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第三百八十六話 特別記念話 天下覇道編 13

(祝)春より参られし桜華様!二周年記念。


特別記念話 天下覇道編13


春桜学園を主体とした、信潟県最大級の祭。


その名も信潟県天下覇道祭。


若き学生と異世界の種族たちが、男女問わず、

その年の最強を決める大祭が再び幕を開ける。



詳細は百話、百二十二話、百四十九話,百五十話、百八十七話、二百話、二百二十四話、二百五十話、二百八十六話、三百一話、三百二話、三百三話をご覧下さい。




美女だらけ(男の娘入り)の意地とプライドがぶつかり合う、信潟県天下覇道祭、第一回戦第五試合は、


シルフィーナ・コードルト

アリシア・ダクリネス

リフィル・ナーシェル

柿崎桜華


この四名が激戦を制し、二回戦へと駒を進めた。



そして、短い様で長い休憩も終わり、

いよいよ第六試合の開幕である。


信潟県天下覇道祭、第一回戦第六試合。

次なるメイン対戦カード。


藤井尚真(ふじいしょうま)

茂野天(しげのそら)

佐渡桃馬

高田海洋

新発田孔真

ジェルド・シグルード

豆太

犬神(白山乃宮ポチ)

柏崎岬

三条晴斗


一回戦最後の試合である。


実況のマイクを再び握るは、春桜学園の新聞部兼小頼商会にして、盗撮魔及びプライベート侵害危険人物の亀田映香である。


映香「さぁ、いよいよ白熱した一回戦最後の戦い、第六試合が行われます!


まずは選手たちの様子を見てみましょう!


先の試合で敗退してしまったエニカの仇を取るため、このグループは何としてでも勝ち進みたい、春桜学園の巨大派閥の一角、"微食会"最後の幹部である茂野天と藤井尚真。


しかし、他の微食会の幹部たちは、先の試合で負けてしまったエニカを慰めるべく、闘技場の食堂へ行ったきり未だに帰って来ない状態。それでも二人は、エニカを倒したアリシア…ではなく、その彼氏である藤原(ふじわらの)志道(しどう)に対して八つ当たりをするため、既に本気モードの様です!」


志道「えっ!?な、なんで俺!?ちょっ、二人とも!私情での八つ当りは良くないだろ!?」


藤井「うっせ、志道!どのみちにお前と当たるかもしれないんだ。黙って見ていろ!」


茂野「そうそう、今の内に目の敵を作っておかないと、このブロックの厄介な相手を倒せないからな。」


志道「うぐっ、こいつら…。」


目の敵どころか、殺意まで飛ばしている二人に、

標的にされた志道は心の底から二人の敗退を願った。


するとそこへ、志道の三人の嫁である、ダークエルフのアンジェリカと、エルフのジャンヌが声をかけて来た。


アンジェリカ「何を恐れているのだ志道?一回戦と同じ力を出せば、どうと言うことはないだろ?」


志道「い、いや…あれは、星野と大西が勝手にやらかしたお陰で勝ち進んだだけだし…。」


ジャンヌ「そう謙遜しなくて良いよ~。現にあのスザクと互角に戦っていたんだもん。まあ、二回戦の時に、あの二人が相手だと少し骨が折れるかもしれないけど、志道なら何とかなるよ♪うん!」


志道「その何とかなる見たいな事を言うのやめようよ。すごく不安になるから。」


二人からの応援はとても嬉しい事が、さすがに一人でも厄介な微食会の幹部に、一人で二人など到底勝てる気がしない。しかも、本気モードで来るなおさら無理である。




映香「さあ、まだ試合が始まっていないと言うのに、既に外野と内野では、激しい火花を散らしているぞ~!さて、お次の選手は、精霊様に愛され、しかもその母親までも虜にした男、その名は、親子丼キラー"佐渡とう…へぶっ!?」


"精霊"と言うワードが聞こえた時点で警戒をしていた佐渡桃馬は、調子に乗っては、人のプロフィールを誇張する映香を目掛けて、魔弾を投げ込んだ。


桃馬「な、ななっ、何を口走ってんだお前は!?」


映香「いってて、こら~!実況者に魔弾を撃ち込むとは何事だ~。」


桃馬「うるせぇ!大勢の前でありもしない話を持ち込みやがって!」


映香「あ、ありもしないって、本当の事だろう~。現に桜華様とイチャイチャしてるじゃないか!?」


桃馬「お、おお、おまっ、また変な事を言うな!?」


事実ではあるが、悪意ある誇張された映香の話に、

桃馬は必死で反論した。


するとそこへ、自分は"桃馬の忠実な犬"とし自称ている、白髪けも耳男子のジェルドが加勢にはいる。


ジェルド「そうだぞ映香!桃馬はそんな親子丼には興味はないぞ!」


映香「なっ、ジェルド…、まさか桃馬を庇う気?」


ジェルド「ふっ、庇うだと?そもそも、俺の大切な桃馬を守って何が悪い?」


桃馬「ジェルド…お前…。」


普段から桃馬の犬として、裸の関係を持とうと企んでいるジェルドだが、この一瞬だけは、珍しくも頼もしく見えた。


そう、一瞬だけ。



ジェルド「桃馬はな。俺自身の調教を許した、たった一人の男だ。"もふもふ"を始め、あれやこれやと俺の弱いところを全て調べ尽くし。(しま)いには、俺の誘いを断るくせして、隙あらば逆に俺を襲う様な…。獣人としては…たまらない男だ!ごふっ!?」


桃馬「なに映香より、とんでもない事を口走ってるんだお前は!!?」


ジェルドの変態的な性癖を(あなど)っていた桃馬は、多くの人が見ているのにも関わらず、ガチ話を暴露するジェルドに対して、渾身の正拳突きを見舞った。


正拳突きをもろに受けたジェルドは、試合が始まる前だと言うのに、その場でダウンしてしまう。

※リタイヤではない。


二人の関係は、春桜学園の同級生なら誰でも知っている事だが、今の決定的なジェルドの暴露には、多くの生徒たちが大歓声を上げて称賛した。


これは種族にもよるが、

犬、猫系の獣人族は、男女問わず主と認めた相手に対して、例えその主が同性であったとしても、一線を越え様とする事はよくある話である。


そのため会場にいる者たちは、二人の関係を軽蔑するどころか、暖かい笑いが会場を木霊し、仲の良い二人を見届けていた。



映香「さ、さあ、お次に紹介するのは、若き二人の陰陽師、新発田孔真と柏崎 (みさき)だ~。」



孔真「…(いいか岬?映香が変な事を言っても絶対に反応するな。)」


岬「…(あぁ、桃馬はかなり否定していたけど、あれでは、反応する度に認めている様なものだ。)」


映香の紹介に無反応でやり過ごそうとする、平安貴族風の(ころも)を装ったこの二人。しかも、映香からの余計なネタを警戒するあまり、二人の会話は陰陽術でやり取りをしていた。



映香「…おっと、意外とクールですね。やはり、恋人が見ているだけあって緊張している様だ。それとも、早く終わらせて弱った麗羅ちゃんと、シルフィーナ先輩とイチャつきたいのだろうか。」


岬「っ!?(あのバカ、先輩まで捲き込みやがった!?)」


孔真「……(うぐっ、お見通しか…。)」


岬「っ!!?(お、おいおい、まじかよ孔真!?)」


孔真「…(な、ななっ、何の事か…。そ、それより、岬は思わないのかよ。)」


岬「…(い、いや…、俺は…、先輩と一緒に居られるだけで…充分なんだけど。)」


孔真「…(うわっ、でた、紳士アピール…。まあその前に、シルフィーナ先輩にふしだらな真似をしたら、先輩の聖剣で"下の棒"を切り落とされるか。)」


岬「…(い、いや、先輩はそんな事はしないぞ?むしろ…。)」


やはり、(だんま)りを決めた二人でも、映香からの要らん情報に踊らされてしまった。しかも二人は、変なところで顔をしかめたり、そわそわしていたため、感の良い映香に見破られてしまう。



映香「おやおや~?どうやら二人は、陰陽術での会話に夢中になっている様だ~。ヒソヒソ話もいいが、違和感のある仕草が目立っているぞ~。」


孔真&岬「なっ!?こ、こほん。」


何をしているのかを的確に突かれた二人は、

動揺を隠すために咳払いをしながら誤魔化した。


その後は、次々と選手たちが入場して来ては、

個々の細かい情報を述べる映香であった。



そして残る選手はあと数人と言う中で、入場口の奥では、二匹のショタたちが少し揉み合っていた。


豆太「はわわっ!?や、やっぱり僕…、り、リタイヤを…。」


犬神「おいこら、逃げんな豆太!」


豆太「ひぃ~。犬神様!?」


犬神「豆太よ。お前とは今日ここで、決着を着けたいんだよな~。」


豆太「な、何の決着ですか!?」


犬神「ふっ、豆太…。お前はヴィーレとエルゼ…どっちが好きなんだ…?」


豆太「ふぇ、あ、それは…。」


犬神「…俺は…エルゼの事が好きだ。それも嫁にしたいくらいにな。」


豆太「ぼ、僕だって、エルゼちゃんの事が好きですよ!?」


犬神「ほぅ。豆太は、ヴィーレと言うお姉さんが居ながらもエルゼを求めるのか。二股とは豆狸にしては、欲張りだな。」


豆太「そ、それは…。」


犬神「まあ、エルゼの可愛さは、神である俺の心すらも射止めた子だ。だから豆太も気になるのも無理もない…。が、しかし、ヴィーレと言う者が居ながら、エルゼを(めと)るなど、俺に取っては許しがたい話だ…。」


豆太「で、でも、二人からは公認ですし…。」


犬神「うるさーい!俺はエルゼを独占したいんだよ!ここでお前を倒して、エルゼに認めてもらうんだ!」


豆太「あぅ…。そんな…。」


エルゼに対して身も心も憔悴(しょうすい)しきっている犬神は、兄弟にして恋敵でもある豆太を壁際まで追い詰め、壁ドンをしながら本気の想いを露にした。


犬神「でもまあ、本当に逃げたいのなら逃げればいいさ。その代わり、俺の株が上がるってもんだからな。」


豆太「……うぅ、ぼ、僕は…。」


今にも折れそうになる豆太の心は、激しく揺れていた。そんな豆太の前に、まだ入場していなかった三条晴斗と高田海洋が声をかけてきた。


晴斗「おやおや、二人とも何をしているんだい?見たところ、犬神様が豆太くんを脅している様に見えるんだけど。」


海洋「うむうむ、脅しだなんて神様でも良くないな。」


豆太「あっ…晴斗さんに…海洋さん。」


犬神「何だ、晴斗と海洋か。俺は脅してなんかいないぞ。これは兄弟同士の恋を巡る戦いなんだ。邪魔はしないでほしいな。」


晴斗「いや、遠目だと明らかに脅している様に見えるんだよね。」


海洋「うむ、さっきの犬神様の表情は、見事な悪人面になっていましたからね。」


犬神「なっ!?こ、こほん、ま、まあとにかく。俺はこの試合に勝ってエルゼの心を掴んでやる。もし、豆太も出るのなら、俺は容赦なく豆太を倒すからな!」


豆太「…あぅ。」


"恋"、あるいは"性欲"のどちらかに囚われている犬神の一言一句は、本来戦闘に向かない豆太に取ってきついものであった。


もし試合に出れば間違いなく犬神様は、真っ先に自分の方へ襲って来るだろうと、そんな展開が容易に想像がついた。



晴斗「…恋は神様すらも動かすか。」


海洋「…いやはや、恋は恐ろしいな。」


晴斗「ドーピング扱いで引っ掛からないものかね~。」


海洋「そんな事をしたら、この試合に参加者しているほとんどがアウトだぞ。」


晴斗「それもそうか。えっと…こほん、豆太くん大丈夫かい?」


恋についてちょっとした危機感を覚えた二人は、すぐ近くで腰を下ろして震えている豆太に対して、晴斗は心配そうに声をかけると、豆太は怯えた声で胸の内を語った。


豆太「…僕…やっぱり、戦えません。そもそもこの試合のエントリーは、犬神様が勝手にした事ですし…。」


晴斗「…そうか。犬神様も強引なことをするな。それなら、豆太くんの意志は向いていない訳だし、リタイヤを申し出るのも有りだと思うよ。」


豆太「……うん。」


晴斗「……ふぅ、それじゃあ、直人から渡された、この妖刀は必要ないか。」


豆太「ふぇ…?」


晴斗「実は直人がね。豆太くんの身を案じて自分の命の源でもある、この妖刀を豆太くんに渡す様に頼まれてたんだよね。」


豆太「…若様が僕に…。」


晴斗「そう。でも、豆太くんがその気じゃないのなら絶対に渡さないで、試合に出るのも止めてくれって言われているんだよ。」


豆太「……。」


まさか、若様こと両津直人が、こんな何の取り柄もない豆狸のために、命の源である妖刀を貸してくれる事に豆太は驚いた。


海洋「しかも直人の奴、願わくば豆太くんを守る様な立ち振る舞で頼むって言うからな。あのけも耳ショタ好きには困ったものだ。」


晴斗「あはは、嫁はほとんど魔族だけどね~。」


豆太「……。」


晴斗「さてと、そろそろ時間だし行くとしようか。豆太くん、この妖刀を直人に返してやってくれないかな。」


豆太「えっ、あっ…はい…っ!!ふえっ!?何ですかこれ!?」


豆太は、晴斗から差し出された妖刀を手にすると、

暖かな蒼炎が豆太を覆った。


晴斗「あ、そうそう、もう一つあった。途中でシャルに呼び止められた際に、高濃度の魔力が注がれているから、今妖刀を抜けば、あの小生意気な犬神様をしばく絶好の機会を得られると思うよ。まあ、試合に出る気があればの話だけどね…。」


海洋「…うむ、大切な人に見てもらいたいのなら、妖刀を抜いて見ると良いさ。」



豆太「大切な人と…犬神様をしばく絶好の機会…。これが"若"と"シャル姉"の力…。」


豆太は蒼い炎に包まれながら、

妖刀を抱き締めるかの様に持つと、

口調と声のトーンが一気に大人びていった。


そして豆太は、意を決して妖刀を引き抜くと、

蒼炎が更に燃え上がり、小さくて可愛いショタの姿から、高身長で凛々しいけも耳男子へと姿を変えた。それは、ギールとジェルドに引けを取らない程のイケメンであった。


しかも、狸耳と尻尾はそのままだと言う、

可愛い、かっこいい、クール属性を兼揃えた、

超絶最強の美男子が誕生した。


そのため、豆太が入場した際は、

見たこともない美男子の登場に、実況者の映香を始め、会場の多く人たちが大騒ぎするのであった。






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