第三百八十七話 特別記念話 天下覇道編 14
信潟県天下覇道祭、第一回戦第六試合。
試合会場に次々と選手たちが揃う中、
最後に入場口から出て来たのは、春桜学園の生徒でも見たことがない、クール系のイケメンけも耳男子であった。
これには試合会場の選手たちを始め、
多くの人たちがざわついた。
映香「おぉっと!最後に入場して来たあけも耳男子は何者だ!?まさか、まだ入場していない豆太くんだと言うのか!?」
豆太「ふっ。であるぞ。」
普段の豆太なら絶対に使わないであろうシャル風の口調に、多くの女子たちが心を奪われた。更に一部の男子たちは、カリスマ漂う豆太の姿に釘付けになっていた。
犬神(…この力、まさかシャル様の…。あと、もう一つある様だが…、っ、あの妖刀は、確か両津直人の…。そうか…、まあ相手にとって不足はねぇ。始まった一瞬でケリを着けてやる。)
桃馬(あ、あれが豆太くんだと…、や、やべぇ、ジェルドとギール並みにかっこいいじゃないか…、ごくり、あのふわふわな耳と尻尾は、どんなもふり心地なのかな…。あと、どんな風に鳴いて感じるのか…気になる。)
晴斗(これが成長した豆太くんの姿か…。直人とシャルが羨ましいな。)
孔真(…これ程まで妖気と魔力を調和させるとは、なんて才能だ。是非とも俺の式として迎え入れたいな…。)
海洋「…うむ、この覇気。まさに本気の直人と同じ感覚だ。」
岬「…へぇ~、やっぱりどの試合にも一人や二人、ヤバイのが組み込まれているな。」
ただならぬ力を感じさせる豆太に、多くの選手たちが警戒する中、とある一匹については、別の意味で警戒をしていた。
ジェルド「…くっ、まさか豆太があれ程までイケメンになるとはな…、こいつは…とんでもねぇライバルの登場だな…。」
桃馬「おいこらジェルド。なに豆太と張り合ってんだ。」
ジェルド「ふん、桃馬が豆太に乗り換えない様に警戒しているんだよ。桃馬は俺みたいなけも耳男子に目がないからな。」
桃馬「うぐっ、知った様な事を言うなよ。」
ジェルド「なら、ギールか俺…。早く選べよ。」
桃馬「そ、それは…。」
男女問わず"けも耳"好きの桃馬に、
ギールとジェルドを選べるわけがなかった。
二匹は似た者同士の上、
愛しく、そして尊く、更に駄犬要素レベルが最強なため、どんなセクハラを受けて嫌々と言っても、結局どちらも離したくはない訳である。と言うより、桃馬は二匹の主人としてこの先も苛め続けたいと思っていた。
ジェルド「ふっ、この浮気者め…。まあ、いいや、この試合にもし俺が優勝したら…、桃馬の体と心は…、全て俺の物になるのだからな。」
桃馬「は、はぁ!?な、何勝手な事を…。」
ジェルドの意味深な言葉に釣られ油断していると、
突如映香から試合開始の合図が言い渡される。
映香「それでは、一回戦第六試合の開幕だ~!みんなの健闘を祈るぞ~!」
一回戦最後ともあって、テンション爆上げの映香は、
試合開始の銅鑼を高らかに鳴らした。
これにより、多くの選手たちが一斉に戦闘を開始した。
桃馬「えっ!?そ、そんないきな…ごふっ!?」
ジェルド「おっと、油断しすぎたぜ桃馬?」
一人だけ心の準備が出来ていなかった桃馬に対して、ジェルドは桃馬に飛び付くやその場に押し倒した。
桃馬「っ、ジェルドお前!まさか、俺の気を逸らすためにあんな事を…。」
ジェルド「ふっ、さて、それどうかな桃馬~♪はぁはぁ…。」
桃馬を早々に押し倒したジェルドの瞳は、深紅の様に光輝き、怪しげな笑みを浮かべていた。
これには腐女子たちを中心に、
二人の関係を知る多くの生徒たちが燃えた。
本懐を公開プレイと言う形で、
強行しようとしているジェルドの姿に、
腐女子たちは赤面しては鼻血を出しながら注目し、
男子たちは生唾を飲んでガン見していた。
桃馬「お、おお、お前!?ジェ、ジェルド!?ま、まま、まさか、こんな所で発情してんのか!?」
ジェルド「はぁはぁ、発情期に入ってから三ヶ月間も我慢してたからな。はぁはぁ、こんなにもあっさり捕まってくれて嬉しいよ~。」
桃馬「な、ななっ!?ば、ばか!?こ、ここは、お前の変態プレイをするところじゃ…。」
桃馬は必死で抵抗を試みるも、ジェルドにあっさり両手を掴まれては、上に股がられ身動き取れない状態になった。
ジェルド「はぁはぁ…、だからこそ…良いんじゃないか…。みんなに俺たちの仲の良さを見せつけてやろうよ。」
桃馬「ま、ままっ、まじでふざけんなよ、この駄犬が!?」
贅沢にも綺麗な白髪けも耳男子に押し倒されて嫌がる桃馬は、これから起こるであろう恥辱にまみれた淫行を恐れた。
この光景に、先程から目を血走らせながら二人の様子を見ていた黒髪けも耳男子のギールは、ジェルドに対してブーイングを始めた。
ギール「ジェルド貴様!何て羨ま…じゃなかった。なに桃馬を大衆の面前で犯そうとしてるんだ!?」
しかしギールの声は、残念な事に戦闘と歓声の雑音によって書き消されており、ジェルドの耳には届かなかった。そもそも、例え聞こえていたとしても無視していただろう。
また、この光景に桃馬の家族はと言うと…。
景勝「ごくり、せ、雪穂?ど、どうしたらいいかな。」
雪穂「うーん、そうね。陛下の御前にも関わらず押し倒すなんて、やっぱりジェルドくんは凄いメンタルを持っているわね。」
景勝「…えっと、止めた方がいいかな?」
雪穂「うーん、そうね。でも。ジェルドくんとギールくんの気持ちを弄び過ぎた桃馬にも非があるし、いっそのこと、ここで処男を奪われるのも…、いいかもね。」
景勝「…うぅ、公開プレイやむ無しか…。ふぅ、獣人族の手綱は難しいな。界人と杏佳さんは、よく握っているよな。」
雪穂「ふふっ、それは手慣れているからよ。獣人族との主従は決して弱みを見せない事が重要だからね。それに対して桃馬は、襲われる隙が多すぎるから今みたいになるのよ。」
桃馬の母である雪穂は、息子のピンチに手厳しい事を言うが、内心はジェルドとの本懐を少し楽しみにしていた。
対して桃馬の父である景勝は、息子のピンチを心配するも、雪穂からの説得力のある話に乗せられ救出を断念した。
景勝「手厳しいな。でも、この光景に桜華ちゃんは、どんな気持ちで見ているのかな。」
雪穂「そうね。きっと顔を隠しながらちょっと、楽しみにしているかもね。」
景勝「…軽蔑して桃馬と別れるなんて言わなきゃ良いけどな。」
雪穂「っ、そ、それは考えすぎよ。桜華ちゃんも二人の関係は知っていると思うし、そんな事は言わないわよ。」
景勝「…なら良いんだけどな。」
一方、注目の桜華はと言うと、桜華様の姿からいつもの桜華の姿に戻っており、リフィルと小頼と一緒に、赤面した顔を隠しては、手の隙間からその様子を伺っていた。
小頼「桜華ちゃん桜華ちゃん!そんな手の隙間から見てないで、しっかりあの二人の本懐を見届けようよ~。」
リフィル「そうそう~♪これは取っても貴重な瞬間なんだよ~♪」
桜華「そ、そそ、そうは言っても~!?こ、こんな、は、恥ずかしい光景は見ていられませんよ!?」
小頼「と言いながらも、隙間から見てるなんて…むっつりだね~♪」
桜華「はぅっ!?」
小頼に看破された桜華は、
更に赤面すると完全に顔を隠した。
そしてここで、駄犬から淫犬と化したジェルドは、桃馬の服を乱暴に破くなり自分の服まで脱ぎ始めた。
会場は学園の生徒たちの大歓声で包まれ、
ジェルドコールが木霊した。
ジェルド「はぁはぁ、聞こえるか桃馬~♪みんなが俺たちの本懐を祝ってくれているぞ。」
桃馬「な、何が祝っているだ。こんなのありがた迷惑だ…って、言ってるそばから何擦り付けてんだ!?」
ジェルド「はぁはぁ、何って…これから桃馬にぶちこむ"もの"だけど…。」
桃馬「はぁっ!?や、やめろジェルド!?それはまじで容赦しねぇっひっ!?」
何とも逞し(たくまし)く膨らんだ下半身を擦り付けるジェルドは、嫌がる桃馬の忠告を無視して首筋を舐め始めた。
これに半数以上の腐女子が、眼福のあまり失神。
しかもこの展開は、
BL本の総本山である小頼商会が販売している。
"自分より弱いご主人様を襲う駄犬は、やはり淫犬なのであろうか"
と言う、イケメンけも耳執事が、弱々しい主…もとい、大好きな幼馴染みのケツを求めて奮闘する話と類似していた。
ジェルド「はぁはぁ、くくっ。どうした桃馬…。だんだん抵抗が弱まってるぞ??」
桃馬「くっ、うるせぇ…。こんな事されたら誰だって…ひっ!?こ、こら、そんな舐め方するな~!?」
桃馬の弱点をある程度熟知しているジェルドは、
わざと桃馬の抵抗力を弱らせては、その弱々しい反応を楽しんだ。
それは、まわりの戦闘が激化していく中であってもお構いなしであった。