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第三百九十六話 異世界皇女戦記英雄譚その19

佐渡金守率いるルクステリア先鋒隊は、侵攻して来たドル公国軍を先陣に送り、怒涛の勢いでドル公国との争いに敗れたエルバ公国へ急行した。


時刻は午前五時。



月と星々が光輝いていた夜空から一変。


徐々に東の方から太陽が顔を出し始めた。


辺りを照らす太陽の光に、月と星々の輝きは消え青々とした空が広がっていた。



そんな中、魔法の力で全速疾走をしていた金守率いるルクステリア先鋒隊は、既にエルバ公国の目と鼻の先にまで迫っていた。


エルバ公国とドル公国との争いは、激しい攻防戦だったのであろう。


エルバ公国の城壁は殆んど全壊しており、城外には、魔物によって食い荒らされた、多くの白骨死体が転がっていた。



あまりにも悲惨な光景に、強い憤りを感じた金守らは、早速、少数のドル公国の兵士が駐屯しているエルバ公国場内へと攻め行った。



手始めに金守は、捨て身の突撃で正門を破壊すると、そのまま一人で宮殿へと向かった。


金守の後に、寝返ったドル公国軍が続き、その後方から、ルクステリア先鋒隊も怒涛の勢いで雪崩れ込んだ。


おそらくドル公国の兵士たちは、昨夜は勝利の余韻に浸っていたのであろう。


ドル公国の守備兵たちは、まばらに散っては酔い潰れており、何の前触れもない早朝襲撃に、為す術なく討たれて行った。


この騒動にエルバ公国の守備を預かっている将は、慌ててに兵士たちを宮殿の外に集めて迎撃しようとするが、そこへ運悪く宮殿に向かっていた佐渡金守と鉢合わせてしまい、そのまま顔面を殴られては、宮殿の壁を貫通させる程の威力で殴り飛ばされた。



エルバ公国内では、街は半分近く破壊され、女性は(なぐさ)みモノにされ、男は奴隷の様に酷使されていた。とまあ、外道国家と手を組んだものにしては、定番とも言える仕打ちであった。


そのため、エルバ公国の守備を預かっていたドル公国の兵士たちは、容赦なく(ことごと)く打ち倒された。


ちなみに、エルバ公国の奪還に費やした時間は約三十分。国境付近からエルバ公国までの移動時間と比べるとかなり早かった。





エルバ公国奪還から二時間後。


ようやく、シャル率いる本隊が合流した。


しかし、これから成長期である多くの若者たちは、エルバ公国に着いたと同時に、睡魔に負けて眠ってしまっていた。


桃馬「スゥ…スゥ……んんっ…ん?っ、やっべ、寝てしまっ…た?」


進軍中に寝落ちしてしまっていた桃馬は、目的地の到着と同時に目を覚ました。


既に日が昇った様子に、桃馬は少し取り乱しながら外の景色を見ようとした。


すると、腰から下半身にかけて重みを感じた。


桃馬は、ふと視線を下へと向けた。


するとそこには、桃馬の腰に抱き付きながら眠る桜華の姿があった。


桜華は、少しよだれが垂らしては、自らの程よい大きさの胸を桃馬の股に押し当てていた。


桃馬「っ、こ、こら、桜華?ちょっと、はしたな…っ!?」


傍から見ては誤解されてもおかしくない体勢に、桃馬はすぐに剥がそうとするが、その時桃馬は、とある緊急事態に気づいた。



桜華を起こそうと体をよじるまで、桜華の胸の感触で分からなかったが、今桃馬の下半身は、思春期の男子なら仕方がない現象が起きていた。


桃馬は焦った。


今この状態で桜華が起きてしまったら、間違いなくバレてしまう。既に肉体的な関係はあるとは言え、ここで欲情していると誤解されては、今後の付き合いに支障を来たしてしまう。


しかも、今いる山車(だし)には、寝ているとは言え、ギール、シャル、ディノがいる。


物分りがよくて信頼出来るディノはともかく、ギールとシャルが起きてしまったら大事である。


何とか起きる前に剥がしたいところ……。


が、しかし…。


桃馬が少し動く度、桜華も抵抗するかの様に桃馬の腰に強くしがみついた。


桃馬「…うぅ、ごくり、(や、やばい…、桜華の寝顔が凄く可愛い。ずっと見ていたい…。)」


桜華「んんっ~♪すぴぃ~♪」


桜華の甘えた仕草に、桃馬は自力で下半身を抑え込もうと、桜の様に美しく、サラリとしたピンク髪を撫でながら気を紛らわした。



するとそこへ、一人の老人が桃馬の背後から顔を出した。


金守「おぉ、起きたか桃馬。」


桃馬「うわぁぁっ!!!?」


シャル「ぬわっ!?ど、どど、どうしたのだ!?」


ギール「わふっ!?」


ディノ「うわっ!?な、なな、何事ですか!?」


桃馬の驚きの声と同時に、近くで寝ていたギールたちが飛び起きてしまった。


金守「な、何じゃ桃馬?急に大きな声を出しおってからに、友達が起きてしまったぞ?」


桃馬「えっ、なっ、じ、じじ、爺ちゃん!?な、なんでここに居るんだ!?」


聞き覚えのある声に桃馬が振り向くと、そこには筋肉ムキムキのチート爺さんではなく、普段の老人らしい肉体に戻った金守が居た。


金守「な、何でと言われてもな。そうじゃな、話せば長くなるが…。」


桜華「んんっ、ふへぇ?あひゃ…うぅ~、おはようとうまぁ~。」


桃馬「あ、お、おはよう桜華。ご、ごめん、起こしちゃったな。」


金守「おや、桜華ちゃんも居たのか。おはようございます。」


桜華「ふぁ~、おはようございます~。」


金守「おやおや、寝ぼけておられるな。」


金守が孫嫁(まごよめ)である桜華に挨拶を交わすと、そこへ心地よく眠っていたシャルが怒鳴り込んで来た。


シャル「こら~!とう~ま~!いきなりどうしたと言うのだ!」


桃馬「っ、ご、ごめんシャル…、いきなり大声なんか出して…、お、驚いたよな。」


シャル「当然なのだ!あと、そこの"じじぃ"は誰なのだ?」


寝起きが悪く不機嫌なシャルは、目の前に居る見知らぬ老人に悪態をついた。


ディノ「はわわ!?シャル様失礼ですよ!?」


ギール「そうだぞシャル?初対面の人に失礼…わふっ!?と、とと、桃馬の、お、おお、お爺様!?」


シャルの率直な態度に、いつも通りディノが注意をする中、金守を知っているギールは慌てて膝をついた。


金守「おぉ、ギールくんか。久しぶりじゃな。」


ギール「お、おお、お久しぶりです!」


ギールに取って金守は、愛する桃馬を我がモノにするための最重要人物の一人であり、攻略ポイントの鍵であった。


※ちなみに、ジェルドに取っても重要人物である。



ギール「お、お爺様、も、申し訳ありません。このシャルは、俺の妹でその…、口が悪いと言いましょうか、えっと、素直と言いましょうか。」


シャル「ぬわっ!?な、何をしているのだ!?」


ギール「う、うるさい!このバカシャル!この方は桃馬のお爺様、佐渡金守さんたぞ!」


シャル「っ、ば、バカ…じゃと…。」


ディノ「はわわ!?ふ、二人とも喧嘩しないでください!?」


普段と変わらないほのぼのとしたやり取りに、金守は思わず微笑んだ。



金守「あはは、噂通りの仲の良さだな。」


ギール「っ!す、すみません。お見苦しいところをお見せしました。」


金守「そう謝らんでいいぞ。実際、わしが原因で"シャル様"を怒らせた様なものだからな。」


ギール「お爺様…。」


シャル「ふっふっ、聞き分けの良い爺さんは嫌いではないのだ、いたっ!?」


ギール「せっかく許してくれたのに、お前の減らない悪い口は、この口か~?」


シャル「ふへぇ~、ひゃにふるのひゃ~!?」


金守「こらこら、ギールくん。妹にそんな事をしてはいかんぞ?」


ギール「っ、くぅ…わかりました。」


金守の制止にギールは大人しく従った。


桃馬「はぁ、それで爺ちゃんはどうしてここに居るんだよ。確か、妖魔病にかかった直人の看病をしてたんじゃなかったのか?」


金守「っ、えっと、それは…だな。」


桃馬の質問に、金守はこれまでの事情を話した。


桃馬「な、何だって!?それじゃあ、界人叔父さんは、今もリングデルトって言う敵陣に…。」



金守「じゃ、じゃが、界人の事だ。何とか切り抜けてるじゃろう。」



桃馬「はぁ、俺も叔父さんなら大丈夫だと思うけど、下らない喧嘩で敵陣深くまで行った挙げ句、直人の緊急事態で叔父さんを置いてけぼりって、本当に何してんだよ…。」



金守「す、すまん…。」


孫が相手では敵わない金守は、桃馬の呆れた悪態に素直に受け入れる他無かった。




その後、エルバ公国の宮殿にて、次なる作戦会議が開かれた。


一つ、エルバ公国より北側の隣国リバー公国と合流し、リバー公国軍と帝都グレイムと交戦している"反帝都"側のマダル王国を叩く。更にマダル王国と同盟関係を結んでいるパーセル五湖国の一国にして、リバー公国の東側の隣国、ペソル公国を帝都側に引きずり込む。


二つ、このまま西へ向かい、ドル公国を滅ぼし、ディーデン公国に蔓延る外道国家ジレンマ軍を撃破しつつ、中立国サルベールへ向かう。


三つ、ドル公国制圧後、部隊を分けてジークフリーデン国の解放へ乗り込む。



大まかに部隊を三つに分ける事になるが、ある程度の作戦方針は決まった。




するとそこへ、エルバ公国が奪還されたとも知らずに、ドル公国からノコノコとネギと言う情報を背負った使者が走って来たのであった。



当然、使者は捕らえられて情報を吐いたわけだが、その内容と言うものが、南のジークフリーデン国が、リブル公国によって奪還されたと言う情報であった。



これにより、三部隊から二部隊に変わり、大きな分散は避けられたのであった。



その頃、リングデルトの陣に置き去りにされた両津界人はと言うと、離反したリングデルトの兵たちと共に、まんまと夜逃げを成功させ、無事帝都グレイムへと帰還していた。






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