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第四百九話 異世界皇女戦記英雄譚その32

八月十七日。


混迷の渦に呑まれた異世界を救うべく、日本国から立ち上がった数多くの"義勇志士"を始め、各国で交戦をしている警界庁と日本防衛陸軍(特殊自衛隊)が、本格的な異世界平定に乗り出してから一日が経過した。


安明天皇が命懸けの勅命を下す終戦記念日まで、帝都を始めとする帝都側の周辺諸国は、異世界の主権を取ろうとする"反帝都側の諸国"及び"外道国家ジレンマ"の侵攻に晒され、悪戦苦闘による劣勢を始め、国内分裂、又は滅亡する国が出る程の戦況下であった。


そんな戦況下の中で、本格的な平定に踏み切った義勇志士らの参戦は、この劣勢な戦況を大きく変えた。


異世界各地で戦線は、義勇志士らによる惜しみない支援により、(わず)か一日で劣勢に立たされていた帝都側の戦況を(くつがえ)す様な戦果を次々と挙げていた。



※ここからは、一部抜粋して大きな変化をもたらした戦況をおさらいをしながらご紹介します。



まずは、反帝都を掲げた三国から侵攻を受けている帝都グレイム戦線について。



佐渡金守との親子喧嘩の末、帝都の西側から侵攻するリングデルト軍陣営の奥に取り残された両津界人は、思わぬ事にリングデルト軍の一部隊の引き抜きに成功した。


これにより両津界人は、引き抜いた部隊から色々な情報を収集した後、一つの謀略を企てた。


それは収集した情報を現実世界の各新聞社を始め、以前まで他人のプライベートに踏み込んでは、何食わぬ顔で誹謗中傷の記事を書き続けて来た各週刊誌に売り込み、特例で誹謗中傷となる記事を書く事を許し、規制無しの号外を思う存分に作らせた。



そして僅か二時間程で作られた人権侵害も(はなは)だしい号外は、賢者ヴェンセント姉妹の風魔法により、リングデルト軍の陣営に向けて飛ばされた。



一瞬とは言え、久々に報道規制を解除された中で作られた号外は、提供した情報をよりも誇張されており、もはや誹謗中傷のレベルを超えいた。


特に、この厳しい報道規制の世の中で、一番肩身を狭くしている週刊誌の号外は酷く、見ただけで相手を追い込む様な脅迫染みた内容が記載されており、日頃の鬱憤を感じさせていた。



そのため、風に飛ばされた号外を手にしたリングデルト軍の将兵たちは、疑心暗鬼、人間不信にも陥る号外の内容に、目的であるリングデルト軍の内輪(うちわ)を乱すどころか、将兵たちの間で斬り合いを始めてしまう程の展開となった。


この機に界人は、透かさず帝都グレイムの皇帝であるシルバー・グレイムと共に連合軍を率いてリングデルト軍へ反撃を仕掛けた。


紙と文字だけで軍の足並みが崩れ、更には修復困難に陥るまで内輪(うちわ)を乱されたリングデルト軍は、いくら大軍とは言えども、あっという間に"帝都義勇志士連合軍"によって壊滅した。


こうして西側からの脅威は、呆気なく鎮圧された。



一方その頃。


同じく帝都の南から攻め立てるマダル軍は、悲惨な悲劇に見舞われていた。



それは、空を飛んでいた筋肉ムキムキの老人を誤って撃ち落としてしまった事により、帝都攻略のために強大な戦力を注いだマダル軍の本隊が、瞬く間に一人の老人によって壊滅させられたのであった。



事の発端は、マダル軍から放たれた一発の魔弾が、ちょうどリングデルト軍の陣に向けて飛んでいた"佐渡金守"に直撃し、撃ち落としてしまった事から始まった。



流れ弾とは言え、敵からの攻撃を食らった金守は、これも何かの縁だと思い、界人の救出ついでにマダル軍の将兵を殺さない程度に片付けたのであった。


ちなみに、片付けられた将兵の大半が、瀕死の重症である。



しかし、マダル軍の不運は帝都へ攻め入った本隊だけに留まらず、本国でも大きな不運に見舞われていた。



この戦いでマダル王国は、帝都グレイムの他にも南西方面の隣国にして、パーセル五湖国の一国でもあるリバー公国にも侵攻していた。


当初の予定なら三日程で攻略する予定ではあったが、主力部隊を帝都方面に集中させていたため、進撃スピードは牛歩並に遅かった。



そのためマダル軍は、リバー公国を完全に攻略する前に、ドル公国の魔の手からエルバ公国を奪還し、リバー公国の援軍として駆けつけたルクステリアの一軍によって、リバー公国に攻め入ったマダル軍は、一瞬にして壊滅するのであった。



更に不運は続き、同盟国にしてパーセル五湖国の一国であるペソル公国から同盟の解消を申し付けられてしまい、肝心な補給路が途絶えてしまった。



また更に、西側の隣国で反帝都を掲げていた小国も、エルンスト国を主軸とする第二連合軍によって破られてしまい、マダル王国は窮地に立たされた。


これにより逃げ場を失ったマダル王国の国王は、もはやこれまでと悟り逢えなく降伏した。



ちなみに、エルンスト国を主軸とする第一連合軍は、北方の隣国で起きた反帝都による内乱を平定させ、そのままリングデルト公国へ向けて北伐を開始していた。



一方、東から侵攻するアーデント公国との戦線は、未だに大きな動きを見せてはいなかった。




そして大陸の南方で繰り広げている、リブル公国と外道国家ジレンマ軍の戦線では……。



※ここまでのあらすじ


領土拡大を目論む外道国家ジレンマは、大陸の東側の半分を支配圏に治め次なる狙いを定めたのが、大陸の東西を結ぶ動脈である中立国サルベールであった。


しかし、中立国サルベールの抵抗は予想以上に手強く、思う様な侵攻が出来ない状態であった。


そのため外道国家ジレンマは、海路より西側へ渡り、中立国サルベールを挟撃して力を分散させようと企てた。


しかし、いざ西側へ(おもむ)くも外道国家ジレンマ軍は、周辺諸国を侵略する西側方面攻略部隊と、本命である中立国サルベール西側攻略部隊の二手に分かれてしまう。


部隊を敢えて分けた張本人(ちょうほんにん)、外道国家ジレンマを建国した三賊長の一人、盗賊団団長の"ガルベル・イザベルは、あろう事か本命である中立国サルベールに向かわず、主力部隊を率いてジークフリーデン国を占領した後、勢いに任せてリブル公国へと侵攻した。



しかしこれが、リブル公国に居た(じゅっ)(しんちゅう)の怒りを買う事になり、リブル公国に侵攻した盗賊団団長のガルベル・イザベルは、主力部隊と亜種族の大軍諸共、無惨に壊滅した。




外道国家ジレンマ軍に取っては、まさにテーブルをひっくり返した様な事態に、十神柱である渡邉蒼喜(わたなべそうき)本間孝(ほんまたかし)茂野天(しげのそら)番場誠太(ばんばせいた)の四人は、十分な部隊を率いて隣国のジークフリーデン国の解放に乗り出すと瞬く間に奪還に成功した。


しかし、ジークフリーデン国内の悲惨な光景を目にした四人は、許しを乞うて降伏して来た外道国家ジレンマ軍の将兵を広場に並べるや、容赦なく皆殺しにした。



その後、怒りが収まらない四人は、一秒でも早くこの世から外道国家ジレンマを抹殺するため、西側へ渡った外道国家ジレンマ軍に取って生命線である港及び海路上封鎖のため、休む事なく隣国へ攻め入った。


そして、八月十六日。


渡邉蒼喜と本間孝率いる部隊は、怒涛の勢いで某国の宮殿へ攻め入ると、宮殿内は"予想通り"の見るにも耐えない光景が広がっていた。


もはや救いようがない光景に、呆れ果てた渡邉と本間たちは、容赦なくジレンマの将兵を斬り倒し、降伏を訴えて武器を捨てた者に対しては、街の広場へ連れ出すなり、1人ずつ順番に処刑される光景を見せながら、残り僅かの人生を楽しませた。


徐々に迫る死の恐怖に耐え兼ね、今更泣き(わめ)いては後悔する外道共。しかも、その処刑方法が、切れ味の悪い剣を用いての打首なため、外道らによる断末魔の叫びが街中を響かせた。


楽には死ねないと言う恐怖が、更に外道共の理性を崩壊させた。



一方、港の封鎖に向かった茂野天と番場誠太が率いる部隊は、港に駐屯していたジレンマ軍の将兵を片付けると、港の封鎖及び複数の軍船を拿捕(だほ)していた。


また、ここでも無駄な降伏をして来たジレンマ軍の将兵は、全員海賊出身であったため、これに気を利かせた茂野と番場は、拿捕した一隻の軍船を航行不能になるまで破壊した。


すると茂野と番場は、(かじ)は効かない、()も張れない、そして今にも沈みそうな軍船に、降伏して来たジレンマ軍の将兵を詰め込み、そのまま沖合へと流した。


訳の分からない計らいに、命拾いをしたと思ったジレンマ軍の将兵は、一時の安堵に浸った。


しかし、その安堵も束の間。


外道共を乗せたボロ船が、ある程度沖合に流された頃合を見計らった茂野は、自身の大鎌をカツンと地面を叩いた。


すると、外道共を乗せたボロ船を中心に海面が漆黒染まり、海面から無数の黒い腕が伸び始めた。



港から遠目で見ては、海の怪物として知られる"クラーケン"と似た様な光景ではあった。もはや海の怪物と言うよりも、海の死神とも思えるおぞましい光景に、ジレンマ軍の将兵らは恐れ(おのの)いた。


不気味に"クネクネ"とさせた無数の黒い腕が、軍船程の高さまで伸びて来ると、目にも止まらぬ速さで外道共に襲い掛かった。


黒い腕に捕まったジレンマ軍の将兵は、断末魔の叫び声を挙げながら黒く染まった海に次々と引きずり込まれて行った。


次第に黒い腕も面倒になったのか、ボロ船を掴むなり、そのまま海の底へと引きずり込んだ。



まさに海賊としては、相応しい処刑であった。



その後、茂野と番場は、拿捕(だほ)した軍船に乗り込み外道国家ジレンマの本国へ向けて航海を開始。


渡邉と本間は、中立国サルベールと対峙している外道国家ジレンマ軍を征討するため北進を始めた。


そして八月十七日。


渡邉と本間率いるリブル公国軍は、総退却中のビルヘイズ・キャンベル率いる外道国家ジレンマ軍と遭遇した。



この先の展開は、また後日。





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