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第三百七十四話 異世界皇女戦記英雄譚その2

異世界の地"カルガナ"には、

決して手を出してはいけない国があった。


その国の名は、リブル公国。


その国には高貴で可憐な姫騎士様と、

小動物の様に可愛らしい鬼神様がいました。


二人の仲は、実の姉妹の様に仲が良く、

国に居ても、異世界(現実世界)の学園に居ても、いつも一緒に過ごしていました。


姫騎士様は、大変人柄が良く、かなりの陽キャであると共に、誰にでも足並みを揃えられる方である。更に武芸の方は、一端の男にも勝る程の剣術を持ち合わせている。


一方の鬼神様は、

とても大人しい大食いっ子であり、黙々と料理を食べるその姿から、まわりからは小動物的な存在として人気がある。


しかし、怒らせると凄く怖い一面があり、

一国の将を十人束ねても勝る程の力を持っている。



これだけでも充分手を出すには危険なレベルであるが、ここに可愛らしいヴァンパイア様と従者である元退魔士の美女を加え、更には、最も危険視すべき守護神"十神(じゅっしんちゅう)"、別名"微食会(びしょくかい)"となる、十人の男たちの存在である。


表は、ごくごく普通の賑やかな男子学生。

裏は、他人の恨みを命を持って晴らす"仕置人"。

個性や戦い方は違えど、戦場に立てば一騎当千。



しかも彼らは、姫騎士様、鬼神様を始め、ヴァンパイア様と元退魔士の従者たちを大切にしているため、もし不純な思いで手を出そうものなら、マジギレする男たちである。



そのため此度の乱では、勢力を拡大した賊徒を主軸にして建国された外道国家"ジレンマ"が、一方的なリブル公国への侵攻をした事で十神柱の怒りを買い、情け容赦のない殺戮が始まった。


対して外道国家"ジレンマ"は、

これに対抗できると自信があったのだろうか。


見え透いた人質作戦や内通者を通じての引き入れ作戦を企てるも、十神柱に看破され失敗。


内通者は、容赦なく首を跳ねられ、

そのままジレンマの先陣に投げ込まれた。


更に十神柱は、普通なら異世界に持ち込めるはずがないバズーカを片手に、強力な無限炸裂弾(むげんさくれつだん)餞別(せんべつ)だと言わんばかりに"ジレンマ"の先陣へ向けて発砲した。


これには血気盛んなジレンマの先陣であっても、爆裂魔法級の炸裂弾に戦意を削がれて"オメオメ"と撤退を開始。


この機に十神柱は、攻撃の手を緩める所か、情け容赦のない炸裂弾を連射しては鬼の形相で行進。


その少し離れた所には、リブル軍と微食会の部隊が、捲き込まれない様に距離を取って行進を始めた。


その部隊の中央には、リブル公国の紋章である"宝剣を咥えたグリフォン"と、帝都グレイムの紋章である"宝剣を囲む二頭の竜"の御旗(みはた)が掲げられ、部隊の後方では音楽隊と共に賛歌が歌われた。


姫様、姫様、お馬のま~えに、

ヒラヒラするのはなんじゃいな。

トコトンヤレ、トンヤレナ~。


あ~れは、賊物征伐せよとの、

大義(にしき)の御旗じゃ知らないか。

トコトンヤレ、トンヤレナ~。


一天万乗(いってんばんじょう)

み~か~ど~ぉに~て~む~か~ぁい~する者を

トコトンヤレ、トンヤレナ~。


ね~らい外さず、ね~らい外さず、

止まらず暴れる十神(じゅっしんちゅう)

トコトンヤレ、トンヤレナ~。


大高星谷 (おお~たか、ほしたに)、

近茂 (ち~ぃか~し~ぃげ~)

渡藤番間 (わたふじばんま)と此処(ここ)に在り。

トコトンヤレ、トンヤレナ~。


平和を揺るがす、外道を許さず、

逆鱗触れたと容赦せぬ。

トコトンヤレ、トンヤレナ~。


欲望乱れし、反乱賊徒が、

どっちへ逃げたと問うたれば、

トコトンヤレ、トンヤレナ~。


戦意も意欲も、野望も気概も、

す~べてを折られて逃げたげな。

トコトンヤレ、トンヤレナ~。


く~にを追うのも、ひ~とを殺すも、

だ~れも本意じゃないけれど。

トコトンヤレ、トンヤレナ~。


愛する異界と、愛するひ~とを

先手に手向かいする故に。

トコトンヤレ、トンヤレナ~。


悲鳴を上げるも、悲痛を受けるも、

どっちも嫌なら()へ帰れ。

トコトンヤレ、トンヤレナ~。


し~かし、こちらに宣戦布告を

そちらがしたなら覚悟せよ。

トコトンヤレ、トンヤレナ~。


※軍歌"宮さん宮さん"より


爆音と悲痛な声が木霊する前線は、

たった十人の男たちの手により地獄と化した。


なんせ引き金一つで、何十人もの相手を一瞬で"チ"祭りに上げられるのだから楽なものである。しかも、無限に撃てるバズーカは、坪谷勇二郎が渾身の魔力を込めて絵を具現化させた逸品である。しかし、無限と言っても魔力が尽きればすぐに消滅してしまう欠点があり、調子に乗って撃ちすぎると返り討ちになる代物である。


ここで小話。

坪谷勇二郎曰く、

自称"無限バズーカ"は、リロードなしの連射式で、総弾数は約二百発。もはや異世界を滅ぼせる程の兵器である。




怒りに燃える微食会の十人は、敵の前線と後詰めに対して、十人中、四人が全弾を使い果たし、約千発の炸裂弾が序盤の攻勢にて消え去った。


渡邉「…っ、何だもう弾切れかよ。」


近藤「こっちも弾切れだ。はぁ、撃ち足りねぇな。」


藤井「うーん、リロードの手間がない分、つい撃ちすぎてしまうな。」


茂野「だな、俺も序盤で使い切るとは思わなかったよ。」


近藤「なあ、ゆうちゃん?もう一つ出してくれないか?」


坪谷「うーん、出してやりたいのは山々だけど、さすがに近代武器の使いすぎはまずいだろ?」


近藤「っ、そ、それも…そうか。」


坪谷「まあそれ以前に、今の近藤にあまり与えたくないだけなんだけどな。」


近藤「な、何でだよ?」


坪谷「いや、普通に…ねぇ?」


坪谷の濁した顔に続いて、

発砲中の一部始終を見ていた七人が頷いた。


ここ最近の近藤は、"鬼仏(おにぼとけ)"の"鬼"の風格を見せると、鬼の形相から狂気的な笑みを浮かべては、高笑いをしながら暴れることが多くなっていた。


先のバズーカでの件でも、単独で黒煙に飛び込み四方八方へ乱れ撃つなど、かなりの暴走を見せていた。そのため、渡邉、茂野、本間らの目の前に、炸裂弾が横切ると言う事態もあった。



近藤「うぐっ…、その様子だとまた暴走してたんだな。」


本間「うん、それも怒りを通り越して楽しそうにね。」


近藤「…はぁ、"ラシュ"に吸血鬼にされて以来、キレた後の理性のコントロールが、上手く出来なくなっているな。」


番場「まあ、そんなに落ち込むな。鬼仏(おにぼとけ)としての名が廃るぞ?」


星野「そうそう、それにこの序盤の勝利は、相手に肉体的にも、精神的にもダメージを与えたはずだ。まあこの際、さっきの良し悪しは置いといて、次の一手では、いつもの尚弥(しょうや)らしい戦いをしたらいいさ。」


近藤「…いつもの俺らしい戦いか。」


本間「相手のケツにスパーキングとか?」


近藤「えっ、なに本間?掘られたいの?」


本間「いやいや、俺はいいよ。」


番場「うわぁ~。始まったよ。」


微食会の知恵者である星野のフォローも虚しく。

本間の不潔な下ネタ煽りから、ホイホイと釣られた近藤に、更に番場が拍車をかけた。


ここで再び小話。

実は下ネタ枠のこの三人。


自称"下ネタ委員会"となる、

すこぶる下らない組織を作っていた。


会長の番場誠太は、依然と会長である事に不服を口にしているが、実際満更でもないご様子。


副会長の本間孝は、

会長でなければ良い感じである。


そして近藤尚弥に至っては、

健全と称しながらも、隙あらば下ネタを口にする、

もはや元凶にして起爆剤である。





渡邉「はいはい、今は下ネタを楽しんでる場合じゃないぞ?それと尚弥、暴走なんて気にするな。いつも通り前線で奮闘すればいいさ。」


近藤「…だ、だが。」


渡邉「どうせ、俺たちを巻き込んで傷つけたらどうしようって思ってるんだろ?」


近藤「っ…ぅぅ。」


的確な指摘に、

近藤は苦しい表情をしながら頷いた。


渡邉「全く、相変わらず優しいな。まあ、前線に立とうとするエニカたちを中段に下げさせたのも尚弥だったもんな。」


近藤「は、恥ずかしいこと言うなよ…。」


渡邉「あはは、ほら行くぜ。戦はまだ終ってないんだ。気を取り直して賊を一掃するぞ。」


近藤「…っ、あぁ、そうだな。」


思いを見透かされ恥ずかしがる中、渡邉の方から手を差し伸べると、近藤は(ほころ)びのない笑顔と鬼の様な表情が半面半面と分かれた状態で手を取った。


茂野「ん?そう言えば、マッキーと大西が見えないな?」


藤井「あっ、確かに、まさか追ってったか?」


茂野「うーん。可能性はあるな。現によく耳を澄ましてみれば、炸裂弾の爆音が聞こえるしな。」


藤井「本当だ。あの丘を越えた先から聞こえるな。」


星野「ん?なら行ってみるか?」


藤井と茂野の会話を聞いた星野が、

杖を"カツン"と叩くと、八人は一瞬で丘の上に瞬間移動した。


渡邉「っ、仁くん!?いきなり瞬間移動するな…って。な、なんだこれは、」


何の前触れもなく、

二百メートル先の丘まで瞬間移動した男たち。


丘の先にはジレンマ"軍の死屍累々が築かれ、

リブル公国へ侵攻してきた半数以上が、この地に伏していた。


高野「あははっ!見ろ人がゴミの様だ!」


大西「ふっ、身の程知らずが。」



バズーカを使い果たしたのだろうか。

高野は、無数の糸で賊を吊し上げては、

高笑いをしながら狂気落ちしていた。


対して大西も同様に、魔弾銃を片手に適当な所へ"バンバン"と無駄撃ちをしていた。



これにより、外道国家ジレンマとの序盤の戦いは、

一方的なジレンマ軍の惨敗で終わった。


しかし、ジレンマ軍は

この体たらくな戦果にも関わらず、

総撤退の構えは見せず戦場に止まっていた。



さすが異世界の賊集が、束になって築いた外道国家。


奪う事を生業(なりわい)としている連中に、

何も得ずの退却は、あり得ないのであろう。


それともこの現状を覆す勝算があるとでも言うのか。

あるいは、ただのバカなのか。


ともあれ、ジレンマ軍の本陣営は、

一向に退却する様子は見せなかった。




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