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第三百七十九話 異世界皇女戦記英雄譚その7

愚かしくも、リブル公国に進攻して来たジレンマ軍は、たった六人の男たちの手によって壊滅した。


ジレンマ軍総大将、ガルベル・イザベルは、

他国で捕らえた人質を出しての交渉に踏み切るも、これに対して"鬼仏(おにぼとけ)"の名を持つ、近藤 尚弥(しょうや)の怒りを買い、一対一の決闘の末。ガルベルは、姿形も残さず首だけを残して戦場へ散った。


更に、ガルベルの盟友にして軍師であるキクリ・エニシスは、その目で、ガルベルが討たれた光景を見届けると一気に戦意を削がれ意気消沈となった。更にそこへ、追い討ちをかけるかの如く、高野槇斗、大西雷音による怒涛の襲撃により戦死した。



そして、視点を変えること。


亜種族軍と交戦するエニカ率いるリブル公国軍はと言うと、かなり有利な戦況で交戦していた。


エニカ「さぁさぁ、どうしましたか亜種族たちよ!その程度では、このエニカ・リブルを止められませんよ!」


もう既に何体の亜種族を狩ったであろうか。


エニカの回りには、

多くの亜種族の死体が転がっていた。


亜種族「ぐっ、だ、誰か、あの脳筋姫を止めろ!?」


姫騎士にしては、かなり強いエニカを前にして、流石の屈強揃いの亜種族でも、思わず禁句を漏らした。


エニカ「っ、の、脳筋…姫って…へ、へぇ~。勝てないからって…そう言いますか…。ふふっ、覚悟しなさい!」


亜種族「ひっ、だ、誰か止めっ…がはっ!?」


亜種族からの禁句に反応したエニカは、(いきどお)りを闘争心へと変え、再び亜種族を蹂躙(じゅうりん)し始めた。



一般的な姫騎士は、クールでかっこよく、容姿端麗(ようしたんれい)で可愛いイメージがある。更に例をあげるなら、戦闘の敗北後は、恥辱を始めとするエロゲー的なイベントに発展するのがお約束である。


しかし実際は、あまりにも強いエニカに(まさ)る亜種族などは()らず、結局エニカは、容姿端麗だけの戦闘狂であった。


そんなお転婆が過ぎる姫様に、過保護な微食会幹部たちは再び頭を悩ませるのである。


番場「おい、藤井!?エニカが突っ込んだぞ。」


藤井「うぐっ、やっぱり突っ込んだか。ルイはどうした。確認できるか?」


番場「えっと…、乱戦しすぎてよく見え…あ、いた!一応、後を追ってるな。」


藤井「ふぅ、これじゃあ安心して戦えやしない。こんな時、シゲとラグラは反対方向だし…、仕方ない、"つぼ"と"せいっちゃん"で援護にいくぞ!」


番場「おう!」


坪谷「よーし、それならここはド派手に行こうか。()でよ"飛龍(ひりゅう)"!」


激しく乱戦する戦場下で、スケッチブックに見事な龍を速筆した坪谷勇二郎は、 (てん)に向けて龍の絵を掲げた。


するとスケッチブックから、何とも立派な飛龍が飛び出した。


飛龍は手始めに、亜種族軍の後方で密集している亜種族らを襲撃すると、再び坪谷勇二郎の元へ戻った。


すると番場、藤井、坪谷の三人は、早々に飛龍の背中に乗り込むと、敵陣深く突出するエニカの元へと向かった。



微食会男子「おぉ、これはすげぇ。」


微食会男子「さすが坪谷くんだ。これなら楽勝だな。」


リブル公国兵「おぉ、坪谷様の召還獣か。」


リブル公国兵「このまま俺たちも続けぇ!」


勇ましい飛龍の出現に、早くも勝利を確信し始めるリブル公国軍と微食会らは、士気を極限にまで高めては亜種族への攻勢を強くしようとする。


が、しかし、


突如何処からか、氷の(つぶて)が"飛龍"に目掛けて襲いかかると、飛龍は悲痛な雄叫びを上げながら、微食会幹部の三人を乗せたまま墜落した。





一方その頃、微食会の三人とは別の方へ行った茂野 (そら)はと言うと、元退魔士にして"白銀の死神"と呼ばれた"ラグラ・ノーヴァ"に捕まり、亜種族が密集している戦地へと、道半ば強引に連れて行かれていた。


氷系の技を得意とするラグラは、付近に味方が居ない事を良いことに、惜しみ無く氷系の技を繰り出していた。


銀髪のポニーテールを激しく揺らし、しかもスタイル抜群の上、エニカに引けを取らない程の戦闘狂である。



しかも、これで十六歳。

つまり、茂野たちの一つ下である。



ラグラ「はぁ~はっはっ!亜種族とはこの程度か?弱すぎて張り合いがねぇな?」


茂野「それなら俺は戻っても良いかい?」


ラグラ「何を言うか?天にはこのまま、あたしと一緒に居てくれなきゃ困るぞ?」


茂野「何でだよ。てか、こんな相手なら、お得意の深叡大氷結(しんえいだいひょうけつ)の一発で片が付くだろ?」


ラグラ「それは出来ない提案だ。もしそんな事をしたら、私が面白くないだろ?」


茂野「いやいや、戦場に面白さを求めんなっ…て、ん?あ、あれは、龍…!?」


このタイミングで、坪谷勇二郎が召還した飛龍が出現した。


飛龍はこちらに向けて来るなり、付近の亜種族を蹴散らし再び戻って行った。



ラグラ「おぉっ!どこから来たか分からないが、亜種族共より楽しめそうだな!」


茂野「っ、ら、ラグラよせ!?あれは、亜種族じゃ…。」



飛龍の出現により、ラグラの闘争心は更に燃え上がった。そのためラグラは、手始めに無数の氷の(つぶて)を放とうとする。


すると同時に、突然の飛龍の出現に戸惑っていた茂野であったが、数十秒遅れでようやく飛龍の正体が、坪谷勇二郎の絵だと気づいた。


がしかし、時は既に遅かった。


ラグラ「問答無用だ!食らえ氷結礫(ひょうけつつぶて)!」


茂野の制止を振り切ったラグラは、藤井、番場、坪谷を乗せた飛龍に目掛けて、無数の氷の礫を見舞った。




番場「ん?なんだ…って!?何か飛んで、うわっ!?」



番場が気づいた時には、既に手遅れであった。



飛龍が手始めに襲撃した方面から、無数の氷の(つぶて)が飛龍に向けて飛んできた。


飛龍「ギャぁあぁぁぁっ!!?」


坪谷「っ、な、何だ襲撃か!?」


藤井「この氷…まさかラグラか。はぁ、シ~ゲ~!何してるんだ!?」


番場「はぁ、うちの女子たちは、本当に戦闘狂ばっかだな。」


坪谷「やべっ、飛龍の羽が凍った!?このままだと、お、墜ちるぞ!?」


戦闘狂美女、ラグラのフレンドリーファイアにより、三人の男たちは飛龍共々に墜とされた。


飛龍の召還から、わずか二分と数秒の事であった。



飛龍の墜落に、両軍からは動揺と焦りの声が木霊した。


しかし飛龍は、リアルの様に見えても所詮は絵である。


坪谷は、墜落後の大惨事を回避するため、飛龍の具現化を解除して絵に戻した。


あとは、落下中の三人であるが、ここで藤井が得意とする鉄壁魔法術が三人を覆った。


が、しかし…、所詮は防御力を飛躍的に上げたに過ぎず、結局三人はそのまま地面に落ちた。


多少の痛みは感じるも、大きな怪我まではならなかった。




その頃、飛龍を落とした張本人はと言うと、我ながらの結果に満足そうにしていた。


ラグラ「よし。」


茂野「よし、じゃねぇよ!?何勝手に落としてるんだ!?」


ラグラ「ん?何って、どうせあの龍は亜種族の一派だろ?」


茂野「ち、違うって…。」


ラグラ「あっ、そうか。あの龍を落としたら下にいる連中が潰れちまうもんな…、ん…っ!?ど、どうしよ天!?あ、あたし、とんでもない事を!?」


ここに来て、取り返しの付かない事を"やらかし"たと気づいたラグラは、先ほどの威勢から一変、天に抱きつくなり激しく動揺した。


茂野「し、心配するな…、飛龍なら墜ちる寸前に…。」


ラグラ「よ、よし、こうなったら二人で遠くへ逃げよう。そして、小さな村で静かに暮らすんだ。」


茂野「バカ、そんな事はしなくても良いんだよ。とにかく俺の話を聞けって。」


ラグラ「だ、だって、このままだと戦犯だぞ。」


茂野「戦犯になるかよ。あの龍なら墜落寸前で消えたから、味方は下敷きになってないよ。。」


ラグラ「ほ、本当か!?」


茂野「あぁ、本当だ。」


ラグラ「そ、そうか。よかった。」


茂野(はぁ、何かあの龍の上に、"ゆうちゃん"たちが乗ってたみたいだけど大丈夫かな。)


被害が無い事に安堵するラグラの姿は、乙女その者であった。そんな拝みチャンスを迎える茂野であったが、おそらく落ちたであろう三人の無事を心配した。



亜種族「貴様ら、いつまでイチャついてやがる!」


亜種族「貴様らを見るとムカッ腹が立つわ!」


飛龍を墜とした勇ましさに思わず怯んでいたものの、その後に始まった何とも言えない恋人同士のやり取りを見せられた亜種族は、不思議な憤りに駆られて再び攻め立てる。


が…、


ラグラ「…あたしと(そら)の空間を邪魔すんじゃねぇよ。」


天と二人っきりになりたいラグラは、邪魔する亜種族に対して、殺気を飛ばしては鋭利な氷の刃を飛ばした。


情け容赦の無い攻撃に亜種族たちは、ただただ蹂躙され、もう二人に関わりたくないと逃げ去って行った。


茂野「はぁ。気の毒だな。」


ラグラ「ふっ、さて、天~。このまま城に帰って今度こそ"しよう"じゃないか!」


茂野「はいはい、この戦が終わってからな。(全く、この戦闘狂には困ったものだ…。出来ることなら、ここで疲れてもらえれば決闘から逃げられるのにな。)」


戦闘狂に好かれた茂野は、本当に気の毒てしか言えない。


ラグラに合えば、決闘、決闘とせがまれ、もし乗ってしまえば最後、気を抜いたら死ぬような決闘が始まってしまうのである。


その後、茂野とラグラは、できる限り、坪谷、番場、藤井の三人と出くわさないように、外回りの亜種族を狩り始めるのであった。






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