第四百七話 異世界皇女戦記英雄譚その30
ヨキが警界官に連行されてから数分後。
幼馴染みであるヨキの身を心配したアリシアは、一人でヨキの跡を追いかけた。
しかし、ヨキが連行されてから数分経過している事もあり、ヨキの足取りは完全に途絶えていた。
それでもアリシアは、聞き込みを繰り返しながら砦内を探し回った。
その結果、少し時間は掛かったが、自然要塞の砦下に設けられている野営地にて、ようやくヨキを見つけ出した。
しかし、ヨキの近くには、スタイル抜群な上に、オレンジレッド色の長い髪をポニーテールでまとめた霧隠彩花の姿があった。
見ず知らずの女性と密着しながら歩いているヨキの姿を見たアリシアは、不審な視線を向けながら二人の跡をこっそりと追いかけた。
その後二人が、とある簡易式の小屋へ入って行くのを確認すると、アリシアは"ササッ"と音も立てずに窓を覗いた。
すると驚く事に、小屋へ入ったヨキは早々に彩花に押し倒されるなり、口には言えない程の卑猥な行為に及んでいた。
アリシア「〜っ///(こ、ここ、小屋に入って早々、あ、ああっ、あんなハレンチな事をするなんて!?あ、あの女性は何を考えているの!?)」
ヨキを襲っている女性は、服装を察するにヨキと同じ警界官だろう。
しかも、雰囲気からして年上、もしかしたらヨキの上司だろうか。
小屋の中から微かに声が聞こえる中、アリシアは赤面しながら二人の観察を続けた。
アリシア「ごくり……。(よ、ヨキのあ、あれを……胸で挟んで……上下に動かして……っ!?く、咥えた!?)」
肉食系である彩花の手は凄まじく早かった。
中々ハードな光景を見せられているアリシアは、既にオーバーヒート寸前であった。
アリシア「〜っ///(はぅ、あ、頭がクラクラしてきました〜。)」
とうとう耐え切れなくなったアリシアは、赤面しながら徐々にしゃがみ込んだ。
アリシア「ぷしゅ〜///(あ、あれが……い、営みと言うやつなのですね。お、お父様とお母様が通って来た道……。)」
歳端の行かないお姫様に取っては、あまりにも刺激が強過ぎる光景であった。そのため、動揺を抑えられないアリシアは、呆然としながら壁に背中をつけると、自らの胸を持ち上げた。
アリシア「うぅ……。(た、確か…、む、胸をこ、こうして……あ、あれを挟んで……うぅ、。)」
人目の付かない所で、ヨキを押し倒している女性の真似事を始めるアリシアは、少し真剣であった。
自らの胸を中央に寄せ、志道の姿を想像させながらエアー実践するアリシアの姿は、エロ同人とかでもよくある、見ず知らずの"浮浪者のおっさん"に見られて、そのまま犯されてしまう姫騎士のようであった。
その後、途中で目を逸らしてしまったアリシアは、ヨキと彩花の"肝心なシーン"を見逃してしまうも、彩花が小屋から出て行くの見計らいヨキが眠る小屋へと素早く入り込んだ。
ヨキ「スゥスゥ……。」
アリシア「……全く、あ、あんな事をされたばかりなのに呑気なものね。」
先程までしていた淫行が嘘の様に、ヨキは気持ちよさそうに眠っていた。
ヨキ「んんっ……。」
アリシア「…はぁ、相変わらず可愛い寝顔をしてるわね。」
あれから八年。
今のヨキは、当時より体が大きくなってはいるが、寝顔に関しては当時と変わらず可愛らしい表情をしていた。
アリシア「…ヨキ、もし、あなたが私の元を去らなければ、今頃私は……、あなたと付き合ってたのかしらね……。」
ヨキ「スゥスゥ〜、すぴぃ〜。」
アリシア「……ヨキ、今の私は複雑な気持ちよ……。学園に入ってから……、ずっとあなたは近くに居てくれたのに、私はそれに気づいてあげられなかった…。それどころか私は、志道に心を惹かれて……、あなたの事を忘れようとしていた……。」
眠っているヨキに対して、複雑な気持ちを打ち明けるアリシアは、ヨキの頬に手を当てながら声を震わせた。
アリシア「ひっく、ごめんなさい……。今の私は、好きな人が二人も居て…、だけど…、その内のあなたは、今の女性と楽しそうにエッチな事をしてて…。」
とうとう涙まで流し始めたアリシアは、徐々に感情の制御ができなくなると、無意識に眠っているヨキの手を取った。
アリシア「はぁはぁ、ねぇ、ヨキ……。私はどうしたらいいのかな……。これからも、いつもと変わりなく、友達として寄り添えば良いのかな……。それとも、志道と同様に愛していいのかな……。」
王族の姫としては、あまりにも端ない逆ハーレムに足を踏み入れ様とするアリシアに、眠っていたはずのヨキが突如として口を開く。
ヨキ「……いつも通りに、友達として寄り添えば良いよ。」
アリシア「っ!?よ、ヨキ!?」
彩花が盛った薬は、本来なら半日くらいぐっすり眠れる薬なのだが、アリシアの悲しい声を聞いた事で無意識に目を覚ましたヨキは、ものの五分足らずで薬の効果を打ち消した。
ヨキ「うぅ〜、アリシアの声が耳に響いて目が覚めてしまったよ。彩花姉の眠り薬を盛られたってのに、アリシアの声を聞いただけで目覚めてしまうとは……、俺も相当アリシアを意識してる見たいだな。」
アリシア「な、ななっ///」
半ば強引に起きたヨキは、眠そうに目を閉じたまま上半身を起こしていた。
まさか起きるとは思っていなかったアリシアは、瞳に涙を溜めながら赤面していた。
ヨキ「ふぁ〜、所々聞き取れなかったけど……、取り敢えずアリシアは、いつも通り友達として寄り添ってくれれば……。」
アリシア「い、いっ、いやぁぁぁ〜っ///」
ヨキ「へぶっ!?」
一部始終独り言を聞かれてしまったと思ったアリシアは、恥ずかしさのあまり、ヨキが片目を開けた同時に渾身の平手打ちを見舞った。
実際ヨキが耳にしたのは、最後の友達として寄り添うか、志道と同様に愛するかのところであった。
話の内容がよく理解できないまま、急にアリシアから渾身の平手打ちを貰ったヨキは、そのままベッドに倒れ込むなり気を失った。
アリシア「はぁはぁ……、はっ!?わ、私は、な、何を……っ、よ、ヨキ!?はわわ!?し、しっかりして〜!?」
彩花の薬よりも深い眠りについたヨキは、アリシアによる罪滅ぼしの看病の元、彩花が再び小屋に戻るまで安らかに眠るのであった。