第三百九十四話 異世界皇女戦記英雄譚その17
八月十六日、午前零時。
本来、ルクステリアの街にて開かれるはずであった、"フューチャー・コネクト・フェスティバル"、通称"未来を繋ぐお祭り"が終わった。
しかしこれは、お祭りに対しての終わりであって、戦の終わりではない。
平和的な防衛戦で勝利を収めたとしても、所詮はその場しのぎの追い払いでしかない。時間が経てば、再び攻めて来るなど目に見えていた。
そのためルクステリアの人々は、次なる戦いに備えて、昼間の防衛戦で捕らえた"某国軍"の将兵から詳細な情報を聞き出していた。
これは、五時間前。
※この先、絵がないため、分かりずらいとは思います。脳内がパンクする前に飛ばしても大丈夫です。
どうやら、ルクステリアの東の国々では、熾烈な戦が行われている様であった。
特に、異世界の東南に位置する"ローデン国"では、賊徒が結集して起こした大反乱により滅ぼされ、欲望渦巻く外道国家"ジレンマ"が建国されていた。
ジレンマ国の建国後、ジレンマの思想に利害を一致させる国々が次々と結託。各地の国々を始め、村や里を襲撃しては、略奪、陵辱、占領を繰り返し、その勢力を増やしている様だ。
一方、話を聞き出した"某国"の将兵の素性はと言うと。
パーセル五湖国の一国。
ドル公国の将兵であった。
パーセル五湖国とは、異世界"カルガナ"の中央部にあるパーセル湖と言う、最大級の湖を複雑な国境で五つに分けた五ヶ国の事を言う。
ちなみにルクステリアは、パーセル五湖国の二ヶ国と隣接しており、東は"リバー公国"、南東にはエルバ公国がある。
だが、ドル公国はエルバ公国の南にある隣国。
つまり、エルバ公国は、ドル公国との争いに敗れて滅ぼされていた。
更にドル公国は、外道国家ジレンマと結託しており、南の隣国ジークフリーデン国が、海から渡って来た外道国家ジレンマに占領されると、ドル公国は破竹の勢いで東の隣国ディーデン公国までも滅ぼした。
五ヶ国のうち二ヶ国を占領し、外道国家ジレンマの後ろ楯までも得たドル公国は、勢いに任せて"エルンスト国"へ宣戦布告をしてしまったそうだ。
かなり深刻な異世界の情勢に、捕虜の聞き取りをしていた者たちは、直ぐにフルロジカル全域に話を広めた。
すると、夏のビッグイベントを台無しにされ、更には、異世界の動乱に便乗して平和を乱す輩共に、フルロジカルにいる多くの人々が、ドル公国、外道国家ジレンマを討つべしと唱えた。
そして、来る午前零時。
フルロジカルの正門が開かれると、種族を越えた数万もの人々が一斉に出陣した。
その中には、お祭りで使われるはずであった神輿や山車までもが運び出され、夜中にも関わらずドンドンと太鼓を鳴らしては笛の音を奏で、怒涛の勢いで敗走したドル国軍へ向けて進軍した。
一般民衆を主体とした数万もの部隊は、瞬く間に立派な軍と化した。その軍の中央には、先陣争いに出遅れた魔王シャルが、八首の大蛇こと"紗曇"の上に乗り込み、ルクステリアの最強にして最狂の"カオス"ギルドを引き連れて出陣していた。
シャル「ぬはは~♪夜中の大進軍はとても気分が良いのだ~♪」」
ディノ「はわわ、シャル様!?そんなに"はしゃがれ"ては落ちてしまいますよ!?」
ギール「そうだぞシャル?はしゃぎ過ぎて"沙曇"から落ちるなよー?」
シャル「分かっているのだ~。」
夜中の大行進に胸を踊らせるシャルは、足場の悪い沙曇の頭の上で跳び跳ねていた。
桜華「クスッ、シャルちゃんとてもご機嫌ですね。」
桃馬「そうだな。まあ、夜中にこうも賑やかな大進軍をしていれば、その場の雰囲気に呑まれてしまうのも無理もないさ。」
桜華「な、なるほど。」
桃馬「とは言っても、これが普通の祭りなら良かったんだけどな。」
高い山車の上から眺める光景は、皮肉にも川の様に連なる提灯と松明の灯りで、それは見事な光景が広がっていた。
しかし、こんな見事な光景でも蓋を開けてみれば、ドル公国と外道国家ジレンマを征伐するための大進軍である。
特に、義憤に駆られた先陣の一隊は、激昂した多くの人々でごった返しており、ドル公国軍の血祭りで殺気立っていた。
一方、別の山車には、三人の男たちが、異世界の地"カルガナ"全域の地図を広げながら、今わかる範囲の現状を整理していた。
憲明「ふぁ~ぁっ。この勢いならあっという間にドル公国軍は壊滅するだろうな。」
京骨「まあ、ドル公国軍は一瞬で壊滅するだろうけど、問題はこの、外道国家ジレンマって言う国だ。」
ジェルド「あぁ。現に東の国々を占領しては、破竹の勢いで里や村を襲ってるらしいからな。」
京骨「あぁ、しかも奴らは、利害関係が一致する国々と同盟まで結んでいる。それに東の地は、自然豊かな土地に加えて、エルフ族や妖精族、それに聖霊族が多い。正直、性的に狙われてもおかしくない種族が多い分、早く助けに行かないと…。」
憲明「そうだな。そうなるとドル公国を撃破しつつ、このまま中立国家"サルベール"に向かって東へ抜けるか…。それとも、先に南下してジークフリーデンを占領しているジレンマを叩くか…。」
ジェルド「ジークフリーデンか。それなら、リブル公国にいるエニカと微食会の十人が動きそうだけどな…。」
京骨「うーん、連絡取りたいけど…、スマホ使えないしな。」
※この時、ジークフリーデン国はと言うと、
微食会、渡邉蒼喜、本間孝 、茂野天、番場誠太の四人を主体とした一軍によって、既に解放されていた。
しかし残念な事に、ジークフリーデン国王は既に殺害されており、王妃については、侍女たちと共に複数人の賊物共に凌辱されていた。
他にも目に余る様な惨劇が広がっており、怒りに燃える微食会の四人は、ジークフリーデンに蔓延る賊物共を容赦なく皆殺しにしていた。
例え、泣き言や降伏の声であっても容赦なく受け付けなかった。
これにより、南から進行を受ける心配はないのだが、如何せん、ネットや電話が繋がらないため、状況確認が取れない事から警戒はしなければならなかった。
そのため三人の男子たちが、どこへ向かうか悩む中、そこへ魔界に住まう全サキュバスを支配する"シフェルム皇国"の第三皇女にして水色ボブヘアーのルシア・シフェルムが乗り込んで来た。
ルシア「京骨いる~♪って、憲明とジェルド、まだ起きてたの?」
憲明「ふぁ~、ん?何だよルシア。起きてちゃダメなのか?」
ジェルド「どうせ、俺たちが寝ている隙に、京骨と"する"つもりだったんだろう?」
京骨「っ、る、ルシア…。」
いつもの展開なら間違いなく淫行を働くタイミングに、冷めた目をしたジェルドが率直な指摘すると、ルシアは頬を膨らませながら反論した。
ルシア「むう、失礼ね?私は別に、小頼とリフィルが先に寝ちゃって暇だから暇潰しに、京骨に構ってもらおうとしただけなのに~。」
ジェルド「何が構ってほしいだ。どうせ、キスしながら妖気を吸い取るプレイだろ?」
ルシア「っ、うーん、せ、正解…。」
ジェルド「…おい、ちょっとは、否定しろよ。」
京骨「ごくり。(うぅ、ルシアとキスか…。妖気を吸い取られても良いからしたいな…。それに、二人が寝ている中で、イチャつくのも少し興奮するかもな…。)」
ジェルド「京骨も何期待してんだよ…。」
京骨「なっ、お、おおっ、俺は別に何も考えてないぞ!?」
何とも分かりやすい反応である。
京骨の心は、淫らな欲望に囚われていた。
もし、憲明とジェルドが寝ている時に、ルシアが来てくれてたら間違いなく襲っていただろう。
いつも受け側の京骨だが、こう言った見られるかもしれない所では、不思議と責めたいと思う気持ちが強くなる公衆プレイ派の変態であった。
ジェルド「はぁ、全く、本当に二人はお似合いだな。」
憲明「うん…うん…、もしこれが…ふぁ~っ、エロゲーなら、ここでルシアを…三人で……襲うか。逆にルシアが……俺たちを吸い殺すか…。どっち……、ぐぅ~。」
ジェルド「…エロゲー話の途中で寝るなよ。」
ルシア「クスッ、じゃあ、ジェルドもおやすみ~。」
ジェルド「…えっ、なっ……るし…あ…。ぐぅ~。」
眠った憲明に気を取られたジェルドは、隙を見たルシアの催眠魔法によって呆気なく眠らされた。
更にルシアは、眠った二人に対して、念には念を入れて朝まで目覚めない程の強い催眠魔法を施した。
ようやく訪れた二人っきりの空間に、ルシアが嬉しそうに京骨の方を振り向くと、突如京骨に唇を奪われそのまま押し倒された。
ルシア「んんっ!?んはぁっ…ちゅっ、きょ、きょこひゅ…んはぁんちゅ…♪」
初めて京骨に押し倒された感覚に、一瞬ルシアは戸惑い抵抗する素振りを見せたが、いつもより逞しく見える京骨の姿に、ルシアは次第に受け入れ始めると、イヤらしく京骨に絡み付きながら、豹変したドSモードの京骨に身を委ねるのであった。
その後はエロゲーの如く、二人は誰からも見られることなく、背徳プレイを楽しむのであった。
そして進軍から五十分後。
束になっていた先陣の灯りが、突如、花火の様に弾け始めるのであった。