第四百十八話 異世界皇女戦記英雄譚その41
ギールの脇に抱えられた"着物姿の少女"が、呪霊三女の一人、悪霊の古都古であると知った桃馬たちは、男女に分かれて様々な反応を見せていた。
桃馬、憲明、ジェルドの三人が、古都古にビビって後方へ下がる中、一方の女子たちは、戸惑っている桜華を除き、何やらよからぬ事を考えている小頼とリフィルが、古都古の姿を見るなり不敵な笑みを浮かべていた。
小頼「ふふ、ふふふっ、完璧な素材ね……。」
リフィル「うんうん!世間知らずのお姫様が、知らないおじさんに捕まって路地裏に連れ込まれたり……、親切なお兄さんに拾われてそのまま養われたり!」
小頼「うんうん!創作意欲が湧くね〜♪」
リフィル「あっ、そうだ♪この際もう二度と悪さしないように、私たちで調教しながら飼い慣らしましょうよ♪」
桜華「っ、り、リフィルちゃん!?」
小頼「おぉ〜!それはいいね〜♪呪霊三女と言う強力な味方が入れば、ある意味無敵だもんね〜♪」
桜華「はわわ!?そ、そんなの危ないですよ!?」
小頼「大丈夫だって〜、そもそも女子ってのは、立場を分からせて上げればコロッと落ちるんだから〜♪
桜華「こ、小頼ちゃん…、そ、その言い方は、ちょっと偏見が過ぎると思うよ?」
リフィル「もう〜、桜華ちゃんは真面目だね〜。」
小頼「うんうん、そんな真面目な桜華ちゃんには、ここで視野を広くして欲しいな〜♪」
桜華「し、視野を広くですか?」
小頼「そうそう♪例えば、エロゲーや同人誌とかに出て来る"気高い姫騎士"とか、"プライドが高い美女"とかいるでしょ?こう言った美女たちの攻略方法は、シンプルに押し倒して蹂躙するか、絶え間なく自尊心を犯し続ければコロッと落ちるんだから♪」
桜華「な、なな、何を言っているのですか!?そ、そもそも、それはフィクションですよね!?」
小頼「まあまあ、例えフィクションでも、やってみないと分からないからね〜。……と言う事だからギ〜ル〜♪今すぐその呪霊三女の一人を渡しなさい♪」
ギール「えっ、普通に嫌なんだけど……。」
呪霊三女の一人である古都古を調教し、願わくば服従させようとしている小頼とリフィルの企みに、色々と危険を察したギールは、真顔で古都古の引渡しを拒絶した。
これに対して、古都古の身柄を受け取る気満々であった小頼とリフィルは、期待外れな返答に大ブーイングを起こした。
小頼「ええ〜!?そ、それじゃあ、何のためにその子を連れて来たの??」
リフィル「そうだそうだ〜!どうせトドメを差せないから、ここに連れて来たんじゃないの?」
ギール「た、確かにそうだけど……、えっと、何て言うか…、こう〜。今の二人に古都古を渡したら、何か古都古の厄災より危険な事が起きそう…。」
一見、古都古を庇っている様にも見える光景だが、実際ギールとしては、大切なシャルを傷つけた古都古に対して、かなりの憤りを感じていた。
できる事なら、この手でトドメを刺してやりたい……。
しかし、相手は呪霊三女。
もしトドメを刺せば、何が起こるか分からない。
それならいっその事、小頼とリフィルに預けて絶え間ない恥辱を受けさせるのも一つの手だと、ギールは二人の企みを聞くまで候補の一つにしていた。
しかし、二人の企みを聞いた途端。
ギールは、嫌な予感を"ひしひし"と感じ始めた。
もし仮に、強力な厄災をもたらす古都古が、小頼とリフィルの手に落ちた場合。
それこそ、大災厄とカオスを入れ混ぜた、新たな厄災の幕開けになる可能性があった。
小頼「まさか〜、呪霊三女より危険な事はないよ〜♪私たちはただ、その子に今までの罪を清算させて、新たな協力者として付き合いたいだけだよ〜♪」
リフィル「そうそう♪でも、清算の際に、ちょっとだけ、エッチな事を強要するかもしれないけどね〜♪」
ギール「お前ら、呪霊三女に対して強気だな……。」
小頼「ふふっ、絶対的な地位に居座る小生意気な幼女を落とす話なんて……、最高だとは思わない?」
ギール「ふん、俺は幼女展開に興味は無いよ。」
小頼「ふふっ、連れないね〜。もう少し性癖は広くした方が良いと思うよ?」
ギール「いやだね。そもそも幼女に欲情するって、ただの変態じゃねぇか。」
小頼「ほほぅ〜、ギールがそう言うのか??」
ギールからの幼女否定に、小頼は不敵な笑みを浮かべながらギールに顔を近づけた。
すると小頼は、どさくさに紛れて、そっと古都古の首筋に手を伸ばすと、"何かしら"を術を施した。
ギール「な、何だよ?俺が幼女に興味が無いって事に不満でもあるのか?」
小頼「ん〜ん、不満なんてないよ〜♪ただ〜、今のシャルちゃんを見て〜、ギールはどう思ってるのかな〜?」
ギール「っ///は、はぁ!?い、意味の分からない事を言ってんじゃねぇよ!?」
完全に何かを見透かしているかの様な小頼の揺さぶりに、ギールは思わず取り乱した。
ギールの分かりやすい反応といい、普段より口数が少なく、ギールから視線を逸らしているシャルの仕草といい。
この時点で小頼は、古都古との戦闘で、何かしらのアクションが起きたのでは無いかと予想した。
例えば、古都古との戦闘時に、ギールが誤ってシャルの胸を揉んでしまったか。
あるいは、シャルが古都古に捕まり、ギールの目の前で恥辱の限りを尽くされたか。
または、悪霊に唆されたギールが、シャルを襲ったのか。
はたまた、何かの拍子でギールが暴走してしまい、シャルがキスをしながら止めたか……など。
小頼の脳内では、たった一つの可能性が、あらゆる展開に分岐していた。
小頼「分かりやすい反応をしておきながら、まだ白を切るとはね〜。本当は、大人びたシャルちゃんを押し倒したいんじゃないの〜?」
ギール「っ、ふ、ふん。あぁ〜あ、お前たちに相談しに来た俺が馬鹿だったよ。行こうかシャル。」
小頼の絶え間無い煽りに耐え兼ねたギールは、古都古を脇に抱えたまま、シャルと共にその場を後にしようとした。
シャル「っ、えっ、行こって、お、おい待てギールよ!?そ、そやつはどうするのだ!?」
ギール「取り敢えず、京骨とルシアを見つけて相談しようと思う。」
シャル「お、おぉ、そ、そうか。」
小頼「ふふっ、でもそれなら、シャルちゃんも連れて行く必要はないんじゃないかな〜?」
ギール「っ、う、うっせぇ!そもそもディノから、シャルと一緒に行動してくれって頼まれてるんだよ!?」
小頼「ふ〜ん、実はシャルちゃんの事が"好き"で仕方ないとか〜?」
わざとらしく大きな声で、爆弾発言を漏らした小頼は、すぐさまシャルの反応に注目した。
シャル「っ///」
ギール「っ、お、おお、お前は何を言ってるんだ!?」
小頼「ニタァ〜、ふふっ、冗談だよ〜♪二人は仲の良い兄妹だもんね〜♪」
小頼ごときの言葉に翻弄され、少し驚いた表情を浮かべながら、恥ずかしそうに体を"モジモジ"とさせているシャルの姿に、小頼の脳内は大覚醒に至っていた。
何とも完成された"オニイモ"展開。
少し歳の離れたお転婆な妹に対して、少し鬱陶しいと感じていた兄が、突如として大人の姿になってしてしまった妹に恋心を抱いてしまい、最終的には近親相姦を招いてしまう展開……。
または……。
周囲のクラスメイトに対して、普段からクールに振舞っている義妹ではあるが、大好きな義兄に対して、異常な恋心を持っおり……、隙さえあれば、学校内であっても、野外であっても、例え親が居る家の中であっても、こっそり義兄を襲ってしまう…。超合法的な"アニイモ"展開などなど。
大覚醒状態の小頼が思い付く展開は、全て十八禁物ばかりであるが、その変態的な創作意欲に底はなかった。
ギール「っ、くっ、お、覚えていろよ……小頼……。」
シャル「ぅぅ///」
小頼「はいは〜い♪それより、古都古が起きる前にどう対処するか、しっかり考えておいてね〜♪あっ、もちろん、無理そうだったら遠慮なく戻って来ていいからね〜♪」
こうして、ギールとシャルの真意と心境を引っ掻き回した小頼は、この先の展開を予知しているかの様な笑みを浮かべながら二人を見送った。