと同様に為す術なく、"紫色に輝く針"を首筋に注入され、()えなく気絶してしまった。



不可抗力な展開とは言え、淫行の瞬間を見てしまった代償は高く、ギールとシャル、ついでに呪霊三女の古都古は、見知らぬ"二人の美女"に捕縛され、淫らな空間と化している202号室へと連れ込まれるのであった。







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